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年を越え、また生き残るために

[ルポ]日進ダイヤモンド ストライキ半年…最低賃金のドロ沼から抜け出す死闘

キム・ハンジュ記者 2020.01.07 12:39

2015年から今まで日進ダイヤモンド労働者の賃金は上がらなかった。 平均勤続13年になっても、彼らは最低賃金のドロ沼から抜け出せない。 家族はますます増えていくが、ふところ事情はなかなか良くなる兆しが見えなかった。 働いた代価を受けとれないことも暗鬱が、会社のいじめは本当に耐え難かった。 工場長が生産職を集めて悪口をあびせる月曜の朝礼はなんとしても避けたかった。 朝礼の日の工場長の気持ちにより、労働者たちは地獄を行き来した。 作業に入るときはいつも携帯電話を返却した。 作業中に携帯電話を使っているのがわかった日には殺されると思った。 体調が悪くて有給を使うといえば、管理者が目の前で有給申込書を破った。 それで日進ダイヤモンドの労働者たちは、何年もいたずらっぽく「労組を作ろう」と話した。 そして2018年12月29日、いたずらのようだった言葉が現実になった。 金属労組日進ダイヤモンド支会を結成してから1年、 彼らはこの時間の半分を全面ストライキで過ごし、会社と戦っている。

[出処:キム・ハンジュ記者]

麻浦の青いビルと青いテント

12月17日、ソウル市麻浦区の日進グループ本社社屋には、 クリスマスをむかえ青い照明がつけられた。 その前の路上には青いテント3棟がある。 テントには約20人の若い労働者たちがその場を守っている。 日進ダイヤモンド労働者たちだ。 平均勤続年数が10年を越えるが、若ければ20代、年齢が高くても40代の労働者たちがほとんどだ。 十数年前に会社は20代の労働者を採用した。 先に入社した先輩が地域の後輩に雇用を紹介し、 そうして若い労働者たちが忠北道陰城の日進ダイヤモンド工場を埋めた。 兄弟は今では互いに同志と呼び、ストライキ生活を続けている。 テントの中は煙たいガスストーブの臭いでいっぱいだった。 ガスストーブで12月の寒波に耐えるのは難しかった。 テントの間で愚痴が流れる。 労組のチョン・ギョング代議員は、寒さよりも麻浦大橋を走る車の音の方が苦しいと話す。 チョン代議員は1年前に労組設立を主導したメンバーの一人だ。 まだ皆若いので、ここのテント生活も、ストライキ闘争も問題はないという。 彼は今では自分よりも「剛性」になった組合員たちを見て、時々驚く。 労組を作って1週間で生産職280人のうち250人が加入したことから不思議に思うだけだった。

「ストライキが長くなっても退社者を除く離脱者はいません。 私は会社が労働者に対してしてきたことを考えれば、 絶対に簡単に終わらない戦いだと思いました。 組合員たちも同じ考えだったようです。 会社がどんな対応をしても、組合員たちは鼻にも賭けません。 今は組合員たちが労組に対し、もっと水位高い闘争ができないかと話します。 むしろ私たちが組合員をなだめる立場だと言うべきでしょうか。 組合員たちがこれまで我慢してきたことを考えれば当然です。 特に労組を作る前に会社が200人もの組合員を配置転換しました。 短いときは数日間隔の配置転換をして労働者を困らせました。 組合員たちが、なぜ死ぬほど戦うのか、 とても長いストーリーです。」 (日進ダイヤモンドチョン・ギョング代議員)

会社のいじめの話が出ると、他の組合員たちも一言ずつ言葉を補う。 中間管理者はテレビを見ながら、労働者には携帯電話を返却するようにしたり、 若い新入労働者が10分遅刻すれば、管理者たちは一時間暴言を続けた。 HM生産側で作業して腰に負傷し、救急車を呼ぶと会社が送りかえしたこともあった。 何よりも労組ができる前、労使協議会で労働者を欺瞞した歳月が特にくやしかった。

