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LNJ Logo 11.18 レイバーネットTV報告 : 国籍差別は不毛だ!隣人とともに生きたい!
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●レイバーネットTV154号(11.18)報告 <特集:コロナ禍で苦しむ隣りの外国人〜その実態を知る>

国籍差別は不毛だ!隣人とともに生きたい!

報告:笠原眞弓

アーカイブ録画(90分)

 放送が始まる前、スタジオに来てくれたクルド人難民の父娘に挨拶しようとそばに行き、貧血のような顔色に思わずたじろいだ。声が掛けられず、できる限りの心をこめて、じいっと見つめた。私の気持ち、通じたかなぁと心配になった。世間も、さすがに非正規労働者に多いコロナ首切りに対して、「関係ない」とか「自業自得」という人は減ってきたと思うが、外国人労働者や難民申請中の外国人に対しては、“人ごと”感を持っている人がまだまだ多いような気がする。だが、しかし、これは“明日は我が身”であることを肝に銘じたい。こうして人を切り捨てる政府は、徐々に一般民衆も切り捨てるからだ。いやもう切り捨て始めている。

 メインキャスター:北穂さゆり/稲垣豊

・先月から始まった新コーナー、レイバーネット写真部の「今月の一枚」は、球磨川にのたうつ恐竜(撮影:写真部K)。7月の豪雨水害で落ちた橋を10月に撮ったもの。一日も早い復興とダム建設阻止を願う。

・今月のニュースは4本

 まずわれらが仲間、土屋トカチ監督の「アリ地獄天国」の都内ポレポレ東中野での上映が始まり、トークの様子。次は、ユナイテッド航空の「私たちを空にもどせ」不当解雇問題。2審での闘いの成果を更に最高裁へと銀座で400人が声を上げた。木更津に配備された自衛隊のオスプレイの訓練飛行が始まるのに抗議する「どこの空にもオスプレイはいらない」集会が飛行ルート下の船橋市で600人を集めて各党会派の訴えの報告。最後のニュースは「脱被ばくネット」主催の15回目のデモが新宿アルタ前で行われた。変わり果てていく福島について訴えた。

・サブ企画「バイデンでどうなる? 米国社会と労働運動」語り手:マット・ノイス 聞き手:松本ちえ

 コロラドのマット・ノイスさんとつなぎ、この大統領選挙はどうだったのか聞く。聞き手は、久方ぶりの松本ちえさん。インタビュー映像後の彼女の解説も素晴らしかった。なんたってアメリカだから、この長の選挙結果は世界に影響する。私の周りでは「トランプとバイデン、どっちがいい/共和党と民主党?/人柄がね…」的な話に終始していたが、さすがアメリカ人は、自国の問題をきっちり解説してくれた。

 真っ先に驚いた視点は「労働者がマスコミで取り上げられたことはなかった」という言葉。つまり、エッセンシャルワーカーが話題となり、彼らの仕事ぶりが連日報道され、彼らの働きが認識されたこと。そして、コロナで疲弊した経済の中で、今後どれほどの下層労働者への保護が実施されるかを危惧。サンダースの労働長官就任の可能性と、バイデンとともに高齢であることの不安なども語られた。そして差別問題もどんどん表面化したわけだが、それらを含めてアメリカの一般労働者にとってバイデンの世界はどうなるのかと。トランプ以前に戻そうとしているが、それにはコロナによる緊縮財政が足を引っ張るだろうと危惧。とはいえ、困窮している白人の若者を擁しての共闘に希望をつないだ。最後に気候対策と労働組合の関係に言及。それぞれ利益が相反するので、なかなか難しいという話だった。

・歌と川柳のコーナー

 ジョニーHさんの歌は、なんと「なんちゃってクルド語」の「ワルシャワ行進曲」これは日本でも歌われている労働歌だ。クルド語のこれは、みんなで集まってバリケードを作ろうというもの。

