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非正規職のワナビー、ソウル市の魅力ドバドバ

[ワーカーズ イシュー(2)]ところで朴元淳市長、なぜ正規職になってもまだ苦しいの?

パク・タソル記者 2017.04.24 21:55

「ソウル市長の講演を聞いたことがあります。 清掃労働者もすべて直営化したんですって。 私たちには夢みたいな話よ。 ソウル市の労働者と市民がうらやましいです」。

釜山地下鉄のある清掃労働者が訴えた。 釜山地下鉄だけだろうか。 他の地方自治体と民間事業場の清掃労働者たちも、ソウル市傘下機関の清掃労働者を羨む。 正規職化、生活賃金保障といった非正規職の願いを市長が直接乗り出して話すなんて、よくあることだろうか。

[出処:サゲ]

うらやましければ負ける

だが訂正すべき部分が何箇所かある。 まずは「直営化」と「正規職」転換という誤解だ。 ソウル市は2013年から今年まで、清掃、施設、警備などの間接雇用非正規職5953人を無期契約職に転換する方針だった。 だが彼らは直営労働者にも、正規職にも、転換されなかった。 地下鉄清掃労働者の場合、ソウル・メトロとソウル都市鉄道公社が設立した子会社と雇用関係を結んでいる。 「子会社」と名前を変えただけの用役業者だ。 正規職に転換されたわけでもない。 彼らの雇用形態はいわゆる「中規職」と呼ばれる無期契約職だ。

もちろん「無期契約職」は清掃労働者の定年を考慮した方案だ。 ソウル公務職に転換されれば定年が満59歳だが、子会社の無期契約職は満65歳で、定年がさらに長い。 だが無期契約職の落とし穴もここにある。 勤労条件の改善なく、単に雇用だけを保障する奇形的な形態。 彼らは過去の賃金と労働条件から抜け出せない。

まだ問題はある。 民間企業の元請・下請関係がそうであるように、各種の労働問題が発生すれば、ソウル市と子会社は責任を転嫁してピンポンゲームをする。 民主労総ソウル本部の関係者は、「ソウル市が運営する可楽洞農水産食品公社も子会社を作り、施設管理、環境美化労働者を雇用した。 だが4月になっても昨年の賃金団体協議も終わらず、元請のソウル市と子会社は責任を押し付けるばかりだ」とし 「正規職といえばそれにふさわしい待遇がなければならないが、形式だけは無期契約職、用役と特に違いはない」と批判した。

生活賃金を与えると言って

4月18日、ソウル市中区のソウル市議会の前。 地下鉄両公社傘下の子会社に所属する80余人の清掃労働者が集まった。 この日はソウル市議会の臨時会が始まる日だった。 朴元淳市長が直接くるという声に、労働者たちは仕事が終わるとすぐあたふたと駆け付けた。 彼らが手に持ったプラカードには「ソウル市は指針のとおり、子会社の生活賃金を保障しろ!」というスローガンが記されていた。

今年の最低賃金は6430ウォン。 そしてソウル市が発表した生活賃金は8197ウォン。 ソウル市の「生活賃金」は、ソウルに住む労働者が週40時間の労働で生活のための最低限の住居費、教育費、交通費などを支払える水準の賃金だ。 ソウル市は昨年末、2017年ソウル市生活賃金を発表し、適用対象も広げた。 既に適用されている直接雇用勤労者と民間委託勤労者だけでなく、ソウル市が投資、支援する機関の子会社に所属する勤労者とニューディール雇用の参加者にも拡大適用するようにした。

だがソウル市議会に集まった清掃労働者たちは 「ソウル市は2017年の生活賃金を公表したが、ソウル地下鉄公社と子会社は地方契約法のとおりに1.46%引き上げ案を出している」とし 「ソウル・メトロと都市鉄道公社は実績給として受け取ってきた食費を通常賃金に入れれば良いという。 それと共に、ソウル市から文書がくれば支払うと言って責任をソウル市に転嫁し、 ソウル市は両公社に会って検討すると言って確答を避けている」と吐露した。 労組側は、食費が固定的に支払われていたわけではなく、通常賃金に入らないのに、 公社が生活賃金に合わせるために小細工をしていると批判している。

