文在寅政府が労働者にテイザー・ガンを向けるとは

「警察庁真相調査委」の勧告も無視、改革逆行で労働界を圧迫

ユン・ジヨン記者 2018.12.05 10:27

政府と警察がユソン企業常務傷害事件を口実として労働界に対する公権力強化を示唆している。過去の李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権の時に大きな問題になった「テイザー・ガン」を労使紛糾の現場に積極的に導入する方案まで検討されている。執権初期に、「警察庁人権侵害事件真相調査委員会」を設置し、過度な公権力の乱用に制約を加えようとした文在寅(ムン・ジェイン)政府の政策基調が事実上廃棄されたわけだ。特に、これまで問題になっていた警察の武器使用を労使紛糾現場に導入するという計画なので、労働界に対する統制および圧迫が本格化されるという憂慮もあがっている。

「対テロ装備」の「テイザー・ガン」を労使紛糾現場に積極的に活用?

11月22日に発生したユソン企業常務全治4週間傷害事件の直後、政府と警察は労働界に対して厳正な対応を示唆した。金富謙(キム・ブギョム)行政安全部長官は「国民と被害者に謝罪」するという対国民謝罪を行い、 12月3日に李載甲(イ・ジェガプ)雇用労働部幹部会議で「厳正に措置しろ」と指示を出した。同日、閔鉀龍(ミン・カムニョン)警察庁長官は労使紛糾現場などに対する「実力行使指針」を用意して公権力を強化すると発表した。

特に警察は今回の事件を口実にして、これまで危険性の議論に苦しんできたテイザー・ガンの活用も考えているという。先立ってソウル経済は「警察が公権力強化方案として労使紛糾などの集団紛争の現場で発生する不法行為に対しテイザー・ガンなどの警察装具の使用を積極的に検討する」と報道した。そのため近い将来、警察の武器および装具の使用基準を含む「警察力の行使基準」を作って導入する計画だ。

▲テイザー・ガンダーツ［出処:チャムセサン資料写真］

テイザー・ガンは警察の武器の中でも特に危険性が高い殺傷武器と言われている。「対テロ装備」に分類されるテイザー・ガンは、瞬間的に身体をマヒさせて犯人を検挙する武器だ。性能が効果的だけに危険性が高く、米国では300人以上がテイザー・ガンで死亡したと伝えられている。国内でも昨年6月、精神病院への入院を拒否して騒いだ40代の男性が警察のテイザー・ガンに撃たれて死亡する事件が発生した。 2009年の双竜車籠城闘争の時も、警察が撃ったテイザー・ガンで2人の労働者が怪我をして、過剰鎮圧の論議がおきた。テイザー・ガンは普通、抵抗不能な状態まで発射するので、発射回数による死亡率が一番高い。また譫妄という意識不明状態の突然死が死亡原因の30%を占め、心臓マヒ、呼吸マヒなどを伴ったりもする。

文在寅政府が設置した「警察庁人権侵害事件真相調査委」、
「テイザー・ガン労働争議などでの使用禁止」の勧告も無視?

今回の警察庁のテイザー・ガン活用方案は、文在寅(ムン・ジェイン)政府の初期に刀を抜いた警察改革にも逆行することだ。文在寅政府が警察の公権力乱用に制約をかけるために設置した「警察庁人権侵害事件真相調査委員会(真相調査委)」では、労使紛糾の現場でのテイザー・ガン使用禁止を勧告した。

真相調査委は去る8月、双竜車の玉砕ストライキに関する真相調査結果を発表した。彼らは調査結果で「事件当時、対テロ装備に分類されたテイザー・ガンと多目的発射機は、テロ犯や強力法鎮圧などの警察の職務遂行や目的達成に必要な最低限の範囲内でやむをえず使うが、ストライキ中の労組員を鎮圧する過程で使った」とし「このような行為は警察装備の使用を規定する危害性警察装備の使用基準などに関する規定(大統領令)に違反する」と明らかにした。

また警察庁には「テイザー・ガンは人体に有害な影響を与え、人命被害の憂慮が高いので、集会・デモ、労働争議などへの使用を禁止すること」を勧告した。

一方、これに関連して警察庁の関係者は「事実関係が違って報道された。『警察力の行使基準』を検討するのはそのとおりだが、紛糾現場にテイザー・ガンを活用するという内容は事実と違う」と明らかにした。

