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LNJ Logo しっかりしてよ、朝日新聞/「降伏しないウクライナ」は批判されるべきなのか
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*投稿者 : 久下格(元国労)
昨日 facebook で公表した文章を投稿します。 -------------------------

●「降伏しないウクライナ」は批判されるべきなのか●

=朝日新聞(2022/08/12)=  朝日新聞(2022/08/12朝)に豊永郁子さんという早大の先生が「ウクライナ 戦争と人権 」という文章を寄稿しています。さすが専門家ですから論理的で美しい文章ですが、読ん でひたすら悲しくなりました。紙面の三分の二を占める長い文章にはロシアの侵略を糾弾 する箇所は一か所もない。ロシアの侵略をやめさせ、ロシア軍をウクライナから撤退させ るために何をするべきか? 日本人はそのために何ができるか? は何も書かれていない 。そもそも、ロシアに触れているのは「ロシアのプーチン大統領の行動は独裁者の行動と してみればわかりやすく、わからなかったのがウクライナ側の行動だ」という部分「ロシ アを、プーチン氏を敗退させることが現実的にどこまで可能かも疑問だ」という部分、「 戦争の長期化は、ロシア国内におけるプーチン氏の権力を弱体化するのではなく、強化す る可能性がある」という文章だけ。あとはひたすらゼレンスキー政権とそれを支援する西 側諸国への批判が続くのです。
「……英米の勧める亡命をゼレンスキー氏が拒否し、『キーウに残る、最後まで戦う』と 宣言した際には耳を疑った」と書かれていますから、筆者は、ゼレンスキー氏は亡命すべ きだったと思っているのですが、それはキーウを短期間で占領してゼレンスキー政権を瓦 解させるという、プーチンの当初の計画が実現していたことを意味します。それでいいの でしょうか。それが最善だったのでしょうか。短期間に占領し傀儡政権をつくるというプ ーチンの計画を打ち砕いたウクライナ人の抵抗は批判されるべきなのでしょうか?
 結論的な部分では、第二次大戦で、ナチスドイツに屈して併合を受け入れたチェコのプ ラハ、無防備都市宣言をして無血開城し破壊をまぬがれたたパリが賞賛されています。筆 者は4千万人のウクライナ人が抵抗をやめ、降伏して全土をロシアに明け渡すことを提案 しています。
 戦争が悲劇的で非人間的、非人道的な絶対の悪であることは、ウクライナをめぐる日々 の報道に少しでも触れていれば分かります。ロシアの侵略によって破壊されつくされた街 、砲弾や瓦礫に押しつぶされて殺されていく人びとのことを考えると眠れなくなります。 だが、その地獄のような状況の中で、明日は殺されるかもしれないという恐怖を振りほど いて、ウクライナ人は侵略者と戦っているのではないでしょうか? それは、筆者が書い ているような「国際秩序のため」とか「民主主義を奉じるすべての国のため」とかではな く、また、「マックス・ウェーバーのいう、信念だけで行動して結果を顧みない『心情倫 理』の人」としての行動などではなく、侵略者を追い出さねば自分自身が殺される、自分 自身の人生のすべてが奪われるという、絶対的な恐怖をはね返すための唯一の選択だから だと私は思います。
 筆者の立場に立てば、ウクライナにはロシアの傀儡政権が樹立され、プーチンにとって のロシアの「本来の領土」の一つが回復される。そうなれば、次はモルドバやバルト三国 が狙われるのではないでしょうか。これらの国もまた、プーチンにとっての「本来のロシ アの領土」なのですから。旧ソ連圏の小国とポーランド、チェコなど旧東欧諸国はそうし た危機感を表明して、米英仏独などよりも真剣にウクライナを支援していますが、これら の国の危機感には根拠がないのでしょうか? それとも、ウクライナを手に入れたロシア が次の標的とした国に攻め入ったとき、それらの小国も抵抗を放棄して、ロシアに全土を 明け渡すべきなのでしょうか?
 筆者の立場を敷衍すれば、日本帝国主義の侵略戦争と戦った中国人民も間違っていたこ とになると思いますし、アメリカ帝国主義と戦ったベトナム人民も、そして今、中国の帝 国主義的な政策によって軍事的に包囲されている台湾が中国軍の脅威に対して軍備を固め 、抵抗する姿勢を示すのも間違いだということになるでしょう。そうなのでしょうか?  知識人の皆さま。朝日への寄稿者の皆さま。これでいいんでしょうか? しっかりして よ、知識人。しっかりしてよ、朝日新聞。 ●朝日新聞デジタル(有料記事です) https://www.asahi.com/articles/ASQ893QF6Q85UPQJ006.html

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