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間接雇用を増やす三点セット

[連続寄稿](3)派遣法と職業安定法改悪、社内下請法制定

キム・ヘジン(全国不安定労働撤廃連帯常任活動家) 2014.12.11 16:45

  1. 朴槿恵政権の非正規職政策批判
  2. 期間制法が改悪されればどうなるのか?
  3. 派遣法が改悪されればどうなるのか?
  4. 正規職が悪くなれば非正規職が良くなるか?

最近、政府の口から非正規職を心配する声をよく聞く。 ほとんど正規職を狙っていて「非正規職労働者を保護するために、正規職の過保護をなくさなければならない」ということだ。 ところがそれほど非正規職を心配する人たちが出す法案は「非正規職を拡大」する法案だ。 政府がマスコミに少しずつ流している内容は、期間制の期間制限を2年から3年に延長して派遣許容業種を増やすという内容だ。 そして社内下請を保護する方案を作ると言いながら、社内下請の合法化を試みたりもする。 「非正規職総合対策」は非正規職を保護する対策だというが、言葉とは違い、実質は非正規職拡大戦略でしかない。

持続的に拡大してきた派遣許容業種

韓国政府も加入している国際労働機構(ILO)の目的に関する宣言、 「フィラデルフィア宣言」は、「労働力は商品ではない」という言葉で始まる。 労働者をみだりに売買したり中間搾取をしてはならないということを意味する。 韓国の勤労基準法も、中間搾取と強制労働を禁じている。 しかし、こうした原則の例外として登場したのがまさに1998年に施行された「派遣法」だった。 原則として間接雇用を認めないが、「専門職従事者」など、自由な移動を望む労働者のためには派遣が必要だというのが政府の主張だった。 もちろんその言葉とは違い、事務補助、運転職、介護人など、悪い労働条件を強要する業種が派遣許容業種に含まれていたが、 とにかく派遣は例外的だという点を確認した。 したがって派遣法制定の初期には期間も2年に制限し、業種も26業種に制限された。

だが派遣法が施行された時から企業が望むのは、「派遣の完全な自由化」だった。 ところが96年、97年のゼネストなど、労働者の強い抵抗にぶつかって企業は業種制限に後退した。 それでも企業は放棄することなく派遣許容業種を増やそうと試みてきた。 政府もそうした企業の要求に積極的に呼応し、その結果、2007年には26の派遣許容業種が32業種に増えた。 そして業務の詳細な分類基準の構成を変え、派遣許容業務がさらに増えた。 2年以上派遣で働けば正規職と見なす条項が「正規職転換」条項に後退した。

朴槿恵(パク・クネ)大統領は「規制はガンの塊り」とし、企業の規制緩和の要求を受け入れろという指針を出した。 ところが労働者の雇用安定を保障する最低の措置さえも「規制」と見なす政府の態度のために、企業はさらに積極的に非正規職拡大を要求している。 特に大韓商工会議所は「聖域規制」という表現まで使って派遣許容業種を増やし、整理解雇要件を緩和して、 ストライキの時の代替労働を許容しろと建議した。 すると政府はこれを積極的に受け入れ、派遣許容業種の拡大を受け入れている。

派遣許容業種拡大の内容と問題点

まず32業種の派遣許容業種に農林畜産業を入れる方案だが、 政府は雇用のミスマッチを原因と話す。 農林畜産業は働く人を見つけるのが難しいが、都市では仕事を探す人々が多いので、 派遣を許容しても都市の人が農村で働けるようにしようということだ。 ところが農林畜産業で働く人がいない理由は、労働強度が強く労働環境も悪いのに賃金が低いからだ。 この労働条件をそのままにして派遣を許容すれば、雇用で困っている労働者たちは、さらに劣悪な労働をするようになる。

