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全教組、弾圧されるだけのことはあった

全教組ピョン・ソンホ委員長インタビュー

キム・ヨンウク記者 2016.06.09 17:38

1989年5月28日、結成と同時に1500人ほどの教師が教壇を離れる程に弾圧された全教組(全国教職員労働組合)。 全教組は2016年にも組織を守るために35人の教師が教壇から離れる境遇だ。 振り返ってみれば、いつも保守言論の全教組殺しに苦しみ、大々的な弾圧がついてまわった。 全教組は何がそんなに悪くて一番弾圧されるのだろうか。

全教組のピョン・ソンホ委員長の話を聞いてみた。 全教組には弾圧されるだけのことはあった。 2003年から2004年には10万人に迫った組合員が6万に減るほどだった。 1989年には政権の邪魔もので、2016年には資本と財閥にも邪魔ものになる活動をゴマ粒のようにしている。

だから保守言論は暇さえあれば袋叩きするように全教組を従北だの左アカだのと言い立てて、 政府は何とかして法の保護が受けられないように「労組ではない」通知で足を引っ張る考えに追われる。 保守報道機関と政権の弾圧攻勢にも屈することなく何年も戦っても、まだ組合員が6万ほども残っているというのが不思議なほどだ。 その上、全体的に新規の正規職教員の補充が減った状況で、若い組合員の加入と活発な活動は、全教組の活力源になっている。 「ワーカーズ」は5月31日午前9時、ソウル市西大門区の全教組本部事務室でピョン・ソンホ委員長と会った。

新入生の新しい学習室のようだった教師大会

「屈従の人生を振り切って、反教育の壁を壊し…、 私たちの旗、教職員労組を作り…」

5月28日、汝矣島文化広場で開かれた全教組結成27周年全国教師大会で鳴り響いた歌「正しい教育の叫び声で」だ。 この歌には27年前の全教組結成の目標がはっきり含まれている。 持てる者のイデオロギーが込められた教育を中断させるという「屈従の人生を振り切って」、 学校現場で正しい教育を実現するという「反教育の壁を壊し」、 教師も労働者だという「教職員労組を作り」。

200人ほどのの教師と予備教師が舞台で合唱し、7000余の参加者が斉唱した全教組組合歌「正しい教育の叫び声で」には響きがあった。 教師大会は屈従の人生を振り切るという悲壮な覚悟で始めたが、若い組合員の奇抜で愉快な決意が全体の雰囲気を満たした。 政府の法外労組後続措置である専従者復帰を拒否した35人の労組指導部と幹部の解雇を控えているため、悲壮なことは避けられなかった。 それでも風刺と闘争の想像力を混ぜ合わせ、意志が集まった。 舞台の上で若い組合員は保身を図ることなく、壊れても政権に最後まで歯向かう意志を見せた。 16の支部紹介は、今しがた大学に入ってきた新入生の新しい学習室(新入生OT)の自慢のような感じだった。 彼らのエネルギーは全教組が危機なのか、政権が危機なのか、分からないほどだった。

全教組の歴史をよく知らない若い世代が全教組に加入

全教組は雇用労働部が6万組合員の中に解職者9人が加入しているとして規約是正命令を行い、 「労組ではない」通知をした2〜3年ほどの間、大きな浮沈を体験した。 だが1月21日に法外労組を決めた2審判決後、むしろ組織は安定傾向に見える。 指導部は上半期中、学校現場を大々的に訪問し続けた。 現場組合員加入拡大に力を注ぎ、組織を安定化するという意図だった。 ピョン・ソンホ委員長は最近の若い組合員は、全教組の歴史をよく知らないと言う。 それでも若い教師の加入が増加しているという。 全教組は若い新規組合員と共感するために悩みが多い。

「教員数が制限されているうえに期間制の教師も急増していて、正規教員はあまり増えません。 全教組も平均年齢が高まるという診断がありました。 以前には新規組合員でも学生の時に全教組の歴史をある程度知って入ってきましたが、 最近の若い先生は全教組の歴史をよく知らないのに加入します。 それで4〜5年前から『2030委員会』というものを作り、新規教師に対する広報を強化して、 2030世代が全教組と労働組合に自然に接近するように努力しました。 最近では若い同志が地域でかなり熱心に活動しています。」

今回の教師大会全体の基調は全教組が生きていて、さらに力強く進もうということだった。 生きているという雰囲気は、教師大会に来た若い組合員が見せてくれた。 各支部の紹介ごとに若い組合員が主導して、大統領と権力を嘲弄し、誰が勝つか勝負してみようと戦いを挑む感じだった。 彼らの自信はどこから出てくるのか?

