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朝鮮半島の危機、瀬戸際戦術の終着点なのか

[ワーカーズ情勢(1)]平和体制と非核化、そして民主主義

イ・ジョンフェ(社会変革労働者党共同代表) 2017.04.25 15:07

第3次北核危機

今月の初めに米国の空母カールビンソンが、予定されたオーストラリアではなく朝鮮半島へと航路を変更し、 北朝鮮に対する米国の攻撃が差し迫っているという報道が続いた。 結局、カールビンソンの航路変更は初めからなかったという事実が明らかになったが、 おりしも1994年の第1次北核危機の時と同じように、米国3大地上波TVの一つであるNBCのメインニュースの看板アンカーが、 烏山米軍基地と開城工業団地につながる鉄条網の前でニュースを放送し、北核の脅威を防ぐためには軍事攻撃も考慮すると報道したことで、議論はさらに加熱した。 しかも日本では4月27日という日まで明示して北朝鮮への爆撃が予想されるという報道があり、 台湾では米国の北朝鮮爆撃で中国も予期できない状況が勃発することに備えるために、 集団軍2兵力、約15万を北朝鮮接境に配置したという報道が続いた。 はなはだしくは日本大使が85日ぶりに戻ってきたのは有事の際に韓国に居住する日本国民を疎開させるためだという噂が飛んだほどであった。 このように、朝鮮半島の軍事的緊張が極大化したのは、金日成の105回目の誕生日である4月15日の太陽節から北朝鮮軍創建85年目になる4月25日の間、 6回目の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を試みるという憂慮のためだった。

しかし当時、米国の空母カールビンソンが航海方向を変えて朝鮮半島に向かったという米国防総省の立場は偽りだったことがわかり、 日本と台湾の報道もフェイク・ニュースだったと明らかになった。 また、NBCの韓国現地報道も米国内でさえ、なぜそうなのかを問い直す局面であることを見れば、 朝鮮半島の軍事的緊張はかなり大げさに膨らませられている。 一方、こうしたフェイク・ニュースはいわゆるチラシだけでなく、韓国の保守言論によって検証なく国内に報道され、事実であるかのように固まり、 THAAD配置を媒介として政界により増幅された。 これは、キャンドル闘争で、そして朴槿恵(パク・クネ)弾劾と拘束で立場が悪くなった保守陣営が、大統領選挙を前にして政治地形を右側に移動させようとする努力も一役買っているものと判断される。

ここまできて、「4月27日戦争説」や「北爆説」のような朝鮮半島危機説に対し、 外交部、国防部、統一部などが鎮火を始めた。 国防部は報道官ブリーフィングで「最近、SNSなどで流布している朝鮮半島の安保状況の誇張された評価について、誘惑されないように注意が必要」だと述べ、 「何度も強調したように(米国側の軍事作戦は)韓米間の緊密な協調を基礎とした堅固な韓米連合防衛態勢の下で行われる」と明らかにした。 外交部も「米国も問題の直接の当事者である韓国との協議がなければ、いかなる新しい政策や措置もないことを明確にしている」、 統一部も「わが政府はすべての問題を平和に解決するという立場」と強調する状況に達した。 また、米国のティラーソン国務長官が「カールビンソンの太平洋内での移動は、軍事計画によって予定された方式で行われている。 現在の航路に特別な目的はない」という布石を敷いた。