特に今は農林畜産業で移住労働者がたくさん活用されており、農畜産業の移住労働者の人権問題が深刻だという点が今年10月のアムネスティ報告書で確認された。 ところが今はそうした移住労働者が派遣の対象になり、劣悪な労働条件が良くなるのではなく、 雇用が緊急な切迫した労働者たちが行くことになる悪い雇用は再生産されるだろう。 農林畜産業でさらに多くの労働者が働くようにしたければ、派遣を拡大するのではなく、 働く労働者に対する支援を通じて良い雇用にすれば良い。 そして雇用のミスマッチが心配なら政府が動いて公共雇用サービスを拡大すれば良い。 労働者たちが良い雇用を安定して見つけられるようにするのが政府の義務だ。

また高齢者に対しては業種に制限なく派遣を許容するという。 55歳以上の労働者たちは雇用を望み、企業も熟練した労働者を望むから、 高齢者の雇用創出のためには派遣を許容しなければならないという。 2016年からは定年が60歳に延びる。 労働市場に進入する時期も遅れ、結婚年齢も上がるので、60歳は子供に一番多く金がかかる時だ。 ところが政府は定年延長を代価として賃金ピーク制など、賃金を下げる制度を作っている。 もし高齢者の派遣が認められれば、会社は55歳になった時、会社を辞めるように圧力を加え、 そうして仕事を辞めた労働者たちには派遣で再入社するように要求するだろう。 企業は高熟練労働者を低賃金で使え、定年延長は意味のない制度になってしまう。 最大の問題は、高齢者派遣が「業種制限なし」で認められるという点だ。 今は「高齢者」に限ってのみ業種制限なく派遣を認めるというが、 一旦業種の制限が解除されれば手の付けようがなくなる。

末端の派遣労働者に責任を転嫁する派遣の自由化

完全に自由に派遣労働者を使えるようにしてくれと要求する中小零細事業者の声が大きい。 製造業に派遣労働者を使うのは不法だが、短期間派遣という美名の下で今でも中小零細事業場には不法派遣が乱舞している。 中小零細事業場が密集する半月始華工団に行けば、一つのビルに人員派遣企業がいくつか入っているのを見られる。 工団ではもう直接採用はなく、新規採用は派遣企業を通じて行われる。 フリーペーパーは派遣業者の広告があふれている。 派遣労働者たちは6か月未満で働くことが多く、 ほとんど最低賃金なので仕事が多い所、つまり残業と特別勤務ができるところに移動することが多い。

このように不法な派遣が増え、派遣労働者の低賃金と不安定が深刻になる理由は、 中小零細事業場が安定して人員を運営できないという条件のためだ。 韓国の産業構造は、大企業を中心に下請系列化されている。 大企業は自分たちの直接生産を減らし、下請構造に生産を受け渡す。 しかしコスト削減という理由で下請企業に単価引き下げの圧力を加え、 物量を調節することにより、下請企業に対する支配力を行使しようとする。 同じ部品を生産する下請企業をいくつか互いに競争させたり、 あちこち仕事を集めてやりながら下請企業が大企業の要求に順応するしかないようにするのだ。

その結果、下請企業は独立した営業が難しくなる。 大企業の単価によって利益の大きさが変わる。 ところが下請企業の企業家たちは、自分の利益を減らしたくはない。 そのため労働者を絞り取り、抵抗できない労働者たち、つまり移住労働者を雇用したり派遣労働者を雇用することで自分の利益を保全しようとする。 また、大企業が望む時に望む方式で物量を間に合わせなければならないため、労働者をいつでも増やしたり減らせることを望む。 つまり中小零細事業場で派遣が増えるのは、大企業が下請企業に費用を押し付け、 下請企業の社長は損害を受けないように一番末端の労働者に責任を転嫁するのだ。 「柔軟化した労働力」とは、こうして企業の必要によっていつでも使い捨てられる労働者たちだ。

