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金融資本を太らせる竜山開発とコレイルの構造調整

[記事で読み解く経済](24)政府の粉飾会計と民主的統制

ソン・ミョングァン(チャムセサン企画委員) 2013.03.18 11:35

竜山開発の不渡りがコレイルの構造調整に飛び火するか

この一週間、新聞とTVの経済面はすっかり竜山開発不渡り事件で埋め尽くされ ました。数年前から、事業性がなく清算を待っていたという事が確認されたわ けです。コレイル(韓国鉄道公社)は、竜山事業を公営開発に転換する代案を出 していますが、すべての利益を諦めなければならない民間出資社としては簡単 に受け入れるのは難しく、綱引きが行われています。ところで果たして問題の 核心となる竜山開発主導権を誰が捉えるのかです。

問題がどこから始まったのか確かめなければなりません。竜山開発の始まりは コレイルの負債問題でした。KTX高速鉄道の建設費用による4兆5千億ウォンの負 債をコレイルは竜山鉄道整備倉敷地を売って埋めようとしたことが竜山開発の 出発点でした。ここに展示性の漢江ルネサンス事業と再開発の利益という幻想 が加わり、手がつけられないほど規模が大きくなりました。すでにこの事業は 失敗し、多くの住民の苦痛と対立を生みました。そしてまた問題の出発点だっ たコレイルの負債問題が戻ってきたのです。

竜山事業座礁でコレイルの資本構造に悪化の予想、信用等級下降の可能性? ムーディース、S&P
コレイル債権発行限度を上げて迂回支援、コレイルに高強度の構造調整を要求-国土海洋部鉄道政策官

コレイルは帳簿上の竜山事業敷地予想処分利益(6兆8000億ウォン)を丸ごと持ち 出さなければならない状況に直面しました。しかもこのうち2兆7000億ウォンは すでに受け取った金で、帳簿の数字を消しただけでは解決しません。また吐き 出なければならないのですが、すでにみんな使ってしまったので、新しく社債 を発行して埋めるものと見られます。そのため竜山開発が1次不渡りを出すとす ぐ、国土部はコレイルの債権発行限度を資本金の2倍から4倍に増やすと言及し たのです。しかしそのためには、鉄道公社法の改正と共に、国会の同意が必要 です。それで、コレイルの高強度の構造調整と自助努力が先だという国土部の 要求が出てくるのです。そのため一部では、国土部がこの問題をKTXの民営化を 再推進するテコにする可能性があるという分析もあります。

このように政府の財政支援と政策支援がなければ存立が難しい公企業がまさに コレイルです。こうした状況で、コレイルが竜山開発の主導権を握って事業を 続けるという発想は、2種類があると推測できます。一つは江南不敗も消えた 不動産市場を竜山は突破できるという妄想に捕らわれているのか、もう一つは 竜山開発の事業主体であるドリームハブが破産すれば、その後、事業の失敗の 責任を避けるためのアクションかです。いっそ二番目であることを望みたい ものです。

親から譲り受けた資産、ところがそれがみんな借金とは

しかし昨今のこうしたコレイルの財政危機をすべて公企業の不良経営や非効率 な人員運営のためと評価することはできません。2006年、不動産が暴騰してい た時に、竜山開発の欲をかいたコレイルの態度は十分に非難されるべきですが、 しかし『民営化論』者の『公企業叩き』の論理に巻き込まれてはいけません。

コレイルの4.5兆の借金は、国家基幹産業として十年以上進められた高速鉄道の 建設事業に投資された18.4兆ウォンの一部による借金です。しかも数年前には 空港鉄道を抱え込み、1.2兆ウォンの負債まで譲り受けた状況です。そのため、 毎年の利子だけで4000億ウォンが以上になりつつあります。簡単に言えば、子 どもが親から数億ウォンの家一軒を譲られたのに、実はその金はすべてローン だったようなものです。親と一緒に暮らす子供は家を売ることもできず、毎日 利子の返済に苦しんでいるような状況でしょう。

コレイルがKTX車両を丸ごと売って借金を返すといえば、皆笑うでしょう。そん なことをすれば、事実上コレイルという存在自体がなくなってしまいますから。 ですから、コレイルの借金は一種の計画された負債です。一般企業のように、 営業して発生する借金ではなく、安い貨物運送や旅客機能の公共性のために、 国家が投入すべき部分を借金の形で抱えているのです。だから借金の督促を受 けるコレイルは、しばしば収益事業に飛び込み、竜山開発のような事件が起き るわけです。ですからこうした状況を公企業の不良経営とだけ言うことはでき ません。

では、コレイルに竜山開発に飛び込むようにムチを加えた原因を確かめてみな ければなりません。そのうち一番重要な原因として、十数年前の国民の政府で 始まった鉄道民営化政策を指摘しないわけにはいきません。鉄道民営化政策の 骨子は、基盤施設部門と運送事業部門を分離して、完璧な上下分離をした後に、 運送事業部門はまた地域と機能別に分割する方式です。現在、運送事業(車両、 駅舎、管制)はコレイルが、基盤施設(線路)は鉄道施設公団が担当する上下分離 (文字通り上の車両と下の鉄道を分離)が進められています。まるで一軒の家で 暮らす子供たちを一日で離散家族にするようなものです。そこに借金まで押し 付けて、です。

図でわかるように、鉄道機能の公共性を維持するためには国家次元の持続的な 投資が必須です。ところがこれを公企業に転換させて、金融市場で資金を調達 し、事業させようとしているのです。事実上、国家の負債になるべきものが、 粉飾会計処理されたのと同じです。問題は、これらすべての負債の利子費用が コレイルの鉄道運営収入に依存している点です。しかし鉄道料金を大幅に値上 げするのは鉄道の公共機能を考えると、国民には受け入れ難いものです。

