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*レイバーネットMLから

安田です。

3月2日(土)午後6時半から東京のなかのZero小ホールで映画「雪道」の上映会をやります。 主催者が前回上映した「I Can Speak」と同じく慰安婦をテーマにした映画ですが、前回のストーリーが立ち上がって闘 う元慰安婦の物語だったとすれば、今回のストーリーは寄り添う気持ちの大切さを教えて くれる物語だといえるかもしれません。 今回もこれまでの成り行きで、ぼくが日本語字幕を担当します。その関係で台詞のひと言 ひと言の意味を考え、それぞれのシーンの意味を考えながら何度も繰り返して観ましたが 、よく練られたシナリオ、美しい映像、そして子役俳優の熱演が印象に残る映画です。

最近、日韓の間では、請求権協定がどうだの、不可逆的解決がどうだのという喧々諤々が あります。それも大切なことなのかもしれません。しかし、それ以前に、まず元慰安婦の 、あるいは元徴用工の痛みに共感し、どうすればこの痛みを和らげられるのか、そこから 始めなければどんな解決も不十分なものになってしまうでしょう。

どんな映画なのかを知りたいという方のために、ざっとこの映画の紹介文を書いてみまし た。駄文なので読んでも読まなくてもかまいませんが、ぜひ、この映画は観ていただきい と思います。 映画の上映情報とチケットの情報は、最後に書き添えておきます。

以下、映画の紹介です。

★映画「雪道」紹介

 映画「雪道」は2015年にKBS(韓国放送公社)1が制作した光復70周年特集ドラマ「雪道」 を再構成し、2017年に映画化した作品です。「慰安婦」がテーマですが、勇ましく日本軍 の蛮行を糾弾する内容でも、悲惨な場面で観る人に訴える内容でも、ナショナリズムを燃 え上がらせるような内容でもありません。元が地上波テレビのドラマですから、老若男女 を問わず多くの人がさまざまな見方ができるような映画です。  しかし、そうかといって事なかれ主義の凡庸な映画ではありません。時空を超えて今な お続く戦時性暴力の被害者たちに寄り添おうとする暖かいヒューマンドラマです。  この映画はフィクションです。しかしこの映画の各シーンは、実在の元慰安婦が体験し たエピソードです。悲しかった思い出、つらかった思い出、楽しかった思い出、なつかし い思い出… 元慰安婦によって語られたそのようなエピソードが巧みに再構成され、二人の少女によっ て当時の慰安婦の生活を浮き彫りにします。

 この映画の主人公はヨンエ(キム・セロン)と貧しい家の娘チョンブン(キム・ヒャンギ) 。二人は同い年ですが、ヨンエは豊かな家の娘で学校にも通い、日本語も話すことができ 、チョンブンは文字も読めない貧しい家の娘ながら笑顔がかわいい健気な女の子。それぞ れ実力派の子役俳優が演じます。  当時、南朝鮮は綿花の産地で、日本にも多くの綿製品を輸出していました。導入部の後 、映画は平和だった綿花の村のエピソードを描き出します。白くて柔らかく、暖かい綿を 作る人々。真っ白で暖かい綿のイメージは、この映画の中で繰り返し登場します。  しかし、ある時そんな平和な生活も壊れてしまいます。父親が創氏改名を拒んだという 理由で官憲に目をつけられたヨンエとその家族は、徴用工として、慰安婦として連れて行 かれます。貧しい家のチョンブンも夜中に軍属にさらわれてしまいます。  彼女たちが汽車に乗せられて到着したのは満州の慰安所でした。そこは勝手に死ぬこと もできない場所。誇り高いヨンエも、たくましいチョンブンも、そこでは役に立てば生か され、不要になれば捨てられる単なる「支給品」でした。

 映画は植民地時代と現在を行き来しながら展開します。二つの時代を結ぶのは歳を取っ たチョンブン、そしてヨンエの亡霊。  現在のストーリーでは、ひとりで懸命に生きるウンスという女子高校生が登場するので すが、彼女は現在の社会が若い女性に加える暴力に苦しめられています。歳を取ったチョ ンブンはそんなウンスが他人とは思えません。この設定は、もしかすると「雪道」が家庭 で視聴されるテレビドラマとして制作されたときの工夫なのかもしれません。いずれにし ても、若い人たちはウンスを通じて女性に加えられる不条理な暴力、歳を取った人たちは チョンブンを通じて過酷だった時代の暴力を体験するのでしょう。

