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5本の映画は静かな感動の連鎖でした!〜レイバー映画祭を観て

内藤洋子(オンラインで視聴)

●「グッバイ・マイヒーロー」(110分)

素晴らしい映画だった。労働運動家の父を持つ少年ヒョイの成長を追う。小学生だった時、父は不当解雇撤回を求め、組合を率いて闘争に入る。1年間の投獄生活も経て日夜闘争を続ける父を案じ、父を誇りに思い応援したい気持と、なぜそこまでするのかとの疑問の間で葛藤する少年ヒョイの姿に引き込まれた。7年間の闘争を経て、ついに職場復帰を勝ち取った父を見つめるヒョイは16歳になった。口髭もうっすら伸びた表情は凛々しく眩しく見える。彼がこれからどんな大人になるのか楽しみだ。労働争議の困難さのみならず、韓国の現実社会の諸相も映し出していて、考えどころ満載だった。

●「ユニクロ/ジャバ・ガーミンド争議(12分)」

ユニクロがインドネシアで下請け工場の労働者4千人を突然解雇。幼い子をかかえてその日から生活に窮する若い女性が登場する。ミルクに苦いものを混ぜて飲まなくさせることで食費を切り詰めようとする姿が痛々しい。ユニクロ製品は値段の安さで日本でも高い人気だ。その生産現場のアジアではこんな搾取労働と人権無視がまかり通っていることを知らしめる、こうしたドキュメンタリー映画の果たす役割は大きい。

●「闇に消されてなるものか。写真家・樋口健二の世界」(80分)

監督・永田浩三が写真家・樋口健二を写す。映画後のスピーチも含めて、84歳樋口氏のパワーと気迫に圧倒された。その力はどこから湧き出るのか。彼の被写体である‘四日市公害’や‘毒ガスの島’の被害者たち、原発で被爆した下請け労働者たち、声も上げず死んでいった名もない人々の苦しみが、‘闇に消されてなるものか’ という熱い魂を呼び覚ましたのであろう。「権力に迎合せず、事実に基づいて、真実を追究する」という樋口氏の言葉が強く心に残った。語り継ぐ中から一人でもいい、志を引き継ぐ写真ジャーナリストが出てくることを樋口氏と共に期待したい。

●「原発の町を追われて・10年」(53分)

緑深い双葉町は静寂の中にあった。人の気配のない廃屋が10年という歳月を物語る。新しく完成した立派な双葉町駅舎が、妙に浮き上がって見える。人の賑わいを呼び込めるのだろうか。復興五輪の象徴にと双葉町を出発した聖火リレーの儀式も、どこまでも虚構めいて嘘くさかった。もう人の住めない町だ、と元住民は語る。牛飼いだった鵜沼さんが避難先で野菜作りに励むたくましい姿、しかしなお、吉沢さんの「希望の牧場」に生きる牛たちに寄せる熱い思いに感動した。被災者たちの心のうちに入り込めるほどの信頼を勝ち得た監督・堀切さとみさんの10年間の努力に、心から敬意を表したい。

●「映画批評家の冒険」(52分)

木下昌明さんに久しぶりにお会いできて、うれしかったです。舞台の上でずっとこの映画祭を見守っていましたね。「イヤー良かったよ、ありがとう!」と言っている声が聞えてきそうです。3分ビデオ制作の始まりの「娘の時間」には一番心打たれました。連日深夜帰宅で過労死寸前まで働く娘を案ずる父親の心中が、深く伝わりました。一時はニート暮らしもあった息子さんが組合闘争の先頭に立つ姿は、映画「グッバイ・ヒーロー」のヒョイとダブって見えました。続く3分ビデオの数々では、この間たどった日本の歴史も蘇りました。木下さんの生前最後のスピーチだったか、「地の塩」上映会での言葉、「ちょっとした行動が人間を解放する」は忘れがたく、心に刻みました。告別式で娘さんは、「父は力を使い切って死んだ。つねに今を大事に生き抜きました。」と語った。その通りだったでしょう。真似できそうにありませんが、私もそのように生きたいと思います。

素晴らしい映画祭でした。ご尽力くださったスタッフの皆さんに、改めて感謝いたします。                                    


Created by staff01. Last modified on 2021-08-02 10:57:41 Copyright: Default

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