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不服従と抵抗の時間

[ワーカーズ27号]イシュー

パク・タソル、ユン・ジヨン記者 2016.12.05 13:42

[出処:ホン・ジノン]

平和の心理

警察は明らかに変わった。 昨年11月14日の民衆総決起直後にソウル地方警察庁が配布した報道資料を見よう。 不法、暴力デモ、核心主導者、猛烈行為者、厳重司法処理などのハードコアな単語がぞろぞろと続く。 だが最近の警察のデモ関連報道資料は、安全、秩序維持、集会とデモの権利、保障、不便最小化、平和、成熟した市民意識など、穏健な単語で埋められている。 集会の現場でも「国愛」、「成熟した市民意識」、「友人」、「非暴力」といった単語が警察の宣伝カーから流れる。 キャンドル集会の内部の雰囲気も妙だ。 以前なら地面に投げ捨てられた黄色いポリスラインはしめ縄になった。 ポリスラインを越えることもないばかりか、誰かがポリスラインに触っただけでも非難と悪態があふれる。 ポリスラインに触ったり限度を越せば、偽装活動家と言われたりもする。 非暴力、平和集会、民主市民などの単語は、警察とデモ隊の共通スローガンになった。 ロープを持っていただけでも「暴力武器」の所持者として監獄に送った警察の戦略は成功的だった。 そして警察はいまや彼らとデモ隊の間に強力な「ラポート(rapport)」を形成しながら、デモ馴らしに出ている。

「結局、義務警察が苦労して剥がさなければならない」、「また貼られるだろうが義務警察はストレスを受けずにそのままにしておけ」。 市民が警察の車に付けた花ステッカーに対する李哲聖(イ・チョルソン)ソウル地方警察庁長官の発言だ。 花ステッカーの最大の被害者は義務警察であり、自分たちが義務警察を配慮しているという趣旨のコメントであった。 言い換えれば義務警察は弱者、自分たちは弱者に善意を施す組織だといえる。 巨大権力に対する弱者の怒り。 警察はこれを内部の弱者を前に出して防御している。 黄色いプラスチックのポリスラインのような緩衝地帯を作り、視線をそらす方式だ。 市民がここに感情移入した瞬間、警察とデモ隊の間には同質感と奇異な同盟関係が作られる。

今度は心理学者のエリオット・アロンソン(Elliot Aronson)の実験を見てみよう。 彼は多くの子供を集めて、おもちゃで遊べないようにした。 半分は弱い処罰で威嚇し、半分は激しい処罰で威嚇した。 重要なことは、弱い処罰を受けた子供は後で機会が与えられても、おもちゃで遊ばなかったという事実だ。 エリオットはこれを自己説得の結果だと見た。 彼は「自分の説得は外部の威嚇や圧力によるものではないので、さらに永続的」と分析した。 しかし激しい処罰を受けた子供たちは、できる限りおもちゃで遊ぼうとした。 エリオットは「一回だけしないことを望むのなら、最上の戦略は激しい処罰で威嚇することだが、態度や行動が変わることを望むのなら処罰が少ないほど効果は永続的」と説明した。

反体制指向が明確な人たちのデモには強く制圧し、数百万人のデモには「非暴力」と「平和」フレームで弱く対応する警察の方式。 これは群衆の変化を試みて、彼らを自分たちのフレームに引き込むための心理戦だ。

心理学では一貫性の法則(law of consistency)というものがある。 公然と「私は絶対に00という行動はしない」と表現する場合、 それに反する証拠が出てきても、自分の信頼を強く擁護する指向をいう。 米国の心理学者ケビン・ホーガン(Kevin Hogan)は著書で 「こうした態度により生まれた信頼をむやみに信じ込む場合が多い。 人々がこのように行動する理由は単純だ。 自らが言った言葉に責任を持とうとするため」と説明した。

