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アイドルポップと芸能プロダクション:ビッグ4の生存方式

[想像を分けあう] SMエンターテイメントからYGファミリーまで

イ・ドンヨン(韓国芸術総合学校教授)/ 2010年03月15日0時57分

▲芸能プロダクション ビッグ4

韓国のアイドル芸能プロ・システムは、SMエンターテイメントの登場で始まっ たと言っても過言ではない。1990年代中盤に「HOT」というアイドルグループを 誕生させたSMエンターテイメントは、既存の音楽分野の演芸プロとは違うシス テムを示した。1990年代以前、歌手は主にレコード会社の所属として活動する ことが多く、個別に活動する歌手は一人のマネジャーが管理する零細な運営方 式から抜け出せなかった。芸能プロの社長は、他の歌手のロードマネジャーを してから独立するケースがほとんどだった。しかし1990年代に「ソテジワアイ ドゥル」の登場で韓国の大衆音楽に対する国内ファンの関心が高まり、国内の 芸能プロダクションもシステム化・専門化する動きを見せ、SMエンターテイメ ントは韓国初の『企画型-企業型』芸能プロダクション・システムを作った。 SMエンターテイメントがこれまでの芸能プロと違う点は、『アイドル』という 特定の対象を選び、独自のマネジメントシステムで訓練してデビューさせると いう一種の『インハウス・ファームシステム』(In-House Farm System)を備え ていた点だ。SMエンターテイメントは『ソテジワアイドゥル』の人気を目撃し、 10代のファンの消費能力を看破して、彼らに最も親しく近付けるアイドルスター を直接育成する戦略を選んだ。そのためにSMエンターテイメントは、1990年代 日本のJ-pop市場で頭角を現わしていたアイドルグループのマネジメント・シス テムをベンチマークし、国内に適用させ。こうして、初めて歌謡界にデビュー したグループがまさにHOTだ。

アイドルポップは1980年代、アメリカの音楽市場が不況にあった時、これを打 開するため、まだ音楽消費者層ではなかったティーンエージャーにアピールす ることができる同年代のスターを、オーディションで発掘、徹底して企画管理 する戦略で形成された。米国のポップ市場は、10代の消費層のため「ニュー・ キッズ・オン・ザ・ブロック」というアイドルグループを作り、日本は米国よ りかなり前から10代の音楽ファンを狙ったアイドルグループを作っていた。米 国と日本のアイドルグループは、プロダクションの徹底した計画と管理の下で 人為的に作られた企画型スターだが、SMエンターテイメントは韓国で初めてこ うしたアイドル芸能プロデュースを成功させた。一つのグループがデビューす れば、彼らを支援するスタッフはロードマネジャーから衣装、ヘアー、メーク アップ・コーディネイター、警護員まで一つのチームを作り、運営される。

アイドル芸能プロデュースの元祖:SMエンターテイメント

SMエンターテイメントの芸能プロデュースの最大の特徴は、公開オーディショ ンと練習生トレーニングシステムで、良質の10代予備スターを競争させるとこ ろにある。オーディションを通過した練習生は、初めから該当グループのメン バーにはならず、練習生の身分で契約をする。彼らは練習の過程から互いに競 争して適切なパートナー探しに努める。SMエンターテイメントからデビューし た"HOT"や「神話」、「東方神起」はみんな、初めからチームを決めて準備した のではない。彼らは練習生の時期を経て、ある程度実力の検証を受け、一定期 間たてば似たスタイルの練習生とチームを組み、デビューの準備をする。言わ ば企画段階からデビューまで、徹底して企画会社のインハウス体制で管理する という点だ。

このような開放的で競争的な練習生プロダクション・システムは、今では普通 の条件になったが、1990年代中盤まではなじみの薄い方式だった。このような 競争的な練習生システムはしっかりした資本力に基づき、すでに検証されたチー ムをデビュー前から構成する長所を持っている反面、デビューまでに必要な製 作期間がますます長くなるという短所を持っている。なぜならSMエンターテイ メントとしては、すでにデビューしているチームの管理に加え、新しいグルー プのデビューの準備をする芸能プロデュースの重複は時間ごとに累積するから だ。いくら大きな芸能プロダクションでも、大きな製作資本が必要なアイドル グループを一度にデビューさせ、人気を維持するのは限界がある。