しかも、鉄道施設公団は特別な運営収益がないので、コレイルから毎年6000億 ウォンの線路利用料を受け取らなければ何もできません。事実上、窮屈な暮ら しをしている兄が弟に小遣をやるのと何が違いますか? この金では利子に当て るのも足りないのが現実です。

公企業分離、政府の粉飾会計...金融資本の腹を肥やすだけ

こうした状況で、増えざるをえない負債構造に目をとじたまま、各種構造調整 と民営化だけを推進するのは、問題の核心を全くはずした発想です。今のよう な負債構造では債権市場の大きな損失を増やすばかりの結果になります。現在、 コレイルと鉄道施設公団の利子費用だけでも年間1兆1000億ウォンです。ここに 今回の竜山開発の不渡りでコレイルが払う2兆4000億ウォンがあります。これも 債権の発行で調達すれば利子はまた増えるでしょう。しかも不渡を出した竜山 開発をコレイル主導の公営開発で再度推進すれば、5兆ウォンもの資本金が必要 です。そうすれば、また大量の債権を発行しなければならないでしょう。それ で、すでに債権市場では大量のコレイル債権が予想より高い利率で発行される という話が流れています。一度に多量に消化しようとすれば当然そうなるしか ありません。国家が保証する債権ですから不渡りの危険は低く、予想より高い 利率で発行されれば、この債権を買うのは立派な金融投資だと言われるのです。

コレイルの債権は国家保証ですから事実上、国債を発行するのと全く同じです。 ところがなぜ公企業に分離しておいて強力な構造調整が必要だとか、民営化を して負債を削減するとか、つじつまが合わない話をするのでしょうか。その上、 最近は第2鉄道公社設立の話まで出てきて、鉄道民営化の布石を敷いています。 果たしてこんなに面倒なことをすることが、『民営化論者』が言う効率なのか 問わないわけにはいきませんね。

今回の竜山開発の失敗で私たちが見つけるべき教訓は、もっと事業感覚があれ ばというコレイルの経営能力に対する惜しみではありません。無分別に各種の 収益事業に飛び込んだ公企業の現実です。数年前から確認されていたLH公社の 失敗を見てください。今回の竜山開発の失敗で四面楚歌に追い込まれたコレイ ルと何が違うでしょうか。資本金の10倍の100兆の負債を負っているLH公社は、 不動産市場沈滞に直撃され、国民賃貸住宅事業のような本来の機能をきちんと 遂行できないほど壊れています。4大河川事業の負債8兆を肩代わりした水資源 公社も、まさに水辺施設に対する投資から収益を上げられなければ、利子のた めに負債がさらに加わる状況に追い込まれています。

国民幸福増進とはほど遠い収益事業、金融負債と利子費用の増加、事業の失敗 による資本金調達と政府保証、そして高強度構造調整と公共性の後退... もう こんな公企業失敗の鎖を断ち切る発想の転換が必要です。「構造調整反対」、 「民営化反対」の水準を越え、国家基幹産業としての基本機能に忠実に民主的 な財政統制を受ける公企業の「民衆的革新」が必要です。

基幹産業の財源調達方案と民主的統制議論の必要性

しかし、すでに竜山開発の失敗で不動産市場がさらに凍りつくという見えすい た脅しのような発言があふれています。それで竜山開発事業は何らかの方式で 再推進すべきだと騒ぎまくっています。またソウル市の責任論を口にし、事業 再推進のために公有地の無償提供、容積率引き上げのような特典を与えろとも 話しています。呉世勲(オ・セフン)前市長の失策を批判する論理が現ソウル市 の責任論に変身しているのです。ある人は国土部が介入し、事業主導者を交通 整理させろと言いますが、国土部はコレイルが身を引けと要求しています。

こんな無駄な迷妄に捕われるばかりで、2010年にすばしこいサムスンが事業か ら手を引いた事実は意図的に無視しています。すでに事業性がないということ が数年前から誰もが知っていました。もしコレイルが慈善事業するつもりで、 土地価格は受け取らずに建物の値段だけで大規模賃貸アパートを建ててやれば、 竜山開発は可能でしょう。むしろ国民だれもが歓迎するかもしれません。だが 土地を売って負債を返さなければならないコレイルの立場としては現実不可能 な想像の話です。

しかしもし鉄道構造改編が行われる前のように、竜山の鉄道敷地が国家が保有 する土地だったと考えてみましょう。現政権が大統領選挙の公約に打ち出した 「鉄道敷地を活用した賃貸住宅普及」を竜山でモデルとして推進すればどうで しょう? 数年間、場所だけ作り荒れたまま放置されている竜山の鉄道敷地は、 それ自体が資源の浪費でしかなく、毎年数千億ウォンの金融費用だけが食われ るのです。

ですから私たちが今回の竜山開発不渡り事態から得るべき教訓は、基幹産業の 財源調達と財政統制の必要性だと言えるでしょう。民主的な財政統制は決して 非効率ではありません。限られた収益構造を持つ基幹産業の特性から、無理な 開発事業による失敗を未然に防ぎ、国家的水準の福祉事業をはるかに低い調達 費用で遂行する効率的な装置です。

今回の事態を契機として事実上、粉飾会計のような数字遊びに陥った国家負債 と公企業の負債の間の隠された現実を掘り起こし、民主的な統制について論争 が触発されることを期待したいと思います。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-03-19 20:03:21 / Last modified on 2013-03-19 20:03:22 Copyright: Default

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