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米国の労働運動はどう変化しているのか

北米サービス労組SEIU総会参観記

パク・チョンフン アルバ労組委員長 2016.06.09 19:47

[出処:アルバ労組]

今の青年はグローバル世代と呼ばれるが、筆者は生まれて一度も外国に出たことがなかった。 飛行機に乗ったこともない。 済州道も江汀村の闘争のために船に乗って行ったことがあるだけだ。 そんなとき、SEIU(Service Employee International Union、国内では北米サービス労組と翻訳される。実際に米国、カナダ、プエルトリコ地域を包括する)の招請で米国に行くことになった。 ビザの発給から空港での搭乗まで、どたばただった。 仁川空港で荷物を送るカウンターがあって、堂々と荷物を持って行った。 職員が荷物を上げてくれと言うので机の上に力いっぱい荷物を上げてとても笑われた。 「お客さん、荷物は横のレールに…」。 同僚は飛行機乗る時は靴を脱いで乗らなければいけないとふざけることもした。 飛行機にカーペットが敷かれているからね。 本当だと思って検索までした。

紆余曲折の末に飛行機に搭乗したが、デルタ航空だった。 大きな衝撃を受けたのは、飛行機の乗務員の姿だった。 私が見てきた飛行機の乗務員は、ほっそりした体つきにスカートを着て、小細工せずに髪をひっつめた若い女性だった。 しかしデルタ航空の乗務員は、容貌、人種、年齢、ヘアースタイルの束縛を受けなかった。 年齢が高く落ち着いたおばあさん乗務員も機内サービスをしたし、髪の毛は自由だった。 では韓国の乗務員だけが異なる規定を受けているのか? そうだった。 帰国する時に乗った大韓航空の乗務員は、座ってお客さんの言葉を聞いたし、ぜんぶ若い女性だった。 女性労働者に強要される化粧と徹底した容貌規定は、韓国だけの誤った文化だった。 その後、米国の同僚に聞いてみると、容貌とメーキャップ、ヘアースタイルなどはプライバシーなのでみだりに介入しないという答を聞いた。 あらためて、私たちには変えるべきことが多いということを感じた。

3日間行われたSEIUの総会は、一言で大きな衝撃だった。 内容よりも文化的な差が一番大きく感じられた。 まず規模がとても違う。 SEIUの組合員は200万人だ。 代議員だけ約3000人、1500人以上の代議員が集まった。 総会場所はデトロイトのCOBOセンターで、韓国のBEXCOのような大型の建物だった。 この派手な建物に労働組合の旗がかけられて、広報ブースが用意されていた。 3000人は軽く収容できそうな大型ホールを三つほど借りたが、あるホールは食堂、あるホールはゲームセンター(モグラ叩きゲームとバスケットボールの玉を投げるゲームなどがあった)とインフォメーション、各国の闘争を象徴する旗など、 博覧会のような雰囲気を演出する空間で、 最後のホールが総会場所だったが大型コンサートのような雰囲気だった。 大型の放送用カメラが総会の会場を映し、大型スクリーンにそれが表示された。 総会場所のあちこちにマイク舞台が設置され、組合員たちがその舞台で発言できるようになっていた。 マイク舞台には番号が付けられて、議長が番号を呼ぶと画面にその舞台が出てくる形だった。

総会では環境を保護するために紙の文書は使わなかった。 代わりに全員にiPadを配ったが、iPad貸与サービスを利用した。 今回の総会のためにアップルに誰にでも貸してもらえるようにした。 総会の詳しい文書を受けたければ、スマートフォンで「SEIU 2016」を検索すれば良い。 文書は韓国語をはじめ、英語圏の外の労働者も読めるように翻訳されている。 総会内容のために、翻訳機と通訳者が配置されていた。 言語のためにとても神経を使っているようだった。

私たちが泊まったところはホテルで、毎日小さなパーティーが行われた。 筆者はホテルで寝たことがなかったが「労働運動する人がこれでも良いのか?」という気もした。 これがいくらなのか? この派手さに驚嘆すると同時に、なぜか超強大国の労働運動は違うという違和感を感じた。 旧朝鮮の運動家がロシアに行った時、どんな感じを受けたのか、少しは感じることができた。 それで「こんな派手に総会をすれば、米国の保守言論が攻撃するのでないか」と質問をしたが、そんなことはないという。 組合員が200万人で組合員の組合費納付率がかなり高ければ、できないことでもない。 こうしたハードウェア的な文化だけでなく、多様な差が目に映った。

ハードウェアが備わっているから可能なことでもあるが、演説する時、みんなスティーブ・ジョブスのようにやる。 自分だけのストーリーで始まり、観客の呼応を引き出すスタイル。 聴衆はよく立ち上がり、よく拍手してくれる。 聞いてみるのと、現場幹部の時から演説教育をするという。 演説ではユーモアが重要で、特有の身振りが総会の面白みを増す。 一つのショーを見るような感じだった。 さまざまなリーダーが登場した。 労働組合の幹部だけでなく、現場のスターが何人かいた。 そして彼らの演説時間を保障して、十分にできるようにした。