労働力供給事業で金を稼げるようにするという政府

政府はここで止まらない。 大企業の下請である中小零細事業場で、物量により労働者たちを使い捨てられるようにするには、 これらの労働者を適宜供給できる機関が必要だ。 捨てるのも会社の自由にできて、労働力が必要な時はすぐ入れられなければならないからだ。 そうした役割を果たすのが派遣企業等だ。 派遣業者が増えるということは、それだけ労働者の雇用が不安定だということを意味する。 派遣企業等が雨後の筍のように増えるのは、派遣業が金になるからだ。 何もしなくても事務室と電話さえあれば、企業につながっているだけで労働者を集め、派遣することで金を稼げる業種がまさに派遣業、 つまり雇用サービス業だ。 労働者を売買することで金を稼ぐ業種である。

ところが政府はここに着眼して「雇用サービス」を産業にしようとする。 労働者の雇用が不安定なら、その労働者を移動させ続ける産業ができるはずだ。 今は雇用情報と雇用を提供することを政府の役割としている。 労働者が雇用保険料を払うのは失業手当のためでもあるが、雇用を失った時、雇用情報をきちんと提供されるためでもある。 ところがこれを産業にするということは、政府の役割を民間に渡し、金儲けの手段にするという意味だ。 それで李明博政権は「職業安定法」を全部改正して「雇用サービス活性化法案」にすると言う。 労働界の強い反発で失敗したが、「雇用サービス活性化法案」は今でも「職業安定法」の施行令を変える形でずっと試みられている。

今年に入っても、職業紹介所の坪数制限を緩和したり、「センター」等の名称を使うことができるようにするなど、 職業紹介所、派遣業をさらに広く認め、金儲けの手段にしようとする施行令改正を続けている。 雇用に労働者をつなげ、良い職場を見つけさせるのは、政府の重要な役割の一つだ。 だから労働者たちは「雇用保険」を払うのだ。 しかしそうした政府の役割を捨てて、むしろさらに中間搾取を活性化させようとしている。 企業は費用を節減すると言いながら派遣を使い、 労働者が不安定に移動するたびに手数料を取って腹を肥やし、 政府はそれを法で煽り立てて、派遣労働者の賃金と労働条件は次第に悪くなる。

労働力供給の安全性と、統制と差別を維持しようとする社内下請法

中小零細事業者だけが「派遣の完全な許容」を望んでいるのではない。 大企業も業種制限と期間制限皆をなくそうとする。 特に「不法派遣だから下請労働者を全員正規職に転換せよ」という判決を受けた現代自動車などの大企業は、 派遣を完全に自由化するために、そして2年経った派遣労働者は直接雇用と見なされる「雇用擬制」条項を「雇用義務」条項に改悪するために、国会や裁判所にロビーをした。 そして今、大企業がさらに気を遣っているのは「社内下請法」だ。 社内下請法も派遣の完全な許容と同じように社内下請を合法化する。 だが派遣法とは若干性格が異なっている。

大企業はある程度は安定した内部労働市場を維持しようとする。 労働者の移動が多すぎれば熟練が保障されず、企業への忠誠度も保障が困難だからだ。 では正規職を採用すれば良いのだが、労働者の強力な統制を望む企業は非正規職を好む。 こうした矛盾した欲求をすべて満足させるために、大企業は「社内下請構造」に未練を持つ。 労働者をいつでも解雇でき、元請が使用者としての直接責任を負わないために不当労働行為をしてもよく、 会社出身者を名ばかり社長にして、下請企業に対する支配力も自由に行使でき、 労働者の熟練度も調節できるからだ。 「派遣」は労働者が移動する時に適した雇用形態なので、大企業は「派遣制度」より「社内下請合法化」を好む。

