暗黒期に突入した韓国経済

［ヤン・ギュホンコラム］家計負債と労働改革

ヤン・ギュホン(労働者歴史ハンネ代表) 2015.08.26 22:43

失敗した不動産政策と家計負債

家計負債問題が再度注目され始めたのは昨年8月以後、朴槿恵政権の経済首長である崔炅煥(チェ・ギョンファン)副総理が吐き出した各種の景気浮揚措置に始まる。これは「崔炅煥ノミクス」と呼ばれる所得主導成長政策の裏で止まった各種の不動産政策の結果でもある。李明博政権が21回にかけて不動産活性化対策を出したのに続き、朴槿恵政権も首都圏を中心として不動産バブルが弾けるのを防止するため、昨年の「4.1不動産総合対策」を始め、最近まで合計8回の対策を施行した。

この中でも昨年8月以後、直接の不動産融資規制策だったLTV(住宅担保認定割合)とDTI(総負債償還割合)の緩和と共に、韓国銀行の二度にわたる基準金利引き下げを契機として、家計負債が急増傾向に転じた。結局、政府が「一般の国民は金を借りて家を買え」というメッセージを乱発し、若い世代が金を借りて大量の家を買った。こうした過程を通してバブルが弾けるとも思わず、そうでなくても深刻だった家計負債が急騰したのだ。

突然、金を借りて家を買うなという政府の態度は危機が深刻であることの反証

ところで朴槿恵政権は今年7月22日、急いで家計負債総合対策を発表した。このように急に政策を急旋回した背景は、不動産で経済を生かそうとする誤った政策の結果、危機が目前にきたという事実を認めるものだ。政治的負担のためなのか、LTVとDTIには触らなかった。今回の対策は、変動満期一時償還融資を固定分割償還融資に転換することが骨子だ。元金償還の負担を債務者に与え、融資審査を強化して家計負債を減らすことが目的だ。ふらつく政府政策が一寸前も見えないいい加減なもので、「一進一退する不動産対策」、「投機だけ太らせる反国民的政策」といった批判が続出すると、青瓦台は急いで「金を借りて家を買えとか買うな」とか言ったことはないと、国民をバカ扱いしている。これまで朴槿恵政権の経済政策で「金を借りて家を買え」という政策を除けば、打ち出したものは一つもないのだ。

政府の規制緩和の金利引き下げで家賃急騰に耐えられない人々が金を借りて家を買ったというのに、問題は家を売ろうとしても売れない状況に置かれたことだ。それしか方法がない理由は、低出産で人口が減り不安定労働が広がっている状況で、バブルまみれの家など誰も買わないということだ。出産率は1.19%で世界最高を記録している。朴槿恵政権がただ家の購入だけをあおった理由は、金融圏と建設財閥を肥らせることにより経済を生かすというとんでもない発想の結果だった。しかし政府は深刻な負債状況でもこの程度は十分に管理できると叫んでいるが、考えてみなければならない。今の状況で住宅の1％だけが競売に出されただけで、住宅価格は暴落する。バブルの最大の問題は、弾ける時には正常な水準で止まらないということだ。

民生を生かすと言って借金爆弾だけ抱かせる政府

すべての政治的争点と無能があらわれるたびに「民生を生かす」と流行歌のように歌った朴槿恵政権の経済政策は、口では民生を叫び、実際には国民に借金爆弾を抱かせることだった。李明博(イ・ミョンバク)政権は4大河川、資源外交などで100兆ウォンをごみ箱に捨て、朴槿恵政権は任期中盤なのに150兆ウォンを捨てたという。二つの政府が250兆ウォンもの金を捨てたが、これは純粋に労働者、民衆をばく大な借金を抱えさせた形だ。小さな子供たちまで1人当たり1億5千万ウォンの借金を抱かせたという話だ。

今も金はごみ箱にむやみに捨てられている。いっそ何もせず、国民1人当り1億5千万ウォンを配っていれば、経済が良くなって良く回るだろう。労働者、民衆は国家が借金負担と家計負債という二重の負担まで抱せて、相当期間苦しい暮らしをするほかはない。

誤った経済政策の余波で国家負債と家計負債による危機が深刻化すると、政府は責任回避用の爆弾キャッチボールをしている。企画財政部が政府対策チームを作ったが管理が難しくなると対策チームを解体して金融委員会が処理しろと投げている。同じ政府の中でする行動について何ともいいたくもないが、企財部が火遊びをして、責任は金融委がかぶる形なので、こうした政府政策をどうして信頼できるだろうか

バブル政策で内需を救ったケースはどこにもないのに、バブルで経済を生かすと大騒ぎをした創造経済大統領の誤った政策の責任と反省がないから、残る任期にも期待する必要はない。こんな状況なので経済を生かすと豪語した副総理も、民生を生かすより責任を転嫁する口実を探すしかないだろう。家の価格はとても高く、チョンセが家の価格に迫り、内需景気活性化の政策はなく家計負債と共に経済危機が目前に迫ってくると、やっと考え出した発想がこれからは「労働者をひっ捕まえること」だ。誤った政策のすべての責任を労働者民衆に転嫁して、責任を取るべき者たちは政治的な責任も負わずにその場にいるというのは、教育上も良くない。これまでの現政権の経済政策の流れを見れば、脈絡もなく反省もない中で、偶然の幸運だけを望む政策は経済を亡ぼす過程だったのだから、これからの残る任期がさらに怖い。

