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ロッテのポーカーフェース、構造調整の刃を向けるか

[ワーカーズイシュー(2)]奇妙なロッテの耳打ち(2)

キム・ハンジュ記者 2017.05.28 22:11

「かわいそうなロッテ」。 THAAD報復によるロッテ危機はますます膨らんだ。 機会はこの時だ。 これまでグループができなかったことを実行に移さなければならない。 まさに赤字事業整理、構造調整の踏み台だ。 その中で本当の危機を迎えたのは労働者たちだ。

[出処:資料写真]

ソウル市蚕室ロッテ免税店ワールドタワー店では、 協力業者を中心として労働者数が減っている。 中国人が減り、中国語しかできない僑胞(海外在住韓国人)が辞め始めた。 アルバイト労働者は3月の売り上げ急減後、直ちに解雇された。 済州は協力業者の閉店までしている。 ロッテグループのTHAAD敷地提供による被害は、 中小零細業者、非正規職労働者に向かっている。

では果たしてロッテ労働者が危機に陥る程にロッテグループの財政状態は悪化したのだろうか。 でなければ誇張された危機を活用して中国事業の整理、免税産業の構造調整を狙うロッテのポーカーフェースなのか。 中国ロッテスーパーの営業停止から中国人韓国行団体観光禁止による免税産業動向まで、その内幕を調べた。

ロッテショッピングは中国店舗での営業損失にもかかわらず今年1分期の営業利益は2073億ウォンを記録した

禍を転じて福となすロッテ?

まず、中国の限韓令(韓流禁止令)とロッテスーパーの営業停止措置で、 ロッテの中国事業が危険と見られているのは事実だ。 ロッテスーパーによれば、現在、中国内のロッテスーパー99店舗のうち12店舗しか運営されていない。 74店舗は中国の消防当局から営業停止命令を受けた。 13店舗は自主休業に入った。 残った12店舗も事実上足どりがと切れた。

2月末からロッテスーパーはマヒ状態だ。 3か月間続いた営業マヒで、売り上げ損失は3千億ウォンを越える展望だ。 昨年、中国のロッテスーパー全体の売り上げは1兆1290億ウォン、月940億ウォンだ。 ロッテグループはスーパー、免税店など、 中国のTHAAD報復による3〜4月の売り上げ損失額が5千億ウォンに達すると明らかにした。

だがロッテスーパーがあるロッテショッピングは、中国店舗での営業損失にもかかわらず今年1分期の営業利益として2073億ウォンを記録した。 昨年同期対応0.4%の減少で、殆ど変動がない。 売上額も約7兆ウォンで、昨年同期対応1.7%減少に終わった。 中国のロッテスーパーの営業停止がロッテに大きな打撃を与えていないわけだ。 ロッテショッピングの全体の売り上げにおける海外の売り上げの比率は約15%に過ぎない。

中国のTHAAD報復がなければ、ロッテショッピングの営業利益は黒字を記録したのだろうか。 2008年6月、ロッテスーパーは中国北京に1号店を出したが、出発から赤字の連続だった。 金融監督院によれば、中国のロッテスーパーの営業利益は2011年にマイナス270億ウォン、 2012年にマイナス400億ウォン、2013年マイナス830億ウォン、2014年にマイナス1410億ウォン、 2015年にマイナス1480億ウォン、2016年にマイナス1240億ウォンだった。

ロッテスーパーは中国のTHAAD報復で突然、途方もない赤字が発生したのではない。 すでに中国内の大型マート市場には、ウォルマート、カルフ、台湾界のRTスーパー(大潤髪)、中国国営企業の華潤万家などががっちりと位置している。 ロッテは一足遅く競争に飛び込み、無理があった。

新世界グループのイーマートも状況は同じだ。 2010年27店舗に達した中国イーマートは、今年は5店舗しか残らない。 カルフ、ウォルマートより遅く進出したため、成長に限界があらわれたとし、店舗を撤収した結果だ。 2011年に11店舗撤収、2014年に中国天津の4店舗閉店、去る3月には上海の2店舗を閉店した。

