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シムブリーの独自完走、花道を歩いたのだろうか

[ワーカーズ問題]支持率6.2%に含まれた意味ら

パク・タソル、ユン・ジヨン記者 2017.05.22 01:31

いつも疑わしいまなざしがついて回った。 もちろん根拠のない視線ではなかった。 「進歩政党」のタイトルを付けていたが、巨大保守野党との一本化だけに没頭した。 18代大統領選挙の時、文在寅(ムン・ジェイン)大統領候補を支持して候補職を辞任した。 再補欠選挙では野党圏勝利を強調しながら、野党圏一本化に力を入れた。

一部では安哲秀(アン・チョルス)-民主党が創党した「統合新党」に合流するのではないかという予測もあった。 労働界からは距離をおいた。 サンジョン代表は国会非交渉団体代表発言で、韓国労総と民主労総の統合を要求した。 記者懇談会では過去の「進歩同窓会」と決別し、主流進歩の道を歩くと断言した。 文在寅(ムン・ジェイン)、千正培(チョン・ジョンベ)と共にする野党圏政治指導者会議も提案した。 3者会見は成功したが、当時最大の民生懸案だった労働改悪問題は議題から除外された。

党名は「進歩正義党」と「統合正義党」を経て、今の「正義党」に落ち着いた。 党綱領では社会民主主義を前面に掲げた。 民主労働党の時に掲げた「所有の社会化」という目標は「経済民主化」、「企業の社会的責任」、「所得主導成長」等に後退した。 時間が経ち、朴槿恵(パク・クネ)-崔順実(チェ・スンシル)ゲートが起きた。 千万キャンドルが広場を埋めた。 朴槿恵は弾劾され、早期大統領選挙が開かれた。 労働界は「民衆候補」戦術を持ち出した。 労働界の代表者は相変らず正義党に疑わしい視線を投げかけた。 ずっと野党圏連帯に没頭してきた正義党が「独自完走」を前提とする民衆候補戦術に参加するのは難しいのではないかという憂慮であった。

当時までも、正義党関係者は「マラソンでも基本体力がなければ完走できない。 そうでなければ心臓まひで死ぬ」とし 「(独自完走に対する)党内の反発は少なくないだろう」と吐露した。 不幸中の幸いなのか、党内の反発にあたる前に民衆候補戦術は労働界内部の意見の差で座礁した。 また、進歩政党の各個戦が始まった。 正義党の大統領選挙の動きをめぐる疑いは相変らず消えなかった。 すでに右側に方向を定めた正義党が進歩政治の独自性を守りながら、 大統領選挙で完走ができるだろうか。 あまり大きくない期待を受けながら、1月19日にサンジョン代表は大統領選挙立候補を宣言した。 またサンジョン? 新しいことはなかった。少なくとも進歩陣営の中では。

多元的意味の6.2%

得票率6.2%。歓呼よりは嘆きが大きい開票結果であった。 それもそのはず、今回の選挙の主な観戦ポイントは、正義党が二桁の支持率を獲得できるかどうかであった。 サンジョン正義党候補のライバルに選ばれた人物は、洪準杓自由韓国党候補。 少数進歩政党が執権与党と競争するというのは奇蹟的なことだった。 それだけ雰囲気が通常ではなかった。 もちろん蓋を開けるまでは。 結果的に洪準杓は24%の支持率を記録して無難に2位でゴールした。 サンジョンとの得票率の差は17%以上。 保守勢力は相変らず健在だった。 その上、サンジョンは正しい政党の劉承ミン(ユ・スンミン)候補にも負けた。 いくら割れて分かれても、30年守ってきた巨大両党の牙城を押し倒すことはできなかった。

それでも嘆きだけが流れ出たのではなかった。6.2%は進歩政党の候補としては歴代最多得票率だ。 進歩政党と進歩的議題を大衆的に知らせたという評価も受けた。 何よりも独自完走に成功し、過去の野党圏連帯のドロ沼でアイデンティティを失ったという一部の憂慮も払拭した。 進歩陣営の内部でも正義党が進歩政治の独自性を確立しようとしたという点に意味があった。 労働中心性を前に掲げたことも意外な動きであった。 今回の大統領選挙でサンジョン候補が打ち出したスローガンは「労働が堂々とした国」。 正義党の関係者A氏は「正義党は労働を前に掲げたのではない。 党ができた時、正義党の名前を『労働』で汚すなという人さえいた」とし 「だが今回の大統領選挙を始めて変わった。 サンジョン候補の意志はとても強かった」と説明した。 実際に、党の中では労働中心の進歩政党論を警戒する声が着実にあった。

