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正規職の賃金凍結が全泰壹精神とは?

[寄稿]非正規職が望むのは正規職の恩恵授与と餅ではない

チョン・ギジン(事務金融連盟) 2020.06.16 08:22

最近、全泰壹(チョン・テイル)烈士のタイ焼き精神(?)を前面に出して、 正規職労働者の賃金凍結あるいは賃上げを自制しようという労働運動の一部の活動家の扇動が度を越している。 以前から社会連帯を云々して労働者譲歩論を着実に説明し、目新しくはないが結局、 彼らの主張は資本家階級の論理と結果的に相対していることを鮮明に見せたという面で、 むしろうれしいほどだ。

「攻撃的防御」あるいは「押されて譲歩する前に先制的な度量が大きい譲歩」という、 もっともらしい外皮をかぶって資本家階級の主張を露骨にしており、 書いた人を知らずに読めばこれが政府の主張なのか、経済人総連などの 資本家団体の主張なのか混乱するほどだ。 労働運動をする人が政権と資本家が言いたい言葉を代行するのだから、 彼らはいかに内心快哉を呼んでいるかと思う。

[出処:キム・ハンジュ記者]

彼らが主張する核心的な根拠は、 正規職と非正規職労働者の間の賃金格差解消、 またはコロナ19で直撃弾を受ける特殊雇用などの非正規職労働者のための危機克服方案だ。 正規職労働者が賃金を凍結(または自制)し、その譲歩した賃金分だけ政府と資本側に 「社会連帯」基金の出資を受け、 これで非正規職労働者を支援しようということだ。 ここで言及されるのは全泰壹(チョン・テイル)烈士が自分の交通費を節約して 幼い女工たちにタイ焼きを買ってやったというエピソードだ。 だがこの主張は大きく四つの点で問題だ。

まず、労働者たちの間の二極化と非正規職量産、 差別の主犯は正規職労働者ではなく、あらゆる種類の非正規職雇用を作り 非正規職労働者を量産した政権と資本家階級だ。 正規職労働者の高賃金責任論、正規職の財布をはたいて非正規職を支援しようという主張は、 結局支配階級に行くべき責任を労働者間の対立にすることで 支配階級のイデオロギーを強化するだけだ。

攻撃的防御やコロナ危機克服方案で、たいして豊かではない労働者の財布をはたくことを考える前に、 なぜ労働者階級の余剰労働を搾取して貯め込んだ1千兆に近い財閥の社内留保金(全部または一部)を出せと主張しないか? この金は結局財閥と資本家階級が非正規職労働者に行くべき労働力の代価をきちんと支払わず、 せっせと金庫に貯め込んだ金ではないのか。 その金の本来主人に返せと、豊かな奴らがまず出せという 「攻撃的防御」主張がなぜできないのか。

二番目に、非正規職労働者が本当に望むのは、 正規職労働者の賃金凍結と彼らの犠牲に土台をおいた餅と恩恵授与ではない。

これは非正規職労働者も不愉快であるばかりか、 非正規職労働者を堂々たる主体にすべきだという主体化戦略とも矛盾する主張だ。 労働者の本当の連帯精神は、正規職と非正規職労働者が共に非正規職撤廃のために戦うことであり、 非正規職労働者の闘争を自分の闘争として受け止めて共に戦うことだ。

非正規職当事者の旭非正規職のチャ・ホノ支会長はこのように話す。 「非正規労働者にとって切実なことは(正規職の)譲歩ではない。 階級的団結だ。 資本に対抗した団結と闘争だ。 非正規職は現場で毎日毎日落ちて死に、挟まれて死に、過労で倒れて死んでいく。 死なずに働く権利と労組する権利を認めさせるために、今も現場で、道路で戦う。」

三番目に、 コロナ19の危機克服方案に対する誤った処方だ。

今、文在寅(ムン・ジェイン)政権はコロナ19危機克服追加予算で、 今すぐ大きな被害はない財閥大企業まで含んで資本家に100兆ウォンを与えることにしたが、 労働者には20兆ウォンを編成した。 その結果、労働者の解雇を禁止して、 雇用維持のための予算、失職者失業給付支援のための予算はとても足りない。

