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青年、ゾンビと余剰、そして自発的難民

[ワーカーズ21]自発的青年難民の政治

イ・グァンソク(ソウル科学技術大学教授) 2016.09.09 09:31

[出処:ホン・ジノン]

今日を生きる青年は、それこそゾンビのような境遇だ。 世代収奪に苦しみ、使い道がなくなれば廃棄されるという点でそうだ。 青年の生活にかけられる足かせは、よほどのことがなければ表に出ない点も特徴だ。 社会的弱者の自殺や事故といった極端な生活の犠牲と放棄によってのみ、その存在感が社会に表面化するまで、 彼らはいるようで、いないような都市を徘徊する幽霊と同じだ。 青年は多種多様な生活背景を持ち、階級や階層で語ることはできないが、 時間が経つにつれて政治経済的な不平等要因が彼ら青年世代にかぶせられる傾向が強まる。 つまり今日の「ヘル朝鮮」の青年たちは、順次年齢世代で社会的に階層化される世代になった。

オフライン・ゾンビ労働

ヨン・サンホ監督のアニメーション映画〈ソウル駅〉を見てみよう。 ゾンビ感染者は最初はほとんどの市民が無視する社会的弱者、特に路上生活者から広がる。 彼らは存在しているのに存在していない。 社会の関心の外に留まり、伝染速度もとても早い。 路上生活者は一時は韓国社会の基層を形成する経済人口だったが、金融危機の余波で企業と政府から捨てられ、消耗品になった。 互いの肉をかじるゾンビの伝染病は、初めは誰の威嚇にもならない。 だが、彼らの症状が外に出てくるとすぐ社会を急速に威嚇し、破局の状態に追い込む。

経済成功の神話から脱落した路上生活者の子どもがその後に続き、もうひとつの青年ゾンビになる。 青年ゾンビは、非正規職下請労働、ハイテク吸血労働、影労働、情熱労働、インターン労働、アルバイト労働、底辺労働など、 代を継ぐ産業時代のあくらつな労働収奪に無防備に露出させられる。 彼らが守ろうとする最低時給は、営業所では最高時給になり、現場での青年の年齢は、青少年と混ざりながら労働年齢帯が下がって行く。

今日の青年はそのようにして、ゾンビとなり、難民でない難民になった。 社会的に認められもしない非公式難民だ。 国際的に国を失ったり放棄した国際難民の法的地位者だけを難民と考えてはならない。 国家と社会がケアを忘却した時、青年は自らボートピープルになる。 地下鉄2号線の九宜(クイ)駅での下請青年労働者の死、 「30分」クイック配達で死に、傷ついたアルバイト、生活の希望を失った投身と自殺などは、韓国社会内部の非公式な難民の姿だ。

オンライン余剰労働

奇妙だ。青年の役割は、ゾンビや難民と違い、もっと複雑だ。 議論を技術領域に持ってこよう。 現実のゾンビ労働者は、休んでいる間に普通「余剰」活動をする。 「余剰」とは、かつて青年自らがアルバイト、失業や無職になった自分を卑下する言葉だった。 今では企業は余剰の時間を奪おうとしている。 例えば、10万人の公試族(公務員試験準備生)、就職準備生、アヘヘ廃人、アクプラー(低劣なコメントをつける人)、クジュングラー(しつこマルチポストする人)、論客、別名「ビョーキ気味」のオンライン・コミック作家、 ゲームセンターの客、サラシ族(他人の個人情報を公開する人)、フロゲイ(性別を偽って振舞う)、煽り屋(挑発行為を繰り返す人)(関心種子)等は、 見かけは違うがそれぞれがあらゆる余剰の配役を受け持っている。 つまり彼らの余暇と未就業時間などに行う「余剰な仕事」は、別の形態の市場価値を作る根拠に急変する。 彼らすべての個別の時間と活動は、標準化され、結局はデータアルゴリズムの機械に食われる運命になる。

データ機械はしばしばプラットホームという言葉で呼ばれる。 青年のオンラインの遊びと好みの表現は、これらのプラットホーム・ブローカーの利益をふくらませるコンテンツになって久しい。 自発的に遊び、休んで、幕間を使って行われる青年のオンライン活動は、ほぼすべて個性が抹消され、データ工場の利益のための焚きつけになる。 青年ゾンビの急速な拡散が、産業機械の底辺労働を支えている間、青年の「非物質」余剰活動が、情念とエネルギーをデータ機械に提供する。 青年たちが休みながら、遊びながら、一日をつぶしてしていることすべての自発的な遊びと喜悦は、 いつのまにか「自由労働(free labor)」、「遊び労働(playbor)」に転換される。 青年にとって、自由労働は経済的補償に対する要請を忘れさせ、遊び労働は労働を束縛ではない自発的な情熱と楽しみを想像させるように誘導する。

