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LNJ Logo 韓国:[寄稿]半月始華工団のコロナ19雇用調査
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仕事も減り賃金も減り、不安だけが増えた

[寄稿(1)]半月始華工団コロナ19による雇用影響実態調査結果

イ・ミスク(半月始華工団労働者権利探しの会月談常任活動家) 2020.08.28 15:49

コロナ19事態がますます悪化している。 日常の生活のほとんどが不安の中に閉じ込められて、 対策なく雇用を失った労働者も増加している。 生活の疲れは非正規職などの脆弱階層にさらに傾いた。 職場パワハラ119が4月に調べた「コロナ19と職場生活変化」の調査結果を見ると、 コロナ19で所得が減ったという非正規職が66%に達し、 150万ウォン未満の労働者70%が所得が減った。 勧告辞職や解雇の危険も非正規職が正規職より二倍高かった。 低賃金労働者ほど、非正規職ほど、コロナ19でさらに難しくなった。

[出処:半月始華工団労働者権利探しの会・月談]

工団の労働者はどうか。 半月工団と始華工団は伝統的に中小零細事業場が密集する国家産業団地だ。 小規模な事業場で相対的に低い賃金と不安な雇用条件に耐えて働く労働者たちがそこにいる。 韓国産業団地公団が出した6月の産業動向によれば、 半月工団の稼動率は64.1%に過ぎず、始華工団も67.4%と、とても低い状況だ。 稼動率が低いということは工団を基盤として暮らす労働者の労働の機会が相対的に下がったということだ。 つまり賃金が低下し、雇用を失った可能性が高い。 半月・始華工団の全体雇用現況も24万9693人で、 コロナ19が本格化していなかった1月と比較して2071人の雇用が減った。

このように雇用が減り、稼動率は床を打っているが、 まさにそこで働く労働者の声はあまり聞こえない。 半月始華工団労働者権利探しの会・月談は、 公団で働く労働者の話を聞くために6月17日から7月15日まで 「コロナ19による雇用影響アンケート調査」を行った。 コロナ19以後に職場ではどのような変化があったのか、 労働条件は後退しなかったか、被害経験があるのか、 政府/地方自治体の緊急支援を受けたのか、 不安感を感じるのかなどが調査質問項目だった。 工団のあちこちを回って労働者115人と会い、 実際に職場で体験する多様な事例を聞くことができた。

仕事も減って、賃金も減った

最初の質問はコロナ19以後に職場にどんな変化があったかについての質問だった。 回答者の53.04%が「仕事が減った」と答えた。 「休業した」と「減員した」の割合は各々5.22%と4.35%で高くはなかったが、 これは休業と減員などで休んでいる労働者ではなく、 現在工団で働いている労働者を対象に調査をしたためだ。 それでも上の三つの回答をすべて合わせた割合が62.61%で、 決して少なくない労働者たちがコロナ19による変化を味わっていた。

特に仕事が減ったり、休業と減員をしたと答えた回答者だけを別に分類して 「賃金の変化」を調べると、52.2%が賃金が減ったと答えた。 仕事が減っただけに労働者たちの経済的状況も悪化したのだ。 コロナ19危機を口実とする賃金低下は特別な抵抗なく行われ、 賃金保全は要求もせず当分は雇用を失わないことに安心しなければならなかった。

雇用不安と経済的困難が同時に、まともな政府支援はなし

コロナ19によって職場で経験した被害についての質問には、 全体回答者の23.49%が年次休暇使用強要、無給休職強要、 勧告辞職または解雇通知や威嚇、賃金カットと返却などを経験したと答えた。 前の質問項目で「賃金が減った」と答えた回答者だけを分類して 被害の経験を確認すると、これよりも高い58.33%に達した。 結局、雇用不安と経済的困難は同時に進行していた。

しかし彼らは政府や地方自治体の支援を経験したことは殆どないと調査された。 現在、政府と地方自治体が実施しているコロナ19関連労働部門緊急支援政策は、 雇用維持支援金と子供のケアを事由とする勤労時間短縮による支援金、 自宅隔離または入院した時の有給休暇費、 1か月の有給休業後30日以上の無給休職者に支援される支援金、 フリーランサーと特殊雇用労働者支援金、 家族ケア休暇の費用などがある。 調査ではこれを支援を受け取ったと答えた回答者は、 政府雇用維持支援金の4.35%と地方自治体が支援する無給休職支援金の1.74%に過ぎなかった。 特に調査の参加者の中にはこのような支援政策があるという事実をまったく知らずにいたり、 案内を受けたこともないと答えた。

