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「サムスンが私の娘を精神病者にした」...もうひとつの投身自殺

沈黙した故人の父が初めて語る

チョン・ジェウン記者 2011.03.02 01:01

「私たちの娘を救えたのは、死神でもなく、父母で もなく、サムスン人事担当者の『出勤しろ』という一言だった。」

1月3日、サムスン電子LCD事業部湯井工場で、23歳の女性労働者、パク某氏が 寄宿舎の18階から投身自殺した。50日間葬儀もできない天安工場の故キム・ ジュヒョン氏が同じ寄宿舎の13階から投身自殺するわずか8日前の事だ。

サムスン労働者が続いて投身自殺したのに、パク氏の事件は社会的に埋められ てしまった。遺族は悲しみの中で静かに葬儀を行い、パク氏を胸の中に埋めた。 サムスン使用者側もメディア忠清とのインタビューで「個人的な理由で死亡し たと理解しており、みだりに死因を話すのは難しい」と会話を拒否した。

しかし、娘を失った痛恨で怒りが込み上げた父親のパク某氏(55歳)が初めて話 し始めた。娘の死が他人のうわさになるのは家族は負担に思うが、重要な問題 ではないとつぶやいた。『若い子が結婚もできず、病気や老いで死ぬのでもな い、死んだ奴だけがくやしい』。勇気を出したというパク氏、娘の手垢がつい た部屋を片づけずにそのままにしている彼は、自分が死ぬ時に娘の部屋も片づ けると、悲しい話しをしながら涙を浮かべた。

▲父親は故人の手垢がついた部屋を片づけられずにいた。

私の娘は精神病者ではない。サムスンが追い込んだ

キム・ジュヒョン氏の投身自殺の事件が伝えられ、一部の言論は金氏の事件と 同じようにパク氏の自殺知らせを伝えた。病暇の後、復職を前にした女性労働 者がノイローゼで自殺したという簡単な内容だった。だが父親は『ノイローゼ』 で死亡したという報道は事実ではないと不快感を表わした。父親は、サムスン 使用者側が娘を精神病者にして退社を強要したと主張した。

「会社の人事担当者が精神病患者だから診療を受けろと強要して、退社を強要 した。サムスン社内病院でも面談をしたと理解している。娘はやめるわけには いかないというので、精神病と言った。精神病なら、なぜこれまで働いたの か、入社したのか。
とにかく精神病診療を受けることにして、やむを得ず病院に行って診療を受けた。 医師は『異常なし』と言った。その記録を会社に持っていった」。

大田で生まれ育ったパク氏は高等学校を卒業し、事務職として働いて、3年前に 天安のサムスン湯井工場に入社、ラインで働いた。サムスンに入社したパク氏 の友人も多く、他の職場より月給が高かったためだ。

会社は退社を強要し続けたが、パク氏は頑強に拒否した。結局6か月の休職を薦 められ、パク氏は12月末に出勤を控えていた。会社側の人事担当者の連絡で、 朴氏は3日の朝早く家を出た。朝食を取ってゆっくり行けという父親の言葉にも、 出勤できるかもしれないという期待に膨らんでいた。

「サムスンは私も呼んで、娘を座らせて辞表書けといった。娘がやめることは できないと泣き喚いてしがみつき、頑強に拒否すると、代わりに私に辞表を書 けといった。驚いた。父母が隣にいるのに子どもを怒鳴りつけた。一人で会社 の担当者と面談した時はどうだっただろうか... ありありと見えるようだった。 父母の立場はどれほどか。私は気分が悪いからやめてしまえといった。精神病 でもないのに病院に通えと言うのでとても自尊心が傷ついた。それでも金を貯 めるからやめられないという。暮らしも良くないし...

人事担当者が受け入れてくれれば、こんなことはなかっただろう。自分ひとり で会社を相手に戦ったのだ。父母は力もなく、労組もなく、体も小さいのに...」

▲故人がサムスンに通っていた時、業務について勉強した痕跡

なぜサムスンがそこまで退社を強要したのか、父親はまだ理解できなかった。 父親が知っている『ささいな』事件も、サムスンの人事担当者の態度も理解で きなかった。納得できない状況は、自己恥辱感と怒りになった。

「娘は3交代で随時昼夜を変えて働いた。生体リズ ムもみなこわれた。ただ金を稼ぐために働いた。あまり教育を受けさせてもや れなかった父母だ。家が豊かではないお母さん、お父さんが罪人だ。家が苦し いのは、会社通う子供たちみんな同じだあろう」。

