本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:浦項地震震央近隣龍泉里、龍泉里現場ルポ
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1511119822972St...
Status: published
View


浦項龍泉里おばあさんの壊れた家には誰も尋ねて来なかった

浦項地震震央近隣龍泉里、龍泉里現場ルポ

イ・サンウォン ニュースミン記者 2017.11.17 10:58

「ふぅ・・・」

11月16日午後12時30分、88歳のオ・スンジュおばあさんは、 昨夜の驚きを記者に訴える町の隣人に近付いてきて、長いため息を吐いた。 90度曲がった腰を支える歩行器の取っ手を両手で捉んだままだ。 「この家ちょっと見て、みんな崩れました」。 村会館からわずか20m、オおばあさんは首をふって近くの塀を示した。 とても古いスレート屋根の下、若干崩れたような塀が見えた。 塀にたてかけた木のパレット、スレートのかけらが倒れている。 肉眼では被害の程度は簡単に識別できなかった。

「みんな崩れました。 こっちにきて、ちょっと見て。部屋に入ることもできない… 壁がすっかり崩れました。 恐くて家に入ることもできず、昨晩から行っていません。 ふぅ・・・」

おばあさんは何度もため息をつきながら、歩行器を押して記者を家に連れて行った。 塀を通りすぎ、左にひと回り回って、屋根と同じ材質のようなスレートの扉が中庭と道路を分離していた。 おばあさんは狭い中庭に歩行器をおいて網戸一つを開いた。 明かりが消えて暗い内部はその時、始めて明るくなった。 「ああ」。まず感嘆の声が出てきた。 土で作った壁が壊れてぽっかりと穴が空いていた。 冷蔵庫が内側に崩れようとする壁を防いでいる局面だ。

▲裂けた台所の壁の中心に大きな穴がぽっかりと空いている。[出処:ニュースミン]

▲おばあさんの部屋は泥棒が入ったかのように、タンスの扉、鏡台の扉がすべて開いて散らかっている状態だ。[出処:ニュースミン]

「冷蔵庫の扉を開けますか? 冷蔵庫の扉も開けられない。 あそこを見て、みんな崩れているでしょう。 部屋もみんな崩れてしまいました」

おばあさんは台所のすぐ横に引き戸も一つ開けて中を見せた。 幸いだというべきか。 台所ほどの大きな穴は空いていなかったが、 しわがよったように壁紙が破れ、左に置かれたタンスの扉はみんな広々と開いたまま中を見せていた。 鏡台の収納も扉が開き、まるで泥棒が入って散らかしたような姿だった。

記者がまず台所に入ると、おばあさんも後について台所に入った。 「冷蔵庫は開けられますか?」、 「開けることはできても壁に衝撃が行くでしょうね」。 近くで見ると、壁が冷蔵庫の扉をしっかり抑えている局面だ。 成人の男が力を入れて引けば、かなり苦労して扉をあけることはできても、 冷蔵庫に当たっている壁にそのまま衝撃が伝わりそうだった。 「ふう・・・」。 おばあさんはまたため息をつきながら、冷蔵庫の反対側に置かれた電気釜の蓋を開けて閉じた。 食べ残したご飯が湯気をあげた。 「電気は入っている」。

オ・スンジュおばあさんは11月15日午後2時29分、マグニチュード5.4の地震の震央から遠くない浦項市北区興海邑龍泉里に住んでいる。 地震が起きた時、おばあさんは龍泉1里の公民館にいた。 町内の隣人、六、七人と一緒だった。 何人かが花札を打ち、おばあさんはTVを見ていた。 突然地面がひどく揺れて、花札を打っていた隣人たちはそのまま床にひざをついた。 床に座っていたおばあさんはすぐ前のエアコンがぐらぐら倒れようとしたので驚いて立ち上がろうとした。 九十近い足はひどく揺れる床に立つことができなかった。 「起きようとすると転んで、転んで。 昨日、私がとても衝撃を受けました」。

▲オ・スンジュおばあさんが家の縁側に座っている。おばあさんは15日の昼、地震が起きてから一日後に用心深く家に入ってきた。[出処:ニュースミン]

