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「あなたたち」が作りたい国はどんな国なのか

[政治コラム]第三回国家人権政策基本計画(NAP)発表に際して

イ・グァンイル(聖公会大) 2018.08.15 13:15

法務部がある果川政府総合庁舎正門の前を通ると一部のキリスト教勢力が 文在寅(ムン・ジェイン)政権の性平等政策に反対する集会、 一人デモなどをしているのをしばしば見かける。 両性平等を性平等政策に対立させる彼らの主張の中心には、 LGBTの否定を象徴する「同性愛、同性婚反対」が位置している。 彼らが文在寅政権の3次国家人権政策基本計画(NAP)に反対する最大の理由は、 その実行が差別禁止法制定へ行くステップだと考えているためだ。

1789年、「人間と市民の権利宣言」、つまりフランス人権宣言が公表されて以来、 世界人権宣言は次のように規定している。 「すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる。
さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない」。 これに基づけば、彼らが無理に集まって「NAP OUT」を主張するのは、 人権宣言の基本的な内容を、しかもとても堂々かつ公然と否定しているのだ。 もちろん彼らがそのような主張をするのは昨日今日のことでないので 「そんなものか」とやり過ごしてもいいのかもしれない。 だがそうすることができない理由は、その否定が単にその宣言文に限定されているのではなく、 これまで搾取、収奪、差別、排除されてきた人々が彼らの人生そのものをかけて繰り広げた闘争の歴史と成果を、 そして今現在、行われている闘争を無力化させることだからだ。

[出処:文在寅大統領 FaceBookページ]

では彼らがそれほど堂々と行動できる理由は何か。 3次NAPがいわゆる国家アイデンティティ、それに基づく国民の自負心を毀損、否定するためだということだ。 したがってその国家アイデンティティが何なのかを確かめる必要があるが、 彼らの主張からそれを類推するために参考になるのは、 当初、神様が男性と女性を区別して人類を創造したという解釈だけだ。 それでそうした区別は自然なもので、それに反するのはその自然を否定すること、 つまり「神様の意」に反するということなので、 政治的、社会的、倫理的、道徳的に容認することはできず、 容認してもいけないということだ。 このように、彼らの判断と行動の唯一の根拠は、彼らが解釈する「神様の歴史と権威」だ。 彼らはこの社会、この国が、彼らが盲従するその神様の主管下にあると信じる。 過去の日帝植民地への転落を、セウォル号事件の発生を「神様の意」が実現されたといった一部の牧師の発言が、 時代錯誤的な個人の逸脱に置き換えられない理由だ。

もちろん終末論と千年王国論に寄り添うような教祖的な解釈、言及はとても古いもので目新しいものではないが、 それでも一つ訊ねたいことがある。 その「神様の意」を最もよく表わす人は誰か? 彼ら自身も否定できないイエスキリストではない。 しかしそのイエスは一度も自分の家と財物を、良い服を、そしておいしい食べ物を持ったり食べたことはない。 教会という権力を持ったこともない。 貧しくて苦しんでいる人々を投げ出したのではなく、彼らと一緒にしたので殺され、 まさにそれで復活し、今この瞬間までも彼らと一緒にしているのではないのか。 常に既得の秩序を問題視したので神様の存在の有無、他の信仰を持っているかどうかとは無関係に彼の教えを心に刻む人が少なくないのだ。 それでは「NAP OUT」を叫ぶ者に、これ以上何の言葉が必要だろうか。 認定の可否とは無関係にそうしたイエスの存在を否定するところだけを歩む者どもにである。

だから問題は彼ら一部のキリスト教徒の態度よりも、文在寅政権にある。 いわゆる憲法遵守義務がある政権が、その構成員の基本的な人生を保障する人権を公開で否定する人々の顔色をうかがい、 世論の反対云々してためらっているためだ。 「人が優先の国」の実現を力説してきた政権が、ただ尻ごみするのに汲々としている。

性少数者たちが人間としての権利を享受する社会は、そんな国に符合しないのか。 ジェンダー平等を叫びながら、女性への搾取、収奪、差別などに抵抗するのは 「人が優先の国」の実現に役に立たない、 むしろ不要な対立を助長すると考えるのではないのか。 これ以上退くことがない労働者たちに、もっと我慢しろと言ったように、 その状況に忍従することこそフェミニズムの進言(mantra)だと考えているのではないのか。 あるいはそれが「フェミニスト大統領」であることを自任した時、 そこに隠された真心ではなかったか。 移住労働者が人間としての権利を享受する国、 イスラムを含む難民の避難所、さらに彼ら生活の場になる国は「人が優先の国」が形成された後にでも考えることができるような国なのか。 文在寅政権の「人が優先の国」は、 国民国家の範疇を抜け出して想像もすることができないようなものなのか。 暇さえあればあれほどグローバル時代、地球村を力説しながら。

去る8月13日、文在寅政権が発表した第三回国家人権政策基本計画は、 結局少数者の範疇から性少数者を削除した。 形式的だったが、以前の守旧政権で続いていたものまでなくしてしまったのだ。 差別禁止法制定に対しては、国民世論と市民社会の鋭い対立がある状況だと言って責任を回避した。 もちろん文在寅政権のこうした態度は人権が国家が保障するのではなく、 むしろその国家を越えて進むために闘争する時、そしてその国家を絶えず再構成していく時に実現するという点をあらためて確認させてはくれる。 それでもいったいその「人が優先の国」という言葉は、 その国がいったいどんなものだから近代ブルジョア社会の登場以後ずっと変奏されながら、 地球村の隅々にいる苦しむ大衆をひきつけることなのかが気がかりになるのは同じことだ。 だからはっきりと尋ねる。 「あなたたち」が語るその国は、いったい「どんなアイデンティティ」を持つ国なのか。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-08-26 19:34:36 / Last modified on 2018-08-26 19:34:37 Copyright: Default

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