「今回の大統領選挙で変わった。沈サンジョン候補の意志は非常に強かった」

労働界との関係でも成功的だった。 沈候補は民主労総産別労組との政策協約式で、過去の失策を認めることもした。 統合進歩党を出た時は、生き延びなければならなかったので原則もないように見え、 不十分な点も多かったが、いまや進歩政党としての主導性を持つとして支持を訴えた。 時には民主労総が大統領選挙の期間にあまりにナイーブではないかと叱責もして、 文在寅に票が行く前に支持宣言をしてくれとアピールもした。 民主労総はメーデーの5月1日、サンジョン正義党候補と金先東(キム・ソンドン)民衆連合党候補を支持するという大統領選挙方針を発表した。 両候補は民主労総の週末集会にも着実に顔を出して「労働者候補」だという点を強調した。

民主労総出身の要人にラブコールを送ったのも沈候補だ。 沈候補の提案でキム・ヨンフン前鉄道労組委員長とヤン・ギョンギュ前民主労総公共連盟委員長が正義党共同選対委員長として活動した。 権永吉(クォン・ヨンギル)、千永世(チョン・ヨンセ)、段炳浩(タン・ピョンホ)、李秀浩(イ・スホ)、ナム・ソンホン民主労総元委員長は、 サンジョン候補の顧問団を引き受けた。 ヤン・ソンユン正義党労働委員会委員長(前民主労総副委員長)は 「進歩陣営が分裂した後、現場での事業が難しかったが、 今回現場の組合員たちが友好的に変わったということを確認した」とし 「今後も労働中心で党の体質改善を試みたい」と明らかにした。

あの多くの労働者はみんなどこに票を与えたのか

では正義党の「親労働戦略」は、組織労働者を動かしたのだろうか。 過去に民主労働党と統合進歩党は民主労総を中心とする組織労働に根をおいた。 正義党の根元も民主労働党だ。 金属労組事務局長を歴任したサンジョン候補にとって、民主労総は「実家」のようなところでもある。 蔚山と昌原、巨済などの労働者密集地域は「進歩政治1番地」、あるいは「労働者ベルト」と呼ばれる場所だ。 進歩政治の基盤は現代自動車と大宇造船、サムスン重工業などの大工場労組と組織労働者たちだった。

イ・ビョンニョル正義党副代表は 「(大統領選挙結果)蔚山の事例を見れば、組織労働者たちもかなり正義党を支持したと見る」と説明した。 少なくとも蔚山だけはヒットを打ったということだ。 正確には15年前には達しないものの、10年前とはあまり変わっていない支持率だ。 実際に2002年の大統領選挙で民主労働党の権永吉(クォン・ヨンギル)候補は、蔚山で11.41%を得票し、2007年の大統領選挙では8.4%を得た。 今年、サンジョン候補の蔚山地域得票率も8.4%だ。

「15年前には達しないが、10年前とはあまり変わっていない支持率だ」

蔚山市北区は現代自動車工場があるところだ。 正義党蔚山共同選対委員長の趙承洙(チョ・スンス)前議員が北区庁長と二回の国会議員を過ごしたところでもある。 2002年、権永吉候補はここで22.15%という組織的支持を受けた。 2007年の大統領選挙では16.67%へと支持率が低下した。 そして今年のサンジョン候補の得票率は10.6%であった。 蔚山東区も2002年に15%台だった支持率が10%台にとどまった。 蔚山中区も10年前と同じく7%台であった。 蔚山南区だけが10年前より1.6%ほど上がった。 参考までに、昨年の20代総選挙で正義党の蔚山地域政党別得票率はぴったり8.72%だった。 大宇造船、サムスン重工業などの造船所労働者が密集する慶南巨済はずっと低下傾向だ。 2002年と2007年に権候補の得票率は9%台。 だが今回の大統領選挙で沈候補は6.9%に終わった。 慶南昌原も2002年の9.23%から始まった支持率は、2007年に7.9%、今年は7.1%と低落傾向を見せた。 慶南昌原は17代、18代総選挙で権永吉民主労働党候補が国会議員に当選した地域だ。

