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危険社会から危機社会へ、国家とは何か?

[ワーカーズ23号/イシュー]ワーカーズ情勢対談

チョン・ウニ記者 2016.10.10 11:48

民心は一つではなかった。 しかし誰もが国家の意味と代案を問う。 問題は、朴槿恵(パク・クネ)大統領なのであろうか? 資本主義の危機が拡大し、個人と社会、国家の危機が構造化されている現在、 ワーカーズはこれに対する分析と展望を議論する場を用意した。

▲写真/ホン・ジノン

ホン・ソンマン(ワーカーズ):国内で見れば、朴槿恵政権以後にセウォル号惨事に始まり、多様な事故と犠牲の中で社会の危機が高まっている。 国際的には日本の原発事故、金融危機後の米国、ヨーロッパなどで政治的分裂が加速している。 また、米国が警察国家として軍事的な形態で資本主義体制を維持したが、これもヘゲモニーの危機に陥っている。 いわゆる「危険社会」から「危機社会」に進んでいる様相について、最近の懸案を中心に話してみよう。

ペ・ソンイン(韓神大):朴槿恵政権の分析は、ある意味では簡単だ。 朴槿恵という個人の地位自体が持つ大きな規定力のためだ。 執権勢力はすべて大統領である朴槿恵に集中している。 新自由主義の導入後も作動する国家メカニズムがあったが、今はこれ自体が作動しない。 社会全般が回ってはいるものの、最悪といえるほどの非合理性が全面化している。

キム・ヘジン(全国不安定労働撤廃連帯):李明博政権がなければ、朴槿恵政権が登場しただろうか? 新自由主義の危機と競争が加速する最高峰に、朴槿恵政権が存在する。 社会が不安定になり、共同体としての人生が揺れる状況で、人々が選べる選択肢の一つがまさに「朴槿恵」だった。 むちゃくちゃな押し通しができるのも、これを裏付ける一種の政治的な支持があるからだ。

ホン・ソンマン:最近の禹柄宇(ウ・ビョンウ)事態や、構造調整に関連しても、 朝鮮日報と青瓦台の戦いは一般的な予想に反している。 朴槿恵政権に対する反発が強まっていると見るべきではないか?

キム・ヘジン:政権の再創出を控えてさまざまな分派間の対立が現れているが、基本的に朴槿恵政権は30%に達する保守層の安定した支持の他にも財閥からの支持もある。 実は、ちょっと理解できないのが韓国の大資本、財閥の態度だ。 朴槿恵式政治には財閥としては同意が難しいと考えていた。 ミル財団のように企業をむちゃくちゃに動員する。 北朝鮮との対立、開城工業団地の閉鎖、中国との緊張高揚など、韓国資本の立場としては朴槿恵政権の態度は受け入れ難いと思った。 それでも財閥は与党と青瓦台の政治的基盤として残っている。 財閥のこうした態度は、長期不況の不安感の中で、突破方式の一つとして朴槿恵式政治を支持しているのではないか考えられる。 すぐ展望をたてることはできず、まさに今の状況を超えることの方が重要だと見たのではないか。 一方では朴槿恵政権としても政治検察により、財閥への調整と統制が容易になったことを活用していると見る。

キム・テヨン(社会変革労働者党):最近、セウォル号惨事、MERS事態、地下鉄事故などの一連の事件がある。 しかしある社会では事件はいつでもある。これを貫く原因が何かが重要だ。 朴槿恵という人物に非難が集まっているが、 彼女が象徴的な人物だから攻撃されるが原因提供者ではないという点も見るべきだ。 朴槿恵政権の非正常的な態度に焦点を当てたため、問題の原因が見えなくなる面がある。 結局そうなれば人を変えれば良いという人物交替論に陥ったり、来年の大統領選挙の政権交代論の根拠として活用されかねない。

資本主義の危機克服、各自生存の道に行くのか?