事実、これまで警察は真相調査委が調査・勧告した事項を履行しておらず、政権の序盤期の見せかけの改革だという批判にさらされてきた。ソンチャッコ(損賠仮差押えを捉えよう!ソネソヌルチャッコ(手に手を取って))のユン・ジソン活動家は「李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権で発生した国家損賠のうち、ペク・ナムギ農民死亡事件と双竜車鎮圧事件について今年、真相調査委が勧告事項を発表した」とし「だが過剰鎮圧の認定や損賠撤回の勧告を受けた警察は、今までこれを履行していない。閔鉀龍(ミン・カムニョン)警察庁長官はこれらの事件について謝罪をしておらず、双竜車の労働者に対する退職金の仮差押えも10年間そのままだ」と声を高めた。

警察はユソン企業労組破壊計画直接たてたの
警察の不公正捜査糾弾の声高く

ユソン企業の労働者もまた警察公権力による深刻な暴力に苦しんできた。その上、2011年のユソン企業労組破壊事件当時には、警察が直接労組破壊計画をたてた。その年の5月21日に警察が作成した「牙山ユソン企業労組ストライキ関連情報判断および対策」の文書には、 △労組指導部に対する逮捕令状の早急な発行で圧迫、 △使用者側を対象に損害賠償請求を誘導し労働側圧迫を続けるなどの労組破壊計画が含まれている。

▲警察が作成した「牙山ユソン企業労組ストライキ関連情報判断および対策」文書［出処:金属労組］

同年6月には警察と用役の合同鎮圧作戦で、ユソン企業労働者22名が負傷し、集中治療室に運ばれた。当時、警察はユソン企業労組に1億 1千万ウォンの損害賠償を請求して労組を圧迫した。ユン・ジソン活動家は「国家損賠7件のうち6件が民主労総事業場関連の損害賠償で、そのうち1件がユソン企業だった」とし「2011年に用役と警察が無慈悲な暴力を行使して、むしろ労組に億台の損害賠償を請求した。請求理由は『失われた軍靴』、『使って壊れた催涙液容器』、『盾のキズ』等の内容だった」と説明した。

警察は最近までユソン企業労使紛糾事件での不公正捜査の議論に苦しんでいる。金属労組は12月4日、警察庁の前で記者会見を行って、警察の労組破壊協調および不公正捜査を批判した。ユソン企業嶺東支会のイ・ジョンフン支会長は「柳時英(ユ・シヨン)ユソン企業会長を背任容疑で告訴告発して1か月半が過ぎ、告訴人の調査も3週間前に行ったが、警察はまだ柳時英に対する捜査をしていない。だが11月22日に発生した偶発的な事件はあっという間に捜査をしている」と声を高めた。先立って労組は柳時英会長が労組破壊コンサルティング業者の創造コンサルティングに6億6千万ウォンを渡して、自分の弁護のために雇った16人の弁護士費用を会社の金で支払ったとし、柳会長を業務上背任容疑で告訴した。

金属労組は記者会見文で「警察はユソン企業労組破壊の積極的に加担者であった。警察庁長官は警察の罪を認め、関連する警察の内部者全員を免職しろ」とし「また、牙山警察署は柳時英の証拠隠滅、業務上背任罪について迅速かつ徹底的に捜査し、起訴されるようにしなければならない」と要求した。

一方、労働界に対する政府の基調が変わり、文在寅(ムン・ジェイン)政府の公権力活用基調もまた強硬に転じたのではないかという憂慮も出てきている。労使紛糾現場に対する「警察の公権力強化および装備適用」で、今後労働界に対する公権力の圧迫および抑制政策も強化される見込みだ。事実、これは「ユソン企業常務の4週間傷害事件」の前から予想されてきたことだ。最近、与野政の「弾力勤労制拡大」の推進で労政関係が極度に悪化し、民主労総の「経済社会労働委員会(経社労委)」不参加で労働界に対する政府の圧迫も強まっているからだ。

ユソン企業事件の10日前の11月12日、共に民主党の洪永杓(ホン・ヨンピョ)院内代表は、民主労総の闘争方式に対して「米国ならテロなみ」とし「暴力的な方式で対話を要請しても問題は解決しない」と批判した。共に民主党のイ・ヘチャン代表も11月21日、民主労総のゼネストの前に「経済が難しいのに憂慮の声がさらに高まる」と警告し、文在寅大統領は11月22日に「闘争ではなく対話、妥協、譲歩、苦痛分担で合理的な代案を見つけなければならない」と指摘した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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文在寅政府が設置した「警察庁人権侵害事件真相調査委」、 「テイザー・ガン労働争議などでの使用禁止」の勧告も無視?

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