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●渡部通信（5/27） : 
明けない夜はない（311）＜若者を再び戦場に送るな！（61）小泉農
水大臣の米価介入と市場について＞

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「コメは買ったことがない。」などと発言した前江藤農林水産大臣は、

結局辞任せざるを得ませんでした。そして、新たに農水大臣になった小泉進次郎氏は、

都議選（6月）や参院選（7月）目当てでもあるのでしょう。

「5キロ2000円にする」といって、5月26日から備蓄米を「随意契約」で放出する手続きに
入りました。

すでに大手のスーパーや安売りストアが名乗りを上げていますが、

楽天グループとかラインヤフーも購入を検討しているようです。

これをみても。誰が儲けるかは一目瞭然です。またそれ以外にもいくつかの問題が考えら
れます。


第一には、2000円のコメに多くの人々が殺到することが予想されます。

そうすれば、当然大きな混乱が起きることが考えられます。

第二には、一般の半額で買えますからそれを転売して儲ける業者や人間も出てくるかも知
れません。

第三には、価格が下がれば、米作りをやめざるを得なくなる農家も出てくるかもしれませ
ん。

このことはすでに問題になっています。日本のコメ作りはますます危機になって行くでし
ょう。

第四には、そうなれば外国の米をどんどん輸入せざるを得なくなるでしょう。

そうすると、商社などは儲かりますが、日本の食料自給率はさらに下がることになるでし
ょう。

第五には、食料自給率が下がれば、もし戦争が起れば、外国からの燃料や食料が届かなく
なり、

日本は大規模な食糧危機に陥ることになるでしょう。

しかも石破政権は戦争準備にまっしぐらですから、日本でもガザと同じようなことが起き
る可能性はあります。


そもそも、現在のインフレの大きな原因は、

アベノミクスで景気刺激のためとして市場に大量のお金をばらまいたことが原因です。

お金も商品の一種（何とでも交換できる特殊な商品）ですから、

大量にばらまかれればお金の価値は下がります。その結果物価が上がりインフレになるの
です。

しかし、政府はこの間一貫してアベノミクスの延長のようなことを続けています。

そして、金融引き締めには消極的です。それは、金利を上げ金融引き締めをすれば、

株価や国債が暴落し、大企業や金持ちが損をするからです。

また、商品の価格は市場で決まるものですから、

政府が米価に介入すれは必ず悪影響が起きて来ることは間違いありません。

さらに大きな米騒動が起きる可能性もあると思われます。


ところで、この問題について前回紹介した山片蟠桃は『夢の代』の「経済第六」の中で、

「徒(いたずら)ニ価ヲサゲテ民ヲ救フト思フハ、病人ニ毒ヲアタヘテ死ニ至ラシムルゴト
シ」と述べ、

常識的な観点を批判しています。そして、物価のことについて次のように述べています。


「スベテ物価ノコトハ無理ニ賤(やす)キヲ欲スベカラズ。貴(たか)ケレバ買ザルニシクハ
ナシ。

唯(ただ)価ハ商賈（商人）ニ任サルベシ。貴クシテ買人ナケレバ賤クスルノ外ナシ。

・・・これ至(し)拙(せつ)ノ言トイヘドモ至(し)理(り)ノ論ナリ。

タダ官ニアリテハ物ノ有無ヲハカリテ価ニカゝハルベカラズ。」（同上）

要するに、物価は商人に任せる他なく、

「タダ官ニアリテハ物ノ有無ヲハカリテ価ニカゝハルベカラズ」と言っているのです。

また、次のようにも述べています。少し長いのですが紹介します。

「天ヨリ命ズル二アラズ。人アツマリテ比党スル（片寄り組する）ニアラズ。

西ニ買ヒ、東ニウリ、北ニカヒ、南ニウル。或ハ上リ、或ハ下リ、或ハ保チ、或ハ飛ブ。

朝々暮々入船入檄ノ度ゴトニ高下スルコト、響ノ声ニ応ズルガゴトシ。

シカリトイヘドモ其道二(ふた)ツ。曰(いわく)売(うり)、曰(いわく)買(かい)。ソノ応二
(ふた)ツ。

曰(いわく)貴(き)、曰(いわく)賤(せん)。唯コレノミニシテ、天ニアラズ、神ニアラズ。

・・天ニ先ダチテ天違(たが)ハズ、天ニ後レテ天ノ時ヲ奉ズ。

人ニ先ダチ人ニ後レ、事ニ先ダチ事ニ後レ、万物ニアマネクシテ通ゼザルコトナシ。

アゝ恐ルベキカナ。故ニ今天下ニカシコキモノハ米相場ニシクハナシ。」（同上）

そこから、次のようにも結論付けています。

「然レバ天下第一ノ知ハ大阪ニ在リトイヘドモ、第二ノ知ヲ江戸トシテ、三ヲ下ノ関トシ
、

ソレヨリダンダン諸国ノ湊々大小ニシタガヒ小知アリテ、遠山孤島ハ愚ナリトシルベシ。
」（同上）

つまり、蟠桃は経済は人為的なものではなく、独自の法則に従って動くものであることを
主張し、

その経済的土台から社会の上部構造（知識文化など）をも見ているのです。

したがって、これは明らかに科学的（あるいは唯物論的）観点であるといえるでしょう。


果して、小泉農水大臣の「コメ2000円」の政府による米価介入は、歴史の教訓に耐えられ
るでしょうか。

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