「組合員はわれわれの闘争の正当性を進んで持っているようです。 あまりに政府が行き過ぎているということでしょう。 朴槿恵政権になって、労働弾圧やセウォル号、国定教科書問題などの背景に傲慢と独善があって、 全教組に対してとても不当で非常識だ、私たちが正しいという自信があります。 そんな中で、若い世代が全教組の活動で活発な流れを作っています。 世代交代という表現もしますが、支会長や中間活動家の代議員も若い世代が数年前からずっとやっています。 こうした活動が教師大会にも反映されました。 『この政権は長くは続かない、力を集めさえすれば勝てる』という自信が投影されているようです。」

全教組は参与政府の初期には9万3000人ほどまで組合員が増えた。 1999年に合法化され、全教組に対する支持が組合員拡大につながった。 参与政府初期に政府と団体交渉をして10万に迫った。 今は6万余人。 なぜこれほど減ったのか? ピョン委員長は保守勢力の集中砲火を最大の原因にあげた。

「2003〜2004年から全教組に対する途方もない攻勢が保守言論を中心に進められました。 アカ、左アカといった言葉が出回り始めた時期がその時だったんですよ。 保守言論の集中砲火が内部を揺らがす最大の要因になりました。 また違う見方をすれば、全教組が合法化されて、教師の声が学校現場に広がるようになって、 過去のような権威的な学校の姿が少しは弱まり、 全教組を通じた権利保障の必要性が少なくなったこともあるようです。 もちろん、全教組も省察する部分があると考えます。」

全教組の初心? 正しい教育、労働基本権、政治の自由

保守言論は常に全教組が初心を失ったと攻撃する。 学生問題だけで接近せず、社会的な問題や労働問題に関与すれば集中砲撃をした。 保守言論が失ったという全教組の初心は何か? 正しい教育だ。 しかし全教組の正しい教育は、教育問題だけに限定されない。

「正しい教育には実は労働も含まれています。 授業革新だけでは正しい教育と言いませんよね。 画一的だとか注入式ではない授業方式の多様化も必要ですが、 何を教えるのかという悩みには、労働人権も入っています。 正しい教育は学校を超えて連帯することだという意識が組合員に強くあります。」

組合員が6万に減ったが、9万だった時よりも学校を超える労働者の連帯意識は大きくなった。 ピョン委員長によれば、以前は全教組が民主労総と一緒にすることへの拒否感を示す組合員がかなり多かった。 なぜ全教組が民主労総に入るのかということだった。 教師も労働者だと宣言して労組を作ったが、現場の教師との情緒的な乖離がないわけではなかった。 今は違う。

「9万組合員の時よりも今の組合員の方が民主労総と共にする必要性と義務感が高まったと考えます。 労働組合として、教師として、全教組を守らなければならないという認識が基本だと考え、 そうした点で不当な命令に屈しないという表現が出てくるようです。」

正しい教育は労働基本権の他にも政治の自由とも深い関連がある。 ピョン委員長は全教組が単に教師の社会・経済的な地位の安定だけを目的としていれば、 あえて労働組合を選択しなかっただろうと断言した。 労働組合としての基本権と政治的自由を得られれば、もっと平等で真実の社会にすることを指向できるためだ。

「労働基本権闘争とセウォル号闘争、歴史教科書闘争は分離することができません。 私たちにさらに力があれば、セウォル号の真実を明らかにしたり、 さらに歴史歪曲を力強く遮ることができ、 学生に批判的で自ら創意的かつ主体として立てるような教育ができる土台を用意してやることでしょう。」

全教組がセウォル号の真実を究明しようとすることは、単に教え子と同僚教師が死んだからではない。 社会が偽りで隠そうとすることを防ぎ、真実を正さなければならないからだ。 国定教科書を阻止する理由も、偽りを知りつつ学生に教えることはできないということが全教組の基本方向だ。

全教組は歴史教科書問題だけでなく、経済(社会)の教科書にも深い関心を持っている。 全経連の支援を受ける自由経済院出身者が与党比例代表になり、 いつ教科書戦争第2ラウンドを始めるのか分からない。 全教組は労働教育の拡張を計画している。 まずアルバイトや特性化高校の学生を対象として労働人権教育をしているが、 労働者としての権利と労使関係がどのように定着すれば(大多数が労働者になる学生に)有益かを、外国のように小中等教育過程に入れるということだ。 だから資本と権力が27年間、弾圧し続けるだけのことはある。