もちろん進歩政治の分裂と大工場労組の労使協力主義の拡大などにより、 以前のような支持率を期待するのは難しい。 その上、いくつかの大工場の組織的支持が全労働陣営の票を代弁すると見ることもできない。 では正義党は老いぼれた正規職組織労働の支持の代わりに、未組織非正規職を広範囲な勢力で確保したのだろうか。 この点も果敢に肯定するのは難しい。 サンジョン候補が初めての遊説地域に選択したのは九老デジタル団地だ。 旧名称は九老工業団地。 沈候補が労働運動の最初の一歩を踏み出したところだ。 今も零細工場とIT企業が密集し、労働条件が劣悪な未組織非正規職の青年労働者であふれる所でもある。 工場密集地域のソウル市衿川区でサンジョン候補の得票率は6.25%。 全国の得票率より低い。 その上に南洞工団がある仁川市南洞区では7.09%、 半月始華工団がある京畿道安山市檀園区では7.07%を得票した。 事実、蔚山地域も組織された正規職労働者の投票者の心が全てという場所ではない。 昨年、蔚山は全国で非正規職が一番増えた地域に選ばれた。 2016年8月基準で蔚山地域非正規職労働者は13万8千人。 前年より何と20%も増えた非正規職都市だ。

進歩シムブリーの誕生

進歩陣営の内部では、公然と「女性マッチョ」と呼ばれた』に通じた沈サンジョン候補。 今回の大統領選挙を経て、かなり新鮮なニックネームがつけられた。 統合進歩党の時、頭に大きなリボンを付けて踊っても持てなかったニックネーム、シムブリー(訳注:沈+ラブリー)だ。 明らかに正義党は今回の大統領選挙で多数の大衆に「正義党」という進歩政党の存在を知らせた。 進歩的な議題を大衆的に知らせたということに意見の差を見つけるのは難しい。 大衆との接点を作った一等功労者は、言うまでもなくTV討論だ。 特別な大衆戦略を試みるよりTV討論に集中した結果だ。 正義党のハン・チャンミン報道担当者は 「組織の力量や資金が他党の10分の1にもならない」とし 「TV討論に集中しようと努力したのは事実」と説明した。

公式選挙運動期間に開かれた2〜6次TV討論で、沈候補が一番多く言及したキーワードは「労働(41回)」だ。 彼女は長時間・低賃金労働、非正規職拡大など、韓国労働者の状況に言及した。 沈候補が強調した非正規職の正規職化、最低賃金引き上げ、同一労働・同一賃金、労働時間短縮などは、労働界が共有する政策だった。 多少意見の差がある所得主導成長と、4次産業革命を備えた基本所得も政策代案として出した。 一方では過去の民主党政権の整理解雇法、派遣法、期間制法通過などを批判して、文在寅候補に刃を向けた。

「安保(41回)」も労働と同じぐらいたくさん議論されたキーワードだ。 沈候補はTHAAD配置に賛成したり「戦略的曖昧性」という曖昧な態度を示した4人とは違い、 「THAAD配置反対」を主張して差別性を見せた。 2次討論での性少数者嫌悪に対する明らかな立場も、その他の候補との差を示す点だった。 2次討論の後、後援支援金と党員が急増したというエピソードも有名だ。 民主労働党の時に権永吉候補の 「暮らしはちょっと良くなりましたか」という流行語を誕生させ、 統合進歩党の時に李正姫(イ・ジョンヒ)候補の「高木正雄」発言が話題になったのも、すべてTV討論だ。 民主労働党の時には新生進歩政党の新鮮さで、統合進歩党の時には野党圏連帯を念頭に置いた朴槿恵狙撃で存在感を示したとすれば、 沈候補はこれまで争点になった議題に基づいて候補の間で存在感を見せた。 民主労総の関係者C氏は「大きな枠組みの政策としては文在寅候補と特別な差別性を見せられなかった点の残念さは存在する」とし 「それでも沈候補が5者討論で抜群の実力を見せたことを否定するのは難しい」と説明した。

