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香港:新労組の組織化ブーム 如何に継続させるか(中)

文、写真:彭麗芳  編集:/劉子斌
2020年1月5日「明報」副刊掲載
原文 https://bit.ly/2tOu7CZ

(つづき)

◎業界内で単組の組織化も

陳敬慈・副教授によると、新労組ブームをさらに拡大するには、現在のような産別だけで
なく、個別企業において組合を作っていくことが、数を増やすという意味では必要なこと
だという。企業別の組合を結成して、さらに上部のナショナルセンターに加盟して、統一
行動を行う。すでに体制派も単組をつくる動きがあるという。7〜8人ごとに会社で労組
をつくり、新労組ブームに対抗するのだという。

彼によると、組合の綱領と組合費もまた新労組ブームが持続するかどうかの重要な要素だ
という。

「いま結成されている新労組の主な目的は二つ。ひとつはストライキ、あるいは行政長官
選挙における投票権という政治目的です。ふたつには自ら関わる産業における労組運動の
発展ということです。もし新労組が後者の目的も持つのであれば、今後も発展していく可
能性はあり、持続することができるでしょう。」

組合費をあまり低く設定しないことも重要だという。国際スタンダードでは月給の1〜3%
程度だという。陳副教授によると、新労組のなかで、香港金融業職工総会の組合費が一番
高く年間1200香港ドル(1香港ドル約14円)だが、それでも安すぎるという。

「もし政治ストを打つなら、権限を集中する必要があります。つまり上部組織には十分な
資源が必要になるという事です。アメリカでは選挙対策に多額の資金を投じていますし、
イギリスの左翼政党の主な資金源は労働組合なのです。」

最後に重要なことは、新労組の組合数と組合員数を一定の規模にまで引き上げるというこ
とで、「権力者ののど元を押さえるために」、どの産業あるいはどの企業にターゲットを
絞るかという戦略も重要になるという。

「フランスは十数パーセントと組織率は低いですが、その多くは交通運輸や公営部門とい
った重要な産業で組織されています。ストライキのたびごとに政府から何らかの妥協を勝
ち取っています」

そしてナショナルセンターのレベルにおいては、どの産業や企業で組織化を進めるのかと
いう分析や検討を行い、重要な企業において少なくとも過半数の労働者の支持を得て、そ
の他の企業の組合は上部団体への上納などでストライキを支えるのだという。


◎古い時代を乗り越えて組織的な持久戦を


なぜ香港人の組合に対する意識はこれまでずっと低いのだろうか。工盟の蒙兆達・書記長
によると、植民地主義の遺産も影響しているという。

「植民地の時代には不干渉主義が強く、労使紛争は当事者同士の交渉で解決すればいいの
であって政治は介入しないということでした。ですが労働市場は完全に資本側が主導権を
握っていました。団体交渉権や労働時間規制んど、世界ではごく普通の権利も香港では現
在も保障されていません。」

また香港では、経済の急成長というアジアの奇跡という神話によって、自由主義経済が吹
聴される雰囲気のなかで、個人主義の意識が強く根付いており、職場で問題があれば転職
したり、わずかの解決金をもらって済ますという方法がまん延し、集団的な方法に訴える
ことは少なかった。しかし(1997年の)アジア通貨危機によって、自己努力や転職による
キャリアアップという神話も崩壊したことで、万能の自由資本主義に対する信仰はいくら
か崩れ去ったことが、近年の最低賃金法の制定や組合意識を助長したと言える。

それにもかかわらず、今回の反送中運動から盛り上がった新労組ブームは予想できなかっ
たことだ。2014年の雨傘運動のような大規模な政治運動でも、運動がどれだけ盛り上がっ
たとしても、今回のようにそれが実際に職場やコミュニティに転化することはなかったか
らだ。

蒙兆達書記長は次のようにまとめた。「雨傘運動のときは、指導部や組織に対する警戒心
がありました。しかし現在は、デモ参加者の多くがやはり指導部という、従来の上から下
への指示といった文化は受け入れていませんが、組織の存在を否定することはなくなりま
した。これもまた従来の政治運動とは違ったところであり、多くの人々がこの数か月のな
かで、この闘いは組織的な持久戦が必要になっているという思いが芽生えてきたのだと思
います。」

(了) 

Created by staff01. Last modified on 2020-01-17 22:47:30 Copyright: Default

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