獄中のタイ学生運動家が歌う「あなたのための行進曲」

［ワーカーズ］インターナショナル

今年、5・18記念財団は光州人権賞受賞者として、 タイの学生運動家、ジャトゥパット・ブーンパタララクサ(Jatupat Boonpattararaksa)氏を選定した。 なぜ5・18財団は26歳のタイ学生運動家に大きな賞を与えることにしたのだろうか? 韓国人が最もよく訪れる観光地の一つであるタイで行われている軍部独裁のためだ。

クーデター以後、選挙がないタイ...無差別な王室冒涜罪適用

タイは軍部がクーデターにより絶えず政治に介入してきた。 タイ軍部は国民に人気があった前プミポン国王を守るという名分で、 選挙により執権したタクシンとインラック(注1)政権を倒した。 こうしたクーデターにもかかわらず、国民が選挙によりタクシンが作った政党を支持したため、 昨年には軍部が選挙結果とは無関係に総理を指名するように憲法を改正した。 250人の上院議員全員を軍部が指名して総理選出権を持たせた。 野党が500人の下院議席を全て得ても総理を選出することは難しくなったのだ。 事実上、民主主義という皮をかぶっただけの軍部の永久執権が可能になった。

2014年から続くタイの軍政は、3年経った今も次期総選挙の日程を明らかにしていない。 2016年10月、タイのプミポン前国王の逝去と現ラマ十世の即位という重大日程があったが、 憲法を変えて王室に忠誠の雰囲気を助長して、徹底的に長期政権の礎石を固めるため選挙を行っていない。 このようにタイの民主主義が急激に後退し、人権侵害は深刻な水準で強行されている。

タイ刑法112条の「不敬罪」とは、王や王妃をはじめとする王室の構成員はもちろん、 王家を冒涜すれば最高15年の刑を受ける悪法だ。 この法がいかに無差別に適用されるかといえば、外国人や外国のマスコミも例外なく適用されている。 その上、2015年にはタイのある労働者が自分のSNSに国王が飼っている犬を皮肉る文を載せたという理由で逮捕され、軍事法廷にまで立たされた。 タイ国内の外国のマスコミに対しても監視と統制を続けている。 つまり「ワーカーズ」に掲載されているこの記事も、駐韓タイ大使館が読んで筆者と「ワーカーズ」に対する情報を収集しているということだ。

韓国に来られないジャトゥパット氏

ニックネームのパイ・ダオ・ディン(Pai Dao Din)で知られるジャトゥパット氏は、 タイのコンケン大学法学部の学生だ。 彼はタイの民主化学生運動団体、ダオ・ディン(Dao Din)とNDM(New Democracy Movement)の会員で、2015年から反乱軍部学生運動を主導してきた。 特に映画「ホンゴゲーム」にインスピレーションを受け、タイの軍事クーデター指導者に三指敬礼する抗議運動を繰り広げ、 2016年8月に軍部が主導した改憲案反対の時には宣伝ビラを配って投獄された前歴がある。

彼は2016年12月4日にもまた逮捕された。 その理由は12月4日午前5時、彼のFaceBookにタイの新しい国王、ラマ十世のプロフィール記事に関するBBC Thai(注2)の記事を共有したことだった。 約2600人の人々がこの記事を共有したが、ジャトゥパット氏だけが逮捕され、 2017年2月に拘束起訴された。

ジャトゥパット氏が光州人権賞受賞者に決定された後、 5・18財団をはじめ韓国の市民社会はジャトゥパット氏が人権賞受賞のために光州を訪問できるようにタイ政府に保釈釈放を要求した。 しかし駐韓タイ大使館はジャトゥパット氏がタイの刑法に違反した犯罪者であり、 タイ政府は表現の自由を尊重するが、これは実定法の枠内で有効だという意見を送ってきた。 これまで国家保安法問題について韓国の人権団体がUNなどの国際社会に問題を提起して、 国際社会が韓国政府に改正を勧告した時、 常に韓国政府が言ってきた論理と驚くべきほど似ている。

ジャトゥパット氏の釈放を要請するオンライン署名運動(Avaaz)が行なわれているが、 結局、韓国にはジャトゥパット氏の両親と妹が代わりに参加するしかなかった。

タイはいつ公正で民主的な選挙が行われるのか、もし選挙が行われても民主的な政府を構成できるのかは懐疑的な状況だ。 タイの労働運動をはじめとする民衆運動では「あなたのための行進曲」がタイ語に翻案され、闘争の歌としてよく歌われている。 この歌を紹介したタイの労働活動家、ソムヨット氏も6年間、不敬罪で収監されている。 不敬罪で閉じ込められているタイの活動家すべてが一日も早く釈放され、 一緒にあなたのための行進曲を歌えるように、 タイの抵抗運動に韓国社会が多くの連帯を行うべき時だ。［ワーカーズ31号］

（注1） タクシンはタイ屈指の財閥出身だったが、 ポピュリズム政策で貧民から圧倒的支持を受けて執権した。 しかし2006年9月にクーデターで失脚した後、 彼の妹のインラックが2011年に再執権した。 しかし妹も2014年のクーデターでまた失脚した。

（注2）マスコミの報道によれば、 BBCタイ支局が新国王の即位式の翌日の国王についての記事に対し、 私服警官10人を支局事務室に送って逮捕を試みて不敬罪の適用を検討した。 該当記事はブロックされている(http://www.bbc.com/news/world-asia-38126928)。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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