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小さな事業場の労働者の権利探し

[企画連載]すべての労働に捧げます(3)

アン・ミョンヒ(全国不安定労働撤廃連帯非常任執行委員) 2019.03.07 10:57

〈すべての労働に捧げます〉連載を始めるにあたって

非正規職が増えるにつれ、労働者の権利はますます剥奪された。 ところで労働者たちが正規職になれば幸福になるのだろうか? 今は正規職労働者も雇用不安に苦しみ、未来の希望を失っている。 少しでもさらに稼ぐためには長時間労働も拒まず、 差別と階層化に馴染み、非正規職を蔑視したりもする。 時には非正規職を雇用の安全弁にしようとする。 非正規職という雇用形態が労働者の権利を傷つけているが、 非正規職運動の目標は単に雇用形態を正規職に変えるだけではなく、 「すべての労働者の権利を保障」することでなければならない。 非正規職ない世の中作りネットワークと全国不安定労働撤廃連帯は、 労働者にとってどんな権利が保障されなければならないのか、 非正規職の目で見て共に討論しながら「非正規職社会憲章」18条項を作った。 その内容は「すべての労働に捧げます(五月の春出版社)」という単行本で発行された。 そのうち4つの条項について読者と共に話したい。

非正規職ない世の中のための社会憲章第13条

勤労基準法と社会保険は 労働者すべてに適用される権利だ。 勤労基準法や社会保険適用を制限してはならない。 失業した時、失業保険も提供されなければならない。

権利のかけらしか保障されない労働者たち

大韓民国憲法の第32条は 「すべての国民は勤労の権利を持ち、勤労条件の基準は人間の尊厳性を保障するように法律に定める」となっている。 労働者が人間らしい生活ができるように、労働条件の「最低」基準を定めた法、 これがまさに憲法に根拠をおいて作られた勤労基準法だ。 われわれはしばしば考える。 働く人なら誰でも無関係に勤労基準法をすべて適用されているのだろうと。 しかし勤労基準法は私たちの常識を裏切る。 第11条(適用範囲)で「常時5人以上の勤労者を使うすべての事業、または事業場に適用する」と明らかにしているのだ。 言い換えれば、完全に勤労基準法の適用を受けるには、 5人以上事業場で働かなければならない。 5人未満の事業場で働く労働者たちは勤労基準法の一部しか適用されない。 いったい5人なら適用され、4人なら適用されない勤労基準法条項とは何か?

まず、5人未満事業場には延長勤労の制限がない。 年次有給休暇を提供しなくても良い。 延長勤労に対する加算手当てを支払わなくても良い。 そして使用者はいつでも労働者を解雇することができ、 解雇事由と解雇時期を書面で通知しなくても良い。 しかし労働者は使用者の不当解雇に対して労働委員会に救済申請をすることができない。 結果として勤労基準法は労働環境に大きな影響を及ぼす労働時間と解雇などにおいて、 小さな事業場の労働者たちを保護していないのだ。

2018年の統計庁の資料によれば、 韓国の5人未満の事業体数は320万で、全体80.2%を占め、 従事者数は580万で全体の27.0%を占有する。 賃金労働者の4分の1が5人未満の事業場で働いているということだ。 権利を分けて保障するという法により、半分の権利しか保障されない労働者がこれほど多い。

労働組合の外をさまよう労働者たち

韓国の労働組合組織率は10.7%でしかない。 30人未満の事業場での労働組合の組織率は0.2%にしかならない。 300人以上の57.3%との差はあまりにも大きい。 なぜ小さな事業場では労働組合が作られないのだろうか?

