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改憲、誰の声が見えますか?

[ワーカーズ情勢] 87年体制の克服とキャンドルの完成

ホン・ソンマン(チャムセサン研究所) 2017.04.30 11:35

大統領選挙、ノモッポ

絶対音感を持った実力者ではないオンチを取り上げるTVショーがある。 「君の声が見える(ノモッポ)」は、出演した歌手が何人かの候補の中からオンチを選び出し、 次々と脱落させて最後の1人を選ぶ。 候補たちは自分がオンチではなく実力者だとし、多様な姿を見せて検証する時間をかける。 つまり、競演による実力者探しではなく「脱落者」を鑑別する。

キャンドル革命以後の大統領選挙は、悲しいかな国民が望む大統領を立て、一番仕事ができる人を探すのではなく、 既成の政界候補の中からまず脱落者を選ぶ方式で進んでいる。 いわゆる「ノモッポ」式大統領選挙だ。 特に、崔順実(チェ・スンシル)-朴槿恵(パク・クネ)ゲート以後、 保守陣営の責任で保守候補たちはすでにオンチとされて落ち込んでいる。 瞬間的に現れた潘基文(パン・ギムン)も、1か月も経たずに実力が確認され、支持率がまっ逆さまに落ちて途中で諦めた。 文在寅(ムン・ジェイン)ではだめだと考える人々は安熙正(アン・ヒジョン)を経て、安哲秀(アン・チョルス)への雪崩れ現象を見せている。

[出処:資料写真]

廃棄された保守再編の武器、「大統領選挙前改憲」

こうした脱落者鑑別法の一つがまさに「改憲」だ。 キャンドル政局で改憲のまず話をする人々、特に「大統領選挙前改憲」は脱落する可能性が高かった。 その理由は今回の改憲議論が朴槿恵から始まったためだ。 改憲はないという立場だったが、朴槿恵崔順実問題が公論化すると突然立場を変え、改憲推進の方針を電撃的に表明した。 政局反転カードとして改憲を持ち出し、崔順実問題を隠して主導権を確保する意図が多かった。 だが同日晩、JTBCで「崔順実タブレットPC」の報道が流されて出てきて崔順実ゲートが本格化すると国民的な疑惑と怒りは爆発し、 朴槿恵足改憲はその中に埋もれて消えた。

改憲の火種を受け継いだのは朝鮮日報を筆頭とする保守陣営だった。 崔順実-朴槿恵ゲートが起きると彼らは一糸不乱に大統領2線後退、挙国内閣構成と共に「大統領選挙前改憲」を持ち出した。 帝王的大統領制がすべての悲劇の開始だとし、大統領は外交と国防を担当して国会の多数党から出した総理が行政首班として責任を負う「二元的政府制」改憲をすべきだと主張した。 朴槿恵の秩序正しい退陣と共に、大統領選挙前改憲を軸として保守新党創党による保守再編を完成しようとした。

しかし朴槿恵前大統領はずっと粘り続け、潘基文前総長が下車して中心を失った。 何よりもキャンドル政局で―憲法裁判所の弾劾審判に頼り、市民革命による直接の退陣は勝ち取れなかったが―キャンドルが制度圏に完全に馴致されずに持続的に燃え上がり、 こうした保守再編の企みは失敗に終わった。 その後、早期大統領選挙が表面化して3月中旬に韓国党、正しい政党、国民の党が3党共同改憲案(4年重任の分権型大統領制)まで用意したが、大統領選挙前改憲の試みは中断された。

大統領選挙直後の改憲政局の到来

改憲はキャンドルと弾劾政局で保守陣営の政治的手段に転落したが、 30年続いた古い制度を変えなければならないという現実的な問題により、 大統領選挙でまた重要な議題として登場した。 国会憲法改正特別委員会は4月12日、主要5政党の大統領選候補を招請して改憲に関する立場を聞いた。 すべての候補が2018年6月の地方選挙の時に改憲国民投票を実施するという立場に同意した。

だが現実的に改憲ができるのか、またどうなるのかはまだ不明確だ。 金大中(キム・デジュン)政府の時、当時執権与党だった国民会議と自民連が「内閣制改憲」を推進し、 盧武鉉政権では4年重任制のワン・ポイント改憲を任期1年を残して提案した。 李明博政権は任期3年目に、朴槿恵政権も任期1年ほど残した昨年10月に改憲を持ち出した。 すべてさまざまな理由で失敗に終わった。

その上、87年改憲(9次改憲)の目標の一つは、これまで大統領が自分の好きなように憲法を変えてきたため、 今回は改憲を難しくしようというところにあった (大統領や国会議員過半数が改憲案を発議して、国会で3分の2以上の同意で改憲案が通過すれば国民投票に付し、過半数が賛成することで改憲ができる)。 そのために48年憲法制定以後、87年まで30年間に9回も変わった憲法が、87年からは改憲どころか改憲案さえ発議されるなかった。 政治圏全般の政治的な合意が得られなければ事実上改憲が不可能な構造に変えたためだ。

それでも今回の大統領候補者の改憲の意志は確認される。 文在寅候補は就任直後に改憲特別委と傘下の国民参加改憲議論機構の構成を公約した。 安哲秀候補は改憲作業チームを構成し、9月の定期国会が開院する前に大統領の改憲意見を完成すると明らかにした。 誰が当選しても、大統領選挙直後から改憲機構が構成され、改憲の議論を始めることになる状況だ。 改憲議論の進行と合意の如何によって、来年早々改憲案が完成するものと見られる。

