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CCTVではなく、保育体系の転換が至急だ

[寄稿]保育園CCTV設置義務化推進の問題点

チェミン(全北平和と人権連帯) 2015.01.23 18:27

仁川のある保育園の保育教師が児童を殴った事件が伝えられ、 また保育園の児童人権問題への社会的関心が高まっている。 マスコミは加害者の暴力性に焦点を当て、 これに呼応するかのように事件に怒り、不安を感じる世論が高まっている形だ。

これに対し、与党を中心とする政界は、保育園へのCCTV設置義務化を主要対策の一つとして出した。 しかし筆者はこの対策はむなしいだけでなく、問題を間違って診断していると考える。

社会に大きな衝撃を与える犯罪が発生するたびに、伝家の宝刀のようにCCTV設置が登場する。 しかし安全と事件を予防するためにCCTVを拡大することには大きな意味がない。 情報人権団体である進歩ネットワークが昨年6月末に、 2007年から2012年までの犯罪割合と検挙の割合、 そして公共機関でのCCTVの増加率を比較した。 この資料を見ると、6年間に犯罪予防目的CCTVをはじめとする公共機関でのCCTVは着実に増加し、 2012年には46万1746台であった。

しかしすべての犯罪発生の割合は、2006年に183万6496件、2012年には179万3400件と、大きな減少はなく、 むしろ強盗や強姦などいわゆる4大犯罪の発生割合は8万件以上増加したが、 こうした犯罪の検挙の割合は約20万件減少した。 この資料を保育園の事件に直接当てはめることはできないが、安全の確保と事件の予防という脈絡で見れば、 監視体系を拡大することが問題を予防するにあたり、あまり効率的ではないことが分かる。 事件が発生した保育園でもCCTVが運営されていたが、加害教師はそれとは無関係に児童を虐待した。

この事件の他にも保育園での児童虐待事件が起きると、そのたびに事件の映像が言論を通じて伝えられる。 つまり今回の事件は監視を強化することが児童の人権侵害問題を解決できないことを反証している。

CCTVの拡大は効率性の問題だけでなく、人権の原則にもそぐわない。 監視体系はそれがいくら良い意味で設置したとしても、 個人情報自己決定権、肖像権、私生活の秘密と自由などの人権を侵害する。 しかも、CCTVは保育教師だけでなく、児童の行動も監視するほかはない。

創意と自由を表現すべき児童が、自分の姿が誰かにより常に監視されていると思えば、 行動や考えは制限され、萎縮するほかはない。 そのためCCTV設置の義務化は人権を後退させる行政便宜的な発想でしかない。

そのため、われわれは監視体系を強化するのではなく、 今回の事件が起きた保育園をはじめとする保育体系に問題はないかをまず調べなければならない。 残念だが、あまり幸せな保育環境ではないようだ。 2013年、国務総理傘下の育児政策研究所によれば、保育教師は平均的に法定労働時間より15時間以上長く55.1時間働くが、 一日の休み時間は17分しかなかった。 ここに保育教師1人当りの保育児童の数字を越えて、超過保育をすることも頻繁にある。

代表的な感情労働者である保育教師の労働環境がこのように厳しいものであれば、 その影響は結局、児童にそのまま伝わるほかはない。 これと共に不十分な保育教師資格制度と施設評価認証制度、保育園を金儲け手段とする運営者の問題も提起され続けている。

これらの問題を解決するためには、保育体系の転換が必要であり、これは政府の課題だ。 しかし無償保育を掲げ支援を約束した大統領と政府、与党が自分の責任を転嫁する姿を見ると心苦しいことこの上ない。 だからすぐに不安を取り除くために、簡単なCCTVを選ぶのかもしれない。

だがCCTVは問題を解決することはできず、飲めば飲むほど渇きを感じる海水と同じだ。 健康な保育に対する渇きを解決するためには、監視の拡大と強化という方法から抜け出し、保育体系を転換することが切実だ。 それが今回の事件があたえる苦い教訓だろう。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-01-24 21:15:39 / Last modified on 2015-01-24 21:15:40 Copyright: Default

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