[出処:チャムセサン資料写真]

節度あり、相対的に安定した労働者たちを組織するより、 小さな事業場の労働者を組織することにはさらに障害が多いからだ。 小さな事業場の労働者たちは離職が多い。 事業場を転々としながら、賃金と労働条件を合わせていくからだ。 雇用関係も明確ではなく、雇用形態も多様だ。 事業場で労働紛争が発生すれば、労働組合を通して変化を試みるのではなく、いっそ退社してしまう。 今の事業場に期待しないので、他の事業場で移動して環境を変える方を選ぶのだ。

こうした労働者の不安定な状態は、小さな事業場で労働組合を作るのが難しい理由もなるが、 やっと作った労働組合の維持することができない理由にもなる。 だから小さな事業場の労働者を組織するには、事業場を越えた組織化を試みなければならない。 しかし私たちには、事業場を越えた組織化の経験は多くない。 企業単位で労働組合を作って管理してきたからだ。 現在、工団地域を中心として小さな事業場の労働者たちを「戦略組織化」しているが、 相変らず慣性的に動いている状態だ。 既存の日常的な組織化活動からあまり抜け出せていない。

こうした事情なので、小さな事業場の労働者は相変らず組織されないまま、 労働者なら当然享受すべき権利から排除されている。 小さな事業場の労働者を組織するのは容易ではないだろう。 金と時間と人を注ぎ込んでも、その努力に見合う成果をあげられない。 しかし、小さな事業場の労働者の組織化を放棄することはできない。 これらの労働者を組織せずに労働運動の未来を語ることはできないからだ。

小さな事業場の労働者の組織化は重要だ

資本は労働者たちを分断し続けている。 事業場の規模で分割して、雇用形態で階層化して、権利の剥奪を法と制度が承認している。 こうした資本の労働者分割戦略により、団結できず闘争できない労働者たちの人生は、 さらに不安定になって行く。 しかし既存の単位事業場中心の組織化と闘争では、労働権を保障するには力不足だ。

小さな事業場の労働者を組織することは、 組織されない、組織されにくい労働者を組織することにより、 さらに多くの労働者が権利を保障されるためだ。 小さな事業場の労働者を組織しながら、さらに多くの組織化の経験を積んでいくためだ。 労働状態が均一ではない労働者を多様な方式で組織しながら、 労働権を獲得した時、 まだ組織されない労働者は変化の可能性と希望を抱く。 こうなれば韓国の労働運動は未来が持てるようになる。 組織されない労働者が組織された労働者と共に闘争に立ち上がることができるようになるためだ。 労働運動が、すでに組織された労働者の利害だけを代弁するだけなら、 組織されない労働者を排除するのなら、 労働運動の未来はない。 組織化が難しいといって、成果が出ないからといって、押し退けられることではない。 どう組織するのかにさらに集中しなければならない。

勤労基準法の完全な適用のために闘争を組織すべき時

小さな事業場の労働者を組織する時に直面する問題がある。 まさに制度的な問題だ。 小さな事業場の労働者なので、権利が剥奪されることを当然視する法・制度を社会的に問題提起しなければならない。 5人未満の事業場の労働者に対する勤労基準法の完全な適用は、 キャンペーンを越えて、現場を組織しつつ、闘争の課題にするべき問題だ。

前述のように、勤労基準法は5人以上の事業場に適用することを原則としている。 1999年、憲法裁判所は 「常時5人以上の勤労者を使う」という基準は違憲ではないと判決した。 零細事業所の劣悪な現実と国家の勤労監督能力の限界を考慮すれば、 平等原則に反しないということだ。 まったく合理的でもなく、正当でもない。 その上、この基準は不変の法則でもない。 2000年の労働部の「勤労基準法施行令制定・改定の足跡」によれば、 勤労基準法の全面適用範囲は常時16人以上から常時10人以上に、 そして現在では常時5人以上へと変化してきたためだ。

勤労基準法は、労働者が尊厳を認められて働くことができるように勤労条件を定める法だ。 働く人すべてが例外なく勤労基準法の適用を受けなければならない。 事業場の規模により労働者の権利が制限されてはいけない。 労働者の権利は許諾されるのではない。 当然、与えられなければならないものだ。 しかし現実は労働者の力はなく、労働権の保障もまたない。 特別な方法はない。 現場を組織して、闘争の力で労働権を獲得していく方法以外には。 5人未満の事業場の労働者に対する勤労基準法の完全な適用のための戦いを これ以上遅らせることはできない。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2019-03-15 22:37:33 / Last modified on 2019-03-15 22:37:34 Copyright: Default

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