「私は2018年に労使協議会労働者委員でした。 労働者たちが投票で私を選びました。 その年の1月、初めての労使協議会で賃上げ案を準備していた時でした。 ビームプロジェクターまで準備しながらです。 すると経営支援室長という人が私を見るとすぐ、ビーム・プロジェクターを消せと言いました。 賃金交渉は終結したんですよ。 われわれは交渉したことがないと抗議すると、 御用だった前年度の労働者委員がサインしたといいました。 それだけではありません。 私が何か言えば『だめだ』、『私の話を聞け』、『君たちが話をよく聞けば考えてみる』という調子でした。 私達を遠慮なく冷遇しました。 私は耐えられず、一分期で労使協議会を辞任しました。」 (ペ・ウォンギル日進ダイヤモンド支会政策部長)

労組を作った後も使用者側の労組嫌悪は続いた。 労組は6月26日に全面ストに突入した。 会社は8月12日に職場閉鎖で対抗した。 労組は争議活動で会社を糾弾する横断幕を工場の中にかけ始めた。 ある日、横断幕を見たある常務が何をしているのかと労働者たちに近づいてきました。 常務は管理者を動員して、支会長を取り囲んだ。 支会長は彼に労働者代表の自分を職責で呼んでくれと要求した。 だが常務は「君は私の支会長ではない。ただ技術代理だ。 まだ団体協約も締結していないので、お前を支会長と呼ぶつもりはない」と話した。 腹が立った労働者たちは事務室に集まって、 自分たちの代表者を無視した処置に抗議した。 使用者側はこの時に事務室に入ってきた労働者約50人に警告状を飛ばした。

警告措置だけではない。 労組は使用者側に誠実交渉を要求して9月4日から11月6日まで、 麻浦本社のロビーで座り込みをした。 使用者側は11月5日、1億8957万ウォンの損害賠償請求訴訟を提起した。 今後の占拠行為を防ぐため、保安出入口を設置するために1353万ウォン、 警備人員の補充に1億1260万ウォン、 ロビー座り込みで発生した清掃費用605万ウォンを根拠にした。 また新世界フード、ハームシャウト、ピンハオなど、 日進ビルに入居する関係者146人も労組の座り込みで損害が発生したとし、 84万ウォンずつ賠償しろという請求訴訟を11月8日に提起した。

[出処:キム・ハンジュ記者]

陰城工場職場閉鎖、現場にかけられた5億

職場閉鎖中だが、日進ダイヤモンドの労働者たちは、 忠北道の陰城工場福祉館を占拠してここで生活している。 麻浦テント座込場に常駐する十数人を除くすべての組合員がここにいた。 彼らは福祉館1階の各部屋、2階の大講堂でそれぞれのテントと寝袋をひろげた。

ここで会ったキム・ミヨン氏は、日進ダイヤモンドで少ない女性労働者だ。 日進の女性労働者は15人ほど。 彼女らは出産後30代〜40代で入社し、ここでながい歳月を過ごしたベテラン労働者だ。 中でもキム・ミヨン氏は日進だけで26年働いた大先輩だ。 機械の音を聞くだけで、何が問題なのかが分かる熟練工だ。 10kgを越える製品を一日に何回も運び、仕事をした。 組合員は彼女は尊敬を受ける先輩で、ストライキ闘争のしんばり棒だと誰もが話す。 キム氏は、若い労働者たちは後輩か弟のようで、 自分の役割がそのようだと話しながらも、 これまで女性として味わった差別から抜け出したいという。