都市鉄道グリーン環境5号線支部のパク・ジョンオ支部長は 「ソウル市が非正規職のための対策を用意しても、いつも約束を破る」とし 「4年前に子会社に転換した後、ソウル市と子会社が互いに責任を転嫁するなかで、 交渉はさらに難しくなった」と吐露した。 別の幹部は「いっそ朴市長が生活賃金政策を撤回してくれたら良い。 市長が約束した生活賃金を受け取れないと言って、組合員が私たちのせいにする」と不満を表わした。

安全業務も穴が絶えず

ソウル市庁でプラカードを持つ非正規職労働者はまだいる。 都市鉄道ENG所属の施設分野で働く労働者たちだ。 彼らはソウル市が安全業務の直営化の約束を守れと言って、2月から問題提起をしてきた。 地下鉄の安全業務直営化の問題が大きくなったのは、昨年5月28日に発生した九宜駅惨事以後だ。 事件直後、朴元淳ソウル市長は「市民の生命安全と直結する業務、危険な業務の外注化に対しては、直営する方案を段階的に推進する」と明らかにした。 これに伴い、昨年9月、都市鉄道ENGの電車の中整備と軌道勤務者171人が公社の安全業務職として直接雇用された。

だが安全業務の直接雇用転換から排除された人々が生じた。 消防、衛生給水、冷房換気など、駅施設の整備分野を担当する労働者たちだった。 その上、消防施設の場合、都市鉄道公社技術監査処が「直接雇用」を要求した安全業務職だ。 実際に2月に5号線光化門駅のエレベーター設置工事中、労働者が墜落死する事件が発生し、 技術監査処は監査意見書で「子会社委託業務のうち安全と密接に関係がある消防、換気、(冷房)施設管理人員の『安全業務職転換』をソウル市と積極的に協議して推進することが必要だ」と明らかにした。

消防だけでなく、衛生、給水、冷房換気もすべて安全に直結する施設だ。 衛生給水は火災発生時に消防供給用に転換され、火が広がらないように水幕を作る。 空気循環は自動で煙を吸い込む除煙設備に変わる。 九宜駅事故真相調査団も2次報告書で 「実際に現場設備と人員運用は非常に密接に関係があり、 消防設備だけを転換するのは公社直営と子会社運営の分離による効率性の低下をそのまま維持する可能性が高い」とし 「公社直営転換は少なくとも施設管理部門に関する限り、全体的に行われることが望ましい」と明らかにした。 だがソウル市は今まで釈然としない理由で「検討中だ」、「対策を作っているところだ」という言葉を繰り返すだけだ。

言葉だけ先の政策に失望する人々

「親労働」のイメージを借用したソウル市の政策は、ただイメージだけが残った。 それらの政策を切実に求めていた労働者は、約束の履行を要求してソウル市と対立している。 医療連帯ソウル地域支部のビョン・ソンミン組織局長は 「朴元淳市長の就任後、正規職転換、非正規職処遇改善などの指針を毎年発表するが、 現場できちんと履行されているのかを確認して監督する核心的な手続きが抜けている」と指摘して 「指針を履行しなくてもペナルティがないから指針を守ろうとする所がない」と述べた。

ソウル市で最大の公共医療機関であるソウル医療院の患者移送労働者A氏は不当な契約解止撤回を要求して戦っている。 A氏は国家人権委員会から正規職、非正規職が混在して働いていた患者移送業務の差別是正判決を引き出した当事者でもある。 A氏は「『常時持続的な業務に対して正規職化しなければならない』という指針を下したソウル市は、 問題が起きれば手を後に組んで仲裁に出る」として心苦しいといった。 善意に頼る政策、ディテールのない管理監督に、今日もソウル市機関労働者たちはプラカードを持つ。 労働政策官の「検討してみる」という無関心な返事だけは、もう聞きたくない人々だ。[ワーカーズ30号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-04-28 05:07:03 / Last modified on 2017-04-28 05:07:04 Copyright: Default

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