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元気な女性たち大いに語る〜『しゃべり尽くそう!私たちの新フェミニズム』出版記念シンポ

    笠原眞弓

 1月11日、東京・文京区民センターで『しゃべり尽くそう!私たちの新フェミニズム』の出版記念シンポジウムが開催された。主催は梨の木舎。登壇者はこの本の著者である望月衣塑子さん(東京新聞記者)、平井美津子さん(公立中学教諭)、猿田佐世さん(新外交イニシアティブ代表、弁護士)。そして同じく著者の伊藤詩織さん(ジャーナリスト)と三浦まりさん(上智大学法学部教授)からは、ビデオメッセージが届けられた。

 シンポジウムは望月さんの、伊藤詩織さん事件のいきさつからはじまり、菅官房長官との記者会見の様子やなぜあの時期、山口敬之氏が官邸に守られたか(といわれている)、同時期に出回った「民主党の画策と誤解させるチャート図」もあの元気な口調で示した。一時期ひどく落ち込んでいた詩織さんも今はいくつものテーマを追いかけて、八面六臂の活躍だとその多忙ぶりを紹介。そして、彼女の告訴があったから、女性ジャーナリストのセクハラ被害の会「メディアで働く女性ネットワーク」も出来たといい、ジェンダー指数を上げると男性も生きやすくなると指摘した。

 次に登場したのは大阪の公立中学の社会科の先生、平井美津子さん。彼女は、社会科の教諭として生徒たちに何を伝えたいかをはっきり述べた。以前は、近現代は時間がないと端折られていたが、最近の教科書はその期間が3分の1を占めていて、じっくり教えられるということだ。授業の目的は、騙されない、自分で判断できる人になることときっぱりという。

 教科書の中で女性は、卑弥呼と北条政子くらいしか登場しないという。百田尚樹氏の『日本国記』の中の女性はというと、卑弥呼と神功皇后、稲田朋美がどこかの国の偉い人(聞き取れなかった)と話したということだけだったという(笑いが起きた)。

 平井さんの関心は平家政権時代の女性たちなど、「一般女性がどうだったか」にあるという。大阪が徳川に敗れる時、「東夷(あずまえびす)がやってくるから心せよ」と東国人を野蛮人として警鐘を鳴らしたし略奪や性被害の絵が残っているが、女性の生の声は残っていない。明治になってやっと残ってきた。それを授業で伝えたいと。

 「大阪市長にtwitterで攻撃されても、私はやめない」ときっぱりと宣言。それは、子どもたちのたくさんの夢を戦争で踏みにじられたくないからという。すなわちそれが、彼女の授業の目的なのだから。

 時代が変わるのは、メディアが変わるときであり、教育が変わるときであると平井さんは言うが、最近、私が所属するレイバーネット日本の川柳班で『反戦川柳句集−「戦争したくない」を贈ります』(関心のある方は、レイバーネット日本にご注文を)の中に「教育は戦争しないだけでいい」という句があるが、その実践をしているのが平井さんだと思った。

 続いて立った猿田佐世さんは、弁護士でアメリカ議会でのロビー活動のベテラン。沖縄の基地のロビー活動もしている。印象に残ったのは2つ。一つは、彼女自身が出産・育児でアメリカに行かれなかった時期、主に普天間の辺野古移転だと思うが、沖縄基地に関するロビー活動の指導を彼女がして沖縄の人たちに任せたそうだ。その後復帰してアメリカへ行くと、沖縄の人たちのロビー活動は完ぺきで、米国の関係者に沖縄問題が深く浸透していたという。それくらい沖縄の人たちは真剣に基地問題に取り組んでいると感じたという。

 もう一つは、日本で「アメリカがこういっている」などの大きな声が上がったら、日本の誰が言わせているかを考えてほしい。なぜならあのアーミテージ元国務副長官ですら、そんなに反対があるなら「何も辺野古移設をしなくてもいい」といっているという。このことは、私も少し前にネットで読んだ記憶がある。

 沖縄問題をジェンダーの視点でみると、戦時中にたくさん設置された慰安所の問題が浮かぶ。そして、施政権返還後も続く米兵による性犯罪である。辺野古移転のきっかけは普天間の移設で、それは小6女子への性犯罪だった。米軍人・軍属は罪を犯しても本国に帰されるだけで、罪に問われないことは有名だ。猿田さんは、米軍の中の性犯罪を扱っている議員にたいして、沖縄の現状を話しているという。