雇用がなくなるかと心配、小さい事業場により強く感じられる不安

雇用に対する不安感を尋ねる質問には41.74%が「非常に深刻」や「やや深刻」と答えた。 これは現在働いているが、現在の状況が維持されないかもしれないという不安感が全般的に敷かれているのだ。 注意すべき点は、不安感を感じると答えた回答者のほとんどは賃金の減少より 「仕事の減少と休・廃業など雇用自体がなくなるかもしれないという不安感(54.79%)」 をその理由として答えた。 これは零細業者が多い工団の現実とからむ。 失業と雇用を繰り返し、不安定な労働を続ける工団の労働者にとって雇用の安定は何よりも重要だ。 それで時には賃金の引き上げや労働条件の改善よりも 現在の雇用の安定が優先されたりもする。 こうした不安感は50人未満の小さな会社に通う労働者にさらに集中している。 全体回答者のうち50人未満の事業場で働く回答者の45.22%が仕事が減ったと答え、 賃金も24.35%が減ったと答えた。 固定した低賃金と労働条件で働く工団の労働者に、災害の困難まで幾重にも重なっている。

直接的で実質的な支援が必要だ

コロナ19は工団の労働者に直接的な困難をもたらした。 それに比べて彼らを保護して経済的困難を支援する対策は非常に粗末だ。 政府は途方もない規模の金融緩和をして緊急支援をしたが、 175兆ウォンにのぼる企業安定支援と比べて、 雇用安定と民生支援にかけた金は47兆ウォンに終わった。 企業に対する支援とそれによるトリクルダウン効果が 多段階下請と派遣構造の末端にある工団の労働者にまで届くと期待するのは安易だというよりも、 労働者たちの生存権の問題を無視しているとしかいえない。

すべての政府政策がそうであるように、 現在のコロナ19支援体系で、労働者が接することができる情報は非常に制約的だ。 何の支援があるのかを詳しく知らせることもないばかりか、 自分の事業場がどんな支援を受けているのかも分からない。 実際、一部の事業場では雇用維持支援金を受けとっても労働者には年次休暇を使わせたり、 無給休職をさせた事例もある。 労働者に直接支援しても接近度が低く、実際の支援につながるまでには困難もまた多い。 無給休職支援金の場合、労働者に直接支援をするとはいうが、 使用者が無給休業計画書などの休業を証明する資料を雇用労働部に申請をしなければ受け取れない。

「緊急支援」という名前で政策が展開されているが、 果たして労働者に緊急な支援がなされているのかを確かめてみなければならない。 情報は労働者にも共有されるべきで、支援の接近性は強化されなければならない。 企業を通じてトリクルダウン効果を期待させる方式ではなく、 実質的で直接的な支援の方案を講じなければならない。 今の危機を克服しようとするのなら、 危機の最前線に追いやられた労働者をまず保護しなければならない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


労働者の「権利」を蚕食するのは感染病ではなく政府の政策

[寄稿(2)]半月始華工団コロナ19による雇用影響実態調査を終えて

オム・ジンニョン(全国不安定労働撤廃連帯常任執行委員) 2020.08.28 15:56

危機の偏差

「難しいですね。」
さらに足すことも引くこともなく、他の人たちが難しいほど難しく、 うちの会社も違わず、私も違わないという話が一番多かった。

むしろ仕事が増えたと話す人もいたし、変化がないと答える人もいる。 まだコロナ19による影響をあまり受けていない業種だ。

反対に、すでにみんな切られて人が変わったと話す人もいる。 調査人数が多くはないが、自分の雇用形態が契約職だと言う人が 以前の月談の調査より多いことが眼に触れる。

[出処:半月始華工団労働者権利探しの会・月談]

「半月始華工団労働者権利の会・月談」の実態調査の結果、 コロナ19による危機はすべてに同じではなかった。 同じ工団としても業種によってその危機は時期の差があり、 異なる強度で各々に伝わってきていた。 危機の偏差ほどに、その具体的な表現は各々違わざるをえない。

しかしその危機が当面の解雇と共に、具体的な形態であらわれるのではなくても、 繰り返される休業と賃金削減などで少しずつ引き締めてくるのは明らかだった。 大部分の工団の事業場は、多かれ少なかれコロナ19による影響から自由ではなかった。

実際に半月始華工団の稼動率は今年の4月以後落ち続けていて、 毎月多ければ何百人かの労働者の首が切られている。 こうした解雇は小さな事業場が密集する工団の特性上、分散して起きるので、 解雇規模の大きさを認識できないようにする。 その上、労働組合も殆どない工団地帯。 われわれは実態調査でも、すでに雇用を失った労働者、 最大の被害に露出した人たちとは会えなかった。

▲2020年1〜6月、半月始華工団稼動率および雇用現況

危機が日常の工団

事実、工団の雇用不安は昨日今日のことではない。 大資本の下請、部品メーカー、零細事業場が密集している所。 別の見方をすれば、雇用不安は工団の労働者にとっては日常だった。 上からの危機は下へと転嫁され、その防御膜になってきたところが工団だ。 物量によっていつも仕事が増減する工団の条件は、 労働者たちの雇用不安につながり、 非正規職の雇用形態による雇用不安だけでなく、 いつ廃業してもおかしくない小さな事業場の危機が今なお残る。