ロッテショッピングの株主も中国事業からの撤収を要求してきた。 もちろんTHAAD事態が起きる前だ。 ロッテは最近「事業効率化次元」として北京の一部店舗を撤収したが、 THAAD報復の余波として報道された。 2月末、3月初めの中国当局の消防点検によるロッテスーパーの営業停止も「1か月」の処分だった。 だが約3か月経った現在も、ロッテスーパーは再開店していない。 また営業を開始しても状況は良くならないのは明らかだった。 一部ではロッテが中国事業から手を引くという予測もある。 ロッテグループがこれを念頭に置いているならば、中国当局のロッテスーパー営業停止処分は、中国事業撤収の適切な名分になったのだ。

ソウル市立大中国語文化学科のハ・ナムソク教授は5月12日、「ワーカーズ」との通話で 「ロッテの中国事業はすでに昨年から苦戦しているという話があった」とし 「カルフ、ウォルマートの競争でロッテスーパーは引続き不振だったが、 拡張政策を繰り広げた。 結局、大きな無理をもたらして、中国からロッテスーパーが営業停止を受けた時点を見れば、 商売がうまくいっていないロッテを中国が『整理した形』に見える」と明らかにした。

聖公会大学校中語中国学科のチャン・ヨンソク教授は 「ロッテスーパーはM&A方式で中国に進出したが、 買収した企業の高級人員の中国専門家を代替したり、現地の労働者教育が不備だったなどの戦略上の問題が多かった」とし 「準備なしで拡張したロッテスーパーは、2015年からかなり悪い兆しが見えていた」と説明した。

ロッテグループの広報チームは5月12日、「ワーカーズ」との通話で 「中国事業の撤収計画は現在のところない」とし、 THAADが中国事業撤収名分を作ったのではないかという質問に 「答えるのは難しい」と即答を避けた。

危機のロッテ労働者

国内免税店で営業利益が減ったのは事実だ。 この被害は労働者が抱え込んだ。

5月11日午前、ロッテ免税店ワールドタワー店に行った。 約一時間で、中国人観光客は20人程度であった。 免税店の顧客の半分以上を占有した団体観光客はなかった。 客よりも職員の方が倍も多かった。

ここの労働者たちは、THAAD事態が起きる前の2月まで、店舗では中国語しか聞こえなかったと伝えた。 中国人に応対するため、1つの店舗に4〜5人の職員が忙しく働いていた。 しかし3月以後、店舗が少し閑散とすると労働者も一人二人と消えた。

問題は企業が誇張された危機を構造調整に活用するという点

ロッテ免税店の労働者、キム某氏は今が2015年のMERSの時より深刻だと話した。 THAAD以前にキム氏が働いていたT店舗には、職員4人とアルバイト労働者1人がいたが、 現在は3人しか残っていない。 中国人観光客が来ないので、中国語しかできない僑胞(海外在住韓国人)職員が自ら辞めていった。 アルバイトは3月以後に解雇された。 彼は深刻な雇用不安を訴えた。

「店舗オープンは10時なのに、午後1〜2時になって始まる。 また私たちの店舗のような国内低価格ブランドは、海外の輸入ブランドと比べ、 こうした状況では粘る力が弱い。 20年間働いたロッテで初めての体験だ。 以前にはオフライン店舗で赤字が出ても、オンラインで売り上げを満たしていたが、 今はオフライン、オンラインを合わせても一日数百万ウォンの赤字が出る。 20年間働いたロッテでこうした状況になり、雇用の不安は言うまでもない。」

済州は店舗まで撤収している状況だ。 ロッテ済州免税店のS店舗の職員は5人だったが、 THAAD以後に非正規職2人を解雇した。 それでも営業損失に耐えられず、5月に閉店した。 この店はオンラインだけで運営すると労働者たちに通知した。