それで企業型の大規模アイドル芸能プロダクションは、彼らを長期専属契約で 縛る一方、練習生として活動する他のチームのデビューの時点を考えて、適切 な時期に解体とデビューを連係させる方法を取る。生まれつきアイドルスター が持つ短い活動期間を埋め、リスクが高い既存のグループの再契約方式より、 新しいアイドルグループに投資するほうがはるかに有利だと判断できる。SMエ ンターテイメントがHOTを始め「神話」、「フライ・ツー・スカイ」、「東方神 起」など所属アイドルスターの活動期間がおよそ5年で、無理に再契約しない理 由は、まさにスターになる準備ができた予備アイドルを管理するファームシス テムが堅実なためだ。

最も韓国的なアイドルポップ・プロダクション:DSP

もちろんこのような方式の芸能プロデュースシステムは、SMエンターテイメン トだけではない。SMとほぼ同時期にアイドルスターを製作したDSPエンターテイ メント(旧大成企画)もSMと似た方法を取った。DSPは1990年代、「ジャックスキ ス」と「ピンクル」をデビューさせ、SMの"HOT"と"SES"との競争体制を作った 最も土着的な芸能プロダクションだ。DSPの芸能プロデュースシステムも、しっ かりした練習生グループを保有し、彼らに一定期間の訓練をして最適のメンバー を組み合わせてチームを作った。ただし、DSPはSMと異なり日本のアイドル芸能 プロデュースシステムのノウハウを受け入れず、自然発生的な管理システムを 作り、国内活動を中心として製作に無理のないマネジメントをした。DSPのアイ ドルグループの音楽的スタイルが韓国的なダンス音楽に忠実で、グループ別の 活動期間もSMより比較的長い理由も、無理の方式を選択したためだ。興味深い ことは、DSPのアイドルグループはSMのアイドルグループとのマッチアップ方式 を選択しつつも、彼らの主要活動期間より少し遅く活動を選択する点だ。1990 年代の"ジャックスキス-HOT"、"ピンクル-SES"の対決の構図は、2000年代初期 "Click-B-神話"の対決の構図につながり、今は"SS501-東方神起"、"カラー-少 女時代"の対決の構図で再生産されている。DSPは、SMと国内のアイドルポップ 製作の両極の構図を維持し、同時に2000年代中盤からは芸能娯楽番組、ドラマ、 映画部門まで拡大し、総合エンターテイメントグループに拡大しようとすると いう差別化を試みた。

『モータウン』の韓国的変形:JYPエンターテイメント

2000年代初期に韓国アイドルポップ市場はSMとDSPに二分化したが、韓流ブーム とアイドルポップ市場の国際競争力強化で新しいプロダクションが登場し始め た。アイドルポップ市場に本格的に飛び込んだ代表的なプロダクションが、ま さにJYPエンターテイメントとYGエンターテイメントだ。こられ二つのプロダク ションの共通した特徴は、すでに韓国大衆音楽市場でスターの隊列に上った ミュージシャンが、自分の関心がある音楽ジャンルに適したアイドルスターを 直接製作するという点にある。1999年に設立したJYPは代表パク・チニョンの音 楽的スタイルがそのまま反映されている。1970年代にモータウン・レコードを 根幹とする黒人ブルース・ソウル音楽とファンキーなスタイルを現代化する音 楽的なコードは、以前所属ミュージシャンだった『ピ』だけでなく、最近活発 に活動している『ワンダーガールズ』や『2PM』、『2AM』にも適用される。 JYPのアイドルポップ製作方式は、大きく2つに区分して話せる。まず、製作者 のパク・チニョンが作曲と振りつけ、コーディネーション、プロモーションに すべて関与する能力を持っているため、所属アイドルグループの音楽的スタイ ルをすべてデザインできるという長所を持っている。『ワンダーガールズ』の 『モータウン』復古スタイルや2PMの美少年セクシュアリティーのイメージは、 すべてパク・チニョンが好む方式だ。また『ワンダーガールズ』の海外進出も、 パク・チニョンのグローバルなマネジメント戦略と相対している。パク・チニョ ンは『ピ』をワールドスターにするために、韓国からアジア、アジアからまた 米国へとその領域を広げた。アイドルグループを製作する韓国のプロダクショ ンのほとんどは国内活動を中心として、日本、中国、東南アジアなどのアジア 市場を中心に海外進出を計画しているが、JYPエンターテイメントはポップの本 流である米国で活動する計画を持っている。2009年に「ワンダーガールズ」が 米国に進出し、米国ビルボードのホットチャート100位圏内にアジアのミュージ シャン初めて入ったのは、事前に米国の音楽界で作曲者として活動しているパ ク・チニョンの音楽的能力と幅広い人脈という要因が大きい。