 「雪道」は3.1節特集として作られたテレビドラマで、映画化された「雪道」の封切り も2017年3月1日でした。1919年に韓国で起きた三・一運動は、多くの韓国の人たちにとっ て、日本の不当な支配に抗議して立ち上がった当時の人々を思い出す日です。日本支配か ら開放された8月15日と並んで愛国心が強調される日でもあります。  この日は植民地支配に対して敢然と闘った独立運動家を主人公とする映画やドラマがあ ふれるのですが、「雪道」にはそのような勇敢な運動家は登場しません。せいぜい、ヨン エの父親が創氏改名を拒否し独立運動に加担したことが暗示されるだけです。ヨンエは、 そんな父親に反発して自ら女子勤労挺身隊に志願する「立派な皇国の朝鮮人」でしたし、 チョンブンも慰安所では日本人に頭を下げ、日本人のお姉さんたちの洗濯物を引き受けた りもします。  「親日」か「反日」か。この映画にそんな価値観はないのではないでしょうか。ヨンエ やチョンブンは、あるいは韓国兵の暴力によって苦しんだベトナムの若い女性なのかもし れませんし、現代韓国の男たちに弄ばれるウンスのような貧しい女性なのかもしれません 。

 映画の中で「みんな、自分がどんなに苦しいかを主張するばかりで、あなたみたいに他 人の苦しみを理解して心を寄せようとする人はいない」という台詞があります。日本語の 字幕では文字数の関係で若干省略せざるを得なかったのですが、重要な台詞です。  苦境の中で、それでも彼女たちが生きていられたのは、みんなが相手の気持ちに寄り添 い、苦しみを分け合う中から生まれた力だったのでしょう。そして今、高齢になった元慰 安婦の心の傷を癒やすことができるのは、多くの人々がその苦しみに寄り添うことから生 まれる力でしょう。そんな「他人の心の傷に寄り添おうとする気持ち」は、今の「MeToo 」や「WithYou」に通じるものがあります。  今、日韓の間で慰安婦(や徴用工)への賠償をめぐって立場の違いが問題になっています 。政府のレベルでは賠償だの国際法だのという虚しい言葉が飛び交っています。どうすれ ばこうした問題が解決に向けて進むのでしょうか。数年前の「日韓合意」に対して国連の 女性差別撤廃委員会は被害者中心の解決ではないこと、被害者に寄り添った解決を目指す ことを勧告しました。  この映画の最後、エンドロールの前に短いメッセージが表示されます。慰安婦をはじめ 戦時性暴力に苦しんだ人たちに対してメッセージは「今も戦争と暴力に苦しむ方々のこと を忘れません」という一文で終わります。

 「雪道」は、さまざまな観かたができる映画だと思います。この映画を「慰安婦」とい う枠に閉じ込めたくありません。ある人にとっては「泣ける」悲しい映画かもしれません し、ある人にとっては逆境を生き抜く少女の感動の映画かもしれませんし、ある人にとっ ては政治的な映画かもしれません。「慰安婦」を知らない人には「慰安婦」を知るための 教材かもしれませんし、よくご存知の方は証言を残した多くの元慰安婦の方々を思い出す 映画かもしれません。  この映画を制作したKBSは、残念ながら日本でのセールスはまったく考えていないそう です。第三次韓流ブームと言われていますが、それでもこの映画は今の日本でヒットする 映画ではないでしょう。しかし、このような映画こそ、多くの日本の人々が観るべき映画 なのではないでしょうか。ぜひ今回の上映会でこの映画を観て、彼女たちの物語を共に体 験していただきたいと思います。

安田幸弘(「雪道」日本語字幕担当。この文章は「雪道」東京特別上映実行委員会の立場 を代表するものではなく、主催者、賛同団体の立場とは異なる場合があります。)

「雪道」東京特別上映会

日時: 2019年3月2日(土) 午後6時半から(会場は午後6時)
   上映時間121分
会場: なかのゼロ 小ホール
主催: 「雪道」東京特別上映実行委員会
賛同: 日本軍「慰安婦」問題解決全国行動
一般社団法人希望のたね基金
アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)
韓国映画を見る会
入場料: 一般 1,500円 (障害者・学生 1,300円)
問合せ・チケット申込: kmoviesc@gmail.com
ウェブサイト: https://sites.google.com/view/kmoviesc/


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