| 韓国:[連続企画]サムスンが捨てたもう一つの家族(6) | |
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「ここで働き続ければ、病人やガンになる」[連続企画]サムスンが捨てたもう一つの家族(6)
ヒジョン(執筆労働者) 2010.11.16 12:19
先日、韓進重工業解雇者で民主労総指導委員のキム・ジンスク氏の講演を聞く 機会があった。労働と共にした彼女の暮らしで記憶に残るのは18歳の時に入っ たカバン工場の話だった。 「私たちが使う手帳、携帯電話ケースなどは、全部化工薬品で処理した人造皮 革です。カバン工場に行くと革加工部があります。加工部のみんなはトルエン、 シンナーといったものを、まるで水のようによくさわります。ところがみんな 生理がないのです。私たちがその時、どれほど無知だったのかというと、班長 にとうもろこしパンを買って賄賂を使うんです。加工部に送ってくれと。あそ こに行けば生理がなくなるからそこに行きたいと。その時は、それが有機溶剤 による労働災害だという話は誰もしませんでした。」 寒くてひもじい70年代だった。飢えずに働けるだけでも有難いと強要され、健 康や人権などを振り返る余裕がなかった時だった。 それから20年たっても
[出処:パノルリム(http://cafe.daum.net/samsunglabor)] それから20年たっても何も変わっていない。1993年にサムスン半導体温陽工場 のエンジニアとして入社したソン・チャンホ氏は、TCEという化学薬品を使った。 洗浄剤として使われるTCEは、作業者に人気が高かった。 「ラインにTCEがいつもありました。本当にすぐ手元に置いて使いました。よく 溶けて、よく磨けるので、整備する立場としては一番良い薬品でした。当時は TCEが何でできているのか知りませんでしたから。」 TCEと呼ばれるトリクロロエチレンは急性毒性物質だ。その他にもソン・チャン ホ氏が働くメッキ工程には無数の薬品が使われた。作業をしていればよく薬品 が服に飛んだ。家に帰って服を脱ぐと、下着にも穴があいていた。薬品がつく と、手にはめたゴム手袋が溶け、床に塗られたペンキが腐食した。 そこで6年働いたソン・チャンホ氏は、2008年に悪性リンパ腫と診断された。隣 の工程で働いていた同僚のキム・オギ氏も白血病にかかった。彼女も洗浄作業 にTCEを使った。 また10年が流れる。何も変わっていない。2000年、半導体器興工場に入社した シン・ソンヒ氏は、8ラインのクリーンルームで半導体ウェハーの検査をした。 各工程で不良が出たウェハーを再検査する仕事だった。入社初日、作業場に入っ たソンヒ氏は『どうしてこんなところで働けるのか』と驚いたという。作業場 にはものすごい臭いが立ち込めていた。ウェハーの臭いだった。ウェハーには 各種の工程で処理された化学薬品が付着していた。 臭いに我慢できず、働いている途中に嘔吐をすることもあった。徹底的にホコ リを遮断するクリーンルームなので、簡単に外に出ることもできなかった。ご み箱を見つけてビニール袋を探し、その中に吐瀉物を吐き出した。当時、工場 で噂が飛んだ。「ここで働き続ければ、種なしになったりガンにかかる。」 エンジニアが冗談のように話していたが、不安だった。しかし薬品や設備につ いて管理者やエンジニアに聞いても「今の仕事をちゃんとやれ」というけんつ くが返ってくるだけだった。そのときは、自分が大学を卒業せず生産職で働く ので馬鹿にされていると思って萎縮し、それ以上尋ねることができなかった。 安全教育もなかった。その代わりに彼女は他のことを習った。『ウェハーは高 い』という教育だった。「設備の中に入ったウェハーが出てこない時がありま す。ウェハーは高いので、壊してはいけないのです。こわすと理由書も書かな ければなりません。こわれないように、傷がつかないようにしなければならな いのですが、いつも設備エンジニアを呼ぶこともできず、呼んでも1、2時間か かるので、そうすると仕事が滞ります。交代する人にあまりたくさん渡すのは とても申し訳ないので、そのまま私が手で取り出して直したりしました。」 臭いだけでも苦しいウェハーを、手で直接触らなければならなかった。鼻と皮 膚から吸収される薬品が何かわからなくても、機械が高価で、ウェハーが貴重 で、早く仕事をしなければならないということは分かった。仕事はつらく、体 はやせていった。結局シン・ソンヒ氏は6年間通ったサムスン半導体を退社する。 そして2009年に乳ガン2期と判定される。 有害物質はたった一つもない?
