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核発電の裏に隠れた3つの不都合な真実

[脱核連続寄稿] (4)差別と不正義で回る核発電所

チョン・ホソン(エネルギー活動家) 2012.07.24 17:32

核発電所はその危険ばかりでなく、核発電所をめぐる差別構造と不正義がある。 労働の差別、地域の差別、世代の差別が核発電所を取り巻く原発業界の多くの 論理の後に隠された不都合な真実だ。果てしない死を呼ぶこのとんでもない エネルギーのために、いつまでこんな不当な構造を容認しなければならないのか?

『被曝労働』で回る核発電所
原子力産業に従事する労働者の90%は非正規職

核、放射能がいくら危険でも、誰かがその中で働かなければならない。まさに 高線量の放射能を押し切って働く原発労働者だ。福島核惨事がなければ世間の 関心も引かない原発労働者。核発電所の日常的な労働で放射能被曝に露出し、 最も危険な労働をしている原発労働者は、まだ爆発事故の収拾に投入されている。

一般人の年間累積被曝量基準値は1ミリシーベルトだ。しかし核発電所労働者の 基準値は違う。彼ら労働者の年間累積基準値は100ミリシーベルトで、一般人の 100倍の危険の下で働く。だが日本は福島事故の後、これより2.5倍高い250ミリ シーベルトへと上方修正した。誰かが事故収拾のために投入されなければならず、 そのために許容基準を上げざるを得なかったのだ。

こうした放射能基準値は非常に欺瞞的だ。普段よりはるかに危険な状況で基準 を上げるのは常識的だが、原発労働者には当たらない。さらに大きな問題は、 福島原発で働く労働者には事前の安全措置もきちんと行われていないという点 だ。すでに40〜50万の原発労働者が被曝した可能性が提起されている。

▲福島原発から20km離れた事故収拾前進基地Jヴィレッジの前。労働者はJヴィレッジから出退勤し、主に事故原発周辺の津波残骸処理と汚染除去作業をしている。

ここでの労働の差別構造は核発電所でさらに克明に現れる。

原発労働は重層的な下請構造になっている。下請の下請、再下請の構造で日本 では6次下請も存在する。原子力産業に従事する労働者の90%は非正規職だ。こ の構造の中で、労災処理や生命と健康の権利をしっかり行使できるだろうか? 韓国でも1999年に蔚珍原発で急性骨髄性白血病で死亡した労働者が2007年、初 めて労災認定を受けた事実は、惨めな労働権の実状を実感させる。

福島事故の収拾に投入される労働者は一日14万ウォンの日当で働くといわれる。 原発労働者はほとんどが原発で働くが、核燃料施設(製錬、処理、再処理そして 稼動中の原発)や、核廃棄場や保存施設でも働いている。下請労働者は同じ原発 で何度も働くこともあるが他の発電所に変わることもある。それで、彼らは 『原発ジプシー』と呼ばれることもある。

労働権が墜落し、社会脆弱階層に転落するほど生命と安全が保証されなくなる 死の労働は続きそうだ。徹底的に労働の差別に基づいたシステム、これが 核発電所の労働だ。

電力を生産する地域と消費する地域の差別と不正義
ソウルと首都圏、総電力の40%を消費...ところで核発電所はどこに?

密陽送電塔反対運動が7年続いている。今年の1月にイ・チウおじいさんが焼身 で抵抗したが、結局韓電は工事を再開するという。

▲韓国電力の送電塔建設を防ぐために設置した密陽ピョンパ村のおばあさんたちの小屋

新古里原発3、4号機で生産された電気を送る送電塔、その上、まだ承認もされ ていない新古里原発5、6号機の電力もあらかじめ考慮している送電塔は密陽市 オ面に500m間隔でアパート40階の高さの送電塔を69本もたてるという計画だ。 ほとんど先祖代代耕してきた水田と畑の中に765kv鉄塔から撒き散らされる電磁 波にも、韓電は『安全だ』という論理を展開する。

全国にある送電塔の数は役1600本。全国を鉄塔と電線でつないでいるといって も過言ではない。電気を送るために立てられる送電塔は、生態系を破壊し、農 地も剥奪し、壊して地域民の犠牲を呼ぶこの不都合な真実を、密陽の住民は 暴露しているのだ。

