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紅林進です。

社会的連帯経済を担っている市民社会のステークホルダーと地方自治体の国際的なネット
ワークであるGSEF(Global Social Economy Forum、グローバル社会的経済フォーラ
ム)の第3回世界大会が、
10月1日〜3日まで、スペイン・バスク地方のビルバオ市で開催され、その後の2日間
にわたるモンドラゴン協同組合などの訪問ツアーとあわせて私も参加しました。

GSEFビルバオ大会には、84カ国から約1700名が参加し、日本からは、私も参加
した「ソウル宣言の会」が組織した日本実行委員会の訪問団44名のほか、あわせて50
名以上が参加しました。

今回のGSEFビルバオ大会とモンドラゴン協同組合などの訪問についての報告を書いて
みましたので、ご参考までにお送りさせていただきます。
なおより簡略な報告は雑誌『フラタニティー』に掲載される予定です。

なおこのGSEFビルバオ大会についての、「ソウル宣言の会」としての報告会は後日開
催される予定ですが、10月21日(日)には専修大学(神田キャンパス)で開催されます、
私も関わっています「マルクス生誕200年シンポジウム」の中の「世界を変革する社会
的連帯経済をめぐって」という分科会で、このGSEFビルバオ大会の報告もされます。
今回の訪問団に参加された方が報告します。
http://www.labornetjp.org/EventItem/1532329355035matuzawa
http://chikyuza.net/archives/86108

<マルクス生誕200年シンポジウム>
分科会4 世界を変革する社会的連帯経済をめぐって
司会:若森資朗
報告:平山 昇「グローバル社会的経済協議会(GSEF)2018ビルバオ大会報告」
     堀 利和「障害者が構想する共同社会」
     柏井宏之「日本における社会主義運動と生協運動」

紅林進
skurbys@yahoo.co.jp


(以下、訪問記)

GSEFビルバオ大会とモンドラゴン協同組合など訪問記

   紅林進

スペイン・バスク地方のビルバオ市で十月一日〜三日に開催された「二〇一八 GSEF
 ビルバオ大会」と、その後二日間にわたって行われたモンドラゴン協同組合やゲルニカ
博物館などの見学に参加した。

GSEF(Global Social Economy Forum、グローバル社会的経済フォーラム)とは、社
会的連帯経済を担っている市民社会のステークホルダーと地方自治体の国際的なネットワ
ークとして、朴元淳ソウル市長などの呼びかけにより、二〇一三年にソウル市で準備会が
、二〇一四年に同じくソウル市で第一回大会が、第二回が二〇一六年にカナダのモントリ
オールで、そして今回第三回として、モンドラゴン協同組合グループの本拠地でもあるス
ペインのバスク地方のビルバオ市で開催された。次回大会は、左派政権が誕生したメキシ
コのメキシコシティーで二〇二〇年に開催されることも決まった。

今回は、八十四カ国から、約一七〇〇名が参加した。日本からは「ソウル宣言の会」が組
織した日本実行委員会の訪問団四十四名のほか、「日本労働者協同組合連合会」(労協)
からも数名が参加、そのほかにも研究者など個人で参加した人も含めて少なくとも五〇名
以上が参加した。しかし日本の自治体からの参加はなく、韓国がソウル市を始め多数の自
治体から参加したのと比べると、日本における、この問題に対する自治体や行政の立ち遅
れが目立った。世界各地から、ニューヨーク市を含め、さまざまな自治体の関係者も参加
した。ILOからも関係者が参加した。

今大会のメインテーマは、「包摂的で持続可能な地域創生への価値と競争力」。なお「競
争力」をどう捉えるかは、参加したメンバーの間でも、いろいろ議論があった。
社会的連帯経済や協同組合といえども、資本主義市場経済の中で活動する以上、その市場
競争に対応・対抗するための力は必要だが、グローバル市場競争にのめりこむと、モンド
ラゴン協同組合の中心的企業ファゴール家電が倒産したように、グローバリズムに対抗す
るのではなく、それに埋没してしまう危険もあると私は思う。

初日は、共同議長の朴元淳ソウル市長とビルバオ市長の挨拶や全体会が開催され、初日の
午後と続く二日間には各分科会が行われ、三日目には「ビルバオ宣言」が採択され、閉会
し、その日の午後には、いくつかのコースに分かれて、各協同組合などを訪れるツアーも
行われた。そこでは、「労働者株式会社」という協同組合とは違う形態の企業も訪問した
。

分科会は多数が同時並行的に行われたが、各発表時間が十分程度と短く、質疑応答も十分
できず、もったいない気がした。日本からは、いくつか事例報告を応募したものの、採用
されて分科会で発表されたのは滋賀県大津市の社会福祉法人 「共生シンフォニー」によ
る障がい者が主体となった菓子作りなどの事例報告のみ。前回のモントリオール大会では
、労働組合と中小企業協同組合を結びつけて、大手生コン資本に対抗する「関西生コン」
の活動紹介など数件が取り上げられたが、今回はこの一件のみ。なお「関西生コン」から
は今回もこの大会に数名が派遣される予定であったが、別件の弾圧を受け、「関西生コン
」としては参加できなくなった。