規範的・社会的な影響と権威に対する服従の心理も複雑にからむ。 エリオットは規範的・社会的影響は、人々が集団の一員としての恩恵を維持したい時に起きると分析した。 規範的・社会的影響は、普通公的な順応を引き出す。 彼は「人々が時に他人に容認され、よく思われるために同調することは驚くべきことではない」とし 「規範的圧力は人々が権威者に服従しなくなることを難しくする。 彼らは自分の業務に忠実であることにより、権威者を喜ばせることを望む」と分析した。

もちろん、群衆デモの方向と傾向性を単に心理的に接近するのは無理がある。 心理学博士カン・ボムソク氏は 「今は戦略的な側面から接近するべきではないだろうか」とし 「まだ警察権力とデモ隊の間に緊張関係は存在する。 暴力デモの口実を与え、大衆と指導部が乖離する現象を恐れて自制しようとする指導部の戦略的な判断があるようだ」と説明した。

国民は退陣を命令するが

朴槿恵(パク・クネ)大統領の3次対国民談話を生中継で見ていた市民はため息をついた。 この18年間、政界に身を置いた所感を語って、別れの挨拶するものと思っていたが、朴大統領はやはり政治の達人だった。 自分の去就を与野党の政界が決定してくれと球を投げた。 国政の空白を最小にする意図だと話したので、談話の後に与野の立場は温度差を見せながらも、また政局混乱を招いた。

6か月後に18次対国民談話をするのではないかという嘲弄と五回の大規模キャンドル集会で現れた怒りを残念なことだという技術は驚くべきだという反応があふれた。 野党は一つになって弾劾手続きに動くといったが、憲法裁判所の状況はさまざまな変化の要素を作る可能性が充分にある。 裁判官2人の任期が近い将来に終わり、弾劾にかかる時間も短くても2か月、長ければ6か月かかる。 ただし、怒った民心があり、憲法裁判所もこれを意識するのではないかと推測するしかない。 国民は新しい社会のための議論まで始めているのに、政界の退陣対応は遅く無関心だ。 市民は毎週末に冷たい広場に出てきてキャンドルを持つが、 政治家は言葉ばかりで法と政治交渉、街頭の群衆の間を一進一退している。

その間、朝鮮日報は市場経済援護を始めた。 民心の飛び火が経済民主化や財閥体制改革にまで手を伸ばすのではないかと緊張している様子だ。 社説とコラムで、経済が危険だとし、これまでの規制改革の基調を変える必要はないと主張し続ける。 解雇と就業規則を社長が思いのままにできるようにした雇用労働部の二大指針、 大企業構造調整を特典支援する企業活力向上法(ワンショット法)など、 朴槿恵政権が小細工と便法で作った経済政策を廃棄しなければならないという世論を感知したのだ。 朴槿恵-崔順実と一番直接関係があるサムスンは、 持ち株制度の転換を試みている。 検察の捜査は始まったが、サムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の支配権確立は手順を踏んでいる。

「不正に抵抗した4・19民主理念を継承して」

いまや市民は対国民談話を聞き入れる寛大な気持ちもなく、 国政壟断ゲートの一軸である財閥が生きる道探して組織を整備する様子も見られないという。 さらに強い声を伝えることはできないのだろうか? 「朴槿恵政権退陣非常国民行動(退陣行動)」は11月30日を1次ゼネスト-市民不服従の日と定めた。 退陣行動は「朴槿恵が止まらないのなら、私たちが世の中を止めようと思う」とし 「世の中を動かすこと、世の中を止めること、そして世の中を変えることは、 あの腐敗した権力と財閥、その反逆者どもではなく、まさに私たちだということを見せよう」と宣言した。 労働者のゼネスト、貧民の閉店、大学生の同盟休業などが展開された。 特に今回の労働者ゼネストは政治ゼネストだった。 雇用労働部と使用者団体の韓国経営者総協会は「不法ストライキ」だと大騒ぎした。

民主社会のための弁護士の会、労働人権実現のための労務士の会などは 「労働者のゼネストはこの国の主人である国民の命令に従ったもので、最高の意志表示の憲法上の抵抗権の行使であり、正当だ」という立場を出した。 一文章になった憲法前文には「…我々大韓国民は3・1運動で成立した大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4・19民主理念を継承し…」と書かれている。 法学者たちはこの文句を抵抗権の根拠規定だとする。 抵抗権は文字通り、不正に抵抗する権利だ。 国家権力が民主的な手続きに従わずに不正に行使される時、国民がそれを除去する権利だ。

