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8・25南北合意の政治学と不安定な東北アジア

[ソーシャルパワー]8.25合意の最大の受恵者は朴槿恵か

ペ・ソンイン(韓神大) 2015.09.01 13:32

8・25合意以後、南側からの実務接触提案に対し、一日後に北側が応えたことをめぐり、 朴槿恵(パク・クネ)政府と保守勢力がびっくり仰天したという。 だが北朝鮮の最高尊厳である金正恩(キム・ジョンウン)が一週間後に現れ、 今回の合意を大切にして豊かな結実に変えていかなければならないと発言したことを考慮すれば、極めて当然のことだ。 それは、それだけ韓国の北朝鮮に対する不信の広がりと北朝鮮の南北関係改善の切実さを反証している。

今回の合意をめぐり、一部の保守勢力はまだ損益と勝敗を問題にしているが、 つまらないことだ。 どちらか一方が屈辱を受けたり損害をこうむったわけでもなく、 極限状況に進むチキンゲームに見えたが結局はウィンウィンゲームだった。 やはり南北関係は敵対的な依存関係から抜け出すのが難しいということを再確認する場面であった。

北朝鮮の意図的演出と選択

地雷事件に始まる一連の流れがとても緊迫した状況を演出したとしても、 戦時作戦統制権がなく意志も薄弱な朴槿恵政権と、 米国を恐れて無謀な挑発は共倒れを呼びかねないため愚かな選択はできない金正恩(キム・ジョンウン)の立場の利害が合致したということをよく見なければならない。

もちろん、米国、中国、UN司令部など、誰も戦争拡大を望んでいないので、 北朝鮮が危機を高めて交渉力を高める戦術を駆使したと見られる。 特に9月3日の戦勝節の行事の前に、 中国は朝鮮半島が極度の緊張状態に置かれることを喜ぶ理由はない。 中国の外交官たちが8月22日の午後に非公開で訪問したという未確認報道がこれを裏付けている。

米国の介入と役割はさらに積極的だった。 これまで北朝鮮を意図的に無視してきた米国は、 今回、北朝鮮の軍事的威力と耐久力を確認して、対話の提案、 韓米連合軍事演習中断、8.25合意歓迎、北朝鮮の核問題対話解決の意志表明など、 北朝鮮の存在感を認めたのだ。

したがって、北朝鮮が損害を甘受して譲歩したという評価は適当ではない。 北朝鮮が地雷事件に対する遺憾の表示で体面を失ったという評価は、 国際的な孤立から抜け出す機会ができたのだから十分に甘受するに値する。 北朝鮮への不信と否定的イメージが固まったという評価も過度だ。 むしろ、対話で問題を解決する意志を確認したことで、 米国の意図的な無視が中断され、米朝関係改善の契機が用意されたためだ。

ではなぜ北朝鮮は朴槿恵政府を選択したのだろうか? 現在、東北アジアは5つの帝国主義国家と1つの全体主義国家が3 vs 3のストリートファイトの対決構図を形成し、 二人三脚をしているという複雑な空間だ。 北朝鮮、中国、ロシアの三角関係を見れば、2013年の3回目の核実験強行以後、 最大の後見国で血盟だった中国との関係が疎遠になった北朝鮮としては、 強固な友邦が切実だった。 習近平が金正恩より先に朴槿恵と会ったのは衝撃的だった。 特に、張成沢の粛清は朝ロ関係を新蜜月にする決定的な事件だった。 北朝鮮は対外貿易の90%を中国に依存しているために新しいパートナーが必要だったし、 ロシアを選択して協力を強化している。

それで北朝鮮は今年を「朝ロ親善の年」として経済、軍事協力を強化している。 特に2014年4月に経済共同会議が開かれ、 北朝鮮の110億ドルの債務のうち90%にあたる100億ドルを帳消しにし、 両国間の経済協力が正常化した。 北朝鮮の労働者約2万人がロシアで外貨を稼いでいる。 これは、プーチンの新東方政策と合致している。