なお私の今回の参加の目的は、GSEFの会議参加ということよりも、モンドラゴン協同
組合グループを実際に訪れてみたいということであったが、確かに現地は訪問して、本部
で詳しい話も聞いた(日本語の紹介ビデオも用意されていた)が、実際にモンドラゴン協
同組合の労働者がそこで働いている現場は見ることができなかった。倒産した「ファゴー
ル家電」とは別の(モンドラゴン・グループには「ファゴール」と名のつく協同組合はい
くつもある)、金属プレスの機械を作っている「ファゴール・アラサテ」という協同組合
の工場は見学したものの、訪問時には就業時間は終わっていて、工場の責任者の話しか聞
けなかった。

本部の人の話でも、モンドラゴン協同組合が労働者とその雇用を守り、労働の人間化を図
り、格差を最小限に抑えてきたかということはわかったが、協同組合の組合員以外の労働
者(少数ではあるが十五%ほどいるとのこと)に対する保障は、ファゴール家電の倒産の
時もそうであったが、不十分に感じられた。

またモンドラゴン・グループとは別の訪問先で、障がい者と健常者が一緒に働き、日本の
ように障がい者が最低賃金以下で働かされるということもなく、障がい者が主体的に働い
ている現場を見学したこともあり、参加者から、モンドラゴン協同組合では障がい者がど
のように働いているかとの質問も出され、それに対し、モンドラゴン協同組合としては、
地域に障がい者を中心的に雇っている別の企業があるので、そちらに障がい者の雇用は任
せ、金銭面で支援しているという回答には正直がっかりさせられた。障がい者と健常者が
一緒に働ける場を作ってこそ、本当の労働の人間化にもつながると思うのだが。

私がモンドラゴン協同組合に関心を持つのは、株式会社ではなく、労働者協同組合でも、
立派に基幹産業、先端産業を運営できるということを実証したことであり、それが資本主
義に代わるモデルとなりうると考えるからであり、その意味で、ファゴール家電がスペイ
ン最大手で、EUでも有数の家電メーカーを株式会社形式ではなく、労働者協同組合形式
で運営し、倒産に当たっても、組合員のグループ協同組合への再配置により、最大限雇用
を守ったという点などは評価できるが、一方で多国籍化してグローバル競争に乗り出して
ゆく、現在のモンドラゴン・グループの在り方には危なさと疑問も感じる。しかしグロー
バル化の現実はあるわけで、その中で、協同組合がどのように対応してゆくべきであるか
は、私たち日本の社会的連帯経済をめざす人々の課題でもある。

なお今回のツアーでは、バスク地方の多くの自治体の与党で、協同組合の支援にも熱心な
「バスク民族党」(「バスク国民党」と訳されることもある)の本部を訪れ、詳しい話も
伺えた。なおかつてバスク独立を掲げて激しい武装闘争を展開した「ETA」(バスク祖
国と自由)は、いまや武装闘争を放棄し、解散宣言をした。モンドラゴン市内で、多少E
TAの落書きやステッカーなどを見かけたものの、バスク地方の中心都市ビルバオではそ
れも見かけることもなく、いまや影響力はほとんどないように見えた。もっとも関連組織
が合法政党化し、選挙にも参加し、一定の議席を有しているようではある。

またゲルニカ市も訪れ、バスク地方の自治の象徴である歴史的建物の「バスク議事堂」(
現在もゲルニカ市のあるビスカヤ県の県議会として使われている)とバスクの自治と徴税
自主権などの象徴「ゲルニカの樹」などを訪れ、バスクの歴史を学ぶとともに、スペイン
内戦時の一九三七年に、フランコ反乱軍を支援するナチス・ドイツの空軍機がゲルニカ市
を無差別爆撃し、多数の死傷者を出した模様を再現しているゲルニカ記念博物館や、ゲル
ニカ爆撃にピカソが怒りをもって描いた「ゲルニカ」という作品のレプリカの見学、原爆
被爆地広島市との植樹などの交流(ゲルニカ市出身で今回のツアーをサポートしてくれた
ジョン氏が中心的に関わる)などの話を聞いた。なおゲルニカを考える場合、日本人とし
ては、ヒロシマ、ナガサキとともに、日本軍が中国の重慶を一九三八年から一九四三年に
かけて二一八回にわたって無差別爆撃した「重慶爆撃」も忘れるべきではないと思う。

モンドラゴン協同組合グループの本部があるモンドラゴン市では、訪れた日は現地のお祭
りの日であったが、三〇代の若い女性市長自らが、バスクの祭礼用の民族衣装で、市議会
や市内を案内してくれた。

協同組合形式で運営するモンドラゴン大学の経営学部も訪れ、そこでは教師がおらず、コ
ーチが指導し、学生は少人数のグループを作り、4年間で、海外研修もして、起業をめざ
し、実際に会社や協同組合を作るとのこと。

その卒業生も含めて、数名の多才な若者たちが作ったデザインやコンサルタントを行う「
DOT」という若者たちの協同組合も訪れ、話を聞いた。コカコーラなどのグローバル企
業のデザインやコンサルタントも担っているとのこと。それに対しては、参加者から疑問
も出されたが、企業名で判断するのではなく、その企業と一緒に仕事をする中で、その企
業を変えてゆくことが重要とDOTの若者は答えていたが、DOTの若者たちの意欲と実
力は認めるが、私としてもこの点は引っかかるものがあった。

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