「よく社会の不正に対する闘争をしましたが、政権次元で見ればとても煩わしい存在だけでなく、恐ろしい存在にはならなかったようです。 権力を維持する機制が教育だが、そんな機制をきっぱりと切り、政権の侍女や道具になってはいけないということが全教組でしょう。 政府や財閥側はイデオロギー闘争で全教組の主張がとても拡散していると判断しているようです。 だから途方もない弾圧をされるしかありません。」

執拗な弾圧と従北追い込みは、全教組を社会から分離し、社会的影響力を弱めようとするところにある。 組合員の数だけを見れば内部が揺れた側面がある。 だがピョン・ソンホ委員長はもうそのようなフレームでは組織は揺れないと見た。 残った6万の組合員は、労働者としての健康性を失わなず、アカのフレームや教師=聖職者(教師は労働者ではなく、学生の犠牲になる存在)フレームにはもう食われないということだ。

執拗なイデオロギー攻勢にも食われることなく、政府がさらに執拗に推進することの中の一つが成果給だ。 学校は客観的に成果を評価できないのに成果給を払うということだ。 成果給の割合と差別額はますます高まっている。

「なぜ学校が成果を付けられますか? 教員の評価と重なると思うが、結局は教員を統制するということで、教員の統制は自分のイデオロギーを注入するということです。 それを受けることができません。 単に教師の賃金体系の変化ではなく、賃金体系を変えて教師を統制しようとしているのです。」

全教組は2000年から成果給を阻止しようとし、自ら均等分配し始めた。 政府は均等分配をすれば懲戒するというが、均等分配は反応がいい。 学校内で全教組の組合員だけで分配せず、非組合員の方が多く参加することもある。 ある学校は地域単位に拡張して均等分配をして、 ある学校は期間制教師にまで分配したりもする。

法外労組になっても死なない全教組

朴槿恵政権は全教組を殺すことを決意した。 組合員6万人のうち、たった9人の解雇者がいるといって「教員労組法」上の労組の資格を奪った。 法外労組になった。 使用者の教育庁に団体協約締結を強制できないという意味だ。 労組事務室も明け渡さなければならず、専従者も全員学校に復帰しなければならない。

若干、ぶしつけな質問をしてみた。 法外労組の後続措置で未復帰専従者35人に対する職権免職が目前に来ているのに、 既存の9人の解職者を守ろうとしたが犠牲者が増えるのは荷が重すぎないかと尋ねた。 9人の了解を得て組合員資格を取り消す代わりに、別の次元の補償をする方式を選択しない理由を尋ねた。

「全教組は必然的に闘争するほかはなく、また誰かが解職されるだろうが、 先に立った人は全て組合から排除しなければならないということであり、受け入れることができません。 9人の生計を維持するとしても、また解職者が出てくるでしょう。 それを受け入れた瞬間、労組としての根幹が壊され、瓦解するほかはありません。 これを組合員が総投票で確認しました。 不当な命令で全教組活動の完全な制約として受け入れられないというのが組合員同志の意見だ。」

「そうですね、そのとおりですよ。 全教組が9人を投げ出すことはできません。 しかしまた35人の解職者が出てきたら、その人たちの生計は?」こうした問いがさらに出てくるでしょうが、 全教組はすでに労組専従者の賃金を使用者から受けとらなかった。 純粋に組合費だけで充当している。 一般労組法は使用者が専従者の賃金を払うことにしたが、 当初の「教員労組法」は政府が専従者の給与を払えないようにした。 労組弾圧の手段として作った条項が、むしろ労組を粘らせる基礎になったわけだ。

「私たちは今でも専従者の給与を組合費から出しています。 事実、組合費の相当部分が人件費で、とても硬直性が高いです。 こうしたことは難しいが、すでにみんな組合員と確認しながらしてきたことで、 現在の規模水準で財政安定化を試みています。 財政安定のために2〜3年間、内部討論で組合費を払う方式をCMS自動振り替えに転換しました。 内部的に大きな問題はありません。」

ピョン・ソンホ委員長は、また全教組が法内労組になれば結局、何を教えることがきちんと教えることなのかについて悩まなければならないといった。 労働、社会、人権、生態、環境など、多様なことをきちんと教えるために必要なことは、 労働基本権と政治の自由だ。

資本と権力に統制されないことを夢見る全教組が弾圧される理由はとても多い。 ところがそれほど殺したい全教組は、復活するフェニックスのように蘇り、朴槿恵(パク・クネ)政権に勝っていた。 保守勢力と財閥、政府にとって、どれほど嫌な存在だろうか。 この政府が全教組の力を弱める方法はあまり見えない。(ワーカーズ13号)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-06-14 16:43:41 / Last modified on 2016-06-14 16:43:42 Copyright: Default

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