軍事協力も眼につく部分だ。 北朝鮮はロシアを通じて古い在来式の兵器を現代化する方法を模索している。 北朝鮮が購入を望んでいるロシアの先端兵器は、 防空網を強化するS-300地対空ミサイル、ミグ-29とスホイ-35戦闘機、 4千トン級以上の大型軍艦とT-80戦車、T-90戦車だという。

事実、北朝鮮の核技術と長距離ミサイルの基礎固有技術は旧ソ連から導入され、 今年の春に実験に成功した潜水艦発射弾道ミサイルに使われた部品も、 日本の貿易商を通じて入ってきたもののソ連製だという主張があるほど、 ロシアとの軍事交流は歴史が深い。 今秋には合同軍事演習を実施することに合意した。 一言で暖かな朝ロ関係を維持している。

西欧諸国主義の憂慮は、まさにここにある。 北朝鮮が在来式の兵器を現代化して、核兵器開発のノウハウまで得ることを憂慮し、 朝ロ関係を「危険な関係」だという。

だが中朝関係は冷たい。 両国間の高位級接触はほとんどなくなった。 金永南、リ・スヨン、姜錫柱、崔泰福などの北朝鮮の外交ラインが世界を駆け回りながらも、中国は無視している。 中国の丹東と北朝鮮の新義州をつなぐ新鴨緑江大橋は中朝関係のバロメーターだが、 中朝経済協力の動力になるこの橋は昨年10月に完工したのに北朝鮮が担当する道路建設を先送りしたため、 まだ開通していない状況だ。 8月6日に閉幕したアセアン地域安保フォーラム外交長官会議では、 これまで慣例的に行われてきた北朝鮮と中国の外交長官会談が開かれなかった。

だが最近、金正恩委員長が中国に意味深長なメッセージを投げた。 「祖国の自由独立と平和のための聖戦に高貴な生命を捧げた人民軍の烈士と中国人民志援軍の烈士に崇高な敬意を差し上げます」(朝鮮中央TV放送、2015.7.26.)。 中国との関係改善を強く望んでいるのだ。

だが時間が必要だ。 最近の中ロ間の新蜜月が、北朝鮮に肯定的な影響を与える可能性は高いが、 ただ待っていることはできない。 むしろ中ロ合同軍事演習は、日米合同軍事演習に正面から対抗するもので、 東北アジアの不安定化の核心的な要因になるだろう。

その上、経済的な側面では、ロシアは北朝鮮にとって鶏肋のような存在だ。 ロシアは長期的戦略を持って北朝鮮に接近しているが、 北朝鮮はロシアが得るだけの経済的・戦略的な利益は得られそうもない。 双方の経済協力の規模は1億ドルにもならない。 交易の規模全体がとても小さいため北朝鮮の経済難を解消するには力不足で、 したがって互いに信頼できるような経済協力パートナーになるには困難がある状況だ。 米国の意図的な無視もまた北朝鮮の困難を好転させるための障害として作用している。

したがって、韓国との経済協力を通じて北朝鮮経済の活路を模索する実利的な選択をしたのだ。 北朝鮮が今回の南北会談で、韓米合同軍事演習の乙支フリーダム・ガーディアン中断は要求せず、 金剛山観光再開の問題を拠論したことも同じ文脈だ。 だから北朝鮮の8.25合意履行の意志はいつよりも高く、期待しても良い。

8.25合意の最大の受恵者は朴槿恵か

韓米日関係での韓国の存在感の喪失はすでに始まっている。 朴槿恵大統領は任期の半分を無駄にしてしまったのに、 中国と日本には顔色をうかがいながら、北朝鮮だけには強硬な立場を固守した。 これまでの見せかけ外交、ファッションショー外交に過ぎず、 国内で低下した支持率を上昇させる道具として海外歴訪を活用した。

こうした限界と失敗は初めから予想されていたことだった。 外交安保情報ラインが軍出身に独占され、門番の側近と検察出身者で満たされた青瓦台の実力者には何も期待できない。 彼らにとって北朝鮮は崩壊の対象だったので、何年かで急変事態が起きることを前提に政策を立てた。 朴槿恵の任期内に急変事態が発生し、吸収統一という大当たりを引くことばかり考えていたが、 むしろ惨めな姿を晒すことになってしまったのだ。