権力分割式改憲とキャンドル革命

現在のところ、改憲の核心内容は権力構造、地方分権、国会議員選挙制度などの政治制度だ。 政界も政治制度に関して大きな意見の差はない。 大統領4年重任制に対しては事実上、反対意見はなく、大統領の権限の縮小または分権型大統領制に対してもみんなが賛成している。 ただし分権の方向と内容をめぐり、総理とどのように分けるのか、地方政府とはまたどんな方式で権限を分けるのかなど、細部の問題では多少違いが生じる。 また、ここにどんな形態であれ、国会議員の選挙制度を変えなければならないということへの共感がある。 議員定数の縮小か拡大かをめぐって対立する可能性は高いが、 比例連動型国会議員選挙制度に改編しなければならないという点では特に意見の差はない。 結局、権力構造、政治制度をめぐり、各政党が細部の問題を調整できないほどの大きな意見の差はなく、合意される可能性は大きい。

だが問題は改憲そのものの名分だ。 今回の早期大統領選挙は1700万人が参加したキャンドル革命以後、朴槿恵の大統領罷免による選挙だ。 そのため単に権力構造の改編で改憲を終わらせることはできない。 特に大統領制の弊害を克服すると言いながら、大統領に劣らず信頼がない国会と権力を分けるような改憲はキャンドル革命にも反する。 そのためほとんどの候補が国民参加改憲を語り、改憲機構の構成に国民参加を保障すると強調している。 ここに国民発案、国民召喚、国民投票権など、直接民主主義制度も拡大させる意思を見せている。

このように各候補たちが口をそろえて改憲は国民の意に従すべきだと話しているが、空念仏になる公算が大きい。 ほとんどが口先で「国民参加」を叫ぶだけで、大統領選挙の政策に反映されず、 既存の立場を二番煎じ、三番煎じしているためだ。 その上、キャンドルが要求した積弊清算は、口から消えて久しい。 原因は積極性と限界というキャンドル革命の両面性にある。 キャンドルが続き、結局大統領を退かせた点で積極性を持つ。 反面、キャンドルが全て自らの力ではなく、国会と憲法裁判所のような既成政治制度圏に弾劾を依託したという限界も存在する。 今の状況では87年の不明瞭さと同じように、2018年改憲で終わる憲法体制にもうひとつの不明瞭さが内包されていると見なければならないだろう。

87年体制の克服とキャンドルの完成

改憲は独裁と民主勢力間の曖昧な妥協で形成された「87年(憲法)体制」を時代に合わせて完成させようというところから出発した。 ところがいったい87年体制が何かについては、話す人により内容が違う。 だから強調することのも違わざるをえない。 87年体制は「妥協」という遅滞した(形式的)民主主義体制を称するだけのものではない。 87年体制はもうひとつの側面で、韓国社会の(新)自由主義の出発だ。 国家体制の下位にあった財閥と市場自由主義がそれぞれの独立性を認められる契機になったのも、まさに87年憲法によってだ。 憲法の核心経済条項である119条2項は国家の役割を「経済民主化」のための規制と調停者だと規定した。 同時に1項では憲法制定以後、初めて経済主体としての「企業」が追加された。 国民個人だけでなく、企業が経済秩序の主体として初めて登場したのだ。 これは企業(という名前の資本家)の市場的自由を追求する根拠になっただけでなく、 規制撤廃と各種の財閥支援政策の憲法的根拠になった。

87年体制は大統領直選制と一部の基本権の伸張を除けば、社会、経済的秩序は全斗煥(チョン・ドゥファン)軍事独裁下でなされた8次改憲の延長だ。 また、韓国社会が新自由主義体制に転換する憲法的根拠になった。 したがって、87年体制を克服し、キャンドル革命を完成させる改憲は、いくつかの条項を変えて一部の参政権と基本権を追加することで終わってはいけない。 朴槿恵罷免に駆け上がった権力構造の再編、財閥体制終息、キャンドル革命による直接民主主義の拡大などの重要な憲法秩序を新しく組まなければならない (その点で正義党の沈(シム)サンジョン候補が制憲憲法に入っていた労働者の利益均霑権をまた復活させ、 憲法前文に労働尊重精神を入れなければならないという主張は、それなりに現在の大統領候補の中で一番積極的な意味を持つ)。

したがって今回の改憲は、3次や5次改憲のように「制憲水準の改憲」を実現しなければならない。 権力構造の民主的な再編を含み、国有・公有および社会化中心の経済秩序、 労働・福祉社会体制、協力政治中心の行政構造改革、国民参政権拡大、労働・女性・少数者の基本権拡大保障などの主要な憲法秩序を新しく書かなければならない。 それでなく、87年改憲と同じように政府主導の改憲機構で、また不明瞭な妥協が行われれば、 新自由主義の下で私たちの不幸な人生は続くほかはない。 まさに大統領選挙が終わるとすぐに、またキャンドルを持たなければならない理由だ。[ワーカーズ30号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-05-05 07:24:37 / Last modified on 2017-05-05 07:24:39 Copyright: Default

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