労働者、民衆を生かして福祉を拡充する緊急予算をもっと編成させるように闘争しなければならない。 しかも民主労総が要求している総雇用維持を前提とする企業金融支援要求と全国民雇用保険導入など、 直ちに解雇の恐怖に直面している労働者、すでに失職して失業給付も受け取れない5人未満の事業場と特殊雇用労働者のための 直接的な支援はなされない。 資本主義の長期経済沈滞に重なったコロナ19経済危機は、 正規職労働者の賃金凍結ではなく、全人民の生存権保障と福祉のための国家の役割に対して根本的な質問を投げなければならない。 それで国家が責任をとり、雇用を保障して同一労働・同一賃金に立脚し、 正規職、非正規職間の賃金差別構造を根本的に廃止する、 さらにこれらすべての問題の根源である資本主義体制を根本的に変革する運動に進まなければならない。

四番目、「政権と資本家らの白紙手形を信じて労働者たちよ、現金を出せ」ということは、 労働者と敵対関係にある資本家階級に対する信頼を強要し、 政権と資本の善意に頼って非正規職の構造的問題を改善しようという 典型的な階級妥協論的な主張だ。 そして実現の可能性も高くない本人の希望事項で全労働者階級の生存権を資本に捧げようという愚かな主張でしかない。

まずこれらの主張は論理的にも合わない。 労働者が賃金凍結をして、これで備蓄された49兆ウォンを資本家が基金として出資する? これに加えて資本家が追加で49兆ウォンを出資して、政府が49兆ウォンを出資して、 147兆ウォンの社会連帯基金を造成する? 利益の搾取が一生の目標である資本家が突然、慈善事業家に変身し、 二倍に損をするようなことをする? 資本家が賃金凍結を主張するのは、コロナ19で企業が苦しいので支出をせず、 労働者、民衆は苦しもうがどうであろうが、 自分たちは一銭も損をしないということなのに、 資本家の立場で二倍も金を支出しなければならないのなら、 賃金を凍結する意味がないのではないだろうか?

最後に、今年で50年をむかえる 全泰壹烈士精神を もう一度振り返ることだ。

誰もがよくご知っている通り、全泰壹烈士は 勤労基準法さえ守られない劣悪な作業環境と、 労働部と青瓦台に出した陳情書でも解決しない絶望的な現実を打破するため、 そして労働基本権が保障される社会を念願しながら焼身した。 そして鳥小屋よりもさらに劣悪な環境で低賃金の長時間労働に苦しむシタの妹たちに対する憐憫で、 自分の交通費まではたいてタイ焼きを買ってやる犠牲精神を見せた。 しかし、全泰壹烈士も、 完全な人間でも、闘争と学習で鍛練された活動家でもなかったので限界があっただろう。 それはまさに裁断師を中心とする親睦の会を作って団体行動を準備したが、 シタ(今風に表現するなら非正規職零細労働者)と水平的に連帯しつつ、 彼らを誤った労働の現実を変える闘争主体として組織することにまでは進めなかったのだ。

私たちが本当に学ぶべきは、 んですることは全泰壹烈士の献身的闘争精神であって、タイ焼きではない。 個人的に「タイ焼き連帯」、「タイ焼き精神」という用語は適切ではないと思う。 重要なことは、全泰壹烈士が 越えられなかった正規職と非正規職の連帯闘争(裁断師とシタの連帯闘争)で非正規職を撤廃することだ。 そしてすべての労働者が正規職、非正規職の差別なく、 平等で人間らしく労働できる労働解放、人間解放世の中を作る事であろう。

最後にもう一度、 チャ・ホノ支会長の話を引用する。

「賃金を譲歩しようと言って、全泰壹のタイ焼き精神を引き込むのは、 全泰壹烈士の精神をはずかしめることだ。 今年は、全泰壹烈士50年だ。 全泰壹烈士の前で恥ずかしくないように闘争しよう。」

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-06-26 08:03:45 / Last modified on 2020-06-26 08:03:47 Copyright: Default

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