一番衝撃的だったのは、採決の過程。 議長は賛成するかと尋ねて、賛成すれば参席者は「アイ」と叫ぶ。反対は「ノー」。 賛成の声が大きければ可決。 識別しにくければ立ち上がらせて、議長がだいたいの数を決める。 いいかげん討論を終わらせて採決しようという発言が最大の拍手を受けるのは全く同じだ。 議案の採決だけでなく、幹部をこうした形で選ぶことに、カルチャーショックを受けた。 もちろん、総会の前にしっかり事前の討論をしたというが、手順を踏んだ民主主義の象徴と言われる米国で、 むしろ手続きよりも内部の団結と教育、祭りとして総会を考えているのが新鮮だった。

▲パク・チョンフン アルバ労組委員長

議案の審議時間と発言時間は制限される。 議案の審議時間は約40分程度、発言時間は3分だ。 画面に制限時間が表示され、それぞれのマイク舞台に地域支部の委員長と組合員が共に上がり、 その場面がスクリーンに表示されると歓声が沸き上がる。 下からの参加と演出を重要視する雰囲気だ。 ところでこの発言には各自のストーリーが含まれている。 気候変化の議案なら、気候の変化で自分がどんな苦痛を受けたのかを発言するスタイルだ。 15ドル運動を話す時は、子供の運動靴を買うことができなかった話で始まった。 組合員のそれぞれのストーリーが話されて共有され、それがそのまま組合員を教育し、決意を集める役割を果たした。 話が中心になるので組合員の参加度が高く、組合の主人公が組合員だという言葉が口先だけの言葉ではないような感じを与える。 幹部中心の発言と討論が行われる韓国の総会とは多少差がある。

もう一つ注目すべき点は、女性と性少数者が差別されずに役割を果たしていることだ。 年齢の差別も少ない。 92歳のある女性組合員は、65年間労組活動をしてきた。 最近も連帯闘争に積極的に出て、二回連行されたという。 この方の発言は多くの組合員に大きな勇気を与えた。 彼女はSEIU組合員の自負心のようなものだった。 ほとんどの組合員は黒人だ。 幹部は白人の割合が高い。 それでも意図的に人種的な多様性を維持するよう努力する。 国歌を歌うのは多少衝撃だった。 米国の国歌とカナダ、プエルトリコの国歌を歌った。 私を招いた人に、労働組合がなぜ国歌を歌うかと尋ねると、 労働組合のメンバーはこれをとても重要に思うから仕方がないという返事だった。 おもしろいのは、私を招いたこの人は国際担当ではなく組織局の所属だ。 「世界がSEIUの組織対象なのか」という気がした。 米国には外交部がなく国務省が外交をするのを見て、思い付くことと似た感じだ。

組織局について気になったので調べてみると、SEIUの組織局には机がないという。 外に出て行って組織せよと。 この話を聞いて、アルバ労組の常勤の机をなくそうか? 悩むこともした。

SEIUの活動家はオーガナイザー(Organizer)と呼ばれるが、彼らの年俸もものすごいと聞いた。 能力がある良い人材が、大企業でなく労働組合の常勤者を夢見られるようにしようとする意図だという。 6か月ほどのトレーニング期間と評価もあるというが、予算が削減されれば構造調整されたりもする。 韓国的な情緒からは遠いが、実用主義的に感じられることもした。

総会は新しい時代の労働運動組織、労組が社会運動をすること、ヒラリー支持を主な議題として扱った。 大統領選挙を控えて社会運動を強調しているのかという気がしたが、 これまで実利主義的な労働運動をしてきた米国の労組に変化が起きるのではないかという期待感もあった。

印象的な論理は、労働者の団結のために、女性、性少数者、人種、移民の問題に積極的に動こうとしていることだ。 労働組合の団結のためだという論理が気に入った。 しばしばこうした運動は少数者運動だといって運動を分裂させると非難されるが、 むしろ彼らを排除することが労働運動の団結を害するということだ。 とても主体的で能動的な論理だ。 分裂すれば共に戦えず、生活の条件が変わらないということ。 そうすれば労働組合の力も弱まるということだ。 気候変化の問題にもかなり気を遣っていたが、清潔で安全な水を飲む権利を労働組合が話しているのがおもしろかった。 暑すぎたり寒すぎる気候は、労働者の安全に連結する。 このように、労働組合が市民団体の領域と思われる内容を決議文の形で総会で通過させるのは印象的だった。 労働組合運動が社会運動とどうつながるのかを見せる場だった。

一番気に入ったのは、こうした計画を言葉ではなくイメージと映像で簡単に伝えるということだ。 資料集をじっくり読むのではなく、映像を見れば計画と決議内容が分かった。 いつも組合員の目の高さに合わせて議論を進めているのが印象的だった。 もちろん、これが十分な内容の伝達と討論につながるかはわからない。

総会の内容よりも総会の文化から学ぶことが多かった。 韓国の運動と組織文化も変えられるだろうか? 歴史を省略した完全な跳躍はありえない。 新しい文化を創出する努力は、常に既存の運動の中から誕生する。 この数十年間の非正規職労働運動の中から誕生したアルバ労組が新しい文化と運動を創造する原動力になるように努力したい。(ワーカーズ13号)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-06-14 16:48:42 / Last modified on 2016-06-14 16:48:44 Copyright: Default

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