ホン・ソンマン:李明博政権の時に世界経済危機が拡大し、国家はかなり市場に介入した。 だが朴槿恵政権は、現状況についてほとんど手をこまねいている。 逆に歴史問題や教科書問題、全教組理念論争のようなものは、青瓦台が主導している。 また構造調整は文字通りに市場主導で処理しろというが、労働に対しては賃金体系まで手を突っ込む。

キム・テヨン:ある所は無政府状態、違うところは過剰なほどに政府が介入する。 例えば、公共部門の構造調整と民営化は政府が強力に介入し続けている。 別のところは無政府状態のまま放置している。 代表的にはユソン企業と甲乙オートテックがある。 以前は国家がある程度調節をしたが、今はそんなことはしない。 新自由主義の詰めの段階を実行する専門担当者の役割を朴槿恵が引き受けているのではないだろうか。 結局、労働を搾取することしか選択の余地がないようだ。

キム・ヘジン:九宜駅事件対策委をしながら、本当にこの社会システムは崩れたと感じた。 セウォル号の時もそうだったが、さらに実感した。 まさに責任をいかにまぬがれて、隠すのかに焦点が合わされている。 これでは必然的に一方的、暴力的な様相に行くほかはない。 今のソウル大病院ストライキを見ながら、成果主義システムがいかに病院を破壊するのか、医師も管理職も誰もが知っているのに、労組の他には誰も話さない。 現実が悪くなることよりも生き残る方が重要だと考えているからだ。 結局、資本主義の危機の中で各自生存の道に行ってしまっている。

ホン・ソンマン:では現在の状況で何をしなければならないのか? 労働者たちは構造調整に対抗して雇用安定を要求するが、やや防御的だ。 セウォル号やペク・ナムギ農民死亡に関しても、解決の展望を明確に作れていない。

ペ・ソンイン:多少原則的だが、また原則を建てなおさなければならない時ではないかと思う。 朴槿恵政権が示すように、理念論争、政治軍事的対立を激化しながらも、崩れた市場機能をまた回復しようとする試みは失敗し続けている。 社会的危機管理にも失敗し、労働に対する攻撃だけを強化している。 まさに今が「国家とは何か」に対する根本的な質問を投じるべき時だ。 現状況を放置すれば、韓国にも米国のトランプや、ヨーロッパの極右勢力のような政治勢力が登場しかねない。 社会的不安が加重して、大衆も分裂しているためだが、女性嫌悪や、地域感情、移住民、同性愛者差別などのヘイトスピーチが拡大する様相も、資本主義の危機の拡大と非常に深い関連がある。

キム・テヨン:ここで単純な人物交代や政権交代は、他の社会的変化を起こしかねないので、むしろ大衆の失望と分裂をさらに拡大しかねない。 20年前の三豊デパート、聖水大橋の崩壊事故が起きて、それに続き外国為替危機と途方もない構造調整が吹き荒れた。 それと共に民営化、非正規職が導入されて、外注、下請などの新自由主義再編が本格的に始まった。 つまり、当時の危機の中で資本は韓国社会を新自由主義に率いたが、今の危機は代案がない。 それと共に、過去には想像できなかったさまざまな展望が話せる状況に置かれている。 基幹産業と財閥の社会化、国有化の話だけでも左派のかたくなな論理程度で置き換えられたが、 今の造船業、海運業の構造調整事態で検討すべき、現実的な公論が必要な状況になった。 韓国社会のすべての政治勢力が構造調整を必要悪と考えて失業対策を拡大すること以外に何の代案も出せないためだ。

キム・ヘジン:今は各自生存の社会に行くか、共同体を回復して国家を立て直すのかの岐路に立っている。 野党も朴槿恵政権のアンチ勢力としてだけ存在していて、代案的な独自の議論がない。 結局、大衆がいかに動くかにかかっている。 そのためには社会運動勢力が各自の信頼を復元する献身的な連帯が必要だ。 また、非正規職など、まだ社会的に動いていない労働者たちと共に声をあげる可視的な運動も重要だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-10-17 14:42:10 / Last modified on 2016-10-17 14:42:12 Copyright: Default

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