その時からおばあさんは公民館から遠くない家を見守るだけで、入る意欲を出せなかった。 記者が同行して、その時にはじめておばあさんも家に入った。 一日ぶりだ。 興海邑事務所からわずか4km程離れた所だが、16日の昼まで、おばあさんは村事務所の人と会うことができなかった。

共に民主党の禹元植(ウ・ウォンシク)院内代表、国民の党の安哲秀(アン・チョルス)代表、 正しい政党の劉承ミン(ユ・スンミン)代表、自由韓国党洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表、 正義党の李貞味(イ・ジョンミ)代表をはじめ、 多くの政治家が興海邑事務所を訪れたが、4km離れたおばあさんの家を訪問する人はいなかった。 やっと町の洞長が早朝に公民館に来て、被害の程度を聞いて回ったのが全てだった。

「夜中、そこ(公民館)いませんでした。 夕食も食べず、今朝も隣人がちょっと作ったので、一匙食べて…」。 泥棒が散らかしたような部屋の前の縁側に座り、おばあさんは話した。 「しかしあなたはどこから来たんですか? ふう…。 ああ、震える。 心臓がドキドキ、もう部屋に入れずどうしよう。 もうすっかり冬なのに」。 冬を心配しながら、おばあさんはまた公民館の方に足の方向を変えた。

***

オ・スンジュおばあさんの家から約1.6km離れたヨンジョン2里のキム・ドンドク(71)里長の家は塀が崩れた。 15日の昼、地震が起きた時、里長は家の前の水路工事の現場を見ていた。 突然地面が揺れ、からだを支えられず、後から「ドシン」と何かが落ちる音が聞こえた。 里長の家の塀が崩れた音だった。 「地面が揺れて立っているのが難しくて、変だ、何だと思っていると、 何かどしんと音がした。 後ろを振り返ると塀がぽっかりなくなっていた」。 里長はすぐに町のあちこちの家を回って、被害を点検した。 16日午後1時30分にもキム・ドンドク里長は自転車に乗って地震被害を把握して回っていた。

▲キム・ドンドク里長の家の塀が崩れている。[出処:ニュースミン]

「村長、見て回って、被害はどの程度ですか?」
「私が見るに、ひどいところは40戸程度です」
「どの程度の水準ですか? 村長のお宅の水準?」
「いや、私はこんなのは被害と思いません。
こんなのは除いておよそ40戸ですよ」
「村には何世帯あるんですか?」
「うちの村はおよそ百世帯をちょっと越えますね」

里長の家からわずか60m離れている隣の家は、塀一枚が完全に崩れて土地も消えた。 100m程さらに行くと、屋上の塀が隣の家の中庭に落ちている家も眼についた。 自転車のヘルメットをかぶった家の主人が崩れた塀の周辺を整理していた。 「ひとまず片づけずにおいてください。 塀の崩れた所は1箇所や2箇所ではないのに、これを片づける費用はどうするんですか」、 「ではそのまま片づけないでおきましょうか」、 「やあ、村から出た人にちょっと言っといたから、ちょっとだけ待ってくださいよ」

▲里長の家から約60メートル離れた隣の家も塀が完全に崩れた。[出処:ニュースミン]

▲隣の家の屋上の塀が中庭に落ちた。[出処:ニュースミン]

里長は村から離れてひっそり建っている家に記者を連れて行った。 「ここもだが、あそこに行くと私が見ても入りたくない家もあります」。 里長が連れて行ってくれた家は、遠くから見ても尋常でなさそうに見えた。 2階の大きな窓が壊れて後に倒れていた。 村の男たちの中で一番の高齢者が息子と暮らしていた家だと里長は説明した。 「興海に息子の家があるが、今はそこにいるのか、どこにいるのかよく知りません」。

▲遠くから見ても2階の大きな窓が崩れていのが見える。[出処:ニュースミン]

家は新しく建てなければならない程度に壊れていた。 2階の壁面が完全に崩れ、2階から1階に降りる階段は、崩れた建物の残骸で覆われていた。 幼い孫、孫娘が使っていた部屋と思われる階段左側の部屋は修羅場だった。 「生きてきて、今日が一番幸せな日です」と書かれたA4用紙が貼られた壁面だけが完全に孫、孫娘の卒業写真を守っていた。[記事提携=ニュースミン]

[出処:ニュースミン]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-11-20 04:30:22 / Last modified on 2017-11-20 04:30:23 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について