「前から女と男の基本給が違いました。 軍勤務修了、大学卒業有無を口実に、男が女より高い基本給を受けました。 考課評価も男性中心でした。 評価でAを受ければ時給100ウォン、Bは50ウォン、Cは10ウォンが上がったのですが、 女は常に良い考課を受けられませんでした。 20年目の男性月給が私よりさらに多いほどです。 一度は私が現場で長く働き、うまくやっていると、助長に昇進したことがありました。 ところが7年前に一般社員に降格されました。 女だという理由ではないでしょうか? そればかりか、いつも会社が苦しいと話す時は 「おばさんたちを先に切らなければならない」、 「夫がいるのに通い続ける必要があるのか」と言われたりもしました。 そのたびに私は正しいことを言いましたが、 今は会社に完全ににらまれる人になりました。」 (キム・ミヨン日進ダイヤモンド支会組合員)

労組によれば女性労働者5人が筋骨格系手術をした。 工業用ダイヤモンドを作る会社で、小さな製品でも重さはかなりだ。 タングステン強化で作った材料だけでも同じ大きさの鋼鉄より重い。 小さいが何度も運んでいると、肩と手首にかなり無理がくる。 また空気中の微小粒子状物質と金属物質が満ちた工場で働くのも苦痛だ。 良いマスク、局所排気装置でもあれば良いが、会社は無視し続けた。 だが職場閉鎖が始まり、事務職労働者が代替生産に投入されると、 工場の環境が申し分なく良くなった。 キム氏は同じ労働者なのに、生産職と事務職待遇がこのように違うのかと憤激を放った。

現在、事務職労働者約90人が代替生産に投入されているが、 彼らは1級マスクを使うという。 これまで労働者たちは2級マスクを使って働いてきた。 また労働者が長い間要求してきた工場内部の冷暖房装置も、 代替生産以後に何台か設置された。 性能が良い局所排気装置も入れ、工場内部の汚れた空気も少しは快適になった。 ストライキをしている労働者たちは、 差別と搾取を日常化した日進に「悪質資本」というレッテルを付けた。

同日午後4時、ストライキ労働者たちは工場の中を回ってシュプレヒコールをあげる 「現場巡回」をした。 労働者200人は、各工場の中に入って「不法代替生産中断しろ」、 「誠実交渉要求する」というシュプレヒコールをあげた。 代替人員に投入された人々は、面倒そうに何の返事もしなかった。 ヘッドホンをつけた労働者もたまにいた。 彼らは会社の指針でネックバンドをつけている。 ネックバンドは首に巻くカメラ装置だ。 労組の争議行為を撮影し、不法性を押し付ける意図だ。 すでに会社は9月の労組の争議行為を理由として、 5億ウォンもの損害賠償請求訴訟を出した。 何よりも代替生産による品質低下が問題だ。 現在、ストライキ人員は200人を越える。 代替要員の規模はその半分程度だ。 したがって、工場の稼動率は顕著に下がっている状況だ。 実際、工場の内部には空席が多かった。 またキム・デグォン労組事務長は、代替要員は熟練労働者ではないため、 ひとりがしていた仕事を2〜3人でしていると伝えた。 キム事務長はストライキの長期化で使用者側が大顧客の納品だけを処理しており、 残りの納品は早々と放棄している状態だと説明した。

[出処:キム・ハンジュ記者]

オーナーが一人占め、賃金凍結で積みあげた日進の金字塔

日進ダイヤモンドがストライキも気にしない理由は、 すでに金庫に溜め込まれた金のためであろうか。 日進ダイヤモンドの利益余剰金は2016年に777億ウォン、 2017年に865億ウォン、2018年は907億ウォンだ。 営業利益もまた2016年に47億ウォン、2017年に107億ウォン、 2018年には130億ウォンと高い利益率を見せた。 労働者たちが怒ったのは、 日進ダイヤモンドをはじめとする日進グループのすべての利益が総帥一家に行く点だった。 日進グループは日進ダイヤモンド、日進ディスプレー、日進マテリアルズ、 日進電気、日進複合素材、日進ユニスコ、日進パートナースなどの会社を所有している。 これらの会社をまとめる持ち株会社は日進ホールディングスだ。 日進ホールディングスの最大株主は29.1%の株式を持つホ・ジョンソク代表理事だ。 ホ・ジョンソク代表は日進グループ許鎭奎(ホ・ジンギュ)会長の長男だ。 日進ホールディングスが日進ダイヤモンドの株式の50%を、 日進電気の株式の57%を保有している。 日進グループの他の上場企業である日進マテリアルズも 次男のホ・ジェミョンが53%の株式を持っている。

