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国際自動車タクシー残業代事件で勝利和解かちとる〜伊藤委員長の執念みのる

 2012年5月21日に、国際自動車のタクシー乗務員15名が原告になり、会社に対して残業代を請求する訴訟を東京地裁に提訴した(後に1名は取下げ)。同社の賃金規定が「残業代ゼロ制度」であることを問題にして、未払残業代の支払を求めた訴訟である。その後、第4次までの訴訟が提起され、原告数は224人、請求金額は約3億5000万円になった。紆余曲折があったが、2020年3月30日、最高裁第一小法廷において、労働者側勝訴の判決が出された。

 この事件について労使の話し合いが行われ、2021年2月22日までに、4つの事件につきすべて和解が成立した。一審原告らが納得できる金額の和解金を支払うという内容である。3月10日、厚労省で和解報告の会見があった。会見には、一審原告ら(首都圏なかまユニオン、全国際自動車労働組合・組合員、弁護団)が出席した。原告団団長で組合委員長だった伊藤博氏(写真)は、この和解成立を見届けて2月27日に癌のため逝去された。伊藤委員長の本裁判についての最後のメッセージが会見で披露された。

<伊藤さんの最後のメッセージ>

日本労働弁護団賞受賞式での挨拶
全国際自動車労働組合執行委員長 伊藤博

 私は、全国際自動車労働組合、略称・国際全労の執行委員長の伊藤博と申します。本日、国際自動車事件弁護団が、日本労働弁護団賞を頂いたことについてご挨拶を申し上げます。

 2012年の団交で、私は、「この会社は、乗務員に対し、未払賃金が有るでしょう。訴訟おこしますよ。」と団交で言いましたが、会社から「やりたければやれ。」と言われました。そこで、国際全労として訴訟を起こすことを決めました。そして、2012年5月21日、東京地裁にこの裁判を15人で起こしました。これが第一次訴訟です。全部で第四次までの訴訟を起こし、原告は224人、請求金額は約3億4700万円になりました。それから8年間の闘いがあり、勝訴判決が最高裁で差し戻されたこともありましたが、2回目の最高裁で勝利することができました。私は、この裁判は必ず勝つと信じて闘ってきました。

 会社は、「残業代を歩合給に入れて計算して、ゼロになる。」と言っています。これは、労働基準法37条違反です。会社が割増賃金を支払っていないことは明らかなのに、裁判の結論が出るまで8年間もかかりました。私たちは、国際自動車のような労働法を守らない会社が、日本の国からなくなることが必要だと考えています。このような会社がなくなることにより、労働者の生活と健康を守ることができ、日本の国が、豊かな国に一歩でも近づくものと思います。もし、残業代を支払わなくてもいいような判決が出ていたら、日本は、労働法を守らなくてもいい国になってしまうところでした。私たちは、日本がこのような無法地帯になったら大変だと考えて闘ってきました。

 私たちの闘いについて賞を頂き、ありがとうございました。この裁判の最終的な解決まで、がんばりますので、よろしくお願いします。


*3.10 厚労省の会見

<弁護団声明>

2021年3月10日
国際自動車事件弁護団 弁護士 指宿昭一・谷田和一郎

 「私たちには残業代が支払われていないんです。」という全国際自動車労働組合(国際全労)委員長の伊藤博さんの訴えから、この事件は始まった。ちょうど9年前、2012年3月10日、伊藤委員長から弁護団は本件の依頼を受けた。

 2012年年5月21日に東京地裁に国際全労組合員である原告15名で提訴。審理が長期に及んだので、2014年10月8日には、賃金請求権の時効消滅を避けるために、東京地裁に原告14名で第二次訴訟を提訴した。

 2015年1月28日、第一次訴訟で勝訴判決を得た。国際自動車の賃金規則は公序良俗違反であるとする判決である。

 これを受けて、国際全労と弁護団は、原告団と組合員を拡大し、2015年9月17日、178名が原告となり、約3億円の不払残業代等を請求する第3次訴訟を東京地裁に提起した。更に、2016年4月21日、原告22名で第四次訴訟を提起。原告団は合計で205人(和解成立の時点では198人)、請求額は約3億5000万円となった。

 2015年7月16日、第1次訴訟控訴審で、水野邦夫裁判長は、第一審佐々木判決と同様の結論の勝訴判決を言い渡した。

 ところが、2016年4月21日、第2次訴訟につき、東京地裁の清水響裁判長は、原告敗訴の判決を言い渡した。労基法37条の上に契約自由の原則をおくという不当な、戦後労働法制の中核である労働時間法制を崩壊させかねない判決であった。

 2017年2月28日、最高裁第三小法廷で、第1次訴訟の判決が出された。主文は、東京高裁の判決を破棄し、差戻すというものだった。しかし、一審原告ら、国際全労と弁護団は、この判決は、公序良俗論ではなく、労基法37条に基づいて判断を出すべきといっているだけで、敗訴ではないととらえて闘い続けた。

 その後、第1次、第2次訴訟はそれぞれ東京高裁で敗訴判決を受け、第3次、第4次訴訟も、それぞれ東京地裁で敗訴判決を受けた。これらの敗訴判決を受けても、弁護団も原告団も怯まなかった。我々は、最高裁での逆転勝訴が当然であると考えていた。もし、最高裁がこの事件で、労働者敗訴の判決を書いたとしたら、それは「残業代ゼロ」制度を認め、労基法37条の空文化を認めるものであり、そのようなことは絶対に許せないと考えた。

 2020年3月30日、最高裁判所第一小法廷は、国際自動車事件(第1次訴訟・第2次訴訟)につき、原審(東京高裁)の一審原告(=労働者)敗訴の判決を破棄し、東京高裁に差し戻す判決を出した。一審原告勝訴の判決である。

 本件につき、2021年2月4日、9日及び22日で、4つの事件につきすべて和解が成立した。一審原告らが納得できる金額の和解金を支払うという内容の和解である。

 本件訴訟は、裁判所が、労基法37条を潜脱する「残業代ゼロ」制度を容認し、戦後労働法制の中核である労働時間法制を骨抜きにするのかどうかが問われる事件であった。最高裁は、長時間労働を抑制するという労基法37条の趣旨に反する国際自動車の賃金規則を認めず、労基法37条を守るという判断を出した。今回の和解は、この第2次最高裁判決に基づくものであり、労働者の権利擁護の闘争において大きな意義を有するものであると考える。

 なお、原告団団長で国際全労委員長である伊藤博さんは、この和解成立を見届けて同月27日に癌のため逝去された。伊藤さん。お疲れさまでした。ありがとうございました。あなたと共に闘えたことを私たちは誇りに思います。

以上


Created by staff01. Last modified on 2021-03-11 11:59:40 Copyright: Default

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