「休職前に娘の寄宿舎の部屋で盗難事件が発生した。 何十万ウォンでも、何百万ウォンでもなく、何千ウォンかがなくなった。私は つつましく金を貯めていた娘なので、たいしたことはないと思った。同僚たち ともうまく解決した。会社に大きな損失を与えたのでもないのに、軽微なその 事件を理由に退社を強要した。それが理由になるか? 人事担当者はまともな人 ではない。とても冷静だった。自分の昇進のために末端職員を切るようだった。 これも理解できない。たとえそうでも、部下の職員のささいなミスをかばい、 上司の小さなミスを職員がかばうのが職場の上司ではないのか。寛容に些細な ミスをしないようにするのがリーダーではないのか。理解できない」。

きれいに片づけられた現場...すでに遺体安置所が準備

娘の代弁もできず...胸が痛み、申し訳ない

会社側は、1月3日の朝、出勤できるという期待に胸を膨ませて家を出たパク氏 を冷く投げ出し、冷たい死体になって戻ってきた。警察は午後5時15分に身を投 げたと推定した。父親は午後3時頃に連絡を受け、晩6時過ぎに天安に到着した。 サムスンはもう娘を葬儀場に移し、家族はすぐ遺体安置所に向かった。

「娘はずっと電話を取らなかった。サムスンの人事 担当者との面談が終わり、ずっとさまよっていたのだ。電話一本受けないほど、 どんなに悩んだのだろうか。電話を取らない子ではないんだが。どんなに長い 時間、考え、怒り... もう葬儀場に遺体安置所が設置されていた」。

何も考えられなかった。サムスン側はモーテルに呼び、補償金の交渉を始めた。 申し訳ないという言葉も言わないサムスンに対し、家族は何をどうすればいい のかもわからなかったという。娘が死んだ現場に行くこともできず、親戚がす でにきれいに片づけた現場に行っただけだった。警察の調査もどうなるのかわ からず、ただ一本のCCTVを見せられるだけだった。親戚はパク氏が寄宿舎に入 るCCTV場面だけを見たといった。

「4日葬に行った。その時の心情は、腹が立って、 会社の正門に柩御輿をおきたかった。そのようにでもしたかった。だが意欲が 出ず、頑張るのも苦しく、親戚にも言えなかった。会社がしようと言うままに してしまった。補償が問題なのではない。憤りが爆発しそうだ。理由のない死 がどこにあるのか。心の余裕がなかった。誰が死を予測したか... サムスンが 交渉しようと言っても、子供を埋めるべきか、火葬するべきか、弁護士を雇わ なければならないのか、何も考えられなかった。

今考えてみれば、私はあまりに誠実だったようだ。 会社に思い切り悪口でも言って、謝罪を受けるべきだった。娘の代弁もしてや れず、何もできなかったので、胸がとても痛み、申し訳ない。」

考え直すと残念で、誤りは一つ二つではなかった。3日の当日、会社から子供を 連れていけという電話一本さえあれば、パク氏は死ななかったかもしれない。 会社の関係者が近くで保護していれば、恐ろしい事件は発生しなかったかもし れない。父親は何度も『残念だ』と言った。

「人には直感ということがある。電話さえしてくれ れば... 高層ビルが維持されるのは砂の粒子、粉のように取るに足りないもの のためだ。昼夜会社で働いて頑張るのは職員だ。自分たちために何年も働いた 職員がなければ、社長も会長もない。それを忘れている」。

事後代策を出さないのは犯罪...サムスンは責任を認めろ

パク氏は学生時代、奉仕賞、善行賞、教科優秀賞、精勤賞などをさらった。 国家資格証明だけ8つ。一度も文句を言わなかったパク氏、暮らしが苦しく、 つつましく生活して、ただお金を稼いだパク氏なので、なおさら父親はつらい。

朴氏は休職期間もよくアルバイトをした。サムスンに通う時、仕事が遅く終わ り、深夜に大田の自宅に帰る時は、よくタクシー代を節約するためにバス15分 の距離を歩いてきたパク氏だと言って、父親は声を詰まらせる。だから娘に 「嫁に行けるぐらい金は稼いだから、もうサムスンはやめろ」と話したのかも しれない。

変わって行く息子、弟の遺体を見ながら、サムスンと戦うキム・ジュヒョン氏 の遺族の安否を尋ねてため息をついたパク氏が、最後の言葉を残した。

「みんなうちの子だけのためかもしれない。しかし 誰も尋ねなければ正当化される。会社の中で起きたことだ。事後対策を出さな いのは犯罪だ。こんなことがもう起きないように、公式にサムスンの代表者が 事実を確認し、管理不足の責任をとり、認めるべきことは認めなければならな い。企業イメージが問題ではなく、道徳的に問題だ。サムスンは申し訳ないと いう言葉一言もなかった」。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-03-02 20:34:42 / Last modified on 2011-03-02 20:34:47 Copyright: Default

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