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LNJ Logo フィリピン・ピースサイクル : 日本政府は、元徴用工問題での韓国大法院判決を受け入れよ!
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安倍晋三 総理大臣 様
河野 太郎 外務大臣 様

    日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書
    
 第2次世界大戦中における日本軍による、アジアの女性たちに対する性暴力は国家、日本政府の慰安所設置によるものであることを認め、犠牲となった被害女性たちの人権を回復し、その反省の上に諸政策を行うよう、以下のことを要請する。

1. 日本政府は、元徴用工問題での韓国大法院判決を受け入れよ!

 韓国大法院(最高裁)(裁判長、キム・ミョンス長官)は10月30日、イ・チュンシクさんら強制徴用の被害者が日本企業の新日鉄住金(旧新日本製鉄)を相手取って訴えた損害賠償請求訴訟の再上告審で、新日鉄住金の再上告を棄却し、その結果原告に1億ウォン(約1千万円)ずつ賠償せよとの原審判決が確定した。

 日韓請求権協定や付属書のどこにも日本の植民支配の不法性に言及する内容がない。日韓の交渉の過程でも日本政府が植民地支配の不法性を認めず、強制動員被害の法的賠償を基本的に否認したうえで、5億ドル(無償3億ドル、借款2億ドル)支払うことで、最終解決とした。その後現在に至るまで日本政府は植民地支配の不法性を認めておらず、したがって謝罪もしていない。そのうえで、「日韓請求権・経済協力協定」により、強制徴用被害者が日本企業に損害賠償を請求できる個人請求権も「完全かつ最終的に」消滅したと主張してきたし、判決後もなおその主張を固持している。強引にやり過ごししてきたその対応こそ、現在に至るまで元徴用工問題を解決させず、今回の判決に至らせた根源的な原因である。
 
 大法院判決は、日本政府による朝鮮の植民地支配がそもそも不法であるとし、植民地支配と侵略戦争と直結した日本企業による強制動員・強制労働なども不法行為であるとした。そのため、不法行為に基づく元徴用工の損害賠償請求権は、植民地支配も不法行為も認めていない日本政府が締結した「日韓請求権協定」の対象外となる、したがって韓国政府の外交保護権と元徴用工個人の損害賠償請求権のいずれも消滅していないと判示したのである。

 そもそも二国間の条約・協定で個人の請求権を消滅させることはできない。重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的に消滅させることはできないという考え方は、個人の人権侵害に対する効果的な救済を図ろうとしている国際人権法の進展に沿うものといえる(世界人権宣言 8 条参照)のであり、安倍首相のように「国際法に照らしてあり得ない判断」と断じることはできない。

 強制動員被害者は訴える権利を持ち、裁判所は賠償を命じることができる。国際法では人道に対する罪に時効はない。

 日本政府は、現代におけるそのような国際法の達成や人権の国際水準を認め受け入れ、朝鮮の植民地支配を合法と言い張り続けてきた態度を改め、強制動員、慰安婦被害など植民地支配の歴史に真摯に向き合い、公式に謝罪し解決に向かわなければならない。

 でなければ、永久に解決しない。

2. 安倍政権は真摯に対応せよ!  

 ところが、安倍政権の対応は「解決済」の一点張りであり、さらには植民地支配も徴用工も合法だったという新たなキャンペーンさえ行おうとしている。

 安倍首相は、10 月 30 日の衆議院本会議において「1965年の日韓請求権協定によって、完全かつ最終的に解決している。判決は国際法に照らしてありえない判断だ」と答弁した。河野外相は在日韓国
大使を呼び、「日韓友好関係の法的基盤を根底からひっくり返すものだ、決して受け入れることはできない」と伝えた。

 さらに菅義偉官房長官は11月1日午後、定例記者会見で、政府はすでに強制徴用被害者に提訴された日本企業を対象に説明会を開き「賠償はもちろん和解にも応じるな」という方針で動いていることを明らかにした。この説明会は、外務省、経済産業省、法務省など関連部署が合同で開催する。新日鉄以外に、同様な訴訟が進行中の日本の企業は、三菱重工業、不二越、IHIなど70社を超える。
 
 さらに安倍首相は1日、国会予算委員会でこれまで日本政府が使ってきた「徴用工」という表現の代わりに今後は「旧朝鮮半島出身労働者」という表現を使うと述べた。安倍首相はまた「当時、国家総動員法(1938年制定)の下、国民徴用令には募集、官斡旋、徴用があった」として、原告の中に「募集に応じた」と言った人がいるとも話した。これらは植民地時期に日本政府が、朝鮮人を強制動員したという事実を否定したり意味を変更する安倍首相得意の「小手先の策略」、「歴史の書き換え」である。これを機に、元徴用工問題でも歴史の書き換えを行う姿勢をすでに見せている。
 