ヒップホップ中心のアイドル・コミュニティ・グループ:YGファミリー

そしてYGエンターテイメントはヒップホップ・ミュージックのファミリー・コ ミュニティを強調し、最も成功した黒人ヒップホップ・ミュージックの主流企 画会社になった。YGのヤン・ヒョンソクは「ソテジワアイドゥル」解体した後、 製作者に変身し、『ヒョン企画』を作り、キプシクスというグループのプロ デュースに失敗した後にプロデュースした「チヌション」が成功してYGファミ リーを作り、ウォンタイム、フィソン、ピンママを大ヒットさせて、今のYGエ ンターテイメントを作った。YGは、SMでもDSPと共に典型的なアイドル グルー プをプロデュースする専門プロダクションとして出発したのではなく、黒人音 楽を中心にヒップホップクルーを作ろうとしていたが、2006年に「ビッグバン」 をプロデュースしてから、アイドルポップのプロデュースに関心を持ち始め、 2009年「2NE1」のデビューで国内アイドルポップ市場の旋風を巻き起こした。

YGのアイドルポップの製作特性はJYPと対照的だ。YGはプロデューサーのヤン・ ヒョンソクの音楽的介入を最小化し、メンバー個人の能力を極大化する戦略を 追求する。たとえばビッグバンの場合、チームのリーダーのチドゥレゴンに作 曲と作詞をすべて担当させ、TOPにはラップを、太陽にはボーカルを任せる。 「ビッグバン」と他のアイドルグループとの違いは、メンバー自らが自分たち の音楽制作と音楽スタイルを作ることにある。またメンバーごとに各自の個性 を生かし、差別化されたソロレコード製作と個別の活動を保障するというのも 特徴だ。YGの水平的なコミュニティ精神は他のアイドルポッププロダクション のうちコミュニティ精神が最も強く、メンバーと製作者間の対立を最小化する 要因だ。"2NE1"のようなものがグループのスタイルと言えるように、YGは可愛 くてセクシーでロリータ・シンドロームを刺激させる典型的なグループ・プロ デュースの因襲から抜け、反抗的で逸脱的なイメージのグループを作り、むし ろ10代女性ファンの好みにあう差別的な製作方式を示した。

▲主要アイドル ポップ プロダクション比較

韓国におけるアイドルポップ文化資本は、大衆音楽産業を思うままにする絶対 的な力を行使している。レコード産業だけでなく、デジタル音源市場、放送メ ディア産業、イベントプロモーション、芸能プロデュース市場でアイドルポッ プは核心的な文化資本として機能する。多くの芸能プロダクションがアイドル ポップのプロデュースに血眼なのもそのためだ。韓国の芸能コンテンツがアイ ドルポップに傾く限り、アイドルを製作する芸能プロダクションの闘いは続く だろう。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-04-04 09:18:28 / Last modified on 2010-04-04 09:18:31 Copyright: Default

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