韓国の総電力の40%近くをソウルと首都圏が使っている。首都圏の近隣には絶対 に無い核発電所が、遠い東海岸ベルトに集中している。そして続く数百本の送 電塔。国家の中央供給式の電力需給方式も問題だが、核発電所に依存する限り、 無力な地域の犠牲を担保にするほかはない。これが核発電所が持つ構造的な 地域差別、不正義の現実だ。

日本でも核発電所の立地選定基準は、最も開発が遅れ、人口が少ない郊外、最 も抵抗がない所に作るという指針がある。福島もそんなところだった。万一、 事故がおきても被害を最小化できる所。そこが核発電所の立地だ。これは、核 発電所が安全ではないということを自認するようなものだ。

亡くなったイ・チウおじいさんの弟のイ・サンウおじいさんはインタビューで 次のような話をした。この言葉には、すべての真実が含まれている。「ソウル は夜は花畑だ。そんなに電気を使い、電気が足りない? ちょっと電気を消せば いいのに、電気が必要なら電気工場をそこに作ればいい。なぜ人を殺してまで ここに引っ張ってくるのか? それが理解できない。それが腹立たしい」

子孫の生存の可能性さえ無視する核発電所
人類の歴史は20万年なのに... 高水準核廃棄物の自然消滅は24万年

核発電所の大きな問題の一つは核廃棄物、つまり核廃棄物問題だ。核廃棄物は 原子力を利用する全過程で発生する廃棄物を示す。原子力勤務者が使った保護 服、紙、手袋などから、原子炉の空気、壊れた実験道具、パイプ、フィルター、 放射能を入れた箱、ウランを採掘して残ったカス、廃棄された原子炉のような ものが生まれ、最悪では使用済核燃料、再処理廃棄物など、全てが核廃棄物だ。

これらの核廃棄物は途方もない放射能を出し、現在の科学では除去したり処理 する方法は全くない。世界で一か所も高水準放射性廃棄物を処分する場所がな いということは、これがいかに危険な物質なのかを再確認させる。数百トンの 核廃棄物はドラム缶に入れて、核発電所内の臨時貯蔵庫に積み上げ続けるだけだ。

▲低水準廃棄物貯蔵庫[出処:韓国放射性廃棄物管理公団]

放射性物質はそれぞれの半減期があり、ほとんどなくなるには半減期の10倍に 当たる歳月が必要だ。ヨウ素は半減期8日、セシウムは30年、プルトニウムの半 減期は2万4000年だ。ここに10をかければ自然消滅する時間が出てくる。

核廃棄物を語る時、われわれは中低水準廃棄物と高水準廃棄物を言う。プルト ニウムのような高水準廃棄物は、自然消滅に24万年かかる。24万年を想像する ことができるか? 人類の誕生は20万年前だ。ホモサピエンスの時期だ。24万年 の間、この高危険廃棄物を誰かが管理しなければならない。誰が? どのように? 想像できる時間だろうか? 悲しいことに今その廃棄物が世界のあちこちに数百 トンずつ溜まっている。

中低水準放射能廃棄物も同じだ。現在建設中の慶州の核廃棄場は、中低水準の 放射性核廃棄場だ。廃棄場工事現場に今も一日に5千トンの地下水が流出してい る。工事が行なわれる所は地盤自体が軟弱で、地下水が流れ続ければ廃棄場は 結局水に浸り、サイロと呼ばれる廃棄場倉庫に水が入るだろう。この水を通じ、 放射能物質はサイロの外に漏出し、その放射能物質は地下水とともに住民の 飲料水になるだろう。

原子力安全技術院は、慶州廃棄場は完工後に水に浸るという事実と、時間が経 つと、廃棄場の中に地下水が流れ込むという事実、この地下水を通じ、放射能 が周辺に漏出するという事実を自ら話した。また、このように一度放射能が漏 出すれば、保守工事は不可能であり、すべての放射能が漏れ出るまで続くとい う事実を放射性廃棄物管理公団の文書でも確認されている。こうした状況でも 工事は進んでいる。一度漏出した放射能は数十年、数百年、いやそれより長い 時間が経っても消滅せずに残る。

子供たちに譲る偉大な遺産ではなく、子供たちに残す最も危険な遺産になって いる。これは今の世代の豊かさのために、未来の世代の生存の可能性も踏みに じる核発電所、未来世代の健康で幸せな生活の権利も無視される核発電所の もうひとつの差別と不正義だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-07-25 17:30:57 / Last modified on 2012-07-25 17:31:01 Copyright: Default

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