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LNJ Logo 報告 : 9.14 原発特重施設問題シンポジウム
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原発特重施設問題シンポジウム〜原発の危険性を直視しないままオリンピックを開催できるのか

 9月14日、東京・水道橋スペースたんぽぽにおいて、「『原発テロ』対策とは、本当は、どういう問題なのか?」(主催:福島原発事故緊急会議)と題されたシンポジウムが開催され、30人以上が参加した。

 シンポジウムでは、たんぽぽ舎副代表・山崎久隆さんが「『特定重大事故等対策施設』問題とは何か?」、オリンピック災害おことわリンク・宮崎俊郎さんが「『原子力非常事態宣言』下のオリンピックに反対しよう!」と題して、それぞれ講演した。

 山崎久隆さんは、「特定重大事故等対策施設」(特重施設)に関して、「現在稼働している原発も、これから再稼働を目指している原発も特重施設は完成していない。だから、本当はすべての原発は動かしてはいけない。この特重施設とは一体何なのかと言うと、規制委は『意図的な航空機の衝突等への対策施設』としているが、分かりやすく言うと原子炉建屋とは別に自立的な電源、冷却ポンプを備えた緊急制御室を作るということ。しかし、原子炉が破壊されて放射能が漏れているのに、緊急制御など本当にできるのか?」と現存する原発の危険性と特重施設を仮に備えたとしても危険性が除去されないことを指摘した。

 さらに「もともと特重施設はどのような考え方から出てきたのか。原発には重大事故対処設備というものがあり、重大事故が発生した時に備えて特定の発展シナリオがあって、それに対策するためのものが特重施設である。原発の安全を確保するための新規制基準の中では、まず重大事故対策という考え方がメインにあり、さらにそれを超える発展シナリオのために作ったものが特重施設である。だから、特重施設やそれに付随するテロ対策という考え方は後付けの考え方である。特重施設を作ったとしても、それはシナリオどおりに進めば機能するが、大きな地震や津波で果たして電源設備が十分に機能するのか実証もされていない」と述べて、マスメディアが指摘する特重施設=テロ対策施設ではなく、特重施設はあくまでテロ対策に限らない重大事故対策であることを述べた。

 続いて宮崎俊郎さんは、オリンピック災害おことわリンクの活動を紹介した上で「東京オリンピックは福島『復興』を前面に出しながら、非常に政治的な意味合いで作り出されて来ている。安倍首相の『アンダーコントロール発言』から、このオリンピックの招致が始まっている。そして、2020年に原子力非常事態宣言を解除して、国際的に福島事故の問題は解消してオリンピックを迎えるという、国際社会に虚構を演出しようしている」と述べた。

 さらに「日本政府や東京都が進めようとしているテロ対策というのは、一体誰に向けられているのか。テロ対策の矛先は私たちに向けられていると考えるべきではないか。重大事故対策が十分になされていない原発に再稼働が認められていることは、オリンピックを開催する上で国際的な信用を上げる狙いがあるのではないか。我々オリンピックに反対しているグループからすれば、東京オリンピックに3兆円かけるのであれば福島の復興に予算を充てるべきで、今からでもオリンピック返上は遅くないと思っている。これから東京オリンピック反対運動と反原発運動も連帯していくことができるのではないか」と訴えた。

 続いて、シンポジウム講師の両者が討論した。
山崎「原子炉施設にテロ攻撃するというのは、実際は戦争レベルの話。そうだとすれば、原子炉施設を守るためには軍隊でないといけない。本当にテロ対処しなければいけないのであれば、それだけの防御水準が必要だ。テロ対策の施設を作って、それでテロ対策になるなんてことは、世界中どこにもない。特重施設をテロ対策と言っているその表現自体も、世界的に極めて特異な例だ」

宮崎「新聞記事を見ていると、特重施設はすべてテロ対策施設と位置づけている。本来であれば『特重施設がない原発は止めるべき』という意見が、『テロ対策がされていないから止めるべき』という議論になってしまう。なぜ、新聞紙面は揃ってそういう書き方になるのか」

山崎「特重施設をテロ対策と言い出したのは日本政府で、それに乗っかっているのは電力会社。記者会見でもその論法でなされるので、知識がなければメディアはそれをそのまま使う。本当のテロ対策とは軍隊が担当することであり、この国のマスコミは分かっていないのではないか。日本にはテロという概念がしっかりしていないので、誰かがテロ対策と言ってしまうと、メディアも引きずられてしまう。完全なテロ対策を言うのであれば、原発自体をやめるべきだ」

 特重施設は、ほとんどのマスメディアがテロ対策のための施設としているが、テロ対策に留まらない過酷事故対策のための施設である。さらに特重施設にも問題がある。特重施設建設をめぐって、来年3月に川内原発1号機(鹿児島)が停止するのを皮切りに、順次対象原発が停止される予定である。これだけ多くの問題を抱える原発の再稼働には、多くの矛盾を抱えているのではないか。

 海外からは汚染水問題をはじめ、福島第一原発事故の収拾がつかない状況に懸念の声が挙がっている。その一方で、福島原発事故からの「復興」を名目に、福島現地もオリンピック開催地に選定されている。日本国内のメディアは、オリンピック歓迎一色に連日埋め尽くされているが、オリンピックの負の側面に関する情報も市民に提供することがメディアの役割なのではないか。〔金子 通〕


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