「通常賃金」のおかげで「雇用創出が難しくなる」?

「通常賃金が負担なら超過勤労をなくして新規採用すれば良い問題」

起亜車労組の通常賃金訴訟1審判決をめぐる労働界と財界の対立が続いている。 財界は今回の判決で企業の破産と雇用の二極化が深刻になると主張しており、 労働界は財界の主張は概念上、正しくないと対抗している。 裁判所の政治的判決が通常賃金をめぐる混乱を加重しているという批判もある。

財界「通常賃金訴訟が『労働市場二極化』を深める」

韓国経営者総協会(経済人総連)は判決直後 「(判決による)負担が該当企業と協力関係を結んだ多くの中小企業に影響すると、 われわれ製造業の競争力に与える余波が非常に大きいものと予想される」と論評した。 企業の経営上の困難に関する信義則の原則は、厳格に適用、解釈されなければならないという裁判所の判断についても、 「労働市場の二極化」を深めると不満を表わした。

経済人総連は「大企業、公共部門勤労者に信義則を厳格に適用する裁判所の態度は、 通常賃金論争の最終受恵者を『良い雇用』を持つ正規職勤労者に帰結させ、 労働市場の二極化を深めるだけ」とし 「これは脆弱勤労者の保護を重視する最近の政策にも反する」と声を高めた。

保守陣営の学者も今回の通常賃金判決が企業の新規採用を萎縮させると主張している。 崇実大法学科のチョン・シミョン教授(正しい社会市民会議事務総長)は9月1日、 YTNラジオの「シン・ユルの出発新しい朝」とのインタビューで、 「経済界では追加で負担する費用が30兆を越えると主張している」とし 「現在の経済状況を見ると、韓国の企業の状態は良くないのに、 30兆を追加で負担することになると雇用創出や新入社員採用問題など さまざまな問題が提起されるだろう」と説明した。

労働界「通常賃金が負担なら労働時間短縮で『新規採用』すれば良い」

しかし労働界は財界の主張はまったくおかしいと批判している。 起亜車労組側代理人の法務法人セナルのキム・ギドク弁護士は 「通常賃金訴訟をしているある事業場でもそうした主張をしている」とし 「だが通常賃金のおかげで破産するというのは概念上正しくない」と指摘した。 通常賃金は超過勤労による加算賃金でしかなく、 勤労時間を短縮して新規採用をすれば企業の負担もなくなるという主張だ。

キム・ギドク弁護士はCBSラジオの「キム・ヒョンジョンのニュースショー」で 「超過勤労にあたる代価の支払いが負担になるのなら、 延長勤労、追加勤労、残業、特別勤務、休日勤労をさせなければ良い。 労働者を新規採用すれば良い問題」と釘をさした。

裁判所の政治的判決が通常賃金をめぐる混乱を加えるという批判も続いている。 労務法人チャムトのユ・ソンギュ労務士は、CBSラジオ「時事ジョッキー鄭寛容(チョン・グァニョン)です」とのインタビューで 「信義則の概念は通常賃金訴訟によって、予測できなかった財政的負担が会社に発生し、 経営上の困難がもたらされたり存立が危なくなれば、 未払い賃金があっても払わなくてもいいという法理」とし 「しかし、こうした大法院の立場は理解し難い。 なぜなら未払い賃金はあるのに、会社が苦しいから未払い賃金を払わなくても良いと解釈されるため」と批判した。

今回の起亜車判決で「賞与金」と「昼食代」は通常賃金だと認定したが、 「日当」は認めなかった部分も「政治的な判決」だと主張した。 ユ・ソンギュ労務士は 「法理的な判断ではなく、企業の財政的な負担などを考慮した政治的判断ではないのかと思う」とし 「勤労基準法が規定する賃金と通常賃金の定義はある程度明確だと思う。 ただし、裁判所が明確な法律解釈をせず、信義則だとか固定性要件など、 企業が悪用したり活用する非常口をしばしば判決に表わす」と批判した。

また彼は 「個人的には法律が不明確だったための問題ではなく、 法解釈を担当する裁判所が法律の解釈をむしろ曖昧にしている側面があると考える」と付け加えた。

一方、金東ヨン(キム・ドンヨン)経済副総理兼企画財政相は9月1日午前、 政府ソウル庁舎で開かれた経済関係長官会議で、 通常賃金の範囲を明確にする勤労基準法改正を推進すると明らかにした。 金長官はこの席で 「政府は不要な労使対立が発生しないように、事業場の指導と賃金体系の改編を支援する」とし 「根本的な問題を解決するために、通常賃金の法的範囲を明確にするように、 勤労基準法の早急な改正を進める計画」だと明らかにした。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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