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2017年、今日のペ・ダロを苦しめる損賠仮差押え

労働者を狙う損賠仮差押え1500億、雪だるまのように増えた

パク・タソル記者 2017.01.10 02:08

2003年1月9日の未明、 ペ・ダロ烈士は彼が働いていた慶南道昌原の斗山重工業内の労働者広場で焼身自殺した。 彼の乗用車の中にはぎっしり書かれた遺書2枚が発見された。

斗山はあまりにもひどい。 解雇者18人、懲戒者90人程度に財産家差し押さえ、給与仮差押え、労働組合抹殺、あくらつな政策に対し 私たちがここで押されれば全社員の雇用は保障されなくなるだろう。(中略) 二日後には給料を受け取る日だ。 約6か月以上、給料を受け取っていないが、 二日後にも私に入ってくるお金はないだろう。 斗山は血も涙もないあくらつな人間ではないのか? -故ペ・ダロ烈士の遺書より-

当時、斗山重工業は構造調整という名で千人を追い出し、 これに抵抗する労組を追い立てた。 団体協約解約を通知し、労組幹部懲戒解雇、労組幹部に65億ウォンの損賠仮差押え(損害賠償および仮差押え)を断行した。 6か月間、一銭も賃金を受け取れず、損賠仮差押えから抜け出す方策もなかった烈士は、 結局死を選んだ。

[出処:金属労組韓国GM昌原非正規職支会]

ペ・ダロ烈士14周年を迎えた1月9日、労働者広場で故ペ・ダロ烈士の追悼式が開かれた。 金属労組慶南支部斗山重工業支会、ペ・ダロ烈士精神継承事業会などの主催で300人ほどが集まった。 集まった人々は、追慕祭のたびにまずクッパ屋に行く。 すでに10年を越える伝統だ。 2002年の斗山重工業支会のストライキに連帯した地域の仲間に感謝する気持ちを込めて、クッパ一杯を接待するという意味だ。 追慕祭の最後には彼の遺言が入った黙祷曲「ペ・ダロ烈士の歌」を共に歌う。

烈士を賛える彼らの気持ちは相変らず熱いが、美しく終わらない。 14年前、ひとりの労働者を死に追いやった損賠仮差押えはますます進化して、 さらに多くの労働者を苦しめている。

2012年、韓進重工業のチェ・ガンソ烈士も158億ウォンもの損賠の前で自ら命を絶った。 彼の遺書は自分の死が損賠によるものだと正確に知らせる。

生まれてから見たことも聞いたこともない158億の金、 死においやる韓進悪質資本(中略)支会に戻ってください、仲間たち。 今まで守ってきた民主労組です。 必ず戻って、勝利してください -故チェ・ガンソ烈士の遺書より-

損賠仮差押え金額、この15年間で5倍に

民主労総の集計によれば、2002年には39の事業場で345億ウォン規模の損賠が請求された。 この金額はますます増加して、李明博(イ・ミョンバク)政権の間に1千億ウォン台に入り、 朴槿恵(パク・クネ)政権になってからは1691億ウォン(2014年)とピークを打った。 昨年8月までに民主労総と手を取って(損賠仮差押えを捉えよう!手に手を取って)が共同で集計した調査によれば、 事業主が提起した最初損賠請求額の規模は1521億ウォン(20事業場・57件)に達する。

請求額のうち半分以上が金属労組事業場に対して提起された訴訟だ。 合計57件の損賠訴訟のうち44件が金属労組事業場に関わっている。 そして1500億余ウォンをはるかに超える最初の請求金額に対し、宣告金額は340億ウォン程度で、 使用者がいかにとんでもない金額を主張して訴訟をしたのかがわかる。

ペ・ダロ烈士精神継承事業会のカン・ウンピョ会長は、 増加する損賠は労組弾圧を傍証するものだと話した。 カン会長は「特に金属労組事業場に対して損賠が多い理由は、闘争力が強かったためだ。 損賠仮差押えで労組活動を萎縮させるという意図が多い。 最近では幹部だけでなく一般の組合員にまで損賠を払わせる。 ストライキも集会もするなということだ」とし、労働三権の無力化に帰結する損賠の属性を説明した。

言い値の損賠請求額

手を取っては、昨年上半期の損賠仮差押え現況を発表するにあたり、 最近提起された損賠訴訟の3種類の特徴をあげた。 △結成1年余りの新規労組と組合員を対象に範囲が拡大、 △スローガン、プラカード、ニュースレターの文言など、暴力や財物損壊を含まない争議行為も問題にする、 △非正規職労働者に対する損賠請求事例の増加だ。