4・19革命は、中高生や大学生が主軸になって独裁者を引きずり下ろした革命だ。 4月26日、李承晩(イ・スンマン)が下野するまでに1700余人の死傷者が出た。 5・18光州抗争は、新軍部を解体して合法的な政府に権力を戻す抵抗だった。 10日にわたる新軍部の殺戮作戦で4000人に近い死傷者が発生した。 2017年の抵抗権発動は、退陣以後の政治社会構造の変化を労働者と市民の手で実現することができるかどうかがカギだ。

亀裂を入れるための揺さぶり

問題を解決する方法は、いち早く問題を認識することだ。 これまで手を付ける意欲もわかなかった問題が積もっている。 韓国言論振興財団メディア研究センターは昨年成人2085人を対象に」韓国社会がまず解決すべ課題」を問うアンケート調査をした。 アンケート調査の参加者は青年失業(28.3%)、人口高齢化(20.6%)、非正規職問題(15.8%)、低出産(9.6%)、自殺率(6.5%)、理念対立(6.2%)、学閥主義(5.3%)などを問題として選んだ。 多様な課題が山積しているだけに、抵抗も具体的な戦術が必要のようだ。

非正規職ない世の中作りネットワークのオ・ジノ活動家は、戦線の多様化を抵抗権の一方法として提示した。 財閥問題を打破するためには各企業の労働者が、各団体は該当領域の長官などに直接圧迫を加える方式だ。 市民は不買運動、抗議の表示などで広範囲な圧迫に参加する。 スローガンも「政権退陣」と共に、細かくわけて「xxx長官辞任」、「xxx議員拘束」など、 権力一つ一つの輪を切っていくべきだと主張した。

「100万キャンドルに風が吹けば消える」と言って強い非難を受けた金鎮台(キム・ジンテ)セヌリ党議員は、春川市民から直接辞任の圧迫を受けている。 春川市民は週末ごとに開かれる地域集会で金鎮台議員の事務室を占拠し、その前に集まって辞任を要求している。 事務室は各種のプラカードとステッカーでいっぱいになった。 元祖親朴でもある金議員がまたどんな圧迫を受けるのかを見守ろう。

江原大のソン・ミア教授は市民議会を提案した。 ソン教授は「国民が自ら代表者を選ぶ方式はいくらでも可能だと思う」とし 「市/郡/区単位でも、道単位でも代表を選び、政権退陣、セヌリ党解体、悪法廃棄などをしていく方法もある」と話した。

全教組のイ・ミンスク教育宣伝室長は 「教師は結局、学生と共に行くべきではないか」とし、多様な教育プログラムを検討していると明らかにした。 イ室長は「教師ができる最大の抵抗である年次休暇闘争(同日休暇を出すこと)をさらに積極的に組織したい。 この日、学生と共に体験学習に行ったり一緒に社会的なことを考える授業を進めるのも良い方法だろう」と話した。

アルバ労組のパク・チョンフン委員長は、抵抗権の行使が必要だと考えるが、どれほど多くの市民が同意するのかが問題だと話した。 朴委員長はフェミニズムに注目しているという。 フェミニズム団体とフェミニストたちは、退陣以後の社会を一番深く考える主体の一つだ。 彼らは時々(キャンドル集会の参加者から)「味方」ではないと言われて攻撃の対象になったりもするが、 政権退陣のための市民が絶対線ではない。 だからフェミニストたちは彼らを相手にする一方、構造化された権力とも戦わなければならないという二重の困難に置かれている。 朴委員長は「社会が成熟するためにはフェミニストの言葉を傾聴しなければならない」という言葉を残した。(ワーカーズ27号)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-12-06 00:15:31 / Last modified on 2016-12-06 00:17:32 Copyright: Default

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