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サムスン労働者、故キム・ジュヒョン氏遺族の治癒法

[記者の目]痛みを叩いて勝ち抜いた小さな勝利

チョン・ジェウン記者 2011.04.18 08:26

江原道チョンピョン寺の下にあるメウンタン屋の主人が、突然使えなくなった 足を敲打法で直したという。民間療法の知識はあまりないが、敲打法の効能を 経験した人に直接聞くと私はひとり粛然とした。病気や怪我をした場所を叩い て治癒する敲打法。ただでさえ痛いのに、さらに痛く殴る...

ジュヒョン氏がサムスンLCD天安工場寄宿舎の13階から身を投げた日の夜、遺族 は両手で胸を打ちながら話した。サムスンには通えないという息子に、それで も社会で認められている会社なのだから、つらくても我慢して通えと言った父。 皮膚病にかかり、機械が故障するたびに20ページのレポートを書くサムスンに は通えないという弟に、それでもたくさん月給をくれるのだからつらくても我 慢して通えといった姉、苦しい暮らし一度も文句を言わなかった誇らしい息子 が、すぐ会社に適応すると信じた母。子供が自殺したことが自慢になるかと隠 すものだが、遺族は隠さず、痛い場所を世の中に示して自分の身と心を打った。

[出処:オム・ミョンファン メディア忠清現場記者]

心の患部をほじってみると、サムスンがあった。遺族にとってサムスンは、息 子の背中を撫でながら肝を抜く『犯罪者』であった。ちょっといい月給を払い、 サムスン労働者という名札で慰めながら、専門の所見にもあるように、14〜15 時間労働などの業務ストレスによる憂鬱症、防塵服の着用や薬品取り扱いによ る皮膚病、息が詰まる組織文化をプレゼントした。

死ぬ前、何度も窓の手すりに一人でいたジュヒョン氏を、また狭苦しい寄宿舎 の部屋にひとりにしたサムスンを容赦できず、遺族は労働社会団体とサムスン の門を叩いた。ある時は追い出され、ある時は警察署に閉じ込められたりもし、 ある時は雨が降り、涙でぐしゃぐしゃになりながら、1人デモと集会、四十九日 をした。菊の花が枯れ、警察は取調べを終わらせ、労働部は調査結果を発表せ ず、検察はまた補強捜査をしろと言う。息が詰まり、叫びながら飛び出さなく ては我慢できないような昼夜の連続だった。

故キム・ジュヒョン氏の遺族は97日間、痛い場所を叩き続け、自分で治癒する 方法を選択した。ジュヒョン氏につらくても我慢しろと言い、自分たちもそう して生きてきたが、我慢することを止めた。サムスン側は、最後まで特別勤労 監督の陳情取り下げと合意書の非公開を条件に要求したが、合意しても『故人 の死に謝罪し、慰労の言葉を伝える。再発防止に努めて対策をたてる』と認め た事実は変わらない。また、公開謝罪と個人謝罪を区別して弔問にこなくても、 サムスンで働いて傷ついて死んだ労働者がサムスンに深々と打ち込んだ槍が抜 けるのでもない。痛みに勝ち抜いた遺族と連帯の力は、結局小さな勝利を得た。

まだ、ジュヒョン氏の遺骨を家に持ち帰らなければならず、今後はるかに遠い 治癒の道を歩いていかなければならない遺族だが、彼らが見せた態度と、ジュ ヒョン氏を天国に送る前の決心に拍手を送る。

「本当にどうすれば感謝の気持が表現できるかわかりません。また特に、ここ に来られていない多くの国民が応援してくれたことは本当に有難く、感謝しま す。これまで本当に怒ることも多かったが、皆さんがいたので、不十分ではあっ てもこうして葬儀ができたことについてまた感謝の言葉を差し上げます。

ジュヒョンの死が決して無駄にならないように、今後も私は関心を持ち続ける ことも、皆さんに約束します。今回の事件で、本当に越えることができないと 覚悟しましたが、それでも私たちが力を合わせれば越えられることを見せまし た。今後も皆さんも決して勇気を失わず、最後まで労働者のために努力して下 さるよう、私から本当にお願いいたします。これからどこかで出会う時は、笑 いながら良いことで会えるよう、本当に本当に祈ります。本当にありがとうご ざいます。本当に有難く、感謝します」(記事提携=メディア忠清)

故キム・ジュヒョン(26歳)氏自殺事件、97日葬儀闘争日誌

2010年1月4日 サムスン電子LCD事業部天安工場設備エンジニアとして入社
2月1日 FABカラーフィルター工程発令
8月 資材管理部署に移動したがすぐ現場勤務に配置
11月 憂鬱症で病暇 2011年1月 2か月の病暇期間が終わり、カラーフィルター工程に復職決定
1月11日 病暇満期、現場復帰当日の朝、寄宿舎13階から投身死亡
1月17日 遺族が真相の究明とサムスンの謝罪と責任要求して1人デモ開始
1月18日 牙山警察署を訪問し、故人の死亡当日CCTV記録と自殺の試みを放置した会社の過失の調査要求。雇用労働部天安支庁を訪問して支庁長を責任者とする特別勤労監督を要求
1月21日 警察署で故人の死亡当日のCCTV記録を確認、死亡直前に4回の投身の試みと会社が放置した事実を確認
1月27日 遺族、各社会団体、国会議員室などが共同でサムスンLCD労働者キム・ジュヒョン氏の死亡真相究明と責任要求のための記者会見
2月16日 雇用労働部天安支庁糾弾集会
2月21日 毎日昼にソウルのサムスン電子本社前で1人デモを開始
2月28日 天安駅東部広場、故キム・ジュヒョン真相究明要求および四十九日追慕文化祭
3月6日 父親キム・ミョンボク氏がサムスン電子本社の警備員と衝突、心筋梗塞で入院
4月4日 雇用労働部天安支庁を抗議訪問、以後数回、労働部面談と抗議訪問
4月11日 民主党イ・ミギョン議員がキム・ジュヒョン氏事件で国会対政府質問
4月14日 故キム・ジュヒョン追慕、サムスン糾弾、第一次全国海外共同行動
4月15日 サムスン電子と遺族、会社の謝罪と再発防止対策作りに合意
4月17日 故キム・ジュヒョン氏出棺、仁川自宅に遺骨安置

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-04-19 05:09:57 / Last modified on 2011-04-19 05:10:09 Copyright: Default

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