日進グループの「オーナー一人占め」構造は、以前から論議の的であった。 2019年の日進グループ5つの上場企業の支配構造等級はすべて下位圏のB等級だ。 日進グループの仕事集めも深刻な状況だ。 日進パートナースの全体売り上げに対する日進電気インサイダー取り引きの割合を見ると、 2013年に78.6%、2014年に74.3%、2015年に65%、2016年に78.5%、2017年には43.6%だった。 現行法によれば、資産総額5兆ウォン以上の大企業は、 インサイダー取り引きの金額が売り上げの12%を越えると規制の対象になる。 日進は中堅企業で法の網をくぐり抜けた。 マスコミは文在寅(ムン・ジェイン)政府が就任した後、 日進グループが「積弊清算」の試験台に上がると展望した。 文在寅政府の就任から3年目の今、 言論が展望した日進グループの積弊清算はなされなかった。 むしろ会社は最低賃金引き上げを相殺するために賃金を削減した。 日進ダイヤモンドは2015年の賞与金600%のうち200%を能率向上手当てに変更し、 2016年には能率向上手当てを基本給に入れた。 2018年にも残った賞与金400%のうち200%を基本給に回した。 実質賃金を上げず、「賞与金溶かし」で最低賃金の値上げ分を充当する小細工であった。

[出処:キム・ハンジュ記者]

また開かれた交渉、二度と負けられない戦い

日進ダイヤモンドの労使交渉は遅い。 10月31日に交渉が中断され、12月11日にまた実務交渉が開かれた。 交渉が中断した理由は、懲戒と配置転換の問題で対立が高まったためだ。 労組によれば現在、使用者側が労組組合員を懲戒すると明らかにしたことだけで約20件だ。 そのため労組は現在100%使用者側で構成された懲戒委員会を労使同数(委員会代表は使用者側)にすることを主張している。 また、労働者の同意なく、いじめを目的に行なわれる配置転換を中断しろと要求している。 だが使用者側は強制的に配置する意思はないと話しながら、 会議録には残さないようにしようとして労働者の反発をかった。 合わせて使用者側はまず団体協約を議論した後、賃金を交渉しようという立場だ。 労組は5年間賃金が凍結されているので、賃金補償問題を急いで扱うことを要求している。 労組が提示した賃上げ案は基本給12万3千ウォン値上げだ。 これは金属労組の基本賃金要求だ。 また強奪された賞与金400%の原状回復も主張している。 労組のホン・ジェジュン支会長は、使用者側が賃金案について比較しているだけだと話した。

「半年ストライキ」を率いるホン・ジェジュン支会長は、 日進資本という「積弊」を必ず清算するつもりだ。 ホン支会長は「最低賃金労働者のわれわれは、 政府と社会が最低賃金を大幅に上げるというのでずいぶん期待した。 だが賃金はそのままだ。 いやむしろ週52時間制施行で残業がなくなり、年俸が減った」とし 「日進資本は労働条件を改善しろという社会的な要求に対応するために、 あらゆる小細工という小細工を働かせている。 それでも日進の労働者たちは労組を作って恐れを払い除けた。 ストライキが長くなっているので、労働者たちは互いにさらに粘り強くなった。 われわれは負けられない闘いをしていて、必ず勝ち抜く」と話した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-01-18 05:29:39 / Last modified on 2020-01-18 05:29:42 Copyright: Default

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