それで作ったのが「社内下請法」だ。 2013年、政府が社内下請保護を名分として「社内下請法」を持ち出し、 「鄭夢九法」という批判を受けて静かになったが、 企業と政府は諦めることなく社内下請法により社内下請の合法化を試みている。 政府はひとまず「社内下請保護対策」を用意して発表するという。 しかし社内下請を保護するのなら、大法院判決のとおりに正規職転換をやればいい。 現代自動車社内下請への大法院判決の核心は、労働者を正規職に転換しろということだけではなかった。 「製造業工程において合法的な請負構造は不可能なので、請負構造をなくせ」ということだった。 しかし労働部も大企業も、労働者の一部を新規採用することで裁判所の判決を希薄にさせたまま、 社内下請構造を維持し、この構造を「社内下請保護」という美名の下で合法化しようと試みている。

直接雇用原則を前提として元請の使用者責任を制度化しろ

間接雇用は存在してはならない雇用形態だ。 労働者を雇用し、金を稼ごうと思えば、その企業は労働者を直接雇用しなければならない。 この原則と方向性をはっきりさせなければならない。 そうすれば、まず直接雇用原則の例外として存在する「派遣法」をなくさなければならない。 韓国の雇用構造の中で、合法的な派遣労働者はあまり多くない。 用役と請負、社内下請外注化などの名前で呼ばれる多様な間接雇用、 事実上の不法派遣労働者の方が多い。 しかし「派遣法」は労働市場に「間接雇用が可能だ」という信号を出す信号機だ。 派遣が合法化された瞬間、企業は自分が望む形で多様な間接雇用を作り出した。 労働者たちは「不法派遣」訴訟で多様な形態の間接雇用に問題提起した。 だが派遣拡大と社内下請法などで不法派遣訴訟は意味を失った。 今は「直接雇用の原則」を明らかにする意味で、「派遣法」の弊害を広く知らせ、廃止の目標をはっきりとさせなければならない。

だが労働界には派遣法を廃止するほどの力はない。 いや、派遣法改悪を防ぐだけで汲々としている。 ところがこれまで非正規職労働者の闘争で「派遣は悪い制度」だということが社会的に知られた。 それで政府も「派遣を拡大」しようとすれば、世論の顔色をうかがうほかはない。 派遣法が労働者の人生を不安定にして、間接雇用を拡散してきたということを、もっと広く知らせ、怒りを拡散しなければならない。 これを通じて当分は改悪を防ぐことしかできないとしても、直接雇用の原則を社会的に確認する大きな力にすることができる。

もちろん直ちに間接雇用労働者たちの権利を得ることも重要だ。 年末になると繰り返される解約などの雇用不安定の問題も解決しなければならず、 中間搾取で深刻化した低賃金の問題も解決しなければならない。 ところが低賃金と不安定な労働は法と制度では簡単に保障されない。 低賃金と不安定労働は企業が間接雇用を作る目的の一つだからだ。 だから間接雇用労働者たちは制度に依存せず、「自ら保護する」と叫ぶ。 現実にならない制度的保護の中で間接雇用を正当化させるより、 労働組合を作って権利を得るために闘争する方が貴重で意味あるとみたのだ。

私たちが今すぐ間接雇用をなくすほどの力はなくても、一歩前に進もうとすれば、 間接雇用労働者の労働権のための闘争に力を入れなければならない。 間接雇用労働者の労働権を遮る最大の問題は「元請が使用者としての責任を負わないこと」だ。 法的に元請が使用者責任を負わないため、企業は自由に不当労働行為を行い、労働者を解雇している。 元請に使用者としての法的責任を負わせなければならない。 今年、間接雇用労働者は「本当の社長が責任を持て!」と要求して一緒に集会もして、連帯もしてきた。 「派遣法廃止」という目標は持っても、現実では派遣法と職業安定法改悪を防がなければならず、社内下請法も防がなければならない。 だがそこに留まらず「元請の使用者責任」を法的に認めさせる共同の戦いに進まなければならない。 間接雇用労働者の団結により権利を得られた時、「直接雇用原則」を労働者の力で強制できるようになる。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-12-20 01:08:26 / Last modified on 2014-12-20 01:08:27 Copyright: Default

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