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「資本主義批判すれば国家保安法で処罰するべきか」

検察、「労働者の本」のイ・ジニョン代表に2年求刑…弁護団、「非常識な推論で思想の自由を侵害」

パク・タソル記者 2017.06.22 20:51

国家保安法違反容疑で拘束起訴された「労働者の本」のイ・ジニョン代表に対し 検察が「従北、急進的社会主義勢力は厳重に処罰しなければならない」とし、2年の刑を求刑した。 イ代表は「資本主義を批判する自由がある」と最終陳述した。 弁護団は「検察が非常識な推論だけで思想の自由を侵害している」とし、 裁判所に無罪宣告を要請した。

ソウル南部地方法院第11刑事部が6月22日午前10時から 「労働者の本」のイ・ジニョン代表に対する最後の集中審理を進行した。

午後4時15分頃に最終陳述に立った被告人のイ・ジニョン代表は 「大韓民国に生まれるとすぐ、すべての国民が資本主義思想を唯一の思想と認めなければ国家保安法によって断罪されている」とし 「これは自由民主主義ではなく、支配的な思想と違う対称点にある思想も全国民が見ている中で討論の位置に立つことができなければならない」と発言した。 また「20世紀の反共時代の遺物である『禁書』が今も猛威を振るっていることを 検察の控訴状で確認した」とし「悲痛を感じる」と話した。

弁護団は「(イ・ジニョン代表は)検察が主張する 『北朝鮮を賛揚・鼓舞したり国家変乱を宣伝・扇動する目的(利敵目的)』を持っておらず、 これを立証できる証拠は、ただ検事の推論だけ」とし、 「最も根本的な基本権である『思想の自由』を保護するために無罪を宣告してくれ」と要請した。

しかし検察側のシン・ドンウォン検事は、 イ・ジニョン代表がやりとりしたEメール、公安前科者などとの接触、 鉄道ストライキなどに関与した点などを基礎に、 利敵目的があったと主張し、2年を求刑した。

研究資料が利敵表現物?
『デジタルアーカイビング』は有難い作業

▲拘束前のイ・ジニョン代表の姿、資料写真

イ・ジニョン代表は4000余冊の進歩的な社会科学書籍を直接電磁記録の形に変換したデジタルアーカイビングサイト 「労働者の本」を運営してきた。 検察はこの中に64件の利敵表現物があり、サイトの会員と不特定多数が無料で閲覧できるようにしたことで『頒布』の罪があるとし、 去る3月に公訴を提起した。 検察は初めは130件を問題にしたが、ペダゴジー、ロシア革命史等の古典が含まれていて問題になると、これを縮小した。

弁護団によれば、検察が提出した犯罪一覧表に記載された各図書、文書は国立中央図書館、 国会図書館等で閲覧でき、電磁ファイルの形でも保存できる。 弁護団は「被告人が掲示した表現物を基礎とする多数の北朝鮮研究論文が、 国立中央図書館を検索した結果、確認できる」とし 「小説をはじめとする北朝鮮の書籍は現在の韓国、北朝鮮の現実を直視して分析し、研究するために必要だ」と主張した。

検察は今日の審理で 「利敵表現物は麻薬と同じだ」とし 「所持そのものが問題」だと強調した。 また「北朝鮮体制を批判する他の書籍があっても、 いくつかの書籍に対する利敵性がなくなるわけではない」と指摘した。

検察は利敵表現物に対する危険性を集中的に強調し、 自由民主研究学会のイ・ドンホ事務総長を証人に呼んで尋ねた。 イ事務総長は「(検察が問題にした該当書籍は若者に反資本主義の認識、 反抗の認識を鼓吹する」とし 「これを放置すれば、内部からの攻撃に脆弱な自由民主主義は転覆する」と話した。

弁護団は検察側の推論に対し 「裁判で捜査機関が被告人の思想と良心をみだりに評価して断罪する姿を最も赤裸々に見せる」とし 「被告は批判的、変革的人文社会科学の底辺を拡大するために労働者の本を作った」と強調した。

