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消えないでよ

進歩生活白書12号 - 造船海洋非正規職5万人が解雇の危機

オ・ジノ 非正規職ない世の中作りネットワーク執行委員 2016.06.07 17:21

▲写真/ホン・ジノン

10日ぶりに葬儀を行った労働者がいる。 5月11日に自ら命を絶ったサムスン重工業社内下請労働者のチョン氏。 38の若い労働者は三人の子供の父であり、25歳で最年少の班長になったA級技術者だった。 平日も週末も関係なく、毎日のように仕事に出て行って班員を取りまとめる誠実な労働者だった。 この労働者の罪は3泊4日の休暇を行ってきたことだった。 「国民の士気を振興し、観光と内需活性化に大きく寄与する契機」にするために政府が直接指定した臨時公休日にキャンプを行ってきたチョン氏は、 5月9日、不当な人事措置を受け、侮蔑感と背信、喪失感と不安に勝てず自ら命を絶った。 家族はサムスン重工業巨済造船所の前で喪服を着て座り込み、会社の謝罪と補償を要求して、10日後に葬儀を行うことができた。

人が消えて行く

韓国造船海洋プラント協会の「2015造船資料集」によれば、2014年の造船および海洋関連人員は20万4636人に達したが、 2015年には19万5000人と約1万人ほど減ったという。 物量チームを入れれば1万5000人の社内下請労働者が造船所から消えた。 2016年には5万人の非正規職が解雇される展望だ。 今年、大宇造船では廃業した業者だけで16社、現代重工では追い出された社内下請労働者が7742人だ。 年末に海洋プラントの受注が終われば3万人以上が工場から追い出されるという。

巨済、蔚山は非正規職が密集する地域だ。 2014年基準で造船ビッグ3(現代重工、大宇造船、サムスン重工業)を入れて10社ほどの造船所非正規職労働者は13万6000余人にのぼる。 非正規職が造船所から追い出され、地域の雰囲気も変わった。 巨済と蔚山造船所の社内下請労働者密集地域はアパートの売り物があふれて、 多所帯住宅は伝貰も取れない空室があふれている。 全国的に家の価格が3%ずつ上がっている時、二つの地域は1%以上低下した。

危機はなぜ非正規職に向かったのか

2000年から、造船業は好況だった。 全世界の造船注文量の35〜40%程度を韓国が担当し、韓国の輸出における造船業の割合は11.7%に達したこともある。 現代重工の大株主は株式配当金だけで2795億ウォンを取り、言論は歴代級の「好況」と呼んだ。 しかし2008年の金融危機から「危機」が始まった。 2009年以後は受注旱魃が続き、中小の造船業者は門を閉めたが、 それでも技術力と資本力があるビッグ3だけが海洋プラント部門に進出してなんとか活路を確保した。 1バレル100ドル以上の原油高が続き、ビッグ3は採算性が合う深海石油開発に飛び込んだのだ。 「物量チーム」と呼ばれる日当職労働者たちが石油ボーリング作業に投入された。 2011年までに1万5000人程度だった海洋プラント非正規職は、2014年には5万2000人程度へと急膨張し、一部の工程の直営大社内下請割合は1:20に達した。

急造された「物量チーム」を動員した海洋プラント進出は、工事納期の遅延や品質の低下を呼んだ。 会社が直接「人員を大規模に投入したが、未熟練作業者の低い生産性も原価上昇をあおった(大宇造船海洋チョン・ソンニプ社長)」と告白するほどだった。 この渦中で国際原油価格が暴落してプラント市場は萎縮した。 造船3社が2015年に上げた赤字8兆ウォンのうち7兆ウォンが海洋プラントから出た赤字だ。 しばらく遅らせていた危機がまたやってくると、保守言論は正規職労働者たちを非難した。 「最悪の『受注絶壁』の渦中に…29日上京闘争する現代重工労組」(韓国経済、2016.4.29.)、 「労組、赤字にも『賃上げを』…会社がつぶれる直前まで『闘争』」(東亜日報、2016.5.6.)。 扇情的な題名と未確認の単語で満たされた記事は、正規職労組に銃口を向けた。

同じ危機、異なる危機

5万人。 双竜車整理解雇の二十倍にのぼる数がクビにされているのに、非正規職当事者の声は聞こえない。 現代重工社内下請支会のハ・チャンミン支会長は 「解雇は業者の廃業になってあらわれることなので、実際には構造調整として感じられない側面が強い」と話す。 正規職労働者整理解雇のようにリストを通知して希望退職を実施する方式でもなく、 日常的に廃業と解雇されてきたため、声を上げることもなく工場を離れるというのだ。 構造調整に対して政府も動き、大宇、サムスンまで大きく強調される雰囲気に当惑する人々もいるという。 彼らの銃口が社内下請労働者に向けられているが、当事者は目の前に近づいた銃口を見ることもできないまま消えていく。

造船所の正規職労組は2015年に「造船業種連帯会議(連帯会議)」を設けた。 連帯会議は5月19日に記者会見をして「造船業構造調整は労働改悪強行の試み」とし、 △一方的な構造調整を即時中止、不実経営の責任者処罰、 △政府政策転換、 △労働者総雇用保障および社会安全網構築、 △中型造船所を救う政策の実施、 △政府-金属労組-造船労連は即座に業種別協議体を構成といった要求を発表した。 しかし連帯会議が発表した労働者総雇用保障は、 ▲造船所常用職労働者の総雇用保障、 ▲造船所日雇労働者のための教育機関設立、 ▲教育施設労働者の最低賃金支払いなどが含まれている。 常用職ではない「物量チーム」をどのようにして守るのかは要求に含まれていない。 非正規職労働者たちは、この連帯会議に参加することも、彼らの声をあげることもできなかった。

双竜自動車労働者たちの闘争が社会的共感を得られたのは、苦しむ人々と共に戦ったためだ。 2015年の労使合意の過程でも、双竜自動車の労働者たちは非正規職を放棄しなかった。 非正規職の正規職転換を交渉の最優先課題にして、闘争の過程で非正規職当事者の声を聞くために努力した。 「一緒に暮らそう」は、会社と政府だけに対するメッセージではなく、 私たちすべてに対する呼び掛けになった理由だ。 しかし今の造船所構造調整の実際の責任者は一歩下がり、正規職にすべての矛先を転じ、 正規職は政府を恨みながら企業と一緒に暮らそうと訴える。 危機のまん中にいる非正規職だけが一人、二人と消えて行く。 私たちにとっては、この事態が「危機」なのかどうかを主張するよりも、「造船所社内下請労働者たちの声」を集めることが重要なのはそうした理由だからだ。

付記
オ・ジノ:非正規職ない世の中作りネットワーク執行委員. 労働と社会運動の接点が増えることを希望しながら、活動中だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-06-14 16:32:52 / Last modified on 2016-06-14 16:32:56 Copyright: Default

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