論理的にも合わない労働改革が生存の必須戦略でなく、資本改革が必須戦略だ

朴大統領は8月6日の対国民談話で、労働改革が「生存のための必須戦略」として労働市場の柔軟安全性、社会安全網、100万人を超える青年失業者に良質の雇用を提供するため、必ず労働市場構造改革を実現しなければならないといった。政府の間違いで失敗した政策の謝罪や反省もなく、「労働改革」をすると大騒ぎをしている。改革の辞書的な意味さえも理解できずに何をするというのか。すべての改革の意図は「進展する発展的変化を招こう」というところにある。したがって、改革が必須戦略なら「労働改革」と騒ぐのではなく、率直に「労働条件改悪」だと話さなければならない。労働市場でもない労働自体をどうすれば改革できるのか理解できない。はっきりしている事実は、改革という煙幕の中には労働者階級の基本権を抹殺するという不純な意図が光っているのだから、これは当然の道理をひっくり返す反逆でしかない。

一歩進んで非正規職差別化の問題と青年雇用解消のために労働市場の構造改革が必要だと強調するが、その方法論は賃金ピーク制と職務成果給制、そして労働柔軟化だ。こうした方法の真情性はともかく、果たして実効性があるのか疑わしい。賃金ピーク制は長期勤続者の賃金を削り、下降平準化するということで、整理解雇よりさらに自由に解雇するもので、資本の天国を作るということだ。しかし財閥は700兆ウォンもの金を金庫に入れて、さらに多くの利益を獲得するために必死になっている。社内留保金があふれ、積んでおく蔵を探すような状況が続いているが、再生産に投資して正常雇用を拡大することはせず、雇用を増やすどんな計画も見られない。それなのに、何が良い仕事だとたわごとを言うのか分からない。それでも賃金ピーク制などを通じて雇用を増やし、経済を生かすという言葉は、結局、犬が草をかじる音(訳注:とんでもないあり得ない話という意味)でしかない。

職務成果給制も業務の成果だけで低賃金労働者と不安定な労働者を自由に解雇できるということだ。特に業務成果の判断は労働者がするのではなく、資本家が任意にする。こうした対策が青年雇用を増やすという論理はまったくおかしい。さらにとんでもない論理は、労働者の富を増大させて消費を活性化させることにより、内需経済を発展させて企業が成長する国を作るということだ。所得があってこそ消費が可能だが、労働者階級の生存を崖っぷちに追いやっておきながら、労働者が安心して金を使えるようにするというのがどういう話なのか、最近市中にさまよう「朴槿恵通訳機」を使わなければわからない。

危機克服や改革を語る時は、間違いなく引きずり込まれる労働者

政府と与党は経済危機の原因は労働にあるとし、労働改革は避けられないと喚いているが、その内容は労働者階級の内部を対立関係に設定し、世代対立に追いやることだ。本当に経済を生かそうとするなら、対立を助長するのではなく総投資・総消費を増やすことで当面の経済危機を克服するまともな政策でなければならないのではないか。負債帳消しと危機克服、そして経済を生かす可能性が全くない労働改革に賭ける理由は何だろうか。朴槿恵政権はこれまでの政治日程の中で、分割統治とイデオロギー攻勢で票を取る妙味を正確に見た。したがって、今度は世代間(既成世代と青年世代)の対立を使い、支持率を確保しようとする卑劣な政治的小細工が引き立つ。選挙の女王の指針に従って、セヌリ党の金武星(キム・ムソン)代表も総選挙で票を失っても労働改革をするという幼稚な決意を約束している。

経済危機の原因を誤認すれば、処方と治癒がさらに難しくなる。おかしな労働改革という名前で見かけは良い「生存のための必須戦略」だの、民生だの、創造経済だのと喚くのではなく、資本家集団と財閥問題を調べなければならない。現在断行すべき改革の対象は、労働改革ではなく無能の極限状態にある朴槿恵政権自身の改革と、 700兆ウォンを蔵にため込む資本家・財閥を解体する改革であれば、説得力もあり論理的にも適当だ。増え続ける社内留保金は結局、不安定労働と労働柔軟化、そして労働者階級を搾取することで蓄積した余剰物であることは否定できない。

問題は労働者階級の死活をかけた闘争だ

経済・民生の公約を廃棄した朴槿恵政権は、他の政策を用意する余力がないのだろう。これまでひたすら公務員年金削減の延長線で労働改革にオールインしている現政権と執権与党の態度からは、労働者階級に対する憎しみと敵がい心が見える。金武星は「600万票減っても労働改革を成功させる」と言ったが、こうした行為自体が彼らの巧妙な選挙戦略だ。政権が変わり、新しい政権が登場しても変わらないものの一つは、労働基本権と労働条件が絶えず後退しているという事実だ。

だから労働者階級が今回またやられれば、もう退く空間はない。だからわれわれは金武星の言葉のように、600万人が死ぬという覚悟で支配階級の不純な発想を阻止する闘争が必要だ。度重なる危機は資本主義それ自体にある。それでも資本主義の恨み節だけを並べることもできない。経済危機の苦痛を民衆に転嫁して、労働者階級を「使い捨て」にする支配階級の政治的策略と労働者とひっ捕まえる戦略は、傍観の対象ではなく闘争で抵抗しなければならない。その闘争の始まりがゼネストだ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可（仮訳）に従います。

Created byStaff. Created on 2015-08-27 11:31:22 / Last modified on 2015-08-27 11:31:25 Copyright: Default