弁護団は「頒布」の問題についても罪はないという点を明確にした。 大法院は「頒布」の意味を「不特定または多数に配付してわかる状態に置くこと」と判示しているが、 「労働者の本」の利用方法はこれと違うということだ。 「労働者の本」は会員加入後に「トンオプ」になるとアップロードされた資料の一部を見ることができ、 本全体を望む場合はEメールで別途の申請をしなければならない。 弁護団は「『味見』程度の本の一部の内容を上げただけなので、 不特定多数が内容がわかるようになったとは見られない」と話した。

一方、裁判所は 「なぜ被告人が国立中央図書館などの機関で閲覧できる図書、文書をデジタル ファイルに変換してインターネットに掲示したのか」と疑問を提起したが、 弁護団はイ・ジニョン代表が2002年からデジタル アーカイビング作業を始めた事実を伝え 「この部分については、むしろ先駆者的な姿を見せた」と説明した。

弁護人側の証人に立った成均館大国文科のチョン・ジョンファン教授は 「60年代の知性史、文学史を勉強するために、古本屋でも得られない資料を労働者の本で得られた」とし 「韓国はアーカイビングが弱く、40〜60年代にどんな本が出されたのかよくわからないが、 一個人の努力でアーカイブ資料が作られてありがたく思っている」と証言した。

検察「平常時の文に真意が隠れている」、弁護団「非常識な推論」
イ・ジニョン代表、「資本主義を批判する自由がある」思想の自由を強調

特に検察はイ・ジニョン代表が「労働者の本」会員に送ったメール、 知人に送ったメールを上げて、 利敵の内心が発見されると集中的に追及した。 検察はその根拠として2011年から2015年までに送ったメールのうち、 「スキャン作業の目的は勉強そのものではなく革命」、 「極悪非道な資本主義の世の中を粉砕する武器」、 「労働者革命政党建設」、 「国家転覆」等の文句を問題にした。 また、暴力を革命の手段として国家を転覆させるという部分に利敵性を発見できるとし 「従北、急進的社会主義勢力に対して厳重な処置が必要だ。 流布しないということが偽りの約束に終わる可能性が高いため、 身体を拘束しなければならない」と話した。

弁護団はこれに対し 「被告人の内心の目的を検事が恣意的に推測判断するのは非常識な推論であり、 被告人に対する侮辱」と抗弁した。 弁護団は「控訴状に記載されたほとんどの事実関係は、 被告人が手発信したEメールの一部の刺激的な部分だけをつぎはぎしたり、 被告人がレーニンの本の内容に言及した部分をまるで被告人がこっそりそうした主観を持っているかのように書き移した」と話した。 また「表現が多少粗野でこなれていなくても、表現をしたということだけで国家紊乱を扇動したとは見られない」とし 「資本主義に対する否定的かつ批判的な意志を表現しただけ」と反論した。 資本主義体制に対する批判が故キム・スヘン教授などの優秀な学者の間で活発に共有されている点を上げ、 十分に容認できる線で批判したとも話した。

裁判を傍聴していたイ・ジニョン代表の妻チェ・ドウン氏は 「Eメール、カカオトーク、ネイバーバンドをすべて検閲して、 自分たちの好みに合わない表現を問題にして、 利敵というレッテルを貼る後進的な態度が見苦しい。 社会科学の資料を共有しようとする欲求が強くて電子図書館を作ったのに、 これを利敵という国があるのかと言いたい」と検察を批判した。

この日、現場にはイ・ジニョン代表の家族と弁護団、人権団体など、 30余人の関係者が参加して裁判を見守った。 裁判所は7月20日午後2時30分、被告のイ・ジニョン代表に対する宣告裁判を開く。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-06-26 09:00:07 / Last modified on 2017-06-26 09:00:08 Copyright: Default

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