今年11月にオープンするロッテ免税店仁川空港第2旅客ターミナルは、 ロッテ労働者たちをさらに締めつける可能性が高い。 今のような雰囲気なら、ロッテ免税店が新規採用をするのか未知数だ。 むしろ派遣、外注が拡大する可能性が高い。 ロッテ以外の免税店の場合、販売職員の雇用形態を外注に拡大する傾向だからだ。

現場は協力業者の非正規職労働者を中心として人員調整が起きていた。 ロッテ免税店の広報チームは5月12日、ワーカーズとの通話で 「THAAD報復、売り上げ減少による雇用調整はない」と伝えたが、 正規職直営社員だけの話だ。 広報チームは「協力業者の販促職の雇用状況までは分からない」と明らかにした。 ロッテ免税店ワールドタワー店の場合、広報チームが雇用調整がないと話した正規職直営社員は150人に過ぎない。 しかし人員調整の対象になる協力業者の販促職は1千人にのぼる。

ロッテ免税店労組のキム・クムジュ委員長は 「THAADで被害を受けるのは協力業者、下請労働者」とし 「特に規模が小さい零細業者ほど打撃が大きく、雇用不安が深刻だ。 零細業者以外にも保税運送、免税品保管、包装などの非正規職用役労働者も雇用不安に苦しんでいるだろう」と伝えた。

ロッテグループの危機ではなくロッテ労働者の危機だ

ポーカーフェースの裏、構造調整

果たしてロッテは人員を減らすほどの売り上げ危機にあるのだろうか? 2017年1分期のホテルロッテ免税事業部は、1.38兆ウォンの売り上げを記録した。 昨年同期の売り上げ1.33兆ウォンと同じような数値だ。

免税産業全般を見ても同じだ。 関税庁によれば、今年3月の全国免税店売り上げは9.3億ドル(韓貨約1兆ウォン)を記録した。 2月(11.4億ドル、韓貨約1.2兆ウォン)より18.27%減少したが、 2016年3月(8.2億ドル、韓貨約0.9兆ウォン)よりは12%高い。 最大の好況を享受してきただけに、THAADの余波で売り上げが急減しても、 赤字を抱えるような大きな打撃がないという意味だ。

去る3月、NH投資証券はTHAAD以後の免税産業について 「中国人団体観光客誘致のための送客手数料の負担がなくなるので、 長期的に見れば営業利益に大きな変化はないだろう」とし 「中長期的観点では出血競争状態だった免税産業の構造調整に速度がつく。 この峠を越えればむしろ機会」と診断した。

問題は、企業が誇張された危機を構造調整に活用しているという点だ。 マスコミがロッテの危機を極大化すれば、ロッテは競争が過熱している免税産業の構造調整を正当化するために活用することができる。 すでに「ロッテ7月回復説」が出回っているが、現場では非正規職を中心とした構造調整の動きが把握されている。

実際、ホテルロッテは5月15日、分期事業報告書で 「MERSの余波にもかかわらず短期間回復を見せたこと、 THAAD配置決定にかかわらず訪韓外国人数は回復する勢いを見せており、 政府の政策とMICE産業拡大、韓流熱風などによって訪韓外国人数は増加し続けるだろう」と肯定的に展望した。

ロッテグループの危機ではなく、ロッテ労働者の危機だ。 ロッテショッピングの利益余剰金、つまり社内留保金は11兆ウォン(ロッテグループ内1位、2017年3月基準)に達した。 ロッテ免税店の売り上げが低迷しても、ホテルロッテ(免税事業主体)の社内留保金は7.6兆ウォン(ロッテグループ内3位)だ。 ロッテグループ全体の社内留保金は35兆ウォン。 THAAD以後のロッテのポーカーフェースにより、労働者だけが崖っぷちに追いやられている。[ワーカーズ31号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-06-01 23:47:35 / Last modified on 2017-06-01 23:48:22 Copyright: Default

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