 そもそも日本政府、および最高裁は、従来から「日韓請求権協定により放棄されたのは外交保護権であり、個人の賠償請求権は消滅していない」との見解を表明しており、安倍首相の「完全かつ最終的に解決している」とする上記答弁は,日本政府自らの見解や最高裁判決とも整合しない。

 このような対応を即刻やめることを要求する。日本政府は韓国政府を非難し対応を押しつける現在の態度を即刻改め、本判決を機に根本的な解決に向けて韓国政府と交渉を開始することを求める。

 また、この問題の本質が人権侵害である以上、なによりも被害者個人の人権が救済されなければならない。したがって、新日鉄住金が本件判決を受け入れるとともに、自発的に人権侵害の事実と責任を認め、その証として謝罪と賠償を含めて被害者及び社会が受け入れることができるような対応を日本政府がとることを要請する。

3. 政府・メディアは植民地支配を認め、謝罪せよ!
 
 日本の大手新聞は、産経、読売、日経のみならず、毎日新聞が「日本政府が『断じて受け入れられない』と表明したのは当然である・・・・・・主体的に問題解決を図るべきは韓国政府だということを自覚してほしい」(31日付社説)と安倍政権に同調するとともに、朝日新聞も「韓国政府は、事態の悪化を食い止めるよう適切な行動をとるべきだ」(31日付社説)と、いずれも問題は韓国側にあると描いている。

 こうした大手メディアの論評・態度は、問題の核心をそらせ、日本政府の責任を棚上げするきわめて不当なものだ。「元徴用工判決」で問われているのは日本政府と日本企業の責任である。

 日本政府やメディアの主張は、今回の判決が「日韓請求権協定」に反しているという一点に集中している。しかし、大法院判決は「植民地支配のもとでの不法行為は「日韓請求権協定」の対象外だと判示を示した。「協定」は国家間の「負債関係」であり、被害者個人の賠償請求権はそれによって縛られないという判断であり、むしろ国際法の潮流に沿うものだ。

 マスメディアは日本政府の見解をただ伝え、韓国大法院判決を非難する報道を流す機関に堕しており、ジャーナリズムとしての責任を放棄している。植民地支配は合法で正当なものだったという立場から「日韓基本条約―日韓請求権協定」を締結し、そのことからの必然として、日本の植民地支配に対する賠償などいっさい行わないとする日本政府の主張と論拠、これに対する大法院の判決内容、個人請求権は存在しているという今回の判決理由などついて一切、報道していない。メディアが、歴史経過と判決内容、双方の見解と論拠を伝え、国民的な議論と検討を行おうという役割を放棄している。

4. 問題の核心はどこにあるか! 政府は歴史的責任を果たせ!
     

 問題の核心は、日本が一貫して朝鮮に対する植民地支配の事実も責任も認めず、被害者への謝罪も賠償も行っていないことにある。「日韓請求権協定」は、謝罪・賠償の代わりに「経済協力」で韓国政府
(当時、朴正熙大統領)と交わした国家間の妥協の産物であり、被害者に対する謝罪も賠償も行わないで「経済協力」に置き換え、あいまいにして押し流してきたことが問題なのだ。

 日本政府は単に植民地支配の責任を認めないだけではない。麻生太郎副首相は植民地政策(皇民化政策)である「創氏改名」について「朝鮮人が名字をくれと言った」なとと暴言を吐いた(2003年、当時自民党政調会長)。また、朝鮮人の徴用工が地獄の苦しみを強いられた長崎県・端島(軍艦島)がユネスコ世界遺産に登録される際に(2015年)、強制労働の事実を否定したのも安倍政権だった。

 朝鮮植民地支配に対する無反省・居直りは、日本政府の敗戦後一貫した対応だ。政府だけではない。日本政界・メディア・言論界の姿勢でもある。

 こうした戦後日本政府がつくり上げてきた「虚構」が、いつまでたっても問題を解決せず長引かせ、
やがて歴史の検証の過程で崩れ去ることになるのだ。今回の判決はそのことを示す一例である。

 私たち日本人と日本社会にとって、過去の侵略・植民地支配の歴史に正面から向き合い、被害者への謝罪と賠償という歴史的責任を果たすことができるのかどうか、それが問われてい
る。

 私たちが要求してきた慰安婦問題の解決もまったく同質の問題である。戦後日本政府が、侵略や植民地支配のなかで犯した重大な人権侵害を決して認めないで、謝罪せずに、賠償でない金を配り、ごまかし抑えつける不誠実な態度をとり続けたからこそ、いまだにきちんと解決しない。

 それゆえに、慰安婦被害者や植民地支配の強制労働被害者、あるいはそのような問題解決を願う世界中の多くの市民から、日本政府はいつまでたっても尊敬されないし、尊重されない。

 日本政府に、過去の侵略・植民地支配の歴史に正面から向き合い、被害者への謝罪と賠償という歴史的責任を果たすことを求める。
 
2018年11月7日   フィリピン・ピースサイクル
     フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩
     代表 大 森 進 / 事務局 平 田 一郎


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