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「遂に烈士が出てきた…」

[ワーカーズ ルポ]前例ない職場閉鎖10か月、労働者を絶壁に追いやる甲乙オートテック

パク・タソル記者 2017.05.24 08:15

烈士の遺体安置所がある牙山のチャム療養病院は、深く入り込んだ山の上にあった。 タクシーの運転手は廃墟のように見える所に私を落として消えた。 周囲を調べると烈士の顔が入った横断幕が見られた。 葬儀場の入口には訪問した人々、来られなかったが遠くから追慕を伝える人々の所属と名前が書かれた帯でぎっしりと埋まっていた。 大統領選挙期間に文在寅(ムン・ジェイン)キャンプも来て、 大統領選挙が終わると李貞美(イ・ジョンミ)正義党議員も寄った。 彼らは二度とこんなことが発生してはいけないと、 韓国社会の積弊解決のために最善を尽くすという言葉を伝えらて離れた。 この死は社会的な死だった。

兄弟、同僚、同志、キム・ジョンジュン烈士になる

喪主は烈士の二番目の兄だ。 長兄は知らせを知らず、両親は亡くなった。 5月13日に訪ねた烈士の遺体安置所には、喪主と従兄弟が来ていた。 言葉がない喪主の代わりに従兄弟から烈士のことを聞いた。 キム・ジョンジュン烈士は気立てが優しい従兄弟だった。 名節のたびに顔を出していた従兄弟と最近1年間会えなかったという。 なぜか電話すると騒々しい歌声が聞こえて「デモ中だな。体に気をつけろ」と、急いで電話を切ったといった。 遺族は労組に葬儀の手続きを委任した。 遺族は単に個人的な死ではなく、社会的反省を要求する死として残るように願った。

金属労組甲乙オートテック支会のキム・ジョンジュン烈士は4月18日、自宅で亡くなっているのが発見された。 二日間出勤闘争に出てこず、知人が訪ねて行くと首を吊って死んでいた。 不法職場閉鎖8か月目だった。 同僚は後で烈士の言葉を十分にかみしめながら、彼が切迫した信号を送ってきたことを悟った。 「終わらなくて死にそうだ」、「金もなくなって、とてもつらい」という言葉は、みんな当然の言葉であったから。 別に遺書はなかった。 「ありがとう。そして申し訳ありません、このようにしかできなくて。 生きようと努力しました」という短い言葉をメッセンジャーのプロフィールに残しただけだ。

烈士は23年間、甲乙オートテックでバンに使われるコンデンサーという自動車部品を作った。 甲乙オートテック支会の出席簿は、彼の誠実さを見せる。 職場閉鎖の間、共に生活した甲乙オートテック支会のイ・ヨンソプ組合員は 「一度も闘争を欠かさなかった先輩でした。 人が多いところで行う闘争にも率先垂範して出て行きました。 使用者側による極端な動きにとても衝撃を受けるほど、とても優しい人でした」と烈士の死がまだ実感できないといった。 「自分さえ良ければという企業の蛮行により、こうした死が出てくるのです。 甲乙オートテック組合だけの問題でなく、韓国の労働者を代表して一人の人間が犠牲になったのです。」

昨年、烈士は一緒に暮らしていた同居人と飲食店を開業した。 貯めた金、カード融資で店を始めたが、突然職場閉鎖が行われたため、7月から工場に縛りつけられてしまった。 月給もないので経済的な役割も果たせない。 2月に交渉が再開され、家に戻ったが金の問題、長期間闘争による精神的ストレスは、家族との関係を難しくした。 烈士だけではなかった。 夫婦間、家族間の不和を味わう組合員はよくある。 使用者側は烈士の死を家庭事情のためだと言う。 だがそれもまた不法職場閉鎖のために生じたものだった。