青年自身がゾンビのように底辺労働をしながらも、最後の仮想の隠れ場とみなしてきたオンライン空間は、 結局企業の手中に落ちる。 残念なことに実世界の青年ゾンビの増加は、オンライン余剰力の増加と正比例する。 現実と仮想はそうして青年の人生をむしばむ共謀を繰り広げる。 時にはオンライン「オタク」のとんでもない余剰行動が、その支配的な秩序からの逸脱を謀議し、データノイズを作り出すが、 やはりもうひとつの人生のための動力になるのだからたいへんだ。

モバイル感情労働

青年の現実世界でのゾンビ労働と仮想世界の余剰労働を一貫してまとめようとする市場支配の意志は、 労働作業場内外を管理する新種の技術力に再度、強く依存する。 モバイルスマート機器がそれだ。 ゾンビ、難民、余剰は、裕福な青年労働の現存形態だ。 彼らの労働を効果的に吸収し管理するためには、労働時間とは無関係にいつも彼らの身体に接続することが重要だ。 実際に、モバイル環境における青年労働は、休息と作業場の外でも外部者の統制力に大幅に露出している。

スマートフォンのように身体から離そうとしても離せないモバイル機器は、 主に非正規職青年の日常に対する統制装置の役割を自任する。 例えば、雇用主はモバイル機器を通じて青年労働者が働く時間はもちろん、彼らの時間外の動線や感情を遠隔管理する欲望を持つ。 例えば、事業主、店主、マネジャーなどは、勤務時間以外でもカカオトークのメッセージをアルバイトに送り、いつも仕事に関係する感情労働を強要し、 作業場の外でも状況を管理監督しようとする。 前日の勤務誠実度、清掃状態、課題遂行、組織倫理など、雇用主たちは休む暇もなくメッセージ、チャットルーム、モバイル アプリなどの経路で、労働の成果を統制しようとする。 日常も仕事の延長になり、メッセージのストレスなど感情的な労働を続け、誘発するのだ。

青年労働の「怠けてもいい権利」の態度、例えば、勤務中の息抜きや知り合いへの「カカオトークメッセージ送信」等は、 管理者に対する小心な抵抗に該当する。 分単位で管理される現実における反抗の最大値は、営業所内部のCCTVと店主の視線をしばらく逃れられる場所で行われるわずかなメッセージ送信やニュース検索などの逸脱程度だ。

自発的青年難民の政治

韓国社会の青年たちの同時代技術との結合方式は、強くねじれている。 テクノ空間は今までは青年の才気が活発に噴出する脱走の領域だったが、 青年のオンライン余剰力の収奪や感情労働の強化のための「ガラスの監獄」に変革されている。 企業は労働と活動、遊びと労働、物質界と非物質界などの境界を揺るがして、 それを市場の価値に乱暴に統合する。 同時代の先端のモバイル技術は、彼らをなめらかにつなぎ、その上に自分の再生を試みようとする青年の首を締める。

全てが労働に換算されてゾンビと余剰になり、モバイルで管理統制される青年は、 どうすれば自立と自律活動の時間を取り戻せるのだろうか? ご存知の通り、青年の存在は該当社会の成熟度に関連しており、 その統制の時間を除去することは容易ではない。 ただし、私たちは技術過剰により形成された青年収奪のバブルだけでも除去する水準で、いくつかの糸口を提起する必要はある。 先に青年の全方向労働搾取に対する社会的贈与と互恵的配分の代案を用意しなければならない。 いわゆる青年配当や基本所得のような議論が、青年に対する社会的贈与の具体的なモデルになりえるだろう。 補償なしで自発的に余剰活動を行う青年に対する適切な社会的補償策が用意されなければならない。

次に、データ機械の一部になりつつある青年生活の重さを減らすためには、 権力装置の鎖とくびきを投げ捨てなければならない。 少なくともオンライン余剰労働を収奪するプラットホーム依存から抜け出し、 自律と協力の電子共有地をあちこちに作らなければならないだろう。 青年自身の自律活動と協力の中で、相互の友愛と共通の価値を作る余白の時空間を用意しなければならない。

最後に、青年の社会的地位を誰が規定するのかは非常に重要だ。 「つらいから青春だ」といった青年を慰労するスローガンは、「情熱ペイ」や「限界を超えた努力」の企業の詐欺を隠してきた。 だが、いまや多くの青年は、「限界を超えた努力の背信」を語り始めた。 「頑張り」、「No答」、「ヘル朝鮮」、「泥匙」階級論は、自ら気が付いて下から上がってくる放言だ。 いまや青年は、自分自身を難民として見ようとする。 外部者の正義ではなく、青年自身による「自発的難民化」の傾向を十分に噛み締めなければならないからだ。 そうだ、まさに私はこの社会が使い捨てた難民だ、ゾンビだ! さあ、この狂った世の中が私たちの首にかけた電子の鎖を自分のやり方で断ち切ろう。 そういうことだ。[ワーカーズ21号]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-09-20 20:27:46 / Last modified on 2016-09-20 20:27:47 Copyright: Default

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