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教員地位回復のために戦う時間講師(1)

失われた時を求めて(6)

ヒジョン(執筆労働者) 2011.02.04 17:33

国会前、味気ないビルの谷間に小さなテントが単独で建っている。テントが建 てられて4年になる。60を越えた老夫婦がここで座り込みをしている。キム・ ドンエ(65)、キム・ヨンゴン(63)夫婦だ。彼らは『時間講師教員地位回復』を 掲げて戦っている。6ケ月単位の契約に依存する非正規教授、時間講師。戦いは 非正規職の宿命である『解約』から始まった。

恩恵を施したという大学

ハンソン大学で東洋史を教えていたキム・ドンエ教授は、92年に大学から待遇 教授を提案される。教科部には専任講師として名前を上げるが、実際には時間 講師の身分の彼らを待遇教授という。専任教員の充足率を上げるための大学の 抜け道だ。

何の力もない講師に抜け道を云々できるだろうか。大学は待遇教授になれば、 これまでの講師料の2倍を払うといった。断れなかった。その上彼女は労働運動 をしている夫と、大きくなる二人の子供を持つ実質的な家長だった。講師料で 生活するにはギリギリだった。時間講師の境遇はそうだ。講義あたり3、4万ウォ ンの講義料がすべてだった。講義がない休みは困窮期だった。

そうして数年を送れば専任教授にさせる慣例があるという周辺の話も彼女には 希望だった。1年単位で再契約をする待遇教授で暮した。7年の時間がたった。

1999年の秋学期、彼女は半分に減らされた講師料を受け取った。不思議に思い、 大学側に問い合わせた。学校の回答は次のようだった。『あなたは今待遇教授 ではなく講師だ。』

事情はこうだった。裏任用をしたことが教科部にばれて突然、彼女の職位を解 除させたのだ。彼女は一方的な解約を受け入れなかった。しかし学校は『7年6 か月間、恩恵を与えた』のだから黙って受け入れろといった。

じっとしていられなかった。単に半分になった講師料の問題ではなかった。 時間講師で受けた悲しみにこれ以上耐えられなかった。彼女の年齢は50を 越えた。一度も教授になれなかったが、もう未練はなかった。彼女は大学を 相手に訴訟をした。職位解除および減給無効訴訟だった。結局、講師の職を 失い、退職金支給訴訟も同時にすることになる。

講師は労働者でも教員でもない?

法院は『講師には法的地位がない』という理由で訴訟を棄却した。時間講師は 教員でも労働者でもないという。時間講師と大学は従属関係がないという判決 が下された。

学校で学生を教えない先生(教員)ではなかった。その上、労働者でもないという。 彼女には認めることができなかった。労働部に問題を持ち込んだ。勤労基準法は 講師の地位を明らかにすると考えた。

労働部は時間講師を『短時間労働者』と判断した。だから退職金も受け取れな かった。研究時間と授業準備、学生指導時間がすべて排除され、ただ週9時間の 講義だけでの結論だった。

国家人権委員会(以下人権委)に陳情をした。結局、人権委で『講師は差別され ている。制度改善・身分を保障しろ』という勧告を受け取った。このすべての 過程に5年かかった。

何も変わらなかった。彼女が得たのは、人権委の強制力のない勧告だけだ。 失ったものは多かった。講義も、時間講師の友人も失った。友人は大学の顔色 をうかがい、彼女と距離をおいた。5年を単独で戦った。法廷で争えば争うほど 彼女は驚いた。

『これほど講師に何の法的地位もないとは。』

短時間労働者、パートタイマーだった。どんな権利もなく大学が望めば荷物を 担いで学生を教えなければならなかった。どんな法も講師を保護してくれなかっ た。不当だった。彼女は〈大学講師教員の地位回復と大学教育正常化闘争本部 (以下、闘本)〉を作った。国会前に座り込みテントを張った。彼女の夫、キム・ ヨンゴン教授(高麗大非正規教授)も合流した。2007年9月の事だ。

消えた教員の地位

老夫婦を路上に追いやったのは何か? 闘本の要求は『時間講師教員地位回復』 だ。講師の教員の地位は77年の教育法改正で消えた。朴正煕政権の『知識人 分割政策』の一つだった。講師の地位を不安定にし、学界の口を塞いだのだ。 その後、時間講師は『行商人』の身分になった。

講師の境遇を遠回しに言った冗談がある。

「教授様、研究室はどこですか?」

学生が尋ねると、時間講師が答える。

「ソウル ナ 9448」

講師が言ったのは、自分の車のナンバーだ。研究室も教授室もない。その上、 学校が用意した2坪ほどの共同休憩室が全て。講師料は時間当り平均3万5000ウォ ン(2009年基準)だ。週9時間講義をしても一年の賃金は1000万ウォンにもならない。 都市勤労者の最低生計費が1600万ウォンだという。時間講師で暮らすのは不可能だ。