類例なく長びく職場閉鎖に「飢え死にさせようとしている」

最近、支会の組合員たちは、いつの時よりも元気がない。 同僚の死に加え、10か月間の職場閉鎖は不法ではないという判決があったからだ。 5月8日、大田地裁天安支院は甲乙オートテック支会が不法な職場閉鎖の効力を停止してくれという仮処分訴訟を棄却した。 裁判所は「一般的に力の優位にある使用者に争議権を認める必要はないが、 勤労者側の争議行為で労使間の力の均衡が崩れ、 むしろ使用者側が顕著に不利な圧力を受ける場合は使用者の争議権(職場閉鎖)を認めることが公平の原則に合う」と判断した。 仮処分承認を確信していた組合員たちは恐慌状態に陥った。 甲乙オートテック支会のパク・ジョングク副支会長は 「2月から会社と交渉をしているが、パク・タンヒ前代表理事は辞表書いて辞め、 事業総括が委任されているが何一つ合意なく回数が増えるだけだ。 裁判所の判決で工場に復帰する闘争を計画していたがおかしくなった。 10か月間、給与を受け取れない組合員たちが心配だ。 もう長期闘争基金も終わるが、とても心配だ」と吐露した。

実際に組合員たちの状況は時限爆弾だ。 組合員のA氏は不眠症で7か月間、精神科で治療を受けている。 彼の薬には鬱病治療剤も含まれている。 精神的な苦痛を訴える組合員は一人や二人ではない。 労組は全組合員を対象に心理治療をしようとしたが、 そのたびにそれが苦痛だという組合員により、できなかった。

A氏は職場閉鎖が行われる前に23年間乗った車を整理して新しい車を買った。 全国を驚かせたあくらつな労組破壊は、2015年に終わると思っていた。 だが準備する時間も与えられずに使用者側は工場を止めた。 「こんなことならこの車も買わなかったでしょうに、本当に腹が立ちます。 死んだジョンジュンも知らず、誰も知らなかったんです。 叩き壊せないので、飢え死にさせようとしているのでしょう。」

2015年9月に入社したB氏は、働いた日より働けなか日の方が多い。 B氏と同年代の数人の若い組合員は、コンビニ、ガソリンスタンドなどで夜間アルバイトをしながら生活費を埋め合わせている。 宅配の仕分けをする組合員もいる。 仮処分棄却判決以後、組合内ではこれから少なくとも6か月は戦わなければならないという厳しいうわさも聞こえる。 B氏のたった一つの望みは、これ以上死ぬ人を出さずに終わらせることだ。 横で見ている同僚たちが危なく見えるといった。

職場閉鎖は2014年に使用者側によって作成された「Q-P戦略シナリオ」の手順だった。 労務法人創造コンサルティングが主導し、キム&チャン法律事務所が諮問した労組破壊戦略は、 「ストライキ誘導→職場閉鎖→警備用役投入→管理職代替勤務→公権力投入要請」と続いた。 シナリオによる労組破壊作戦が行われ、人々はこれを「新種の労組破壊」と呼んだ。 2015年1月、使用者側は特戦司令部、警察の出身者を採用して御用労組を作った。 その年の6月から御用労組は使用者側の傭兵になって労組破壊の前面に立ち、各種の暴力を辞さなかった。 リフト車を使って威嚇し、鉤、刃物などの凶器を使って支会組合員を集団殴打して、脳出血などの重軽傷を負わせた。 結局、企業労組の組合員の履歴が明らかになって、会社から出て行くことで合意した。 裁判所は憲法上の団結権を蹂躙したとし、朴孝祥(パク・ヒョサン)当時代表理事に実刑10か月を宣告し、刑が確定して10か月服役した。 朴前代表は5月15日に満期出所した。

その間、会社は他の戦略を準備していた。 2016年7月、代替生産のための準備を終えて突然、職場閉鎖に入った。 代替生産戦略もQ-Pシナリオの一つだ。 代替生産のための新規人員は正体がバレたために会社を辞めることになったが、 14の協力企業等との共謀、現代起亜車の黙認で代替生産が可能だった。 昨年、勤労監督官と該当協力企業等を訪問した甲乙オートテック支会は 「(現代起亜)自動車、4つの大きな協調会社がやらせていた」という答を聞いた。

