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文政府の労働政策1年、労働界で評価交錯

以前の政府より急進的な改革の試み vs 「非正規職ゼロ時代」はレトリックでしかない

パク・タソル記者 2018.05.06 19:40

5月10日に任期1年になる文在寅(ムン・ジェイン)政府の労働政策を評価する討論会が開かれた。 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は就任後初の外部日程として仁川国際空港を訪問し、 「非正規職ゼロ時代」を明言した。 だが仁川空港の正規職転換は「子会社を通した正規職転換」という大きな限界を迎えた。 延長線上で、公共部門の正規職転換も歴代級のスケールで進められたが、 雑な政策推進で龍頭蛇尾だという指摘が続いている。 この日の討論会では文在寅(ムン・ジェイン)政府の労働政策が歴代政権よりも一歩進んだという評価があったが、 後退した点も相当あるということ、その内容において効果が小さいということ、 破格的な公約だが、論理水準に過ぎないという指摘などの批判的な評価も続いた。

文政府の労働政策は過去の政権より一歩前進

民主労総政策研究院、韓国非正規労働センター、韓国産業労働学会などの労働団体は 5月4日午後2時、ソウル征東フランシスコ教育会館で 「文在寅(ムン・ジェイン)政府1年労働政策評価と課題政策討論会」を開いた。

文在寅政府労働政策1年、評価と展望」の問題提起をした韓国産業労働学会のノ・チュンギ会長は 「文在寅政府の労働政策実行は、 大きく見て公約の基調の変更なく進められている。 問題がないわけでは決してないが、最低賃金値上げ、公共部門非正規職転換、積弊清算、社会的対話などで一定の改革性を見せた」と整理した。

ノ会長が選んだ文在寅政府の主要労働政策は、 △雇用創出、 △最低賃金値上げ、 △労働時間短縮、 △積弊清算、 △公共部門非正規職の正規職転換、 △社会的対話の6種類だ。 労働界の要求を一定に受け止めた政策だが、結果はあまり良くない。

まず「雇用創出」政策について、ノ会長は 「可視的な成果がなく、雇用危機は続いている」と評価した。 文大統領は1号業務指示として、大統領直属雇用委員会を設置し、 公共雇用81万個、非正規職差別解消などの課題を発表した。 ノ会長は「多くの対立を引き起こし、労働側から批判される公共部門非正規職の正規職転換は、 文政府改革政策の具体的進行様相を予感させる重要な準拠になる。 相当な政治的意志にもかかわらず、公共機関の特性や財政条件および内部の反発などを媒介にして、 本来の抽象的な企画から後退するという限界を示した」と評価した。

ノ・チュンギ会長は、文在寅政権の労働政策に限界があるにもかかわらず、 これまでの政権の公約と比較すれば、かなり急進的な改革案で構成されているという点をついた。 盧武鉉政権が拒否した 「非正規職使用事由制限制度」と「常時持続、生命安全業務の正規職直接雇用原則」を受け入れた点が大きな進展だといった。 また就任後、初の決裁が「大統領直属雇用委員会設置」だった点と、 1年間で1800時間の労働時間短縮による雇用創出を明瞭に提示した点もこれを裏付けると説明した。

だが推進過程での問題で、当初の約束より後退した政策が多かった。 民主労総のパク・ヨンソク政策研究院長は 「公共機関に対して常時・持続業務の非正規職使用制限を明示した規定は望ましいが、 間接雇用まで拡大適用していない」と指摘した。

また雇用委員会の活動も 「ほとんど雇用創出が中心議題として強調され、 そのために実践課題はほとんど新産業育成、創業支援、経済活性化による『トリクルダウン効果』に依存しており、 非正規職の正規職化と使用制限、勤労条件改善などの具体的な実践課題は後順位に扱われている」とも憂慮した。

問題は、誤った流れを正すための権限や制度が存在しないことだ。 パク研究院長は 「雇用政策ロードマップで明らかにされた国政課題が修正されたり後退しているのに対し、 雇用委員会がこれを審議して承認する手続きが不明確で、 立法手続きが必要な課題については その別途の点検、管理ができる手続きが不十分」だと診断した。

「非正規職ゼロ時代」はレトリックにすぎない

特に、公共部門非正規職の正規職転換政策の場合、 曖昧な基準で半分以上の人員が除外されるなど、 昨年から各種の問題点があらわれた。

釜山経済大のファン・ソヌン教授(韓国非正規労働センター政策委員長)は 「公共部門の全ての非正規職41.6万人のうち、半分を越える24万人(57.9%)が転換対象から除外されていて、 『正規職転換』というレトリックを付けられるのか批判的に見られる」と問題提起した。 ファン教授は「ほとんどが無期契約職に転換され、 公共部門内での賃金格差の縮小効果は非常に制約的で、所得主導の成長効果も制約的だ」等の限界点もまた指摘した。