 いまだにある被害者が悪いという発想は、女性の中にもあると指摘した (この言葉を聞いたときパッと浮かんだのは、私の親しかった友だちが同じことを言い、瞬間のどが詰まり、その後彼女と気持ち的に疎遠になったこと。一緒にいた男子たちが「それを言ったらおしまい」と言ったのが、せめてもの救いだった) 。

 2部は、ディスカッション。望月さんが、こういうことをリアルタイムで話せる最後かもしないと言いつつ、声なき声、歴史に名前の出てこない人こそ重要ではと話す。

 平井さんは、もう家庭の中で戦争をリアルに語れる人はいない。生徒が戦争の現実を知るのは、学校の授業でしかない。慰安婦を教えているがそれは、教科書からその記述が消えたからという。最近教科書でも復活してきたが、なぜ教えるのかと苦情を言う人たちは「保護者」とか「保護者の関係者」と言って乗り込んでくる。校長で埒があかないと、教育委員会へ行くが、教育委員会には教える内容に口出しはできない。平井さんが授業で取り上げるのは、2度とこういう被害者が出てほしくないからと言う。

 実はこの時平井さんは、今回のシンポジウムのハイライトと言うべき重大発言をした。彼女は新聞でも公表さているが、慰安婦の授業をしていることで外部から圧力をかけられている。そのためだろう、平井さんの勤務している大阪の中学校の校長とその管轄の教育委員会の方が会場にいると暴露したのだ。驚きと、軽蔑「エーッ」の声が会場を満たした。猿田さんの「交通費はだれが出したんでしょうね」にも笑いが。最後まで姿は見せなかったが、その存在はしっかりと感じられた。しかし、平井さんは来ていただいた方がある意味いいと言う。言葉尻を捉えて言われるより、全体を聞いていその上で判断していただいた方がいいからと。それにしても、大阪からのこのこ追いかけてきた腹の座っていない人たちはつまらない人たちだと思う。

 猿田さんは、沖縄の人たちは、やれることはすべてしている。物心ついてから死ぬまで基地問題。それがなければ、彼らには別な人生があったと思うという。日米地位協定を変えるより、基地をなくす方が早いのではないかという意見には、今まで変えてくれと日本政府は言ったことがない。アメリカは日本政府が決めたことだと言っているので、こちらが変えてくれと言えば変わる可能性があるという。とはいえ、変えるだけでは根本的な問題解決にはならないとも言う。

 平井さんからも道徳の教科化や新聞、テレビを見ない子どもがネットから知識を得ていることの弊害などが話され、婚姻届を教材に別姓婚の話など興味は尽きなかった。別性婚で婚姻届を出していなかった猿田さんは、お連れ合いも一緒にアメリカに行くことになり、二人で相談もせず書いた婚姻届は、当然の如くに猿田姓だったと。今も彼は会場にいるが、保育園のお迎えもパパの方が多く、家事もほぼ半々だとか。

 望月さんは、防衛省と安倍のレーダー照射問題の対立があり、日韓関係も悪くなっている。このような構造は権力に利用されること。最近は若者でない人がネトウヨになってヒステリックに対応しているので、一つずつフェイクを潰していかなければならない。小さな違いを大きく取り上げるのではなく、立ち止まって話し合うことが大事と話す。

 安倍政権が続いているのはなぜと質問があった。

 猿田さんは、自民はそれほど票を取っていないし、改選される人たちは与党が大きく伸びた時のものだから今度は、野党が伸びるのではという。望月さんは、与党内で石破さんがあれだけの票を取ったことを考えると、安倍さん一筋ではなくなっていることが分かる。公明党の女性たちが改憲反対を強固に打ち出しているので「改憲ヤルヤル詐欺」に終わるのではないかと思っているとの見方。

 広河隆一氏の事件への質問には、もし10年前に表に出ていてそれにちゃんと対応できていたら、詩織さんは被害にあわなかったし、多くの女性が救われていただろうと。そして被害者たちも、詩織さんがいたから声があげられたし声を上げてこなかった自分たちの責任も感じるとのことだったとのこと。このように、性暴力を表に出せない社会の問題、責任にも言及した。

 最後に平井さんは、ここに来られるか不安だった。攻撃のある中でも、声を上げ続ける人でありたい。救民、民を救う人でありたいと結んだ。猿田さんは、平井さんに学校に迷惑がかかるというのが校長たちだが、そのような圧力をかけることは、私たちが逆に困るので頑張ってほしいと、今日は平井先生を応援する会ですと、会場にいる校長と教育委員会の方に向けてメッセージを送ると、会場からは大きな拍手がわいた。


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