「眼につくような差別的政策の不在。それでも沈候補が討論で抜群の実力を見せたことを否定するのは難しい」

厳密に問い詰めれば、非正規職、最低賃金、労働時間などをはじめ、 基本所得、所得主導成長、社民主義と福祉国家まで、すべて民主党が吸収した議題だ。 民主党との眼につくような差別的政策が不在だったという指摘もこの点にある。 その面で、正義党の大衆的支持が内部政策的、組織的力量によるものというより、 不公平なマスメディアのおかげだった側面が強いという評価もある。 実際にもう一人の進歩候補で民主労総支持候補の金先東(キム・ソンドン)民衆連合党候補は、TV討論などの言論からずっと排除された。 選挙法上、TV大統領選挙討論の資格は院内に5人以上の国会議員がいる政党などに限定されているためだ。 院内に入れない群小政党は発言権さえ持てない構造だ。 院外進歩政党である労働党の李甲用(イ・ガビョン)代表は 「正義党は院内にあるという理由でTV討論などの各種の恩恵を受けたが、 民衆連合党は一度も待遇されなかった。 恩恵を受けた側と受けられなかった側を並んで評価することができるか。 機会が公正ではなかった」とし 「こうした不平等に言及できなかったという点で、正義党に残念さが残る」と評価した。 労働党は大統領選挙期間に記者会見を行って、小数政党にとって不公正な大統領選挙制度を糾弾し、選挙制度改革を要求した。

シムブリーよりはシムクラッシュ

正義党が力を入れたもうひとつのキーワードは「女性」だった。 地域と現場を回りながら遊説をする時は、青年、女性、労働者に対する言及が主だった。 沈候補は現場遊説で「青年」に361回言及し、政治的主体としての「労働者」と「女性」にも各々135回、63回言及した。 正義党の選挙戦略3大核心基調は、労働、女性、青年だった。 沈候補の1号公約は「スーパーウーマン防止法」だった。 女性暴力と性暴力問題への対策も出した。 正義党は昨年のメガリア論争で一度苦労した。 沈候補の不明な立場が俎上に上がった。 だから正義党としては今回の大統領選挙空間を活用し、女性議題に精魂を込めた側面も大きかった。

正義党は今回の選挙期間に女性有権者から多くの支持を受けたと評価している。 正義党の関係者A氏は「青年労働者にどの程度アピールしたのかピンとこない。 現場の反応が多かったと見るのは難しい」とし 「だが女性有権者の反応は確かに違った」と説明した。 彼は「20代の場合『わたしたちの言葉を聞いてくれそうな強い姉さん』というイメージが強かった」とし 「TV討論でみんなを攻撃したのも『ガールクラッシュ』と受け止められたようだった。 ある女性は沈候補を抱きながら 『境遇がまったく私と同じだ。臆すことなく戦うサンジョンを見ると、私の味方のようで涙が出る』とも言った」と伝えた。 続いて「女性有権者の反応は予想できず出てきた側面がある。 誰にもガールクラッシュの沈代表のスタイルが今回受けたようだ」と話した。

「女性有権者の反応は予想できずに出てきた側面がある。」

もちろん明確な女性有権者の支持につながったのではない。 韓国ギャラップが実施した4月1週の世論調査によれば、 正義党を支持する女性の割合(5%)は男性(4%)より高かった。 1か月後の5月1週目は男性と女性の割合が各々8%であった。 選挙運動前より支持率が約4%上昇し、性別支持率も同様に上昇した。 年齢別では選挙運動期間前の4月1週目には20代が9%で最も多く、 30代(7%)と40代(4%)、50代(3%)がその後に続いた。 選挙直前の5月1週目には30代の支持率が11%で最も高く、40代と50代が各々10%、20代が7%であった。

特異な点は、職業別の支持率変動は大きくなかったという点だ。 選挙運動前後をあわせて正義党に対する学生層の支持が最も高かった。 ブルーカラー労働者よりホワイトカラー労働者たちの支持率が持続的に高いのも特徴だ。 5月1週目の職業別支持率を見ると、学生が14%、ホワイトカラーが10%、ブルーカラーが8%、家庭の主婦が7%、自営業が6%の順だった。 生活水準別に見れば、選挙運動前は上/中上層が7%で最も多かったが、5月1週目には中/下層が9%で最も多かった。

このような支持指向は2004年の民主労働党分党以後、サンジョン候補が身を置いた進歩新党の支持指向とかなり似ている。 2008年の18代総選挙以後、仁荷大学校政治外交学科のチョン・ヨンテ教授は 『二つの進歩政党と18代総選挙、そして展望』という文で、 二つの進歩政党に対する支持指向を分析した。 チョン教授は「地域別分布だけをめぐって推論すれば、 進歩新党はホワイトカラー、インテリゲンチャなどの都市新中間階級と非正規職労働者を主要基盤として 新社会運動的な問題を打ち出す『新左派』政党としての性格が強いと言える」と説明した。[ワーカーズ31号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-05-25 15:43:09 / Last modified on 2017-05-25 15:43:10 Copyright: Default

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