崖っぷちに立つ

今、カールビンソン号はまた日本海への進入が予定されている。 その上、米国西海岸の海域警備を担当する同じ第3艦隊所属のニミッツが朝鮮半島に移動しているという報道もある。 日本の横須賀に駐屯するロナルド・レーガンまでを入れれば、朝鮮半島周辺だけで空母3隻が浮かんでいる。 空母一隻の武装力は、かなりの国家の国防力全体を凌駕するほどで、 非常に異例な軍事的緊張が形成されているのは事実だ。 空母の数だけを見れば、第1次北核危機の2隻と比べ、その緊張感は当時に劣らない。 おりしもトランプはシリア政府軍の化学兵器の使用にミサイルで対応し、 アフガニスタンのイスラム国家(IS)駐屯地に在来式兵器の中で一番威力が大きいという爆弾を投下することにより、北朝鮮に武力デモをした。 おりしも韓国を訪問した武大偉中国外相が北朝鮮を訪問すると発表され、 マティス米国国防長官に続いてペンス副大統領が韓国に来る予定であることを見ただけでも、今の朝鮮半島の緊張を計ることができる。 また中国海軍の北海艦隊と日本海艦隊が各々10隻の潜水艦を朝鮮半島周辺海域に配置したという香港発の報道に続いて、 中国国営のCCTVは中国国際航空が来る4月17日から北京-平壌路線を暫定的に中断すると報道した。

朝鮮半島の危機は戦争可能な国家を目指す安部政権にとって、またとない機会だ。 国家報道官格である菅官房長官が 「どんな事態にも対応できるように緊張感を持って日本の平和と安全の確保に万全を期する」とブリーフィングした。 安倍総理は自衛隊駐屯地を訪問し、国家安全保障会議(NSC)を招集し、朝鮮半島に緊急事態が発生する場合に備えて5万7000人と推測される韓国滞留日本人の待避方案まで点検して危機説をあおっている。

狭い韓半島で、そして北朝鮮の武器システム上、いくら「外科手術式打撃(surgical strike)」をしても、全面戦争へと戦争が拡大するほかはない条件で、 東北アジアの政治地形を見る時、第2の太平洋戦争まで覚悟しなければならないというのが1994年の第1次北核危機の当時に米国がした判断だった。 そしてその戦争では、米軍5万人、韓国軍40万人以上の死傷者と民間人死亡者100万人が越えるというシミュレーション結果が出てきたという。 変わらない条件で、当時と今の人口を比較すれば2倍に近くなり、韓国に居住する米国人は当時の10万から現在は多くて30万人まで推測され、 全外国人は70万人にのぼるという点で、朝鮮半島危機が戦争に転化した時の被害を推し量ることができる。

北朝鮮の韓成烈(ハン・ソンリョル)外務次官が米国のAP通信との単独インタビューした内容を見ると 「米国が軍事的に北朝鮮を挑発している」、 「米国が無謀な挑発の兆候を見せれば、北朝鮮はいつでも先制攻撃する準備ができている」、 「北朝鮮は良質の核兵器を引続き開発する」、 「トランプが望むのなら北朝鮮はいつでも戦争態勢に突入する準備ができている」というのが要旨だ。 いくつ持っているのか、数字が違うだけで、北朝鮮が核兵器を持っているという判断はどこが出す報告書でも概して似ている。 この核兵器を米国に運ぶ運搬体のICBMも、少なくとも大気圏の外に出て行くところまでは成功し、 潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実験も成功しており、恐怖を極大化している。 韓成烈外務次官の発言がもはや虚言ではなく、実際に米国を威嚇することができ、 米国としてももはや選択肢がないことを明確にしたのだ。 これはブッシュの第2次北核危機以後に「戦略的忍耐(strategic patience)」を打ち出して「過度な介入(over-reach)」を自制し、 北朝鮮の核問題を無視してきたオバマ政権の産物でもある。 また、トランプが北核問題はオバマ政権が誤って扱ったためだと批判した内容でもある。

4月15日の北朝鮮の太陽節に世界が注目したが、核実験はなかった。 韓成烈外務次官は6回目の核実験について「指導部が決めること」で、 「指導部が必要だと考えれば、適切な場所で実験を強行する」と明らかにした。 4月11日に開かれた北朝鮮最高人民会議では、外交委員会を復活することに決め、 過去に対米・北核外交の核心だったキム・ゲガン外務省第一副長官を含む外交委員5人を起用したと発表した。

