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News Item 20051109ka
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「われわれアメリカの民衆がFTAAを葬った」

4-5日、全米自由貿易地帯(FTAA) 米州サミット決裂、反世界化運動の快挙

ウォンヨンス(労働者の力)

深刻化する帝国主義の危機

11月4-5日、アルゼンチン南部の保養地マルデルプラタで「貧困と闘うための 雇用創出と民主政治の強化」の旗じるしの下に集まった第4回米州首脳会議 (Summit of the Americas)はブッシュの惨敗で終わった。ブッシュを含む34か 国の西半球(南北アメリカ)首脳が参加して開かれた米州首脳会議は、2000年 カナダのケベックでの事件のように反世界化労働者・民衆運動の抵抗にぶつかった。 11月4日にマルデルプラタの通りを埋めた5万人の抗議デモ行進は、ワールドカップ 競技場に集まり、真のラテンアメリカ民衆の意志を表し、ブッシュが追求する FTAAの死亡を宣言した。

ラテンアメリカ:反帝国主義政治の拡散

1973年9月11日、アジェンデ民衆連合政権を打倒したピノチェトのクーデター を契機に始まった新自由主義攻勢は、半世紀で南米大陸を焦土にした。国連の 統計によれば、南米の5億8千万のうち9600万人が月1ドル以下で生存している。 2004年の南米の経済成長率は5.5%だったが、相変らず2億2千万人が貧困層に属 している。新自由主義四半世紀が持たらしたみじめな成績表だ。

ウゴ・チャベス大統領が4次首脳会談に先立ち記者会見をしている。http://www.congresobolivariano.org

これに対し、1994年のサパティスタ蜂起以来、1998年にチャベス政権が主導す るボリバリアン革命、2001年12月のアルゼンチン蜂起、2002年6月ペルーの電 力民営化反対民衆蜂起、2003年10月のボリビアの天然ガス国有化のための民衆 蜂起など、下からの民衆闘争が爆発している。また、チャベス政権の他にも 2002年10月にブラジルのルラ、12月にエクアドルのクティエレス、2004年10月 にウルグアイのバスケスなど、民衆闘争に力を得た中道左派政権が登場、キュー バとベネズエラを中心とするラテンアメリカ版「悪の枢軸」が構築され、2世 紀にわたる米国の政治経済的支配に対する反帝国主義戦線が構築されている。

今回の米州首脳会談は、まさにこのように激動する情勢の中で米国のブッシュ 政権とラテンアメリカ政権が試験台に上がる契機になったのだ。

米州首脳会談:5対29

11月4日の午後に開幕した米州首脳会談では、ブッシュと米国に対抗する5か国 ブロックが形成された。ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、 ウルグアイの首脳たちは、南米が直面している緊急問題である貧困と雇用のた めの具体的な計画を主張し、ブッシュが提示したFTAA再協議を強く拒否した。 特にブラジルのルラとアルゼンチンのキルチノは、米国の農産物補助金に対す る米国の確実な言明を要求してFTAA再協議カードを拒否した。

ブッシュとメキシコのビンセンテ・フォックスを中心とする29か国は、5か国 を除いて新しい交渉を試みたが、これら5か国は事実上、ラテンアメリカの人 口とGDPの半分を抱える実力者ブロックで、それ以上の自由貿易交渉は強制で きなかった。首脳会議は何の成果も出せずに終わるほかはなかった。

もちろん、「アメリカ・ボリバール代案(ALBA)」を主張して、原則的な反対を 主張するベネズエラのチャベスと、条件付き反対を主張するブラジルのルラの 間には一定の意見の差があった。だが、ブッシュ政権の一方的な自由貿易協定 の強要に反対するブロックの政治的勝利でという帰結になった。

全米自由貿易協定(FTAA)は、1994年にクリントン政権によりマイアミで発足し た米州首脳会談の重要な議題として2005年1月を目標として交渉を進めてきた。 しかし、反世界化運動の爆発的成長、特にラテンアメリカでの無差別的な新自 由主義攻勢の結果、貧困と社会の二極化が深刻化したことで、FTAA反対運動は 全大陸的に広がった。特にベネズエラのチャベスによるボリバリアン革命が、 このFTAA反対運動と反新自由主義戦線に参加したことで勢力関係は変わり、 米国が強制しようとする「マイアミ精神」は破産した。

11月1-3日、第3回民衆首脳会談

11月1-3日に西半球社会運動ネットワークの主催で開かれた第3回民衆首脳会談 は、米州首脳会談に対応する民衆運動の求心点だった。約600の草の根運動、 労働組合、および政治組織から5千人あまりの活動家が参加し、150余りのパネ ル、ワークショップ、全体会議など、延べ12000人が参加してFTAAと米帝国主 義に対抗するラテンアメリカ民衆の意志を明らかにした。

開幕式では、アルゼンチン出身のノーベル平和賞受賞者であるアドルポペレス・ エスキベルが演説で「われわれ民衆は軍隊を必要としない。特に北米から来る ものは遠慮する。われわれが必要なのは、医療と教育資源であり、死ではなく 生のための資源を望」と宣言した。

