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日本人の戦争体験は「氷山」である〜アップリンク「11AM劇場」で『天皇の名のもとに』再映

    山谷哲夫『沖縄のハルモニ』監督(写真)


 船上から見る氷山は陽に照らされ、美しい。純白である。今まで、日本人の多くは「純白」の部分―被害者体験―ばかり、言い募ってきた。「ヒロシマ、ナガサキ」の被爆体験がその象徴である。

 確かに一般市民が瞬時にして、原子爆弾等によって焼き殺された事実はむごたらしい。生き残った広島市民が画用紙に水彩画で、原爆投下後の惨状、どろどろになった皮膚で歩きながら「水をくれ」と叫んで行き倒れていく様を下手に描いている絵には絶句する。ああ、なんでこんな、か弱い女、子供が原爆の被害者にならなくてはならないのか?

 だから、「ヒロシマ、ナガサキ」が敗戦後74年も経ったのに、未だに「被害者体験」の象徴として、7〜9月集中豪雨の様にテレビ、新聞に特集される。ぼくも一日本人として、やはり涙を流す。でも、心の片隅に、「氷山」の見える一角だけに戦争を収斂してはいけないと、ひそかに思う。氷山の大部分は海中に没し、なかなか船上からは見えない。暗黒部分である。そこにこそ、「加害者体験」が隠れている。被害者体験」+「加害者体験」、二つ合わさって、「戦争体験」なのである。一方だけを強調してはいけない!

 ぼくは満州事変から敗戦に至る15年日中戦争を、日本人の加害者体験-暗黒部分ーだと思っている。大学4年の時に沖縄・慶良間諸島渡嘉敷島集団自殺のことを調べて、卒論に書き、それからぼくの「原点」になっている。

 1945年3月、米軍が渡嘉敷島に上陸したとき、日本軍に見捨てられた島民は約400人、家族ごとに自決を図った。日本軍から手渡された手留弾は不発が多かったので、家族が鎌、斧でそれぞれを殺めている。これは渡嘉敷島だけでなく、周辺の島、それに本島内でも夥しい家族が集団自決をしている。その原因は敵軍に捕まると、辱めを受けるということが頭に刷り込まれているのである。それは日中戦争の時、「皇軍兵士」として従軍し、戦線で逃げ遅れた老女から幼女迄、見境なく強姦し、行為後証拠隠滅のため、殺してきた事実を、同じ島の帰還兵が故郷で酒の席でばらしたからである。

 それを耳にした祖母、母、奥さん、娘、妹たちが、米軍が来たら同じような蛮行に及ぶ、と想像力を膨らまし、だったら捕虜になる前に自殺する道を選んだのである。もちろん、ぼくの推論はまだ確固とした事実に裏ずけられているわけではない。しかし、ぼくはあえて沖縄の集団自決は、日本軍の日中戦争時の中国人女性強姦への裏返しだと確信している。

 日本人の「ヒロシマ、ナガサキ」の被害者体験を「ちゃんちゃら、おかしい」と一笑のもとに伏してしまう人たちが、韓国にいるのは事実である。ぼく自身が直に日本語を学んでいる大変綺麗な若い女性から聞いている。映画「ウリナラマンセイ―1977韓国から」撮影時、廻っているカメラの前で「ヒロシマ、あれは当然です」と断言されて、ぼくは慌てふためいた。

 そして、ヒロシマでどれだけの市民がむごたらしく、死んでいったのか、感情的に弁護したが、彼女は表情一つ変えなかった。彼女にとって「ヒロシマ」があったから、韓国は日本から解放されたのだ、という思いの方が強いのだ。

 ぼくはたまたま、韓国市民の一部にある「反日意識」をもろに浴びたが、そもそも朝鮮半島・中国の「反日」の原点は1937年の「南京事件」である。日本軍の急激な進運で蒋介石率いる国民党政府の首都・南京では逃げ遅れた市民が約100万人いた。それを勝手気ままに殺戮し、強姦したのが松井石根中支派遣軍司令官の部下たちである。その中には、沖縄出身の兵隊たちもいた。日本軍内部で「沖縄出身」ということで、バカにされ、それを中国で爆発させたのだろう。

 『天皇の名のもとに―南京大虐殺の真実』は偶然、南京に滞在していた米人牧師ジョン・マギーの家庭用小型映画で盗撮されたフイルムが基本になっている。当時米国は中立国で身の安全は保障されていたが、しかし「盗撮」が「皇軍」に見つけられれば、大問題になる。しかし、マギー牧師は安全な病院を離れ、市街がまだくすぶっている南京市内に潜入する。
 そこで見たものは…。

 この映画が単なる中国側のプロパガンダだったら、これほど大きな反響は呼ばなかっただろう。フイルムに移っている「皇」軍兵士は、ぼくらの祖父や父、叔父である。それが逃げ遅れた市民に、ゲームのように発砲し、猟奇的に女体を弄ぶ。見ていて、吐きたくなるほどである・・・。

 1995年に『天皇の名のもとに―南京大虐殺の真実』は完成したが、NHKは「刺激的すぎる」と放映を拒否し、小さな市民団体が細々と小さな集会で見せるだけであった。しかし、9月28日〜29日と、10月2日〜3日アップリンク渋谷(☎03-6825-5503)で4日間も上映することになった。同調圧力、忖度、嫌がらせで上映することは、右傾化が進む日本では、タブーに近いが、あえて4日間もアップリンク渋谷で「11AM劇場」の切り込み隊長としてやる。ぜひ、見に来てほしい。

●アップリンク「11AM劇場 名画発見!」詳細情報(予約可)


Created by staff01. Last modified on 2019-09-17 11:21:32 Copyright: Default

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