トランプが大統領に就任した後、初めて迎える中国習近平主席との米中首脳会談の結果について、何の発表もなかったが、 時間が過ぎて北朝鮮問題の解決と中国に対する貿易制裁をバーターしたと言われている。 米国の対中国貿易赤字が年間5千億ドルに達する状況で、トランプは選挙遊説の過程で中国商品に対する50%の関税賦課と為替レート操作国指定などを打ち出したが、 これを北朝鮮の核問題解決とバーターする決断をしたと見られる。 実際に、トランプ大統領はドルが強すぎるという理由で中国を為替レート操作国に指定せず、莫大な貿易赤字を甘受する態勢だ。 これに対し中国は北朝鮮に取る措置として、原油供給網の遮断、セカンダリーボイコット、北朝鮮労働者の雇用禁止などが議論されているが、結論は北核解決のために中国が動けということだ。

平和体制と非核化、そして民主主義

1953年7月27日、北朝鮮と米国が休戦を宣言してからの64年間、朝鮮半島は今も休戦状態にある。 休戦以後、米軍の駐屯と南北間の経済力の差によって、軍事力でも格差が広がり、 北朝鮮は非対称的軍事戦略として核開発に没頭するほかはなかった。 そして1990年代の自然災害と米国の孤立政策などで深刻な食糧難とエネルギー難をあじわい、これを突破するための瀬戸際戦術として核開発を始める。 結局、今の北朝鮮の核問題を解決するのは休戦状態を終息させ、平和体制に転換することしかない。 北朝鮮の瀬戸際戦術の目標は結局、平和協定を締結するための交渉の場を作ることだ。 トランプが選挙遊説で明らかにしたように、「洋服を着ても、ハンバーガーを食べても」、金正恩(キム・ジョンウン)と一ヶ所に座れば北朝鮮の瀬戸際戦術は成功するのだ。

第1次北核危機はジュネーブ協定を結んだことで解決した。 しかしブッシュ政府になって原点に戻り、第2次北核危機を迎えることになる。 ジュネーブ協定は、電気は生産してもプルトニウムを抽出できない軽水炉を作るという内容で締結された弥縫策でしかなく、平和協定ではなかったため、新しい危機を呼び起こした。 そして北朝鮮は今回は平和協定の締結で完全な妥結を望むだろう。 一方、この60余年間の分断体制により体制を維持してきた政権により、抑圧されてきた韓国労働者民衆の人生と民主主義を立て直す方法だという点でも、 平和体制は北朝鮮だけでなく韓国労働者民衆の道でもある。

北朝鮮は2012年の改正憲法の序文に核保有国を明示した。 これまで核実験と水素弾実験、そして弾道ミサイルと潜水艦発射弾道ミサイルの試験を続けてきたし、 これに基づいて核保有国を明言した。 そして昨年、36年ぶりに開かれた7次労働党党大会では「核・経済並進路線」を宣言し、 その基調はずっと維持されている。 このような基調の下で北朝鮮が平和交渉で核保有国であることを認めろと要求すれば、危機は新しい局面に転換するだろう。 北朝鮮が核を保有した瞬間、機会をうかがっている日本はもちろん、韓国も核を保有する名分ができ、これは東北アジアに新しい緊張を呼び起こすだろう。

今、北核による戦争危機は必ず平和的に解決されなければならない。 そのためには平和交渉を始めなければならない。 韓半島の平和はもちろん、韓国の民主主義をまっすぐに立て直すためにも、平和体制への転換は切実だ。 平和体制に転換した時、駐韓米軍はもはや韓国にいる名分がなくなる。 もうひとつの前提は、東北アジア非核地帯化だ。 今は戦争を意図する勢力に対しては断固として対抗するべきだが、 北朝鮮の非核化、東北アジアの非核化が同時になされるように動く時だ。 韓国での反戦・平和、そして非核化の課題は生存の問題であると同時に、 民主主義と人権の問題であり、決して他人の手に任せていられない足元の火だ。[ワーカーズ30号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-04-28 14:54:34 / Last modified on 2017-04-28 14:54:37 Copyright: Default

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