民主労総江原嶺東地域東洋セメント支部の組合員23人には50億ウォンほどの損賠がかけられている。 仮差押え6億ウォンはすでに執行され、組合員平均1500万ウォンの財産が押収されている。 東洋セメント支部は101人の不当解雇に対応し、2015年に出勤闘争をした。 使用者側はこれにより生産活動に支障をきたしたと主張する。

これについてイ・イニョン副支部長はとんでもない計算だと話した。 「冬には物量もなく、施設の保守など他の仕事をして生産を減らす。 当時、使用者側は労組から脱退した人と働くと言って、1組十数人を連れてきて働くふりをした。 これもショーなのだが未熟練者には何もできなかった」。 イ副支部長は「闘争を始める前、仮差押えに備えてあらかじめ財産整理をしておかなければならないのか」と思うこともあるという。

有利な法を選択的に

法律事件を扱っている東洋セメント支部のアン・ヨンチョル事務局長は、 仮差押えは資本のある使用者側だけに有利な制度で苦しいという。 アン事務局長は「労使の争いにおいて、仮差押えは実質的に使用者側に悪用される。 労働者の生計に直結する問題なのに、裁判所は使用者側が申請すれば情況を問わずにとても簡単に受け入れる。 何十億の供託金をかけられるのも資本があるから可能だが、労組としてはどうしようもない」と問題を指摘した。

一方、昨年12月にソウル中央地方法院は、東洋セメント支部が提起した勤労者地位確認訴訟で原告一部勝訴判決を出した。 不法派遣の関係が認められるという趣旨で、正規職に相当する処遇を受けなければならないという判決文が出された。 地方労働委員会、中央労働委員会、今回のソウル中央地法まで、東洋セメントの下請労働者は元請所属の正規職であり、 これまでの下請構造は間違っているという判決が出されている。 だが使用者側は有利な法を選択的に受け入れ、雇用責任を回避している。

「君は私に侮辱感を与えた」

金属労組ハイディス支会に提起された損賠の場合、 これまでには見られなかった流れを観察することができる。 ハイディスがイ・サンモク支会長に提起した損賠は合計3件で、 侮辱(1億)、名誉毀損(4億)、業務妨害(22億)だ。 侮辱と名誉毀損はこれまでの損賠提起理由と異なる部分だ。

台湾遠征闘争の期間に支会が経営陣の写真を立てて靴を投げるゲームをした。 これをどうして知ったのか、靴を直接投げた組合員と、労組幹部としての責任があるという支会長に1億ウォンの損賠がかけられた。 1月24日に1審の結果が出る。 支会長を除く2人は刑事訴訟で2審で敗訴した。 はやく結論が出る刑事訴訟は、後の民事訴訟に影響を与える可能性が高い。 侮辱感を与えることが罪になった。 12回台湾遠征闘争を敢行した労働者に対して怒りを提供した使用者側には、いくらを問うべきなのか?

イ支会長は「工場を占拠して生産を止めたわけでもなく、最低限の争議行動だけなのに、 このような形の言い値の損賠にはあきれるしかない。 いわゆる過激なデモもしなかったのに、各種の訴訟で金蔓を断ちきるのは口をふさごうとする意図だ」と話した。

現在8億近い仮差押えがかかっているイ支会長。 彼は仮差押えによる心理的苦痛を訴えた。 「口座も凍結され、まともな金融生活が不可能だ。 一生使わずに稼いでも、手にできるかどうかわからない金が差し押さえられ、 損賠が飛んでくるので自殺した人の気持ちが分かるようだ。 家族も闘争2年間、ずっと告訴状が飛んでくる状況を苦しい気持ちで見守っている。 あるいは私よりさらに苦しいかもしれない」

14年前、烈士は自分は先に平穏な天国に行くが、仲間たちが最後まで戦って勝利してくれるように願うといった。 勝利の道はまだ遠いのか、さらに遠ざかったのかは分からない。 だが崖っぷちでも最後まで戦うという労働者がいるので 烈士がいる天国は多少気楽なようだ。 同僚を立ち上がらせて励ましたというその笛で、散った労働者をもう一度呼んでほしい。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2017-01-18 02:26:01 / Last modified on 2017-01-18 02:26:02 Copyright: Default

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