 乱鬼龍さんの川柳は「難民困民隣は今日をどう生きる」。身の回りに見かける貧困者に気が付かないかのように通り過ぎる人たちに怒りを込めていた。隣人を心にかけようと。

・特集「コロナ禍で苦しむ隣りの外国人〜その実態を知る」コロナ禍の中での、今回は特に外国人労働者に焦点を当てた。解説:松澤秀延/加藤丈太郎

 生活に困窮する難民や外国から来た労働者を守るのは“自分事”と埼玉県のクルドの人の日常生活も垣間見える映像の後に、クルド人と長い付き合いのある「クルド難民を知る会」代表の松澤秀延さんに現状や問題を伺う。

 松澤さんは、相談会を開くたびに問題が明らかになってくる。この前は300人もの人が相談に来たという。スタジオにいらした、特別ビザを持つクルド人のAさんは、怒りを込めてクルド語を交えながら入管での手続き等に見える「日本での難民とはどういうことか」と発言。そして国を捨てざるを得なかった事情を短い言葉で語る。

 「トルコ人とクルド人は兄弟というのに、なぜトルコ人は兄弟のクルド人を殺すのか?」。強制送還されたり、帰国を余儀なくした場合、飛行場から直接拉致されて、その人のことは誰にも分らなくなると。このことは世界中、どの国でも普通に行っている「国による拉致」という怖いことなのだ。彼らが国を後にせざるを得なかったのは、先の大戦後に、世界の力関係が塗り替わっていく中で、トルコ国内でトルコ人とクルド人の対立が激しくなったからということだ。

 日本の難民受け入れ(受け入れにくさ)について解説する。現在の受け入れは0.4%を切る少なさで「違うものを受け入れない」という日本人の国民性の表れではないかと松澤さんは、指摘するが、それだけなのだろうか。
 「弟たちはトルコ語を話せない。帰っても生活できない。日本ではいじめられても、殺されない。トルコでは殺される」と気丈に話すBさんの言葉が辛い。

 ベトナムの技能実習生の人たちのことを話していただいたのは、移民研究者の加藤丈太郎さん。彼は「なんで彼らにご飯を配られなければならないのかを、自分の目で確かめようと埼玉県の大恩寺(ベトナム人の駆け込み寺のようなところ)を訪ねる。そこで見たものは…。2本の映像が語る事実は…。食事はもちろん、帰国便が出るまでの生活支援のほか、葬式支援もしていて4月から今までに23名の若い労働者や留学生の見送り、ほかに妊娠中絶の子を6人を供養しているという。コロナ前は技能実習の3年が終わっても、それなりに働けたり、帰国することができたが、現在は「はい、終わり」とビザが切れ、保険証もなくなる。それなのにコロナのために飛行機が飛ばなかったりと帰国が思うようにできない。どう食いつなぐのかの「公助」がまるでない。自助を求めるのだが、できるはずもないので共助に頼ることになる。会社の「妊娠してはダメ」との言葉が今もこだまする。

 加藤さんは、まるで3年働くロボットみたいに、故障した(妊娠)から、あるいは用済みになれば、捨てる感じだと加藤さん。これって、やっぱり他人事ですか? そういうことのできる人、つまり日本人が、自分のすぐ隣にいるんですよと聞いている私の心は凍る。松澤さん、加藤さん共に、「彼らはちゃんと働いて生きていきたいだけなのだ。その力は十分にある」という言葉に、現状に対するいら立ちとともに、私たちがこれからしなければならないことが示された。

 問題は一向に解決しない。だから今後もこの問題をレイバーネットTVとしても取り上げていかなければならないと思う。その時「他人事」からいかに「自分事」として社会構造を変えていったらいいかの道を探り、提案するものにしたいと思った夜だった。今の世の中の問題はすべて「人権問題」にほかならない。としきりに思うこの頃、人権を重んじない社会に、未来はないと叫びたい。 なお、次回は12月16日(水)に放送がある。

*写真=小林未来


Created by staff01. Last modified on 2020-11-21 18:37:28 Copyright: Default

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