こうした対北朝鮮強硬一辺倒の立場と態度は、支持基盤である保守勢力で一般的に目撃できる特徴であり、 今回の事態で朴槿恵の「確実な謝罪」の原則を積極的に支持してこの機会に北朝鮮に厳しく対応すると意気込んでいたが、 思った通りにはならなかったのだ。

だが、中国と日本には言うべきことを言えない姿を見せて、 敏感な朝鮮半島情勢を扱うための戦略的思考の不在を見せた。 去る4月28日、日本の再武装を追求する安倍が米国を訪問し、 上下議員合同演説をしたのは敗戦70周年に合わせて第2次大戦の戦犯国家という頸木から脱するためだった。 そして米国のオバマ政権が日本の歴史修正主義を支持し、 韓日間の歴史対立において日本の立場に味方をしているのだ。 このように、安倍の歪んだ歴史認識は、米国の支持によって可能になったのだ。

朴槿恵は、任期の序盤には日本と北朝鮮への断固たる態度で国内の支持率を大いに上げた。 だがそこまでだった。 片思いの相手である米国は、安倍を褒め称えて頑張れと頼んだ。 そのたびに相手の間違いを恨むことによって、自分の無能を覆ったが、もうその時点も過ぎ去っている。 こうして朴槿恵政権は矮小になったのだ。 北朝鮮問題は次に「挑発」を待つことしかできることはなかったが、 絶妙の時点で緊張が高まり、南北対話が成功した。

特に、今回の過程では久しぶりに安保結集効果が光を放った。 韓国ギャラップが8月第4週(25日〜27日の3日間)にアンケート調査をした結果、 朴槿恵に対する肯定評価が49%にのぼり、今年の最高値を記録した。 こうした支持率は今後政府が進める4大改革の推進力として作用するだろう。 国政改革の最大の好機であるわけだ。 その上、おまけで中国との関係改善を得たので、それこそ一石二鳥であり、錦の上に花を添えるようなものだ。 だから原則を固守できずに確実な謝罪を受けられなかったことや、曖昧な合意文による北朝鮮の合意翻意の可能性などはたいしたことでない。

このように、当分朴槿恵政権は国内と東北アジアで主導権を行使できるようになり、8.25合意の最大受恵者になった。 米国の反対があったにもかかわらず、中国の戦勝節に参加することにしたのは非常に意味があることで、 東北アジアの政治地形を再編する契機になるだろう。

今は北朝鮮孤立化政策の一環ではなく、南北関係改善と共存共栄についての中国の支持を獲得するための韓中協力を増進させていかなければならない。 そのために、韓国政府は北に対して一方的な安保ではない「南北共同安保」を追求し、 同時に米国への安保依存度を減らしていく政策を追求しなければならない。 一言で、陣営を超える外交への転換が要求されている。

こうした選択は現時点で低迷する韓国経済に活路を開く唯一の脱出口でもある。 だが北朝鮮打倒と南北対決を叫ぶ保守勢力の支持を背にする朴槿恵政権は、果たしてこの道を進めるだろうか? ある程度は進展するにしても、大胆に進むことはできないものと思われる。 しかし、なおさら平和と南北関係の画期的改善を望む国民との対立はもちろん、 対北朝鮮への進出を望む韓国の独占財閥と朴槿恵政権との対立は高まるほかはない。

外交安保は私的な領域ではなく公的な領域だ。 教育、交通、医療、電力といった社会の間接資本は日常生活の基盤になる必須不可欠な財貨だから公共性を維持すべきであること以上に、 外交安保は一国家と構成員の生存と直結しているので公共性を維持しなければならない。 外交安保政策は、大統領個人の業績や与党の選挙勝利の道具にしては絶対にならないのである。 こうした原則を遵守すれば、不安定な東北アジアが平和の空間として再構成されるだろう。[チャムセサン研究所(準)]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-09-03 22:14:21 / Last modified on 2015-09-03 22:14:22 Copyright: Default

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