一方、今回の民衆首脳会談には、唯一、米州首脳会談から除外されたキューバ の代表団も約300人が参加した。また、閉幕式ではキューバの国会議長リカル ド・アルラルコンが演説し、キューバ革命へのラテンアメリカの連帯を再確認 した。

金曜日の反米-班FTAA闘争

5万人のデモ隊はマルデルプラタ中心街から、ワールドカップ サッカー競技場に3時間の行進をした。http://www.congresobolivariano.org

1月4日未明、首都のブエノスアイエスで、ディエゴ・マラドーナとボリビアの エボ・モラレス、ボスニアの映画監督のエミール・クストリカ、 アルゼンチ ンの作家で議員のミグエル・ボナソなどを乗せた貸し切り列車、Alba Express が500kmを走ってマルデルプラタに到着した。寒い中、雨がふってきたが、金 曜日の午前には5万人のデモ隊がマルデルプラタの中心街から、3時間、ワール ドカップ・サッカー競技場へと行進した。

「ブッシュ反対! もうひとつのアメリカは可能だ! (No to Bush!Another America is possible!)」というスローガンに結集した5万人のデモは、ラテン アメリカ全域の共同闘争の一環だった。この日、アルゼンチンの首都ブエノス アイレス、ブラジルとウルグアイでもマルデルプラタの闘争に連帯する共同闘 争が行われた。特にブッシュが11月5日に訪問する予定だったブラジルでは、 ブラジルの反米デモ:首都ブラジリア、リオデジャネイロ、パルバドル、ペル レムなどの都市と、マットグラッソソスウ州(パラグアイとの国境地帯で米軍 配置予定地)で反米デモが行われた。

ワールドカップ競技場に殺到した5万人の大衆集会の中心は、もちろんベネズ エラのチャベスだった。彼は午後に開幕する首脳会談の前に、民衆闘争に参加 した。チャベスは一声で「全米自由貿易協定は死んだ! われわれアメリカの民 衆がFTAAを葬った」と宣言した。新自由主義と帝国主義に反対する民衆が結集 するここが、真の米州首脳会談だと付け加えた。

2時間にわたるチャベスの熱情的な演説が終わった後、キューバの歌手、シル ビオ・ロドリゲスとアルゼンチンの歌手、ビクトル・エレディアなどが参加す るラテンアメリカの夢と愛、人生を歌う大衆コンサートが開かれた。

一方、首脳会談が開幕した時、マルデルプラタ通りでは市街戦が起きていた。 首脳会談のセキュリティ確保に配置された8千人の警察のものものしい警戒に 対し、数百人が石と火炎瓶を投げ、銃を撃ちながら実力対決を繰り広げた。彼 らは反ブッシュのスローガンを叫んで警察と衝突し、デモ隊は50店ほどの商店 を攻撃して家具と事務器を焼き、バリケードを構築した。戦闘の渦中で1つの 銀行で火災が発生した。警察は50人ほどのデモ隊を逮捕した。

また、ブエノスアイレスでも警察に対抗する街頭闘争が行われ、外国系銀行と マクドナルドなどをデモ隊が攻撃した。今回の首脳会談に合わせて、左派のナ ショナルセンター(CTA)がFTAAと米国帝国主義反対ゼネストを宣言し、主な教 員労組も1日ストライキに入った。

全米自由貿易協定の破産と反世界化運動

新自由主義と自由貿易協定の拡散を全アメリカ大陸に強制しようとしたブッシュ 政権の新自由主義プロジェクトは、今回のアルゼンチンのマルデルプラタ首脳 会談で再度破産した。これは、ラテンアメリカ全域を席巻する民衆運動の政治 的な勝利だ。ブッシュがみじめな敗者だったとすれば、チャベスは堂々たる勝 者だった。彼は米州首脳会談でラテンアメリカの民衆を代弁し、実際に民衆闘 争に参加した。

「聴け、ブッシュ:ラテンアメリカとカリブ海の民衆が団結すれば決して敗けない。」http://www.congresobolivariano.org

今回の米州首脳会談反対闘争の勝利は、反世界化運動において重要な意味を持 つ。1994年に発足した北米自由貿易協定(NAFTA)の全大陸的拡散を阻止したか らだ。これは、同時に9.11以後に広がっているラテンアメリカの反米-反帝国 主義運動の成長を確認するものであり、新しい民衆的代案の可能性をさらに強 化するだろう。

また、12月の香港閣僚会議でWTO-DDAにより新自由主義世界化体制を完成させ ようとしている米国帝国主義と超国籍資本、および国際金融機構への強い政治 的な圧力として作用するだろう。今回の闘争は、1999年のシアトル戦闘、 2003年のカンクン戦闘に続き、反世界化民衆運動陣営が勝ち取ったもうひとつ の勝利として記録されるべきだろう。

ウォンヨンス氏は労働者の力機関紙編集委員長で働いている。

2005年11月09日12時27分

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
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