これまでにも半月始華工団の稼動率は、製造業の萎縮と共に持続的に減少傾向にあった。 政府はリショアリングを語るが、 低い人件費で利益を維持することになじんだ企業は簡単には戻ってこない。 また一方では、製造業の危機を打開するためにスマート工団化が語られるが、 その中には4次産業革命という虚像と大資本の掌握力拡大の他に、 小さな事業場を生かして労働者の日常を守る政策はない。

▲半月始華工団稼動率(2008.6〜2012.6)

その上、労働組合の組織率がきわめて低い現実で、 労働者の雇用は企業の状況によって絶えず揺れてきた。 「難しいですね」という尋常な反応が含んでいるのは、 こうした日常的な雇用不安と相対している。 今は雇用が維持されているが、いつなくなるかもしれない小さな企業、 コロナ19による労働者の不安の裏には自分が働く会社そのものが なくなるかも知れないという工団地帯の根本的な問題があった。

そうした中で、コロナ19による危機対応としての政府の政策さえ、 労働者には向かっていない。 雇用維持支援金を活用して雇用を維持できると言うが、 これは労働者の選択にならない。 申請するかどうかは企業の選択だ。 企業が支援金を受け取っても受け取らなくても、 個々の労働者は有給休業ではなく年次休暇を消耗し、 既存の賃金水準を維持できない状況、 その上無給休業に追いやられる現実は、それと別個に発生する。 労働組合がない状況で支援金申請の有無を労働者が知らず、 ただ企業への注意処分に依存することになるのはそうした理由だ。

企業中心の政策、消える権利

危機を口実に労働者の権利は消え続けている。 政府は防疫に集中しつつ、経済が崩壊しないように努力し、 感染病の危機が社会全般の危機に広がらないことに力を注ぐ。 しかしその努力の中に、労働者の生活の危機を防御するという認識を見つけるのは難しい。 企業の危機はまさに社会の危機と受け止めるのに、 労働者の日常が威嚇される生活の危機は考慮されない。

労働組合がない労働者の賃金に一番影響するのは法定最低賃金だ。 2021年の最低賃金決定でまともな最低賃金引き上げはなく、 史上最低の引上げ率を記録した。 高い最低賃金によって小さな事業場は苦しいという理由は、 多段階下請構造という根本的な問題に手を付けないまま、 簡単に労働者の賃上げ分を最大限狭めることで接近した。 最低賃金水準に結びつく労働者たちの賃金がそうであるように、 コロナ19の状況で当然のように萎縮した。

法定労働時間を押し倒す政策も続いている。 週52時間限度の労働時間制を回避する方案の一つとして主張された 「特別延長勤労認可制度」は、 今年の1月に業務量が急増する場合などまでその理由が拡大され、 最近では1年90日の限度で使用できたが下半期にはまた90日活用できるようにした。 その上、雇用を守っている労働者に限界を越える長時間労働が近づき、 それをコロナ19状況で雇用を維持していることに対する慰めにしなければならない状況だ。

その上、50人未満の小さな事業場に対する週52時間限度労働時間制は2021年7月1日から施行が予定されていたが、 引続き適用の延期が試みられている。 最低賃金引き上げによる中小企業の経営上の困難、 コロナ19による困難などは労働者の権利を留保する言い訳になり、 そうして企業の危機は上から下へ、 工団地帯に密集する小さな事業場の労働者に転嫁される。

以前と違わないように

労働者は政府に向かって今の政策が企業を生かすのではなく、 私たちの日常へ向かうことを主張する権利がある。 企業の支援ではなく労働者の人生を支える直接支援を要求する権利があり、 企業に支援があれば、それがどう使われるのか、 労働者にきちんと伝えられているのかを確認しなければならない。 さらに企業が実際にどれほど難しいのかを正確に知ることができる情報を持つ権利があり、 その危機を克服するために自ら方向を提示する権利がある。

何よりもそれらすべての権利の実現のために団結して、発言して、戦う権利がある。 「権利」と命名されなければならないものがなくなり、 その権利の喪失を正当化する感染病の危機。 労働者民衆の人生に近づく本当の危機は、その後にやってくる。 労働者の人生が崩壊した後には企業も社会も、本来の形で再生するのは難しい。

実態調査をした時、 コロナ19以後の雇用がどう変化しているのか、 雇用不安はどうかに対する最初の反応は、 「以前と全く同じです」だった。 以前も今も、同じように働いているということだ。 だが事実はそれではならない。 この新しい感染病に対処するためにきちんとした防疫措置をすれば、 明らかに働く方式に、労働時間の偏在に、作業場環境に変化がなければならない。 全く同じだという言葉でまるで世の中と断絶したように見なされる工団の一面をのぞいたような感じだ。 実態調査の後、「半月始華工団労働者権利探し・月談」が向かう地点は 「月談」の名前のように、その塀を越え、権利の姿をきちんと示すことにあるのだろう。

半月始華工団労働者権利探しの会・月談ブログ

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


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