パク副支会長は職場閉鎖に対する闘争は、使用者側に特別な打撃を与えられなかったと話した。 「職場閉鎖は3か月を超えてはいけない。 それを超えると会社のリスクが高くなるので、準備をすませて『勝負』をかけるというんです。 しかし甲乙オートテックは代替生産を完備していたので、粘り続けられたのでしょう。」

だが代替生産の証拠は仮処分訴訟の判決からはすっぽりと抜けた。 支会は資本の弱い輪に言及さえしない司法府をさらに疑った。 最近、支会は代替生産の根拠を補完して、職場閉鎖効力停止仮処分訴訟を再申請した。

腐敗した会社を助けた青瓦台の反腐敗秘書官

新しい政権ができて一週間も経たないうちに、支会はとんでもない知らせを聞くことになる。 甲乙オートテック使用者側の法律代理人だった朴炯哲(パク・ヒョンチョル)弁護士が、青瓦台の反腐敗秘書官に任命されたということ。 「国家情報院大統領選挙介入」の捜査で左遷された経歴が腐敗清算の適任者であるかのように強調された。 その後、一番悪質な労組破壊事業場の弁護人として活動したという履歴は重く扱われなかった。 甲乙オートテック支会のイ・ジェホン支会長は、5月13日から任命の撤回を要求して青瓦台での1人デモを始めた。

代表的な労組破壊事業場の甲乙オートテックを弁論したという事実が伝えられると、朴秘書官は 「甲乙オートテック事件を引き受けたのは、問題になる前、経営陣が起訴された後の昨年の春からで、 弁護士として使用者側に不法行為をしないように助言していた」と自己弁護した。

支会によれば、朴炯哲弁護士は昨年の7月から使用者側の事件を代理し始めた。 朴弁護士は金属労組甲乙オートテック支会を告訴、告発する各種の労組弾圧事件を引き受けた。 労組が昨年7月以前に不法争議行為をしたという告訴もした。 今回、棄却判決が出た職場閉鎖仮処分訴訟でも、朴炯哲弁護士が使用者側代理人になった。

朴弁護士が代理した事件は甲乙使用者側が労組争議行為を不法に追いやり、 裁判所がすでに認めた労使が合意した外部警備員関連の合意内容を否認して、労組を刑事告発する内容だった。 支会は職場閉鎖効力停止仮処分申請の棄却も朴弁護士が提出した証拠が有効だったと主張している。

止まった工場、冷えた工場

週末の牙山甲乙オートテックの工場は閑散としていた。 昨年の夏から今年の冬まで、正門を死守する戦いは、2月に会社との交渉を始めるにあたり整理した。 すべての組合員が24時間死守していた正門は、今では組になって守っている。 それでも裁判所は会社の工場にテントを張って警備室を占有し、建物の内外に闘争スローガンが入った横断幕を設置する争議行為を続ける意思が明らかに見えるとし、 業務復帰の意思を認めるのが難しいとした。 支会は露骨に使用者側の論拠を受け入れる司法府のおかげで惨憺たる心情だ。 テント、横断幕は労組の一般的な組合活動だ。 だが裁判所は労組の正当な活動を放棄することが職場閉鎖の先決条件だという。 ある組合員は「使用者側法律代理人の主張が憲法の上にある」と苦々しそうに話した。

新しい政権ができて、大統領の民生関連の動向が連日集中的に照明されている。 職場閉鎖から10か月、一人の烈士が出てきて、400人に近い労働者が危なっかしく粘っている。 400人だけでなく、その家族、似た境遇の労働者もこの状況を見守りながら苦しんでいる。 労組破壊に対抗して全身で粘る時間が続く。 労働の価値を守ろうとする人々の戦いを排除した楽観をするには、まだとても早すぎる。[ワーカーズ31号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-05-29 19:07:09 / Last modified on 2017-05-29 19:07:11 Copyright: Default

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