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LNJ Logo 福島に向き合っている人気ドラマ『その女、ジルバ』
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*レイバーネットMLから

レイバーネットTVの北穂さゆりです。先日の先日の福島原発特集では、番組全体のキャス ターをさせていただいていました。そに関連する秀逸なドラマの紹介をしつつ、番組感想 を記します。 『その女、ジルバ』という週末深夜の人気ドラマをご存知ですか? “日本映画女優” 池脇千鶴が、等身大の自分を生きる主人公を演じてほほえましく、好感の持てるストーリ ーです。しかも福島原発事故被害者とブラジル移民の悲劇をオーバーラップさせて描くと いう、じつは大変な意欲作です。 そのドラマの今日の放送回では、物語が戦後のブラジル移民の「勝ち組・負け組闘争」に 触れてました。終戦後、移民たちの間には日本が勝ったというデマが流れ、それを信じた 「勝ち組」と客観情報を信じた「負け組」が、最後には殺し合いまでした事件です。 「勝ち組」は当然ブラジル社会から孤立し、生活しにくくなると、日本国が助けに来るの を信じて待つことになります。ところが敗戦で国力を失った日本にそんな余裕があるわけ もなく、彼らは無惨に「棄民」されるのです。 ドラマでは「棄民」された「勝ち組」が、日本からの帰還船を待ちながら、無様に野垂れ 死ぬ様子を描いていました。わたしはその場面を見て、先日配信したレイバーネットTV15 6号に出演してくださった、原発自主避難者の森松明希子さんの言葉を思い出したのです。 森松さんは原発事故当時、2人の乳児を抱える若い母親でした。おそらく彼女はそれまで は地方の静かな町で、人の温かさを感じながら、おだやかに子育てをしていたのだと想像 します。 その彼女の人生が原発事故に巻き込まれたとき、乳飲児を抱える母親が当然受けるべき救 済を、彼女は受けられませんでした。明らかに放射能に汚染された地域から、チェルノブ イリの時のように、国が自分たちを脱出させてくれるものと信じていましたが、実際は誰 も何もしてくれなかった。 この時の森松さんの見捨てられ感は、どれほどであったかと思います。行政的な救済ライ ンの少し埒外に住んでいただけで、母子はなんの救いもなく捨てられた。これが棄民でな くてなんなのでしょう。 わたしはこれまで社会活動に関わってきて、被害者となった人が「えっ?自分は助けても らえないの?」と純粋にびっくりするのを見てきました。人間も、動物もです。自分が捨 てられるとわかると、とくに人間は驚きを隠しません。 この話を森松さん本人から番組中に聞いたわたしは、前頭葉に一気に豪雨が降った気がし ました。ごく普通のママだった彼女が、どんなに絶望に震えたか。ひとりでどんなに恐ろ しかったか。それを想像したわたしは心の奥が泣けて泣けて、恥ずかしいことに、番組最 後まで冷静には戻れませんでした。 『その女、ジルバ』の原作はコミックですが、コロナで原発のことをみんな忘れてる今、 ちゃんと福島に向き合ってる唯一のテレビドラマです。主人公は福島原発事故に翻弄され る家族を見守りながら、過去のブラジル移民問題に心を寄せていきます。たしかに原発事 故被害者とブラジル移民は棄民政策という点で重なるところが多く、秀逸なプロットだと おもいます。 ドラマはまだ続くので、まだ見ていない人は見てみるのもよし、その前にレイバーネット TVは YouTubeで見られますから、まだアクセスしていない人は、福島原発避難者の森松明 希子さんの話をぜひ聞いてほしいとおもいます。国家を前にしてわたしたちは無力なんだ。 それでも自分ひとりならいい。でもどうしても助けたい存在があるときはどうしたらい い? その答えを得るために、彼女の言葉を聞き、前頭葉に豪雨を降らせてください。次 の10年はそこから始まるでしょう。 『その女、ジルバ』 https://www.fujitv.co.jp/b_hp/jitterbug/index.html

●レイバーネットTVアーカイブ https://youtu.be/EWoGN0Z460U

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