[出処:パノルリム(http://cafe.daum.net/samsunglabor)] パノルリムのイ・ジョンナン労務士は、サムスン半導体で働いていて病気にか かった人の情報提供が続々と入ってきていると言う。不思議な点は、情報提供 の内容がほとんど同じだということだ。 「各自、違う所で暮し、互いに知らない人なのに、同じ話が、1ヶ所に向かって います。」 化学薬品の露出が多く、安全教育を受けられず、化学物質の名前も知らず、下 血をしたり生理をしないことがよくあり、体調が悪く、結局退社することになっ た。これが彼・彼女たちの一貫した陳述だ。 彼女たちは頭が痛く、下血し、体重が減り、消化もよくできなかった。しかし 病気の原因がわからなかった。化学薬品を多く使うことは不安だったが、薬品 について何も知らなかった。しかしこれらすべてを知っている人がいる。化学 物質を管理していた、まさにサムスン半導体だ。全てを知っているサムスンは 言う。 『半導体工場内で使用される化学薬品のうち、国内はもちろん、海外でも有害 物質と規定されているものはたった一つもない』(京仁日報)、『白血病を起こ す代表的な物質と言われるベンゼンのような物質はまったく使っていない』 (ニュースポスト) どんな有害物質も使用せず、保護装備も完ぺきに支給しているとサムスンは主 張する。半導体産業は白血病とは無関係で、2万7千人が働く大規模工場だから、 自然発生的に白血病にかかる人もあるというのだ。 これを証明するために、サムスンは自主的に有害物質露出調査を実施した。こ の調査をソウル大産学協力団に依頼した。今年の9月、その結果が発表された。 ソウル大産学協力団は、サムスン半導体器興工場の化学物質管理に問題がある と発表した。調査した5ラインで使われている99種類の化学物質のうち59種は、 いつから使っていたのかわからないなど、管理が不十分だった。10種類は「営 業秘密」という理由で成分資料も確認できなかった。 発表の後、サムスンは釈明資料を出した。ソウル大が発表した結果の一部は事 実ではなく、これは『コミュニケーションの誤り』で起きた誤解だといった。 しかし5月には『ハンギョレ21』で〈環境手帳〉が公開された。サムスン半導体 工場で使用する薬品が記録された環境手帳は、97年に器興工場のエンジニアに 配られたものだ。手帳には、ソン・チャンホ氏が使っていたTCEをはじめシン ナー、アルシン、硫酸など6種類の発ガン物質と数十の有害物質が記されている。 私が使っていた物質は何か2010年、ある日パノルリムのオンラインカフェにひとつの情報提供が入ってきた。 サムスン半導体で働いている人だった。 「この数年間、白血病問題が話題になった後に会社はいろいろと変えています。 白血病問題が爆発した時、会社とは関係がないと言って外部に対応しながら、 内部ではこれまではなかった規則が出来始めました。パーティクル(ホコリ)対 策に良いという理由で、先日からIPA溶液がメタノール溶液に変わりました。私 はその時に感じました。パーティクルのために変えたのではなく、『以前使っ ていたIPA溶液は健康にとても悪いんだな』とね。」 カバン工場で労働者がとうもろこしパンを差し出して、自分の健康を捨てて40 数年、今、漠然とながら自分が使う物質の有害性を認識した労働者たちがいる。 職業病が何かも知らない多くの労働者が働いて死に、病気にかかって数十年、 半導体労働者の健康権のために戦っている『パノルリム』ができて3年目だ。 あと何十年必要なのか。労働者が自分が使う作業物質の名前と成分、有害性を 知るのがあたりまえという日まで、あとどれくらい残っているのだろうか。現 在、有害物質をめぐるサムスンと白血病被害者の真実攻防は続いている。 [パノルリム]半導体労働者の健康と人権守備(http://cafe.daum.net/samsunglabor) サムスン半導体など電子産業で従事して予期せぬ疾病にかかった人の情報提供を受けつけています。 翻訳/文責:安田(ゆ)
Created byStaff. Created on 2010-11-17 01:15:46 / Last modified on 2010-11-17 01:17:21 Copyright: Default このフォルダのファイル一覧 | 上の階層へ | |