しかし時間講師はどんな不当な扱いも話さない。彼らが時間講義の境遇を甘受 するのは、教授になるという希望だ。しかし全教授のうち非正規教授(招聘教授、 兼任教授、待遇教授、講義専門担当教授、非定年トラック、時間講師)が占める 割合は55%に至る。時間講師の数は10年前より1万5000人も増えた。教授への門 の敷居は日々高くなる。

用役業者職員、非正規職で学校を満たす大学財団だ(大学行政職員、清掃労働者、 校内食堂労働者彼らはほとんど非正規職だ)。そんな大学が時間講師を正規職に 転換する必要を感じないのは当然だ。むしろ2年以上勤務すれば正規職で採用し なければならないという非正規保護法を避けるために、2年以上講義した講師に 次の学期講義を与えずにいる。

教授任用の機会が狭まり、時間講師の競争は激しくなる。自然に権利を主張す る声は小さくなる。指導教授の言葉一つで教授任用が分かれる状況だ。教授の 言葉は法になる。誰かはこの関係を〈教授と弟子=従属関係=教授=犬〉と告発し た。そして自ら命を絶った。

ある時間講師の死

昨年5月25日、ソ・ジョンミン博士(45)は自分の家で煉炭ガスで命を絶った。 数枚の遺書を残しただけだった。遺書で彼は妻と子供に許しを乞うた。そして ひとりを告発した。

「私はストレス性自殺です。B教授様を処罰して下さい。B教授様にされたこと の痕跡は私のe-mailに一部あり、韓国研究財団研究室、遺書に書いた内容、 そしてB教授と書いたすべての論文(概略54冊)は私が書いた論文で、名前だけが 違います」。

彼は朝鮮大英語英文学博士で時間講師であった。ソ・ジョンミン博士の告発は 自分の論文を盗用した教授に終わらなかった。

「教授一匹(席)が1億5000万、3億ウォンだそうです。私は二回提案されました。 2年ほど前、全南の某大学が6000万ウォン、2か月前、京畿道某大学が1億ウォン でした。腐っています」。

暗黙的な事実の教授任用生臭かった。彼は生の最後の要請をした。

"講師たちそのまま置かれてはいけません。捜査依頼です。"

数社依頼します

2010年5月最後の日、ソ・ジョンミン博士追慕ミサが国会前であった。キム・ドンエ教授は顔に陰を垂らしたまま企画(祈祷)をした。顔色が良くなかった。何日行った病んだといった。

ソ・ジョンミン博士の遺書に彼女の名があった。

「キム・ドンエ教授様! 申し訳ありません。一緒に闘争することもできません でした」。

その一行が彼女を困惑させた。『私が1000日たっても問題を解決できず、また 尊い命を失ったんだ』。彼女が戦いを始めた後、9人の時間講師が自ら命を絶った。 彼女は狭いテントの中で幾日か病床についた。

大学、教育科学技術部、国会前で3年以上1人デモをした。それでも問題は解決 しなかった。教員の地位回復を扱った高等教育法改正案は毎年国会に発議され たが、いつも議論もなく廃棄された。

しかしソ・ジョンミン博士の死がマスコミで伝えられた。遺書は公開された。 彼の生の最後の要請だった捜査要請は受け入れられた。教授不正事件が捜査に 入った。彼の死で世論が形成され、社会統合委員会は時間講師の教員地位改正 方案を出すといった。

ソ・ジョンミン教授の遺書の最後には、自分が教えた学生への言葉がある。

「顔を上げられないほど申し訳ありません。皆さんの成績の処理ぐらいはと考 えましたが、我慢できませんでした。一生懸命生きてください。また謝罪しま す」。

最後まで弟子たちのことを思い浮かべていた先生、ソ・ジョンミン博士が教員 と認められるだろうか。多くのソ・ジョンミン博士たちがもうこれ以上は不当な 待遇から保護されるか、期待が集まった。

誰が石を投げられるか

その後、半年たった。B教授は無嫌疑処理された。ソ・ジョンミン博士が告発し た論文代筆、教授採用不正容疑は認められなかった。B教授は、ソ・ジョンミン 博士の論文を指導しただけだといった。

この事態についてキム・ドンエ教授は話した。

「イエス様がこう言いました。罪がない者たちだけあの女性に石を投げろと。 すると誰も投げられませんでした。同じです。容疑を受けた教授に石を投げら れますか。大学社会では罪ない教授と講師だけが石を投げられるからです」。

ソ・ジョンミン博士事件をめぐり、韓国非正規教授労組はキム・ドンエ教授を 名誉毀損で告発した。韓国非正規教授労組のチョン・ジェホ朝鮮大分会長の 名誉を毀損したという理由だった。戦いは新しく始まっていた。(続く)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-02-05 21:52:28 / Last modified on 2011-02-05 21:52:45 Copyright: Default

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