本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:なぜ障害者が線路に転落したのか
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1454847493124St...
Status: published
View


なぜ海兵が線路に転落した障害者を救助しなければならなかったのか?

スクリーンドアがない明徳駅・・・事故当時、公益要員、駅員はいなかった

パク・チュンヨプ記者 2016.02.04 11:36

1月17日、大邱都市鉄道1号線明徳駅の線路に転落した視覚障害者A氏(50)。 2月に入り、彼を救助したチェ・ヒョンス(25)海兵隊兵長のニュースがマスコミにあふれました。 LGグループはチェ氏を正式に採用すると明らかにし、チェ氏が在学している大邱大学校は卒業まで奨学金を全額支払うと明らかにしました。 チェ氏に対する美談の記事があふれました。

▲大邱都市鉄道1号線明徳駅で視覚障害者A氏(50)が線路に落ちました。1月17日午後11時頃。大谷方向のホームから落ちたA氏を発見した軍人チェ氏(25)は危険を押し切り線路に飛び込んでA氏を救助しました。大邱都市鉄道公社はA氏が当時酒を飲んだ状態だったと把握していますが、若干の擦過傷を受けたものの、幸いA氏は健康に特に問題がないそうです。[写真=大邱都市鉄道公社提供CCTV貯蔵]

温かい話も良いのですが、数種類の疑問を感じます。 視覚障害者のA氏はなぜ線路に落たのでしょうか? また、当時落ちたA氏をなぜチェ氏が救助しなければならなかったでしょうか? もしチェ氏が乗り場にいなければ? 誰も落ちたA氏を発見できなかったら、どうなっていたでしょう。

大邱都市鉄道公社は乗り場の安全管理のために公益要員を配置しています。 公益要員は合計508人。 彼らがすべての駅に午前組・午後組と分れて交代勤務をしており、ひとつの駅に5〜6人の割合で働いています。 午前組の勤務時間は6時30分から午後13時30分まで。 午後組の勤務時間は13時から22時30分まで。 事故が起きた時は彼らが勤務を終えた午後11時です。

公益要員が勤務を終えた後は駅員が乗り場など、駅を巡回査察します。 ホームに固定して配置されているのではありません。 十分にA氏事例のような危険な状況が発生することがあり、実際に起きたのです。

約3か月前、安全管理要員の不在が事故につながりかねないと感じた公社は、 公益要員の勤務時間を30分早く始め、30分遅く終わるように延ばしました。 それでも相変らず運行終了時刻までの約一時間ほどは、安全要員がホームに配置されません。 また、公益要員の立場では勤務時間が延びて、不満があるかもしれません。

「公益要員も終電で家に帰ることを望みます。 それでできるだけ勤務時間を延ばして10時30分までです。 その代わりにその後には駅員がモニターしたり巡回査察もします・・・ 当時、現場に駅員はおらず、連絡を受けて降りて行きました。 降りて行くとすでに視覚障害者(A氏)はホームの上にいる状態でした。 事故が起きた明徳駅の場合、利用客が4〜5人程度で少ない時間です」(アン・ボンギ大邱都市鉄道公社安全管理室長)

今回のような事態を防ぐには、安全要員配置を増やすのが王道でしょう。 しかしそれが難しければ次善の策もあります。 まさにスクリーンドア(PSD、乗降安全扉)です。

大邱には2月現在、89の駅のうち40の駅にスクリーンドアが設置されています。 3号線は30の駅全てにスクリーンドアが設置されているので、問題は1・2号線です。 1号線はたった3つの駅(半月堂、中央路、東大邱)、2号線は6つの駅(パノルダン、タサ、テシル、チョンピョン、イムダン、嶺南大)だけに設置されています。 大邱都市鉄道1号線が1997年に運行を始めましたが、2016年までにたった3つだけです。

大邱都市鉄道公社もこの事情を知らなくはありません。 公社は明徳駅には今年上半期までに、残る1・2号線のすべての駅には2017年6月までに、スクリーンドアの設置を終える計画です。

大邱都市鉄道公社広報チームの関係者は 「設置されていない駅が全国で一番多い。 自主的な努力で一部に設置はしたが、その間、国費を要請しても予算がなくて難しかった」と説明しました。 最近、スクリーンドア工事業者の不法下請け情況がわかり、大邱市が監査に着手したりもしましたが、 安全に関係しているだけに早急で透明に解決しなければならないでしょう。

安全に90点はありません。 100点か、0点です。 2週間で大邱地下鉄火災惨事13周年です。 安全管理に隙がないことを望むのは過度な欲でしょうか。

言論はA氏を救ったチェ氏の美談事例紹介に汲汲…地域日刊紙も同じ

地域言論の報道も残念な思いでしたが、 さまざまなメディアにも広く知られた報道を読むと、 ほとんどが事故発生の原因と問題、再発防止対策よりA氏を救った海兵に焦点を合わせていました。

この事件を報道した地域日刊紙の 毎日新聞、嶺南日報、大邱日報の報道です。

毎日新聞:列車進入、危険押し切り…「海兵隊なら当然のこと」
嶺南日報:墜落視覚障害者を救おうと線路に飛び込んだ海兵隊員
大邱日報:線路に落ちた視覚障害者、休暇の海兵が救って注目

すべて軍人チェ氏の美談事例に焦点を合わせました。 安全事故が発生した理由、安全管理要員の実態、事故防止対策については見つかりません。 この事故が報道された他のさまざまなメディアにも、 チェ氏をLGグループが採用することにしたという知らせ、 大邱大学校がチェ氏に奨学金を全額払うことにしたという知らせを集中報道しました。

もちろん美談の事例を報道するのも良いでしょう。 しかし下手をすると大きな事故になりかねなかった事態を報道する時は、 事故の発生と処理、事故防止対策にも関心を傾けるべきではないでしょうか?

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-02-07 21:18:13 / Last modified on 2016-02-07 21:18:14 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について