これまでの政府より進展した原則としてあげられた 「常時持続、生命安全業務の正規職直接雇用原則」についても弱点があらわれた。 ファン教授は「常時持続的業務の場合にも、 期間制教師、講師、高齢者、運動選手などの理由で転換対象から除外された数が14.1万人にのぼる」とし 「生命、安全業務の定義が曖昧で、機関別に恣意的に適用されており、 生命、安全以外の業務は子会社を設立してもいいかのように誤って解釈されている場合も多い。 病院、空港、軌道などのすべての業務は事実上、生命、安全に重大な影響を与える」と分析した。

現局面の主導権は、民主労組にある?

民主労組運動の現在の力量に対する評価も交錯した。 ノ・チュンギ会長は「現局面の主導権は相当程度、民主労組運動にある」とし 「現在の改革局面は、(資本と労働の間の)交換構図ではなく、 労働側の要求が議題になる攻勢的な局面だという点で差がある」と見た。 ノ教授は「民主労組運動は相対的に強い組織力と政治的力量を確保している。 内部にさまざまな構造的な問題がないわけではないが、 過去の改革局面と較べれば、運動的力量を持っている。 文在寅政府のさまざまな改革的な大統領選挙の公約と、その後の『労働尊重社会』宣言は、 すべて民主労組運動が持っている債権目録で、(労働界では)新しいものを要求するのではなく、 これまでの約束を守れということなのだから、 政治的・社会的な正当性も非常に大きい」と主張した。

続いて政府の労働政策に民主労組運動が介入する3種類の戦略を提案した。 △非正規職や産別交渉制度のような長期的、政治的課題を戦略的議題とすること、 △日常闘争と組織事業を一次に配置して併行する『社会的対話』戦略、 △民主労組運動の内部革新だ。

だが政府が労働市場問題を解決するにあたり、 労働組合が排除されているという指摘もあった。 金属労組のアン・ジェウォン労働研究院長は 「現政権の労働改革が果たして『労働主導の改革構図』になっているのかは疑問」とし、 造船業と韓国GMで広範囲に行われている構造調整の問題を指摘した。

去る4月23日、金属労組韓国GM支部は、GMが通知した法定管理期間に追われて希望退職と賃金をはじめ、福利厚生で後退した労使暫定合意案を受け入れなければならなかった。 これについてアン研究院長は 「産業銀行の頭取が労使関係に介入しないと言っていたのに、 グローバルGMが提示した法定管理申請圧迫のデッドラインが近づくと韓国GMに入ってきて労使間の合意を圧迫した。 それだけでなく、経済副総理は米国で労使合意を要求する記者会見を行い、 事実上GMの要求に言いなりになって労組を圧迫し、合意を勧める格好になった」と政府の役割を批判した。

続いてアン研究院長は 「これまで韓国社会の国家主導改革が必然的に内包した改革の挫折と、 それによる大衆の挫折、今後の労働者階級に対する攻勢につながるのではないかと憂慮される」とし 「盧武鉉政権の2003年烈士闘争政局のデジャヴュになっては本当に困る」ともした。

アン研究院長はまた 「最低賃金、労働時間短縮などの短期的経済利害に対しては、 より柔軟に対応する必要がある」という戦略案についても異なる意見を提示した。 アン研究院長は「民主労総は2月の中央執行委員会で 『勤労基準法と最低賃金改悪を一方的に強行した時には労使政代表者会議への参加を再議論する』と決めたが、 民主労総が短期的利益を守るためにこのような決定をしたと見ては困る」とし 「労組運動の歴史的な流れから見れば、勤労基準法問題と最低賃金問題は短期的に見ることができない労働階級の最も重要な問題」だと強調した。

一方、金属労組は5月9日から光化門政府庁舎の前で 「文在寅政府労働排除政策糾弾」時局座り込みに突入する。 金属労組は構造調整中断をはじめ、複数労組窓口一本化法の廃止、 サムスンと労働部ゲートに関する責任者処罰、労使政交渉などを要求する予定だ。

この他に9日には光化門政府総合庁舎の前で特殊雇用労働者などの 「文在寅政府発足1年、約束不履行糾弾! 民主労総特殊雇用労働者決意大会」が開かれる予定で、 12日にはソウル駅広場で「文在寅政府1年、これ以上待てない! きちんとした正規職転換、労働時間短縮と人員補充、社会サービス-公共性強化公共運輸労組決意大会」も予定されている。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-05-17 05:30:15 / Last modified on 2018-05-17 05:30:17 Copyright: Default

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